早期前立腺がん、根治切除の長期生存ベネフィットが判明/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2014/03/17

 

 根治的前立腺切除術は、前立腺がん患者の長期的な生存を実質的に改善することが、スウェーデン・ウプサラ大学のAnna Bill-Axelson氏らが進めるScandinavian Prostate Cancer Group Study Number 4(SPCG-4)の最長23年以上に及ぶ追跡調査で確認された。SPCG-4は前立腺特異抗原(PSA)の臨床導入以前に診断された患者を対象とし、すでに15年のフォローアップにおける根治的前立腺切除術の生存ベネフィットが示されている。一方、PSA検査導入初期に行われたProstate Cancer Intervention versus Observation Trial(PIVOT)では、手術による12年後の全死亡、前立腺がん死の改善効果は得られておらず、PSA検診の影響の大きさが示唆されている。NEJM誌2014年3月6日号掲載の報告。

診断時年齢、腫瘍リスクで層別化した無作為化試験
 SPCG-4は、早期前立腺がん患者に対する根治的前立腺切除術と待機療法(watchful waiting)の転帰を比較する無作為化試験である。1989~1999年に、年齢75歳未満、10年以上の余命が期待され、他のがんに罹患していない限局性前立腺がんの男性が登録された。

 患者は根治的前立腺切除術または待機療法を行う群に無作為に割り付けられ、最初の2年間は6ヵ月ごとに、その後は1年ごとに、2012年までフォローアップが行われた。今回は、フォローアップ期間18年のデータの解析が行われた。

 主要評価項目は全死因死亡、前立腺がん死および転移リスクであり、副次評価項目はアンドロゲン除去療法の導入などとした。診断時年齢(65歳未満、65歳以上)および腫瘍リスク(Gleasonスコア、PSA、WHO分類で低、中等度、高リスクに分けた)で層別化して解析を行った。

全体および65歳未満では全主要評価項目が手術群で有意に良好
 695例が登録され、根治的前立腺切除術群に347例が、待機療法群には348例が割り付けられた。ベースラインの患者背景は両群で同等であり、平均年齢はともに65歳、全体の平均PSA値は約13ng/mLであった。

 2012年12月31日までに、根治的前立腺切除術群の294例が手術を受け、待機療法群の294例が根治的治療を受けなかった。フォローアップ期間中央値は13.4年(3週間~23.2年)。

 フォローアップ期間中に447例(64%)が死亡し、そのうち200例が手術群、247例は待機療法群であり、フォローアップ期間18年時の累積死亡率はそれぞれ56.1%、68.9%と、手術群で全死因死亡率が有意に低かった(絶対リスク低下率:12.7%、95%信頼区間[CI]:5.1~20.3、相対リスク:0.71、95%CI:0.59~0.86、p<0.001)。1例の死亡を防ぐのに要する治療例数(NNT)は8例であった。手術群の1例が術後に死亡した。

 前立腺がん死は手術群が63例(17.7%)、待機療法群は99例(28.7%)で、手術群の絶対リスク低下率は11.0%(95%CI:4.5~17.5)、相対リスクは0.56(95%CI:0.41~0.77)であり、有意な差が認められた(p=0.001)。

 遠隔転移(26.1 vs 38.3%、絶対リスク低下率:12.2%、95%CI:5.1~19.3、相対リスク:0.57、95%CI:0.44~0.75、p<0.001)およびアンドロゲン除去療法導入(42.5 vs 67.4%、25.0、17.7~32.3、0.49、0.39~0.60、p<0.001)も、手術群で有意に少なかった。

 前立腺がん死に関する手術のベネフィットには、診断時年齢65歳未満(相対リスク:0.45、p=0.002)および中等度リスクがん(0.38、p<0.001)では有意な差が認められた。65歳未満の患者の手術のNNTは4例であった。また、65歳以上の患者では、転移のリスクが手術群のほうが有意に低かった(0.68、p=0.04)。

 著者は、「長期フォローアップにより、根治的前立腺切除術の実質的な死亡率抑制効果が確証された。また、年齢や腫瘍リスクで手術の治療効果に違いがみられ、NNTは経時的に低下した。65歳未満の患者では3つの主要評価項目はいずれも手術群で有意に良好であった。なお、待機療法群の長期生存例の大部分は緩和治療を必要としなかった」とし、「限局性前立腺がんのカウンセリングの際には、長期的な疾病負担として、生存以外に転移のリスクとそれに伴う緩和治療のQOLへの影響を考慮すべきであることがあらためて示唆された」と指摘している。

(菅野守:医療ライター)