片頭痛は、高齢者において頻繁に認められる疾患ではないが、高齢片頭痛患者に対する予防的治療は、さまざまな併存疾患に対する多剤併用による治療が行われていることを考えると、より困難である場合が少なくない。また、高齢片頭痛患者に対する予防的治療の有効性、安全性、忍容性に関するエビデンスは、限られている。米国・トーマスジェファーソン大学のStephanie J. Nahas氏らは、反復性片頭痛(EM)または慢性片頭痛(CM)を有する60歳以上の臨床試験参加者を対象に、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に選択的に作用するヒト化モノクローナル抗体フレマネズマブの有効性、安全性、忍容性を評価した。The Journal of Headache and Pain誌2021年11月24日号の報告。
本研究では、3つのランダム化二重盲検プラセボ対照第III相試験(HALO EM試験、HALO CM試験、FOCUS試験)のデータを分析した。対象は、3つの試験への参加者で2~4種類の片頭痛予防薬クラスで十分な治療反応が得られなかった患者246例。3つの試験いずれにおいても、CMまたはEM患者をフレマネズマブ3ヵ月に1回投与群(1ヵ月目:フレマネズマブ675mg、2ヵ月目:プラセボ、3ヵ月目:プラセボ)、フレマネズマブ月1回投与群(1ヵ月目[CM]:フレマネズマブ675mg、1ヵ月目[EM]:225mg、2ヵ月目以降:225mg)、プラセボ月1回投与群に1対1対1の割合で割り付け、12週間の治療を行った。
主な結果は以下のとおり。
・フレマネズマブ治療を行った患者は、12週間にわたるベースラインからの1ヵ月当たりの片頭痛日数の減少が有意に大きかった。
【最小二乗平均のベースラインからの変化】
●フレマネズマブ四半期ごと投与:-4.3±0.59(対プラセボp<0.01)
●フレマネズマブ月1回投与:-4.6±0.54(対プラセボp<0.01)
●プラセボ月1回投与:-2.3±0.57
・フレマネズマブ治療を行った患者では、毎週の片頭痛日数のベースラインからの有意な減少が、最短1週目で認められた(各々:対プラセボp<0.01)。
・フレマネズマブ治療は、プラセボと比較し、1ヵ月当たりの片頭痛日数50%以上の減少割合が有意に高く、疾患およびQOLアウトカムの有意な改善が認められた(各々:対プラセボp<0.05)。
・重篤な有害事象や治療中止につながる有害事象の発現率は低く、フレマネズマブ治療とプラセボで類似していた。
・有効性および安全性の結果は、プールされた母集団(2,843例)と同等であった。
著者らは「本サブグループ解析において、60歳以上のEMまたはCM患者に対するフレマネズマブ治療は有効であり、12週間にわたり十分許容されることが示唆された。これらの結果は、片頭痛を有する高齢者の臨床的意思決定と予防的治療を選択するうえで、医療従事者にとって役立つであろう」としている。
(鷹野 敦夫)