医療一般|page:15

SB623、外傷性脳損傷による慢性期運動機能障害の第II相試験で良好な結果/サンバイオ

 サンバイオは2024年9月5日、2016~19年に実施した外傷性脳損傷に起因する慢性期運動機能障害を有する患者を対象に、ヒト(同種)骨髄由来加工間葉系幹細胞SB623の有効性および安全性を検討する第II相多施設共同無作為化二重盲検比較試験(STEMTRA試験)の48週(最終)までの結果がNeurology誌に掲載されたと発表した。  STEMTRA試験では、適格患者63例がSB623低用量群(2.5×106個群)、中用量群(5.0×10個群)、高用量群(10.0×106個群)および偽手術群に1:1:1:1で無作為化され、46例にSB623が投与され15例が対照群として偽手術を受けた。

腫瘍循環器におけるダルテパリン、デクスラゾキサンの適応外使用/腫瘍循環器学会

 がん関連の循環器合併症に臨床応用が望まれるダルテパリン、デクスラゾキサンの適応外使用について、また、アントラキノン心筋症に対する新たな予防薬について第7回日本腫瘍循環器学会学術集会で発表された。  同学会の保健委員会委員長であるJCHO星ヶ丘医療センターの保田知生氏は、ダルテパリン、デクスラゾキサンの申請活動状況を報告した。

降圧薬の服用タイミング、5試験のメタ解析結果/ESC2024

 8月30日~9月2日に英国・ロンドンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2024(ESC2024、欧州心臓病学会)のホットラインセッションで、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のRicky Turgeon氏が降圧薬の服用タイミングに関する試験のメタ解析結果を報告し、服用タイミングによって主要な心血管イベント、死亡の発生率や安全性に差はみられなかったことを明らかにした。

境界性パーソナリティ障害を合併した双極症患者における認知機能低下

 双極症は、重度の精神疾患であり、境界性パーソナリティ障害(BPD)を合併することが多く、これにより症状がより複雑化する。中国・河北医科大学のChao-Min Wang氏らは、双極症患者のBPD合併の有無による認知機能障害への影響を調査した。World Journal of Psychiatry誌2024年8月19日号の報告。  対象は、BPD合併双極症患者(BPD+BD群)80例およびBPDを合併していない双極症患者(BD群)80例、健康対照群80例。各群の認知機能の評価には、神経心理検査アーバンズ(RBANS)中国語版、ストループ検査(SCWT)、ウェクスラー式知能検査改訂版(WAIS-RC)を用いた。

切除可能NSCLCへのニボルマブ、術前術後vs.術前(CheckMate 77T vs.816)/WCLC2024

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)の薬物療法について、術前および術後にニボルマブを用いた治療を受けた患者は、術前のみニボルマブを用いた治療を受けた患者と比較して、無イベント生存期間(EFS)が良好であることが示唆された。術前および術後にニボルマブを用いたCheckMate 77T試験、術前のみニボルマブを用いたCheckMate 816試験の個別被験者データ(IPD:Individual Patient-level Data)の解析により示された。米国・ジョンズ・ホプキンス大学Bloomberg-Kimmel Institute for Cancer ImmunotherapyのPatrick M. Forde氏が、2024年9月7~10日に米国・サンディエゴで開催された世界肺がん学会(WCLC2024)で本研究結果を発表した。

大手術の周術期管理、ACE阻害薬やARBは継続していい?/ESC2024

 周術期管理における薬剤の継続・中止戦略は不明なことが多く、レニン-アンジオテンシン系阻害薬(RASI:ACE阻害薬またはARB)もその1つである。RASI継続が術中の血圧低下、術後の心血管イベントや急性腎障害につながる可能性もあるが、Stop-or-Not Trialのメンバーの1人である米国・カルフォルニア大学サンフランシスコ校のMatthieu Legrand氏は、心臓以外の大手術を受けた患者において、術前のRASI継続が中止と比較して術後合併症の発生率の高さに関連しないことを示唆した。この報告は8月30日~9月2日に英国・ロンドンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2024(ESC2024、欧州心臓病学会)のホットラインセッションで報告され、同時にJAMA誌オンライン版2024年8月30日号に掲載された。

生殖補助医療で生まれた子供のがんリスクは?

 体外受精をはじめとする生殖補助医療によって生まれる子供の数は年々増え続け、日本では2021年に約7万人、出生児全体の約11.6人に1人となっている。一方で、小児がんは小児における主要な死因の1つであり、生殖補助医療に使用される治療法はエピジェネティックな障害や関連する先天奇形の可能性があるため、小児がんリスク因子の可能性が指摘されている。フランス医薬品・保健製品安全庁のPaula Rios氏らは生殖補助医療後に出生した小児と自然妊娠で出生した小児を比較し、全がんおよびがん種別にリスクを評価した。JAMA Network Open誌2024年5月2日号掲載の報告。

医師の燃え尽き症候群と関連する覚醒度~日本全国調査

 日本の医師の約40%は年間960時間以上の残業を報告しており、10%は1,860時間を超えている。2024年、医師の健康を守るため、年間の残業時間に上限が設定された。順天堂大学の和田 裕雄氏らは、長時間労働医師の働き方改革に関する全国横断調査において、自己報告による睡眠時間と、メンタルヘルスおよび客観的覚醒度との関連を調査した。Journal of Sleep Research誌オンライン版2024年8月12日号の報告。  調査に協力した医師は、毎日の睡眠時間、燃え尽き症候群(Abbreviated Maslach Burnout Inventory:マスラック・バーンアウト尺度簡易版)、うつ病(CES-D:うつ病自己評価尺度)、交通事故に関して自己報告を行った。覚醒度は、精神運動覚醒度検査短縮版を用いて評価した。

アスピリンによる大腸がん予防効果、肥満・喫煙者に恩恵大

 アスピリンに大腸がんの予防効果があることが過去に報告されているが、新たなデータによると、アスピリンは不健康な生活習慣を持つ人、とくに肥満や喫煙者で予防効果が高いことが示唆されたという。米国・マサチューセッツ総合病院のDaniel R. Sikavi氏らによる本研究は、JAMA Oncology誌オンライン版2024年8月1日号に掲載された。  研究者らは、看護師健康調査(1980~2018年)に参加した女性6万3,957例と、医療専門家追跡調査(1986~2018年)に参加した男性4万3,698例の長期追跡データを用いた前向きコホート研究を実施した。

イモガイの毒が糖尿病治療につながる可能性

 巻貝の一種で、地球上で最も有毒な生物の一つである「イモガイ」の毒素が、糖尿病や内分泌疾患の治療に役立つ可能性のあることが新たな研究で示された。イモガイの毒素である「コンソマチン」が、血糖値やホルモンの分泌を調節するヒトのホルモンである「ソマトスタチン」に似た働きをするのだという。米ユタ大学のHo Yan Yeung氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Communications」に8月20日掲載された。論文の筆頭著者であるYeung氏は、「イモガイはまるで優れた化学者のようだ」と、冗談交じりに語っている。

嚥下機能は睡眠の質と関連嚥下機能は睡眠の質と関連

 60歳以上の日本人を対象とした横断研究の結果、嚥下機能の低下が睡眠の質の低下と関連していることが明らかとなった。この関連は、男女ともに認められたという。広島大学大学院医系科学研究科の濵陽子氏らによる研究であり、「Heliyon」に5月31日掲載された。  睡眠維持困難(中途覚醒)は、慢性の痛み、消化器疾患、呼吸器疾患など、さまざまな身体的状態と関連する。例えば、睡眠中は呼吸と嚥下の連携が損なわれることがあり、覚醒時と比べて嚥下後の咳が発生しやすいが、このことも睡眠維持困難の一因とされる。加齢に伴い嚥下機能が低下すると、睡眠中の嚥下コントロールが困難となる可能性があるが、嚥下機能の低下が睡眠の質に及ぼす影響は明らかになっていない。

心不全・2型糖尿病合併CKDへのフィネレノン~約1万9千例の解析/ESC2024

 米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMuthiah Vaduganathan氏らの研究グループは、左室駆出率(LVEF)40%以上の心不全(HFpEF/HFmrEF)患者を対象としてフィネレノンの有用性を検討した1試験、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)患者を対象としてフィネレノンの有用性を検討した2試験の計3試験のメタ解析を実施した。その結果、フィネレノンは全死亡、心不全による入院、複合腎イベントのリスクを低下させ、心・腎・代謝(CKM)症候群へのフィネレノンの有用性が示唆された。本研究結果は、8月30日~9月2日に英国・ロンドンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2024(ESC2024、欧州心臓病学会)で発表され、Nature Medicine誌オンライン版2024年9月1日号に同時掲載された。

日本人高齢入院患者のせん妄軽減に対するスボレキサントの有用性~ランダム化試験

 高齢入院患者において頻繁にみられるせん妄は、早急なマネジメントを必要とするだけでなく、認知症、施設入所、死亡率など長期的なリスクに影響を及ぼす可能性がある。せん妄は、睡眠障害と関連しているといわれており、特定の睡眠導入薬によりせん妄が軽減する可能性が示唆されている。順天堂大学の八田 耕太郎氏らは、せん妄リスクの高い高齢入院患者を対象に、せん妄軽減に対するオレキシン受容体拮抗薬スボレキサントの有用性を評価した。JAMA Network Open誌2024年8月1日号の報告。

患者負担を軽減する世界初の肺胞蛋白症治療薬/ノーベルファーマ

 ノーベルファーマは、世界初の肺胞蛋白症治療薬サルグラモスチム(商品名:サルグマリン吸入用250μg)について本社でプレスセミナーを開催した。  肺胞蛋白症(pulmonary alveolar proteinosis:PAP)は、酸素と二酸化炭素をガス交換する肺胞に蛋白様物質が貯留する希少疾患の総称。酸素と二酸化炭素の交換ができなくなり、うまく酸素が体に取り込めなくなるため、呼吸困難、咳や痰、発熱、体重減少などの症状がある。PAPのうち、免疫細胞の過剰産出に起因する自己免疫性PAPが90%を占め、国内に約730~770人の患者が推定されている。

高齢者の単純性虫垂炎、最適な治療は?

 高齢者における急性単純性虫垂炎の最適な治療戦略を検討した2万人以上の高齢者を対象としたコホート研究により、即時虫垂切除(入院後1日以内)が非手術的管理より院内死亡率が低いことが示された。また、遅延虫垂切除(入院後1日超)は院内死亡率および合併症発生率が高かった。米国・University of Southern CaliforniaのMatthew Ashbrook氏らが、JAMA Network Open誌2024年8月26日号で報告した。

AIにより自閉症の早期発見が可能?

 人工知能(AI)モデルにより、自閉症スペクトラム障害(ASD)を発症する可能性が高い小児を見つけ出せる可能性のあることが、カロリンスカ研究所(スウェーデン)女性・小児保健部門のKristiina Tammimies氏らによる研究で明らかになった。Tammimies氏らによると、このAIモデルは、広範な評価や臨床試験をせずに2歳以下の小児から簡単に得られる医療データを用いてASDに特有のパターンを探し出すもの。実際に、1万2,000人弱の小児のデータを用いてテストしたところ、ASD児の約80%を特定できたという。この研究結果は、「JAMA Network Open」に8月19日掲載された。

翌日の記憶に備えて睡眠中にニューロンが「リセット」

 新しい記憶を作るためには夜間の良質な睡眠が不可欠であることが、米コーネル大学神経生物学および行動科学分野のAzahara Oliva氏らによる新たな研究で示された。日中の記憶を保存したニューロン(神経細胞)は睡眠中にリセットされるのだという。研究の詳細は、「Science」に8月15日掲載された。Oliva氏は、「このメカニズムによって脳は同じリソース、同じニューロンを翌日の新しい学習のために再利用することができる」と言う。  何かを学んだり、新しい経験をしたりすると、人間の記憶を作り出す機能に不可欠な脳領域である海馬のニューロンが活性化され、そうした出来事が記憶として保存される。ニューロンは睡眠中も同じ活動パターンを繰り返し、大脳皮質と呼ばれるより大きな脳領域へとその記憶を転送する。では、海馬の全てのニューロンを使い切ることなく新しい出来事を学び続けられるのは、どうしてなのか。Oliva氏らはその疑問を解くために、マウスを用いた実験を行った。

歯周ポケットなどの歯科健診項目は嚥下機能と関連

 75歳以上の日本人高齢者を対象に、歯科健診の結果と嚥下機能との関連を調べる縦断的研究が行われた。その結果、歯周ポケットの深さが4mm以上、硬いものが噛みにくいこと、水やお茶でむせること、口が乾くことは、将来の嚥下機能低下と関連することが明らかとなった。朝日大学歯学部口腔感染医療学講座社会口腔保健学分野の岩井浩明講師、友藤孝明教授らによる研究であり、「International Journal of Environmental Research and Public Health」に5月24日掲載された。  加齢に伴う筋肉量の減少などにより、嚥下機能は低下する。また、ストレスや抑うつなどのメンタルヘルスの問題も嚥下機能低下のリスクであるとされる。口腔の健康状態に関しては、唾液の分泌、残存歯数、歯周病菌などと嚥下機能との関連が報告されている。しかし、口腔に関するどのような要因が、嚥下機能低下につながるのかは明らかになっていない。

HFpEF/HFmrEFへのβ遮断薬~約1万7千例の解析/ESC2024

 β遮断薬は、左室駆出率(LVEF)の保たれた心不全(HFpEF)、LVEFが軽度低下した心不全(HFmrEF)を有する患者にも用いられているが、その安全性や臨床転帰への影響は明らかになっていない。そこで、松本 新吾氏(英国・グラスゴー大学/東邦大学医療センター大森病院)らの研究グループは、HFpEF/HFmrEF患者を対象とした4つの大規模臨床試験の参加者を対象として、β遮断薬の臨床転帰への影響を検討する観察研究を実施した。その結果、β遮断薬はHFpEF/HFmrEF患者の臨床転帰を悪化させないことが示唆された。本研究結果は、8月30日~9月2日に英国・ロンドンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2024(ESC2024、欧州心臓病学会)で発表され、European journal of heart failure誌オンライン版2024年8月31日号に同時掲載された。

ADHDとASDを鑑別する多遺伝子リスクスコア、統合失調症との関連は?

 統合失調症は、臨床的にも遺伝学的にも特殊な疾患であり、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)とも遺伝的因子が類似している。最近、ADHDとASDを鑑別するゲノムワイド関連研究(GWAS)が実施されている。岐阜大学の蔵満 彩結実氏らは、ASDとADHDを鑑別する多遺伝子リスクスコア(PRS)が、統合失調症患者の認知障害や皮質構造の変化と関連しているかを調査した。European Child & Adolescent Psychiatry誌オンライン版2024年8月7日号の報告。  GWASデータ(ASD:9,315例、ADHD:1万1,964例)に基づき、統合失調症患者168例におけるASDとADHDを鑑別するPRS(ADHD高リスクでASD低リスク)を算出した。言語理解(VC)、知覚統合(PO)、ワーキングメモリー(WM)、処理速度(PS)などの認知機能は、WAIS-IIIを用いて評価した(145例)。34の両側脳領域の表面積および皮質厚は、FreeSurferを用いて調べた(126例)。PRSと統合失調症患者の認知機能および皮質構造との関連性を調査した。