統合失調症における睡眠依存性の記憶の定着~メタ解析

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2023/05/05

 

 睡眠障害と認知機能障害は、統合失調症でみられる持続的な症状である。これまでのエビデンスにより、統合失調症患者は健康対照者と比較し、睡眠依存性の記憶の定着が損なわれている可能性が示唆されている。トルコ・Dokuz Eylul UniversityのCemal Demirlek氏らは、統合失調症における睡眠依存性の記憶の定着に関するシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、健康成人においては睡眠が記憶の定着を改善するが、統合失調症患者では睡眠依存性の記憶の定着が不足していた。Schizophrenia Research誌2023年4月号の報告。

 PRISMAガイドラインに従ってシステマティックレビューを実施した。エフェクトサイズ(Hedge's g)の算出には、変量効果モデルを用いた。定量的レビューでは、健康対照者、統合失調症患者、健康対照者と統合失調症患者の比較における手続き記憶(procedural memory)について、3つの個別のメタ解析を実施した。さらに、最も一般的に使用される指タッピング運動シークエンス課題(finger tapping motor sequence task)について、別のメタ解析を実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・システマティックレビューには、14研究(統合失調症患者304例、健康対照者209例)を含めた。
・睡眠依存性の手続き記憶の定着に関するランダム効果モデル分析では、各エフェクトサイズは、統合失調症患者で小さく(g=0.26)、健康対照者で大きく(g=0.98)、健康対照者と統合失調症患者の比較では中程度(g=0.64)であった。
・finger tapping motor sequence taskを用いた研究のメタ解析では、各エフェクトサイズは、統合失調症患者で小さく(g=0.19)、健康対照者で大きく(g=1.07)、健康対照者と統合失調症患者の比較では中程度(g=0.70)であった。
・定性的レビューでは、統合失調症患者は健康対照者と比較し、睡眠依存性の陳述記憶(declarative memory)の定着も損なわれていた。
・健康成人においては、睡眠が記憶の定着を改善するが、統合失調症患者では睡眠依存性の記憶の定着が損なわれていることが、本結果により支持された。
・記憶のサブタイプごとに睡眠依存性の定着を調査するため、精神病性障害のさまざまな段階において睡眠ポリグラフを用いた研究が求められる。

(鷹野 敦夫)