米国疾病対策センター(CDC)が実施したコロナ罹患後症状(post-COVID、いわゆる後遺症)についての約200万人の大規模調査によると、急性肺塞栓症や呼吸器症状の発症リスクが2倍となり、18~64歳の5人に1人、65歳以上の4人に1人が、コロナ罹患後症状と考えられる症状を1つ以上発症しているという。研究結果は、CDCのMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)2022年5月27日号に掲載されている。
本調査は、米国50州の18歳以上のCerner Real-World Dataに登録された電子健康記録(EHR)データを用いて、2020年3月~2021年11月の期間、過去にCOVID-19の診断を受けた、または検査で陽性となった群(症例群:35万3,164例)におけるコロナ罹患後によく見られる26の対象症状の発生率と、コロナ既往歴がない群(対照群:164万776例)における対象症状の発生率について、後ろ向きコホート研究で比較評価した。解析では、18~64歳(症例群:25万4,345例、対照群:105万1,588例)と65歳以上(症例群:9万8,819例、対照群:58万9,188例)に層別化した。
主な結果は以下のとおり。
・全年齢層の症例群38.2%、対照群16.0%が、少なくとも1つの対象症状を経験した(18~64歳:症例群35.4%、対照群14.6%。65歳以上:症例群45.4%、対照群18.5%)。
・症例群と対照群のリスク差は、18~64歳では20.8%ポイント、65歳以上では26.9%ポイントであった。
・全年齢層で最も多い罹患状況は、呼吸器症状と筋骨格系疼痛だった。リスク比が最も高い対象症状は、急性肺塞栓症(18~64歳:2.1、65歳以上:2.2)、呼吸器症状(両年齢層:2.1)であった。
・65歳以上では、26の対象症状すべてにおいて対照群より症例群が、リスク比が高かった。一方、18~64歳では、22の対象症状で対照群より症例群が、リスク比が高かった。
・心不整脈のリスク比は、65歳以上(1.5)よりも、18~64歳(1.7)が有意に高かった。
・筋骨格系疼痛のリスク比は、65歳以上(1.4)よりも、18~64歳(1.6)が有意に高かった。
・65歳以上では、味覚・嗅覚障害などの神経学的症状や、気分障害、不安、物質関連障害などの精神症状のリスク比が、18~64歳と比べて有意に高かった。
本研究により、コロナ既感染者の成人では、18~64歳の5人に1人、65歳以上の4人に1人が、コロナの既往に起因すると考えられる症状を経験していることが示された。若年者に比べ高齢者のほうがリスクが高く、感染から1年後まで持続することが報告されている神経学的症状などは、脳卒中や神経認知障害のリスクがすでに高い高齢者に対して、追加支援などが必要になる可能性があるため、とくに懸念されるとしている。研究グループは、コロナ罹患後症状のリスク上昇に関連する病態生理学的メカニズムを理解するため、今後もさらなる調査が必要だとしている。
(ケアネット 古賀 公子)