医療一般|page:164

レイボー錠(片頭痛治療剤)を発売/リリー・第一三共

 2022年6月8日、日本イーライリリーと第一三共は、片頭痛治療剤 「レイボー錠50mg/100mg」(一般名:ラスミジタンコハク酸塩)の販売を開始した。  レイボー錠は、Lilly(米国)により片頭痛発作の急性期治療薬として開発された、既存の急性期治療薬とは異なる薬理作用をもつ、世界初のジタン系、低分子の選択的セロトニン1F受容体作動薬である。  片頭痛の病態には、中枢での疼痛シグナル伝達、および末梢での三叉神経系の過活動が関係しており、セロトニン1F受容体が視床、大脳皮質、三叉神経系の神経細胞やシナプスに発現していることから、セロトニン1F受容体の片頭痛の病態への関連性が指摘されてきた。レイボー錠は、血液脳関門通過性を有し、セロトニン1F受容体に選択的に結合することにより、中枢での疼痛情報の伝達を抑制し、末梢では三叉神経からの神経原性炎症や疼痛伝達に関わる神経伝達物質「カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)」やグルタミン酸などの放出を抑制することで、片頭痛発作に対する作用を示すことが期待される。

コロナワクチンの副反応疑い、長期観察での発生率は?ファイザーvs.モデルナ

 RCTではBNT162b2(ファイザー製)ワクチンおよびmRNA-1273(モデルナ製)ワクチンを接種した人の副反応の発生率が低いことはわかっている。しかし、より長期フォローアップかつ大規模で多様な集団での、より広範囲の潜在的な副反応に対する安全性は明らかになっていない。そこで、米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のBarbra A Dickerman氏らは、上記2剤のワクチン接種による副反応リスクに関して直接の安全性を比較するための調査を実施。

日本人乳がん患者におけるワクチン接種後の中和抗体価/ASCO2022

 日本人乳がん患者における新型コロナワクチン2回接種後の中和抗体価が調べられ、95.3%と高い抗体陽転化率が示されたものの、治療ごとにみると化学療法とCDK4/6阻害薬治療中の患者で中和抗体価の低下が示唆された。名古屋市立大学の寺田 満雄氏らによる多施設共同前向き観察研究の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表された。 ・対象:2021年5~11月にSARS-CoV-2ワクチン接種予定の乳がん患者(Stage 0~IV) ・試験群と評価法:がん治療法ごとに5群に分け(無治療、内分泌療法、CDK4/6阻害薬、化学療法、抗HER2療法)、最初のワクチン接種前と2回目ワクチン接種後(4週後)に血清サンプルを採取、ELISA法で血清中IgG濃度および各変異株に対する中和抗体価を評価した。

高血圧患者数約2,700万人の9割に治療薬が処方/日本高血圧学会

 日本高血圧学会、医療経済研究機構、東京大学は共同研究として、全国民のレセプトデータであるNDB(national database)の分析により、わが国の医療機関における高血圧性疾患受療者数と治療薬処方数を初めて明らかにし、その内容をHypertension Research誌オンライン版2022年6月10日号に公開した。  解析の結果、高血圧性疾患に罹患しているが実際に未受診の患者が多いこと、高血圧性疾患の受療者の多くは小規模な医療機関を受診していること、都道府県別での高血圧受療率の差などが本研究で明らかとなった。

amivantamabの METex14スキッピング非小細胞肺がん患者に対する効果(CHRYSALIS)/ASCO2022

 進行中の第I相試験(CHRYSALIS試験)のMETexon14 (METex14)スキッピング変異陽性患者を対象としたコホートのアップデート結果から、EGFRおよびMETを標的とした二重特異性抗体amivantamabは、METex14スキッピング変異陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対しても有用であることが示された。英国・マンチェスター大学のMatthew G. Krebs氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)で報告した。  amivantamabはプラチナベース化学療法後のEGFRexon20挿入変異陽性NSCLC患者に対して米国で承認されている。一方で、amivantamabはEGFR-MET二重特異性抗体であることから、CHRYSALIS試験ではMETex14スキッピング変異陽性対象としたコホートにおいても、その有効性が検討された。

初回入院統合失調症患者の再入院予防に対する抗精神病薬の有効性比較

 抗精神病薬治療は、統合失調症の最も主要な治療法であるが、その有効性を比較することは簡単ではない。国立台湾大学のYi-Hsuan Lin氏らは、アジア人初回入院統合失調症患者の再入院予防に対する抗精神病薬のリアルワールドでの有効性を比較するため、検討を行った。その結果、統合失調症の初回入院後に抗精神病薬の長時間作用型注射剤(LAI)による治療を行うことで、再入院予防に対する顕著なベネフィットが確認されたことから、初期段階でのLAI使用が再入院予防の重要な治療戦略であることを報告した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2022年5月15日号の報告。

モデルナ2価ワクチン候補、オミクロン株に対する抗体反応で優越性確認

 2022年6月13日、Moderna(米国)はオミクロン株を含む2価追加接種ワクチン候補 mRNA-1273.214について、同社の承認済みのワクチンmRNA-1273(商品名:スパイクバックス筋注)の追加接種と比較して、オミクロン株に対する抗体反応で優越性が示されたことを発表した。  mRNA-1273.214は、mRNA-1273の有効成分と変異株であるオミクロン株を標的とするワクチンの有効成分候補を含有する、Moderna の2価追加接種ワクチン候補である。

コロナ治療薬2剤、重大な副作用にアナフィラキシー追記/使用上の注意の改訂指示

 厚生労働省は6月14日、新型コロナウイルス感染症治療薬のモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)とニルマトレルビル・リトナビル(同:パキロビッドパック)について、「重大な副作用」の項に「アナフィラキシー」を追記する使用上の注意の改訂指示を発出した。  アナフィラキシー関連の国内および海外症例を評価し専門委員の意見も聴取した結果、モルヌピラビルとニルマトレルビル・リトナビル両薬剤ともに因果関係が否定できない国内および海外症例が集積したため、使用上の注意を改訂することが適切と判断された。  調査の結果は以下のとおり。

日本食の死亡率や認知症リスクへの影響~大崎コホート研究

 長寿国である日本。その要因として日本人の食生活が影響しているといわれている。しかし、日本食の健康に対するベネフィットは、十分に解明されていない。2007年、宮城県大崎市の日本人住民を対象とした大崎コホート研究において、日本食パターンと心血管疾患による死亡率との関連が世界で初めて発表された。以来、本報告の著者らは、日本食パターンと健康への影響に関するエビデンスを蓄積するため、日本食インデックス(JDI)を開発し、日本食の健康への影響について検討を行ってきた。東北大学の松山 紗奈江氏らは、これまでの6報の論文をレビューし、日本食の健康への影響および将来の研究への影響について議論を深めるため本報告を行った。その結果、日本食パターンを高率で実践している人では、死亡率だけでなく、機能障害や認知症リスクの減少も認められることが確認された。Nutrients誌2022年5月12日号の報告。

RAS/BRAF野生型大腸がんの1次治療はmFOLFOXIRI/PANか、mFOLFOX6/PANか(TRIPLETE)/ASCO2022

 RAS/BRAF野生型の切除不能進行・再発大腸がんに対する1次治療で、mFOLFOXIRI と抗EGFR抗体パニツムマブ(PAN)との併用療法(mFOLFOXIRI/PAN)は、mFOLFOX6とPANとの併用療法(mFOLFOX6/PAN)に比べて奏効率(ORR)に差がなく、下痢などの有害事象(AE)の発現率高いことが、GONOグループが実施した第III相無作為化試験(TRIPLETE試験)で示された。イタリア・Azienda Ospedaliera大学のChiara Cremolini氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)で発表した。

オリゴ転移乳がん1次治療、SBRT/外科的切除追加でPFS改善せず(NRG-BR002)/ASCO2022

 オリゴ転移乳がんの1次治療で、標準薬物療法に定位放射線治療(SBRT)もしくは外科的切除によるmetastases directed treatment(MDT)を追加しても、生存ベネフィットを得られないことが、第IIR/III相NRG-BR002試験で示された。米国・シカゴ大学のSteven J. Chmura氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表した。  オリゴ転移乳がんに対しては、アブレーションにより無増悪生存(PFS)および全生存(OS)が改善されることが後ろ向き研究で示されているが、第III相試験のエビデンスはほとんどない。このNRG-BR002試験は、オリゴ転移乳がんの1次治療として、標準薬物療法にSBRT/外科的切除でのMDTを追加することによる生存へのベネフィットを検討した無作為化第IIR/III相試験である。

日本における統合失調症に対する抗コリン薬使用の特徴

 統合失調症のさまざまな臨床ガイドラインにおいて、抗コリン薬の長期使用は推奨されていない。福岡大学の堀 輝氏らは、向精神薬使用のパターンおよび病院間での違いを考慮したうえで、統合失調症患者に対する抗コリン薬使用の特徴について、調査を行った。その結果、抗精神病薬の高用量および多剤併用、第1世代抗精神病薬の使用に加え、病院の特性が抗コリン薬の使用に影響を及ぼすことが示唆された。Frontiers in Psychiatry誌2022年5月17日号の報告。  日本の医療機関69施設の統合失調症患者2,027例を対象に、退院時治療薬に関する横断的レトロスペクティブ調査を実施。抗コリン薬と向精神薬使用との関連を調査した。各病院を抗コリン薬の処方率に応じて、低、中、高の3グループに分類し、抗コリン薬処方率と抗精神病薬使用との関連を分析した。

ホジキンリンパ腫のA-AVD療法が初めて標準療法にOSで優る(ECHELON-1)/ASCO2022

 古典的ホジキンリンパ腫では、これまで標準療法であるABVD(ブレオマイシン+ドキソルビシン+ビンブラスチン+ダカルバジン)療法に対し、OSでの優位性を示した治療法はなかったが、A-AVD(ブレンツキシマブ ベドチン+ドキソルビシン+ビンブラスチン+ダカルバジン)療法が初めて全生存期間(OS)でABVD療法に優ったことが示された。このECHELON-1試験の結果を、米国・メイヨー・クリニックのStephen M. Ansell氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表した。

AI抵抗性進行乳がんへのフルベストラント+capivasertibがOS改善(FAKTION)/ASCO2022

 アロマターゼ阻害薬(AI)抵抗性のエスロトゲン受容体(ER)陽性/HER2陰性進行・再発乳がん患者を対象としたAKT阻害薬capivasertibの第II相FAKTION試験について、新たな解析結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で英国・Velindre Cancer CentreのRobert Hugh Jones氏が発表した。  今回の発表では、全生存期間(OS)データと次世代シークエンス(NGS)などを用いたゲノムバイオマーカー解析の結果が報告された。 ・対象:閉経後のER+/HER-の進行・再発の乳がん患者で、前治療としてのアロマターゼ阻害薬(AI)が無効となった患者 ・試験群(Capi群):capivasertib 400mgを4日間投与3日間休薬で1日2回経口投与(28日を1サイクルとして1サイクル目の15日目から開始)+フルベストラント500mg(1サイクル目の15日目に負荷用量を追加) 69例 ・対照群(プラセボ群):プラセボ+フルベストラント500mg  71例 ・評価項目: [主要評価項目]ITT集団における無増悪生存期間(PFS)

中等症コロナ肺炎、ファビピラビル+カモスタット+シクレソニドで入院期間短縮/国内第III相試験

 中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して、ファビピラビル、カモスタット、シクレソニド吸入剤による併用治療により入院期間を短縮したことが、単施設非盲検無作為化比較試験で示された。国際医療福祉大学成田病院の寺田 二郎氏らが、Lancet Discovery ScienceのeClinicalMedicine誌オンライン版2022年6月3日号で報告した。  本試験は、COVID-19肺炎患者の重症化抑制に関するファビピラビル+カモスタット+シクレソニド吸入剤の多剤併用療法の有効性を検討する第III相試験である。国による予防接種推進前である2020年11月11日~2021年5月31日に、国際医療福祉大学成田病院において参加者を登録し、ファビピラビル単剤治療群とファビピラビル+カモスタット+シクレソニド吸入剤の多剤併用治療群に無作為に割り付けた。主要評価項目は入院期間。本試験はAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)助成によるもの。

I型SMAに対するエブリスディ:3年間の新たな成績

 第63回日本神経学会学術大会にて、症候性I型脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)の乳児を対象にエブリスディの有効性および安全性を検討した、FIREFIS試験の3年間の新たな成績が発表された。  SMAは、脊髄の運動神経細胞が選択的に障害されることによって、体幹や手足の近位部優位の筋力低下や筋萎縮などの症状が現れる。新生児~乳児期(生後0~6ヵ月)に発症するI型は重症型で、一人で坐位を保つことができず、無治療の場合は、1歳までに呼吸筋の筋力低下による呼吸不全の症状をきたす。また、治療をせず、人工呼吸器の管理を行わない状態では、90%以上が2歳までに死亡する。

転移の有るホルモン感受性前立腺がんに対するエンザルタミド投与によるOSの改善(ENZAMET)/ASCO2022

 転移を有するホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)に対し、アンドロゲン遮断療法(ADT)とエンザルタミドの併用療法は、ADTと非ステロイド系抗アンドロゲン剤(NSAA)の併用療法に比べ、全生存期間(OS)を有意に改善することが、米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)においてオーストラリア・Monash大学のDavis Ian氏から報告された。  同試験(ENZAMET)は、オーストラリア・ニュージーランドを中心に実施された国際共同の無作為化第III相試験であり、2019年に中間解析結果として、エンザルタミドのOS改善が報告されていた。今回はその長期追跡結果報告である。

高齢者糖尿病患者の低血糖対策と治療/日本糖尿病学会

 5月12~14日に神戸市で「第65回 日本糖尿病学会年次学術集会」(会長:小川 渉氏/神戸大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌内科学 教授)が「知の輝きち技の高みへ」をテーマに開催された。  本稿では「シンポジウム 加齢を踏まえた糖尿病管理の最前線」より「高齢者糖尿病患者における低血糖の課題」(演者:松久 宗英氏/徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センター 教授)の概要をお届けする。  超高齢化が進むわが国では、高齢の糖尿病患者は適切な自己管理行動をなかなかとることができず、糖尿病治療のハードルは高い。とくにわが国では世界的にみて糖尿病関連死亡について、重症低血糖の割合が高いことが指摘されている。  過去に日本糖尿病学会の糖尿病治療による重症低血糖調査委員会が行った調査(193施設、798症例)によれば、重症低血糖の発生率は年間2万件と推計され、低血糖による死亡や重篤な合併症(認知症など)が約5%に合併することが報告されている。とくに前駆症状が6割の患者に発生しているのに低血糖が発生していることが問題となっている。  また、2型糖尿病で重症低血糖を発症した患者の臨床的特徴では、70歳以上、HbA1c7.5%を下回ることが示唆され、約6割以上の患者にインスリンが、約3割の患者にSU薬の使用

インフルエンザでも、mRNAワクチン第III相試験開始/モデルナ

 2022年6月7日、Moderna(米国)は季節性インフルエンザワクチン候補mRNA-1010の第III相臨床試験において、最初の被験者への投与を行ったことを公表した。  mRNA-1010は、世界保健機関(WHO)が推奨するA/H1N1、A/H3N2、B/山形系統およびB/ビクトリア系統の4つのインフルエンザ株の血球凝集素(HA)糖タンパク質がコードされた新規mRNAワクチン候補である。  本試験は、既存の季節性インフルエンザワクチンに対するmRNA-1010の安全性および免疫学的非劣性を評価することを目的とし、南半球諸国の成人約6,000人が登録される。Modernaは、必要に応じて、早ければ2022/2023年の北半球のインフルエンザシーズンにmRNA-1010の有効性確認試験を実施できるよう開発準備を進める。

ミスマッチ修復機構欠損を有する局所進行直腸がんに対するPD-1阻害の効果/ASCO2022

 ミスマッチ修復機構欠損(dMMR)を有するStageII/IIIの局所進行直腸がんに対して、術前に抗PD-1抗体dostarlimabを投与することで、その後は放射線療法や手術療法を施行することなく治癒できる可能性があることが、小規模な前向きの第II相試験から明らかになった。米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのAndrea Cercek氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)で発表した。  局所進行直腸がんに対しては、術前化学療法と放射線療法および手術療法の併用が標準治療となっている。この治療効果は高いものの、放射線療法や手術療法は患者に大きな負担を強いることになる。また、直腸がん患者の約5~10%はdMMRを有し、このような患者は化学療法に比較的耐性を示しやすい。一方で、チェックポイント阻害薬は、転移のあるdMMRがんに効果があり、10%程度の完全奏効(CR)率を示すことが知られている。同試験ではdMMRを有する直腸がんに対するPD-1阻害が、化学療法、放射線療法、手術療法の代替えになると仮定し、これを検証した。