自閉スペクトラム症から総合失調症への進展

提供元:ケアネット

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公開日:2022/09/20

 

 これまでの研究では、自閉スペクトラム症(ASD)の小児は、その後の人生において統合失調症の発症リスクが高いことが示唆されている。台湾・高雄栄民総医院のTien-Wei Hsu氏らは、ASDにおける診断の安定性および統合失調症への進展に対する潜在的な予測因子について調査を行った。その結果、統合失調症と診断されたASD患者の3分の2以上が、ASD診断から最初の3年間で進展しており、人口統計学的特徴、身体的および精神的な併存疾患、精神疾患の家族歴が、進展の重要な予測因子であることが示唆された。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2022年9月3日号の報告。

 対象は、2001~10年にASDと診断された青年(10~19歳)および若年成人(20~29歳)の患者1万1,170例。統合失調症の新規診断患者を特定するため、2011年末までフォローアップ調査を実施した。統合失調症への進展およびその予測因子を推定するため、時間のスケールとして年齢を用いたカプランマイヤー法およびCox回帰を用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・10年間のフォローアップ調査におけるASDから統合失調症への進展率は10.26%であった。
・統合失調症と診断された860例中580例(67.44%)は、ASDと診断されてから3年以内に統合失調症と診断されていた。
・特定された予測因子は以下のとおりであった。
 ●年齢(ハザード比[HR]:1.13、95%信頼区間[CI]:1.11~1.15)
 ●抑うつ症状(HR:1.36、95%CI:1.09~1.69)
 ●アルコール使用障害(HR:3.05、95%CI:2.14~4.35)
 ●物質使用障害(HR:1.91、95%CI:1.18~3.09)
 ●パーソナリティ障害クラスターA群(HR:2.95、95%CI:1.79~4.84)
 ●パーソナリティ障害クラスターB群(HR:1.86、95%CI:1.05~3.28)
 ●統合失調症の家族歴(HR:2.12、95%CI:1.65~2.74)

(鷹野 敦夫)