中枢性睡眠時無呼吸、経静脈的神経刺激デバイスが有用/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2016/09/21

 

 経静脈的神経刺激デバイスは、中枢性睡眠時無呼吸の重症度を軽減し、忍容性も良好であることが、米国・Advocate Heart InstituteのMaria Rosa Costanzo氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌2016年9月3日号(オンライン版2016年9月1日号)に掲載された。中枢性睡眠時無呼吸は、呼吸調節中枢からの神経細胞アウトプットの一時的な遮断によって発症し、呼吸刺激の喪失や気流停止を来す。心血管や脳血管疾患など広範な疾患にみられ、酸化ストレスを増強して基礎疾患の進展を促し、不良な転帰をもたらす可能性が示唆されている。remedeシステムと呼ばれる神経刺激療法は、横隔膜を収縮させる神経を経静脈的に刺激して正常呼吸に近づける埋め込み型デバイスである。

デバイスの安全性と有効性を無作為化対照比較試験で評価
 研究グループは、種々の原因による中枢性睡眠時無呼吸における埋め込み型経静脈的神経刺激デバイスの安全性と有効性を評価する無作為化対照比較試験を行った(Respicardia Inc社の助成による)。

 対象は、年齢18歳以上、医学的に安定した状態にあり、ガイドラインが推奨する適切な治療を受け、デバイスの埋め込み術が忍容可能であり、試験要件に応じる意思と能力がある患者で、終夜睡眠ポリソムノグラフ検査で測定した無呼吸低呼吸指数(AHI)が≧20イベント/時の者とした。

 被験者は、治療群または対照群に無作為に割り付けられ、すべての患者にデバイスが埋め込まれた。神経刺激装置は、左または右胸部に埋め込まれ、刺激用リードは左心膜横隔静脈または右腕頭静脈に留置された。

 治療群は、埋め込み後1ヵ月の受診時にデバイスを作動させ、その6ヵ月後に有効性の主要エンドポイントの評価が行われた。対照群は、この評価が終了するまで、6ヵ月間デバイスを作動させず、評価終了後に作動させた。

 有効性の主要エンドポイントは、治療群における6ヵ月時のAHIのベースラインから≧50%の低下とした。安全性の主要エンドポイントは、12ヵ月時の手技・デバイス・治療関連の重篤な有害事象であった。

 2013年4月17日~2015年5月28日までに、ドイツの6施設、ポーランドの1施設、米国の24施設に151例が登録された。治療群に73例、対照群には78例が割り付けられ、有効性の主要エンドポイントの評価はそれぞれ68例、73例(ITT集団)で行われた。

覚醒反応指数やREM睡眠、QOL、眠気も改善
 全体の平均年齢は65(SD 13)歳、男性が89%、白人が95%で、BMIは31.1(SD 6.0)、心拍数は74.1(SD 13.3)拍/分、血圧は124.5(SD 17.9)/74.9(SD 11.0)mmHg、呼吸数は17.4(SD 2.7)回/分であり、AHIは46.2(SD 18.2)イベント/時であった。64例(42%)に、心デバイスが埋め込まれていた。

 デバイスの埋め込みは147例(97%)で成功し、解剖学的問題により4例(両群2例ずつ)では埋め込みができなかった。埋め込み術の平均所要時間は2.7(SD 0.8)時間だった。

 6ヵ月時に、AHIのベースラインから≧50%の低下を達成した患者の割合は、治療群が51%(35/68例)と、対照群の11%(8/73例)に比べ有意に良好であった(群間差:41%、95%信頼区間[CI]:25~54、p<0.0001)。

 PP集団における有効性の副次エンドポイント(中枢性無呼吸指数[CAI]、AHI、覚醒反応指数、睡眠に占めるREM睡眠の割合、患者全般評価[PGA]の健康関連QOLの著明/中等度改善の患者割合、≧4%酸素飽和度低下指数[ODI4]、エプワース眠気尺度[ESS]スコア)のベースラインからの平均変化はすべて、治療群が対照群よりも有意に優れた。

 12ヵ月時に、全体の91%(138/151例)では重篤な手技・デバイス・治療関連有害事象を認めなかった。重篤な関連有害事象の発現率は、治療群が8%(6/73例)、対照群は9%(7/78例)であった。

 7例が死亡したが、いずれも手技・デバイス・治療とは関連がなかった。このうち4例(両群2例ずつ)は、デバイスが治療群でのみ作動し、対照群では作動していない初回受診から6ヵ月の間に死亡し、3例は全患者が神経刺激療法を受けている6~12ヵ月の間に死亡した。

 治療群の27例(37%)が、重篤ではない治療関連有害事象を報告し、このうち26例(36%)はシステムプログラムの簡単な再調整で解決したが、1例(1%)は解決しなかった。

 著者は、「このデバイスは、夜間に自動的に作動するため、患者のアドヒアランスの影響を受けず、中枢性睡眠時無呼吸の新たな治療アプローチとなる可能性がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)