駆出率保持の心不全へのニトロ投与、逆効果/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2015/11/25

 

 駆出率が保たれた心不全患者に対し、一硝酸イソソルビド(商品名:アイトロールほか)を投与しても、プラセボを投与した場合と比べて日常生活動作レベルやQOL(生活の質)の向上はみられず、逆に1日の活動時間が減少し、日常生活動作レベルにも低下傾向が認められたという。米国・メイヨークリニックのMargaret M. Redfield氏らが、110例を対象に行った多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照クロスオーバー試験の結果、明らかにした。同患者へのニトロ処方は運動耐性を十分なものとするために一般的に行われているが、日常生活動作に対する効果の検証はこれまで不十分であった。NEJM誌オンライン版2015年11月8日号掲載の報告より。

120mg投与期間の日常生活動作レベルを主要評価項目にて検討
 研究グループは、駆出率保持心不全患者110例を無作為に2群に割り付け、一方には一硝酸イソソルビド(1日1回投与)を30mgから60mg、120mgへと段階的に増量して6週間投与した。もう一方の群には、プラセボを6週間投与した。その後、両群をクロスオーバーして同様の投与を6週間行った。

 主要評価項目は、120mg投与期間の日常生活動作レベルで、1日平均加速度単位(患者に装着した加速度計で計測)で評価した。副次評価項目は、120mg投与期間の1日平均活動時間、一硝酸イソソルビド全用量投与期間の加速度単位の1日平均値、QOLスコア、6分間歩行距離、N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)などだった。

一硝酸イソソルビド全用量投与期間の日常生活動作レベルは有意に低下
 結果、一硝酸イソソルビド120mg投与期間は、プラセボ投与期間に比べ、有意差はないものの日常生活動作レベルの低下傾向が認められた(-381加速度単位、95%信頼区間[CI]:-780~17、p=0.06)。

 1日活動時間の平均値は、一硝酸イソソルビド120mg投与期間のほうがプラセボ投与期間に比べ有意に短かった(-0.30時間、95%CI:-0.55~-0.05、p=0.02)。

 また、一硝酸イソソルビド全用量投与期間を通じて、日常生活動作レベルはプラセボ投与期間に比べ有意に低かった(-439加速度単位、同:-792~-86、p=0.02)。日常生活動作レベルは、一硝酸イソソルビドの投与量が増えるに従い、有意な低下が認められた。

 なお、6分間歩行距離、QOLスコア、NT-proBNPには、両群で有意差はなかった。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 野出 孝一( ので こういち ) 氏

佐賀大学医学部 循環器内科 教授

J-CLEAR評議員