進行性腎障害伴う安定冠動脈疾患に侵襲的戦略は有効か/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2020/04/13

 

 進行性腎障害を伴う安定冠動脈疾患で、中等度~重度の虚血を呈する患者の治療において、侵襲的戦略は保存的戦略に比べ、死亡および非致死的心筋梗塞のリスクを低減しないことが、米国・ニューヨーク大学のSripal Bangalore氏らの検討(ISCHEMIA-CKD試験)で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2020年3月30日号に掲載された。安定冠動脈疾患患者における血行再建術の効果を評価する臨床試験では、通常、進行性の慢性腎臓病患者は除外される。また、1992年の腎移植候補の患者26例の無作為化試験では、血行再建術は薬物療法に比べ心血管死および心筋梗塞のリスクが低いと報告されているが、この30年間で、これらの治療法は劇的に進歩しており、あらためて侵襲的戦略の有益性の検証が求められている。

30ヵ国118施設が参加した医師主導無作為化試験

 本研究は、30ヵ国118施設が参加した国際的な医師主導の無作為化試験であり、2014年4月~2018年1月の期間に患者登録が行われた(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]などの助成による)。

 対象は、進行性腎障害および中等度~重度の心筋虚血を呈する患者であった。被験者は、薬物療法に加え、冠動脈造影と、実行可能な場合は血行再建術(経皮的冠動脈インターベンション[PCI]または冠動脈バイパス手術[CABG])を受ける群(侵襲的戦略群)、または薬物療法のみを受ける群(保存的戦略群)に無作為に割り付けられた。

 主要アウトカムは、死亡と非致死的心筋梗塞の複合とした。主な副次アウトカムは、死亡、非致死的心筋梗塞、不安定狭心症または心不全による入院、心停止からの蘇生の複合であった。

推定3年イベント発生率:36.4% vs.36.7%

 777例が登録され、侵襲的戦略群に388例、保存的戦略群には389例が割り付けられた。全体の年齢中央値は63歳(IQR:55~70)、男性が68.9%を占めた。

 ベースライン時に、57.1%が糖尿病で、53.4%が透析を受けていた。透析患者を除く推定糸球体濾過量(eGFR)中央値は23mL/分/1.73m2であった。37.8%が重度の虚血だった。

 追跡期間中央値2.2年(IQR:1.6~3.0)の時点で、主要アウトカムのイベントは、侵襲的戦略群123例、保存的戦略群129例で発生し、推定3年イベント発生率はそれぞれ36.4%および36.7%であり、両群間に有意な差は認められなかった(補正後ハザード比[HR]:1.01、95%信頼区間[CI]:0.79~1.29、p=0.95)。

 主な副次アウトカムの結果も、主要アウトカムとほぼ同様であった(侵襲的戦略群38.5% vs.保存的戦略群39.7%、補正後HR:1.01、95%CI:0.79~1.29)。

 ベイズ解析では、侵襲的戦略群で主要アウトカムのHRが10%以上低下(補正後HR<0.90)する確率は19%で、10%以上増加(補正後HR>1.10)する確率は24%だった。

 また、侵襲的戦略群は保存的戦略群に比べ、脳卒中(補正後HR:3.76、95%CI:1.52~9.32、p=0.004)および死亡/透析開始(1.48、1.04~2.11、p=0.03)の発生率が高かった。

 著者は、「イベント発生率は予測よりも低く、また侵襲的戦略群における血行再建術の施行率は50.2%、保存的戦略群におけるイベントの確認以外の理由による血行再建術の施行率は11.0%と低かったことから、侵襲的戦略の有益性を示すには、この試験の検出力は十分ではなかった」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 野間 重孝( のま しげたか ) 氏

栃木県済生会宇都宮病院 院長

J-CLEAR評議員