アルツハイマー病リスクの増大に、ベンゾジアゼピン系薬の使用が関連していることが、フランス・ボルドー大学のSophie Billioti de Gage氏らによるケースコントロール試験の結果、示された。ベンゾジアゼピン系薬は先進諸国では使用の頻度が高く、勧告にもかかわらず高齢者では慢性的に投与されている。ベンゾジアゼピン系薬使用者での認知症リスクの増大は確認されているが、因果関係については明らかになっていない。著者は今回の結果を踏まえて、「保証のないベンゾジアゼピン系薬の長期使用については、公衆衛生問題として検討するべきである」と指摘し、「高齢者におけるベンゾジアゼピン系薬の処方は、診療ガイドラインに準じるべきである(半減期が短い薬を優先して短期的に用いる)」とまとめている。BMJ誌オンライン版2014年9月9日号掲載の報告より。
最低5年服用者とアルツハイマー病リスクとの関連をケースコントロール試験
研究グループは、アルツハイマー病リスクとベンゾジアゼピン系薬を最低5年間服用していたこととの関連について調べた。検討では、用量反応性と、治療に関連している可能性がある前駆症状(不安、うつ病、不眠症)についても考慮に入れた。
カナダのケベック州健康保険プログラムのデータベース(RAMQ)から、初めてアルツハイマー病と診断された1,796例(ケース群)を特定して6年間追跡し、性別、年齢群、追跡期間で適合した7,184例(対照群)と比較検討した。両群の被験者とも、2000~2009年に同地に居住していた66歳超の高齢者から無作為にサンプリングされた。
主要評価項目は、アルツハイマー病と、診断の最短5年前からベンゾジアゼピン系薬を服用していたこととの関連で、多変量条件付きロジスティック回帰分析法を用いて評価した。ベンゾジアゼピン系薬の使用について、これまでの曝露を検討し、次いで、処方投与量(1~90日、91~180日、180日超)でみた累積用量および薬物半減期で層別化し評価を行った。
使用者の発病リスクは1.5倍、累積用量が多いほどリスクは増大
結果、ベンゾジアゼピン系薬の使用は、アルツハイマー病のリスク増大と関連していた。補正後オッズ比は1.51(95%信頼区間[CI]:1.36~1.69)で、さらに不安・うつ病・不眠症で補正後も、同関連は変わらなかった(補正後オッズ比:1.43、95%CI:1.28~1.60)。
ベンゾジアゼピン系薬使用との関連について、累積用量が処方91日未満では認められなかったが、91~180日(1.32、1.01~1.74)、180日超(1.84、1.62~2.08)と、累積用量が多くなるほど関連は増大することが示された。また、短時間作用薬では1.43(1.27~1.61)、長時間作用薬は1.70(1.46~1.98)で、薬物半減期との関連もみられた。