DPP-4阻害薬ビルダグリプチン(商品名:エクア)は、高齢の2型糖尿病患者の治療において、担当医が設定した個々の患者の目標血糖値(HbA1c)の達成率が良好で、忍容性にも問題はないことが、英国エクセター大学医学部のW David Strain氏らが実施したINTERVAL試験で示された。2型糖尿病の高齢患者数は世界的に増加しており、65歳以上の有病率は18~20%とされる。欧米のガイドラインは、裏付けとなるエビデンスを持たないまま、高齢患者の血糖コントロールでは個々に目標値を設定することを勧めている。一方、これらの患者におけるビルダグリプチンの良好な有効性と安全性を示唆するプール解析の結果があるという。Lancet誌オンライン版2013年5月23日号掲載の報告。
目標値達成をプラグマティックなプラセボ対照無作為化試験で評価
INTERVAL試験は、2型糖尿病の高齢患者に対するビルダグリプチン24週治療におけるHbA1c目標値の設定とその達成の実行可能性の評価を目的とする二重盲検プラセボ対照無作為化試験で、現行の高齢2型糖尿病患者治療ガイドラインに即したプラグマティックな試験デザインが採用された。
対象は、70歳以上の7.0%≦HbA1c≦10.0%、空腹時血漿グルコース<270mg/dL、BMI 19~45の2型糖尿病患者とした。治験担当医が、年齢、ベースラインのHbA1c値、併存疾患、虚弱状態に基づき個々の患者のHbA1cの治療目標値を設定した。患者は、ビルダグリプチン50mg(薬物療法を受けていない患者などは1日2回、SU薬単剤療法を受けている患者は1日1回)を経口投与する群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。
主要評価項目は、(1)担当医により設定されたHbA1c目標値の達成率、(2)ベースラインから試験終了までのHbA1c値の変化の複合エンドポイントとした。
目標値達成率:52.6 vs 27%、変化の群間差:-0.6%
2010年12月22日~2012年3月14日までに、欧州の7ヵ国(ベルギー、ブルガリア、ドイツ、フィンランド、スロベニア、スペイン、英国)の45の外来施設から278例が登録され、ビルダグリプチン群に139例[平均年齢75.1歳、男性52.5%、平均糖尿病罹患期間12.2年(1.3~35.0年)、平均BMI 29.1、平均HbA1c値7.9%]、プラセボ群にも139例[74.4歳、38.1%、10.6年(0.3~32.8年)、30.5、7.9%]が割り付けられた。ITT解析の対象は両群とも137例、安全性の解析は両群とも139例で可能であった。
HbA1c目標値の達成率は、ビルダグリプチン群が52.6%(72/137例)と、プラセボ群の27%(37/137例)に比べ有意に良好であった(調整済みオッズ比[OR]:3.16、96.2%信頼区間[CI]:1.81~5.52、p<0.0001)。
ビルダグリプチン群の平均HbA1c値はベースラインの7.9%から0.9%低下し、臨床的に意義のある改善が得られた。プラセボ群の平均HbA1c値は0.3%低下し、両群間のHbA1c値の変化の差は-0.6%(98.8%CI:-0.81~-0.33、p<0.0001)と、ビルダグリプチン群が有意に優れていた。
治療関連有害事象の発生率はビルダグリプチン群が47.5%、プラセボ群は45.3%であった。そのうち重篤な有害事象はそれぞれ5.8%、3.6%であり、有害事象による治療中止は4.3%、2.2%、治療関連死は0.7%、0.7%だった。5.0%以上に発現した有害事象として、めまい(ビルダグリプチン群7.9%、プラセボ群2.2%)、頭痛(5.8%、2.9%)、鼻咽頭炎(5.0%、5.0%)がみられた。
著者は、「ビルダグリプチンは、高齢の2型糖尿病患者の治療において、良好な忍容性を示すとともに個々の患者の目標血糖値(HbA1c)の達成に寄与することが明らかとなった。これらの知見は現行のADA/EASDなどのガイドラインの勧告を支持するものである」と結論し、「本研究は、2型糖尿病治療のエンドポイントとして個々の患者のHbA1cの目標値を用いる方法が実行可能であることを示した初めての臨床試験である」としている。
(菅野守:医学ライター)