新規作用機序を有する薬剤が次々と開発されているが、前臨床および承認前の臨床試験において、該当医薬品がQT延長やトルサードドポアント(TdP)を誘発するかどうかを把握することは困難である。東京慈恵会医科大学のMayu Uchikawa氏らは、日本のリアルワールドデータベースを用いて、各薬剤の薬剤誘発性QT延長/TdPを評価した。その結果、抗不整脈薬、カルシウム感知受容体アゴニスト、低分子標的薬、中枢神経系用薬が、QT延長やTdPと関連する薬剤群であることが示唆された。Drugs - Real World Outcomes誌オンライン版2022年8月22日号の報告。
医薬品副作用データベース(JADER)を用いて、QT延長およびTdPを検索した。報告オッズ比(ROR)を算出し、潜在的な薬剤誘発性QT延長/TdPの特定を試みた。
主な結果は以下のとおり。
・432万6,484件のデータのうち、薬剤と共に報告されたQT延長/TdPは3,410例であった(QT延長:2,707件、TdP:703件)。
・これらの患者における女性の割合は、53.9%であった。
・年齢層別に最も発生率が高かったのは、70代の高齢者(24.7%)であった。
・QT延長/TdPに最も関連する薬剤群は、心血管薬、中枢神経系用薬、抗がん剤、抗感染症薬であった。なお、過量投与の割合は、1.6%と非常に低かった。
・調整済みRORが高かった薬剤は、以下のとおりであった。
●ニフェカラント(ROR:351.41、95%CI:235.85~523.59)
●バンデタニブ(ROR:182.55、95%CI:108.11~308.24)
●エボカルセト(ROR:181.59、95%CI:132.96~248.01)
●ベプリジル(ROR:160.37、95%CI:138.17~186.13)
●三酸化二ヒ素(ROR:79.43、95%CI:63.98~98.62)
●グアンファシン(ROR:78.29、95%CI:58.51~104.74)
・過去10年間に日本で上市された薬剤の中では、バンデタニブの調整済みRORが最も高かった。
(鷹野 敦夫)