米国では、1人暮らしのシニア世代が増えているが、犬や猫などのペットを飼うことが認知機能の維持に役立つようだ。平均年齢66歳の7,900人以上を対象とした研究で、1人暮らしの人でも、ペットを飼っていれば記憶力や思考力の低下を抑えられる可能性のあることが明らかになった。中山大学(中国)のCiyong Lu氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に12月26日掲載された。
2021年のデータに基づくと、米国では人口の28.5%が単身世帯である。Lu氏らは、1人暮らしの年配者は認知症の発症リスクが高いことが多くの研究で明らかになっていると指摘する。
Lu氏らは今回、English Longitudinal Study of Aging(老化に関する英国縦断研究)の第5次(2010年6月〜2011年7月)から第9次(2018年6月〜2019年7月)の調査データを用いて、ペットを飼うことで1人暮らしの年配者の認知症リスクが低減し得るのかどうかを検討した。解析には、50歳以上の7,945人(平均年齢66.3歳、女性56.0%)が含められた。認知機能は、言われたことを思い出す能力である「言語記憶」と、言語の使用を伴う精神的プロセスである「言語流暢性」についての評価を行った。
解析の結果、ペットを飼っている人ではペットを飼っていない人に比べて、認知機能(言語記憶と言語流暢性の結果に基づく総合的な言語認知機能、言語記憶、および言語流暢性)のより緩徐な低下と関連することが明らかになった。また、誰かと同居している人に比べると、1人暮らしの人の方が、これらの認知機能の低下速度は速かった。1人暮らし、ペットを飼うこと、上述の認知機能の低下速度の交互作用を検討したところ、1人暮らしは、ペットを飼うことと認知機能の低下との関連に影響を与える要因であることが示された。層別解析では、1人暮らしの人の間では、ペットを飼うことが認知機能のより緩徐な低下と関連していたが、同居人がいる人ではこの関連は認められなかった。さらなる解析では、ペットを飼っていて同居人もいる人に比べて、ペットを飼っていない1人暮らしの人では認知機能の低下が有意に速かったが、ペットを飼っていないが同居人のいる人と、ペットを飼っている1人暮らしの人では低下速度に有意な差は認められなかった。
Lu氏は、犬や猫などを飼うことは「孤独感の軽減と関連する。孤独感は認知症や認知機能低下の重要なリスク因子だ」と述べている。
Lu氏らは、今後の研究で検討する必要があるものの、ペットを飼うという「単純な変化」が、1人暮らしの年配者の認知機能低下を遅らせるための公衆衛生政策の開発において役割を果たす可能性があるとの見方を示している。
[2023年12月27日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら