経口ART中のHIV-1感染患者に、月1回のCAB+RPVは有効か/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2020/03/17

 

 標準的な経口抗レトロウイルス療法(ART)を受けているヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)感染患者の維持療法では、長期作用型注射薬cabotegravir(CAB、インテグラーゼ阻害薬)+リルピビリン(RPV、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬)の月1回投与への切り替えは、標準治療を継続するアプローチに対し、有効性に関して非劣性であることが、米国・ネブラスカ大学医療センターのSusan Swindells氏らによる「ATLAS試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年3月4日号に掲載された。HIV-1感染患者の治療では、簡略化されたレジメンの導入により、患者満足度が向上し、アドヒアランスが促進される可能性があるという。

毎日経口療法中の患者で、月1回長期作用療法の非劣性を検証

 研究グループは、標準的な経口ARTを受け、ウイルス学的にHIV-1が抑制されているHIV-1感染患者の維持療法において、CAB+RPVによる長期作用療法の経口療法に対する非劣性を検証する目的で、非盲検無作為化非劣性第III相試験を行った(ViiV HealthcareとJanssenの助成による)。

 対象は、年齢18歳以上、標準的な経口ARTを毎日受けており、スクリーニング前の6ヵ月以上の期間に血漿HIV-1 RNA<50コピー/mLの患者であった。標準的ARTには、プロテアーゼ阻害薬(PI)、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)、インテグラーゼ阻害薬(INSTI)のいずれかをベースとし、2剤のヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI)をバックボーンとしたレジメンが含まれた。

 被験者は、ARTによる経口療法(1日1回)を継続する群、またはCAB+RPVによる長期作用療法(月1回、筋肉内投与)に切り替える群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。

 主要エンドポイントは、48週時にHIV-1 RNA≧50コピー/mLの患者の割合とした。HIV-1 RNAコピー数は、米国食品医薬品局(FDA)のスナップショットアルゴリズムで評価した。

新たな治療選択肢となる可能性

 本試験は2016年10月に開始され、2018年5月に最後の参加者が48週時の主要エンドポイントの評価を終了した。13ヵ国115施設で、616例(intention-to-treat[ITT]集団、各群308例ずつ)が登録された。全体の年齢中央値は42歳(範囲:18~82)、女性が33%で、非白人が32%を占めた。

 48週時にHIV-1 RNA≧50コピー/mLの患者の割合は、長期作用療法群が1.6%(5/308例)、経口療法群は1.0%(3/308例)であり(補正後群間差:0.6ポイント、95%信頼区間[CI]:-1.2~2.5)、主要エンドポイントの非劣性基準(非劣性マージンは6ポイント)を満たした。

 また、48週時にHIV-1 RNA<50コピー/mLの患者の割合は、長期作用療法群が92.5%(285/308例)、経口療法群は95.5%(294/308例)であり(補正後群間差:-3.0ポイント、95%CI:-6.7~0.7)、この副次エンドポイントの非劣性基準(非劣性マージンは-10ポイント)を満たした。これらのエンドポイントのデータは、per-protocol集団でもほぼ同様だった。また、他の有効性の副次エンドポイントの結果も、両群でほぼ同等だった。

 ウイルス学的失敗(2回の検査がいずれも、血漿HIV-1 RNA≧200コピー/mL)は、長期作用療法群3例、経口療法群4例で認められた。

 有害事象の頻度は長期作用療法群のほうが高かった(95% vs.71%)。長期作用療法群では、注射部位反応が81%にみられ、最も頻度の高い注射部位反応は疼痛(全患者の75%)であったが、ほとんどが軽症~中等症であった。注射部位反応による治療中止は1%(4例)に認められた。重篤な有害事象は、長期作用療法群の4%(13例)、経口療法群の5%(14例)で報告された。

 44週時の12項目HIV治療満足度質問票(HIVTSQ、0点[たいへん不満]~66点[たいへん満足])で評価した治療満足度は、長期作用療法群が経口療法群よりも良好であった(ベースラインからのスコアの上昇の補正平均値の差5.68点[95%CI:4.37~6.98])。この差は、臨床的に意義のある最小変化量の基準を満たした。また、48週時の長期作用療法群の調査では、質問票に回答した患者の97%(266/273例)およびITT集団の86%(266/308例)が、HIV治療として注射レジメンが好ましいと答えた。

 著者は、「このレジメンは、HIVと共に生きる患者(patients living with HIV)に、新たな治療選択肢をもたらす可能性がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)