医療一般|page:134

抗精神病薬治療の有効性を予測可能なタイミング

 抗精神病薬の初期の臨床効果が、その後の治療アウトカムにどの程度影響を及ぼすかは、明らかになっていない。中国・West China Hospital of Sichuan UniversityのYiguo Tang氏らは、2週時点での抗精神病薬の有効性が、6週時点の治療反応を予測できるかを評価した。また、治療反応の予測が、抗精神病薬や精神症状の違いにより異なるかも検討した。その結果、抗精神病薬治療2週時点でのPANSS合計スコアの減少率や精神症状の改善は、6週時点の臨床的な治療反応を予測することが示された。Current Neuropharmacology誌オンライン版2022年11月18日号の報告。

高齢者施設での新型コロナ被害を最小限にするために/COVID-19対策アドバイザリーボード

 第112回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが、12月28日に開催された。その中で「高齢者・障がい者施設における被害を最小限にするために」が、舘田 一博氏(東邦大学医学部教授)らのグループより発表された。  このレポートでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染すると死亡などのリスクの高い、高齢者・障害者を念頭に大人数が集まるケア施設内などでのクラスター感染を防ぐための対応や具体的な取り組み法として、健康チェック、ワクチン、早期診断と対応、早期治療、予防投与が可能な薬剤、リスク時の対応、保健所や医療機関との連携などが示されている。

EGFR陽性肺がんオシメルチニブ1次治療の肺臓炎、リアルワールド解析の結果(OSI-FACT)/Chest

 オシメルチニブは、進行EGFR変異陽性肺がん患者(NSCLC) の1次治療として位置付けられている。一方、オシメルチニブの潜在的合併症である薬物関連肺臓炎(DRP)については、信頼できるリアルワールドデータが不足している。  リアルワールドにおけるオシメルチニブ1次治療のDRP発現頻度、特徴を評価する多施設後ろ向きコホート研究が行われた。その結果が、2022年11月のChest誌で発表されている。

職場での粉じんなどの吸入で関節リウマチのリスクが増大

 職場で吸入する空気により、関節リウマチ(RA)の発症リスクが高まることがあるようだ。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のBowen Tang氏らが実施した研究で、職場で蒸気やガス、溶剤などから生じる粉じんやヒューム(物質の加熱や昇華により生じる粉じんや煙霧、揮発性粒子など)に曝されることで、RAの発症リスクが増大することが明らかにされた。そればかりか、そのような物質への曝露は、喫煙や遺伝的にRAになりやすい傾向の悪影響を増長する可能性のあることも示唆されたという。この研究の詳細は、「Annals of the Rheumatic Diseases」に12月6日掲載された。

悪性新生物の死亡確率、男性3割・女性2割/厚生労働省

 厚生労働省は12月23日、「令和2年都道府県別生命表」を発表した1)。都道府県別生命表は、国勢調査による日本人人口(確定数)と人口動態統計(確定数)による日本における日本人の死亡数、出生数を基に、1965年から5年ごとに作成され、今回が12回目となる。本結果によると、2020年の全国の平均寿命(0歳の平均余命)は、男性が81.49年、女性が87.60年で、2015年よりも男性では0.72年、女性では0.60年延びていた。また、死因別死亡確率では、男女ともに最も多かった死因は、悪性新生物(腫瘍)であり、男性で28.13%、女性で20.05%を占めていた。  2020年の全国の平均寿命は、男性が81.49年、女性が87.60年であった。平均寿命を都道府県別にみると、男性では、滋賀が82.73年で最も長く、次いで長野の82.68年、奈良の82.40年の順となっている。女性では、岡山が88.29年で最も長く、次いで滋賀の88.26年、京都の88.25年の順となっている。また、男女ともに青森が最も短くなっており、男性が79.27年、女性が86.33年であった。平均寿命の最も長い都道府県と最も短い都道府県との差は、男性3.46年、女性1.96年となっている。

アカラブルチニブ、慢性リンパ性白血病の初回治療に承認/AZ

 アストラゼネカは、2022年12月23日、アカラブルチニブ(製品名:カルケンス)が、「慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)」の適応症で厚生労働省より承認されたと発表した。  今回の承認は、国内第I相試験および、未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)を対象とした国際共同第III相試験(ELEVATE-TN試験)の結果に基づくもの。  ELEVATE-TN試験では、アカラブルチニブの単剤投与またはアカラブルチニブとオビヌツズマブの併用投与が、標準化学免疫療法であるクロラムブシルとオビヌツズマブの併用投与と比較して、無増悪生存期間(PFS)を有意に改善することが示された。本試験の中間解析データは、2020年にThe Lancet誌で発表されている。

パニック症やPTSDに対するデジタル治療の有効性

 これまでの研究で、パニック症や心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対するデジタル治療であるCapnometry Guided Respiratory Intervention(CGRI)の臨床的ベネフィットが報告されている。米国・FreespiraのRobert N. Cuyler氏らは、実臨床におけるCGRIの治療アウトカムの報告を行った。その結果、これまでの研究結果と同様に、CGRIは、有意な症状改善効果と良好なアドヒアランスが期待できる治療介入であることが確認された。結果を踏まえ著者らは、パニック症患者およびPTSD患者に対するCGRIは、短い治療期間で良好なアドヒアランスを示し、臨床的ベネフィットに優れることから、有望な治療オプションとなりうるとしている。Frontiers in Digital Health誌2022年11月17日号の報告。

肺臓炎発症例、オシメルチニブのリチャレンジの実施可能性/Eur J Cancer

 軽症肺臓炎を発症したEGFR変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)へのオシメルチニブのリチャレンジを検証したリアルワールド試験の結果が発表された。  オシメルチニブは、EGFR変異陽性NSCLCの1次治療の標準だが、治療に影響を及ぼすオシメルチニブの有害事象として、薬剤性肺臓炎が挙げられる。オシメルチニブの適正使用ガイドでは、肺臓炎発症後は全例治療中止が推奨されている。一方、症例報告や後ろ向き試験では、肺臓炎発症後のオシメルチニブリチャレンジの実施可能性や有効性についての報告がある。ただし、リチャレンジの主要評価項目とした多症例の検証はなかった。

ビタミンDが脳を老化から守る可能性

 脳内に存在するビタミンDの量が多い高齢者では、明晰な頭脳が維持されやすい可能性が、米タフツ大学ジーン・メイヤーUSDA加齢人間栄養研究センターのSarah Booth氏らの研究で示唆された。この研究では、脳組織中のビタミンD濃度が高い高齢者では記憶力や思考力の標準的な検査の成績が良い傾向があり、認知症や軽度認知障害(MCI)になる可能性の低いことが示された。この研究の詳細は、「Alzheimer's & Dementia」に12月7日掲載された。  ビタミンDと脳の老化については、これまでにも複数の研究が行われている。しかし、高齢者においてビタミンDの血中濃度の低さが認知症リスクの上昇と関連するという報告がある一方で、そのような関連は認められないとする報告もあり、意見の一致は得られていない。さらに、高齢者の記憶力や思考力に対するビタミンDサプリメントの効果を検証したいくつかの臨床試験でも、有益性に関する明確な証拠は得られていない。

片頭痛と認知症との関連~コホート研究

 片頭痛と認知症は、いずれも公衆衛生上の主要な問題と関連しているが、両疾患の関係を理解するためには、多くの知見が必要とされる。デンマーク・コペンハーゲン大学のS. Islamoska氏らは、片頭痛と認知症との関連を明らかにするためコホート研究を実施し、さまざまな視点より評価を行った。その結果、認知症発症リスクの上昇は、片頭痛の診断と関連しているが、片頭痛の治療薬使用とは関連していないことが示された。

抗CTLA-4抗体トレメリムマブ+デュルバルマブ、非小細胞肺がん1次治療に承認/AZ

 アストラゼネカは、2022年12月23日、デュルバルマブ(製品名:イミフィンジ)と、新たな抗CTLA-4抗体トレメリムマブ(同:イジュド)の併用療法が、「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の適応症で承認されたと発表した。  今回の承認は、切除不能な進行・再発非小細胞肺がん(NSCLC)を対象に、1次治療として、デュルバルマブ+トレメリムマブ+化学療法、デュルバルマブ+化学療法と化学療法を比較した第III相無作為化非盲検多施設共同国際試験POSEIDONの結果に基づくもの。

ペムブロリズマブ+化学療法の1次治療がHER2陰性胃/食道胃接合部腺がんの生存期間を改善(KEYNOTE-859)/MSD

 2022年11月22日、メルク社は、HER2陰性の局所進行切除不能または転移のある胃腺がんまたは食道胃接合部腺がん患者に対する1次治療としてペムブロリズマブと化学療法の併用療法を評価した第III相KEYNOTE-859試験の良好な結果が得られたことを報告した。  KEYNOTE-859試験は、上記集団の1次治療としてペムブロリズマブと化学療法の併用療法を化学療法と比較する無作為化二重盲検第III相試験である。主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、奏効期間、安全性などであった。

終わらない結核、結核菌の新たな生き残り戦略

 結核は、世界で最も死亡率の高い感染症の1つである。毎年、約1,060万人が結核に罹患し、160万人が死亡する。その背景の1つとして、抗菌薬の普及により薬剤耐性を有する結核菌が増加し、治療が困難になっていることがあるといわれる。そこで、米国・Harvard T.H. Chan School of Public HealthのQingyun Liu氏らの研究グループは、結核患者から単離された結核菌のゲノム解析を行った。その結果、転写因子resR遺伝子に変異があると、抗菌薬への曝露終了後に急速に再増殖を開始することが明らかになった。本研究結果は、Science誌2022年12月9日号に掲載された。

メニエール病と片頭痛には双方向の関連が見られる

 メニエール病(MD)患者では片頭痛の発症リスクが高く、片頭痛患者ではMDの発症リスクが高いことが、「JAMA Otolaryngology-Head & Neck Surgery」5月号に掲載された研究において明らかにされた。  MDと片頭痛は同時に発生することが多く、複数の先行研究から、両疾患は関連することが示唆されているが、それらの研究における対象患者数は、関連を明らかにするには十分でないものがほとんどである。

夜7時以降に温泉に入る人には高血圧患者が少ない―別府市民1万人の調査

 温泉入浴の習慣がある人には高血圧が少ないことが明らかになった。国内最大規模の温泉郷を有する別府市市民を対象とする、九州大学別府病院内科の山崎聡氏らの研究によるものであり、結果の詳細は「Scientific Reports」に11月14日掲載された。入浴時間帯別に解析すると、夜7時以降に温泉に入る習慣のある人で、高血圧該当者率の有意な低下が観察されたという。  高血圧は日本の国民病とも言われるほど多い病気で、50歳以上の男性と60歳以上の女性の6割以上が高血圧に該当すると報告されている。一方、温泉入浴については古くからさまざまな健康上のメリットが報告されてきている。そこで山崎氏らは、2011年に別府で実施された、温泉入浴や疾患既往歴に関するアンケート調査の結果を用いて、温泉入浴と高血圧との関連を検討した。

アルコール摂取と白内障リスクとの関連が明らかに―日本人約3万人の症例対照研究

 アルコールの摂取習慣と白内障リスクとの間に、有意な用量反応関係があることが、日本人約3万人のデータを用いた症例対照研究の結果として示された。飲酒をやめた人は白内障リスクが低下する可能性があることも明らかになった。東海大学医学部基盤診療学系衛生学公衆衛生学の深井航太氏、東京慈恵会医科大学眼科学の寺内稜氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に11月22日掲載された。  白内障は眼のレンズである水晶体が混濁して視機能が低下する病気で、多くは加齢現象として生じる。詳細な検査を行えば高齢者の大半に認められるほど有病率の高い病気のため、仮に修正可能なリスク因子があるとすれば、公衆衛生対策の大きな効果が期待できる。これまでに、飲酒も白内障のリスク因子の一つである可能性が検討されてきているが、結果に一貫性が見られない。また、それらの研究は主に海外で行われており、超高齢社会の日本は白内障治療を受ける患者数が多いにもかかわらず、そのような視点での研究がほとんど行われていない。深井氏らの研究はこうした背景の下で行われた。

治療抵抗性統合失調症に対する新規抗精神病薬および薬理学的戦略の最新情報

 適切な用量および投与期間による2種類以上の抗精神病薬治療で反応が得られない治療抵抗性統合失調症は、精神医学の中で最も治療困難な病状の1つであるといえる。疫学的には、治療抵抗性統合失調症は統合失調症患者の3分の1に影響するとされ、全体的な機能の観点からも患者に深刻な結果をもたらす。しかし、50年間で治療抵抗性統合失調症の適応で承認された治療薬はクロザピンのみであり、クロザピンでも反応の得られない耐性患者も少なくない。イタリア・ナポリ大学のAndrea de Bartolomeis氏らは、現在報告されている文献を批判的に評価し、治療抵抗性統合失調症の治療における新旧薬剤の役割についてレビューを行った。Expert Opinion on Pharmacotherapy誌2022年12月号の報告。

「新型コロナ感染症対策の情報提供サイト」開設/モデルナ

 モデルナは2022年12月22日、一人ひとりにあった感染予防対策や最新情報の提供を目指した、新型コロナウイルス感染症情報サイト『コロナ対策ステーション』(以下、当サイト)を開設した。当サイトは4つのメニューから構成されており、各コンテンツを通して新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する正しい知識を得られる場となることが期待される。  SARS-CoV-2感染によるCOVID-19は、日本の公衆衛生にとっていまだ脅威であり、今後さらなる感染再拡大も懸念されている。当サイトは、「一人ひとりの年齢やこれまでのワクチン接種状況などに応じて、感染対策情報の提供と新型コロナウイルス感染症に関する疑問を解決する」というコンセプトのもと、「あなたのための新型コロナウイルス対策(FAQ)」「知っておきたいコロナ対策(動画5本掲載)」「コロナウイルス流行株インフォ」「ワクチン接種会場を調べる」の4つのメニューで構成され、「一人ひとりにあった感染予防対策や最新情報」を提供している。

デュルバルマブ+化学療法が胆道がんに、トレメリムマブ+デュルバルマブが肝がんに承認/AZ

 アストラゼネカは、2022年12月23日、デュルバルマブ(製品名:イミフィンジ)が「治癒切除不能な胆道癌」および「切除不能な肝細胞癌」を適応症として承認されたと発表。また、新たな抗CTLA-4抗体トレメリムマブ(同:イジュド)はデュルバルマブとの併用療法が、「切除不能な肝細胞癌」を適応症として承認されたと発表した。  今回の承認は第III相TOPAZ-1試験の中間解析に基づいたもの。デュルバルマブと化学療法の併用療法が承認されたことにより、限られた治療法しかなかった治癒切除不能なBTCに免疫治療が可能となる。

オミクロン株の新系統に対するワクチンの有効性/東京大学・国立国際医療研究センター

 第8波の主体となっている新型コロナウイルス・オミクロン株。現在では、欧米諸国でBA.5系統から派生したBQ.1.1系統が、インドやシンガポールなどのアジア諸国ではBA.2系統から派生したXBB系統の感染例が急激に増加している。これら現在流行中の系統に対する新型コロナワクチンの有効性は、どの程度あるのだろうか。東京大学医科学研究所ウイルス感染部門の河岡 義裕氏らの研究グループは国立国際医療研究センターと共同で、オミクロン株BQ.1.1系統とXBB系統に対するmRNAワクチン(パンデミック初期株をもとに作られたワクチン)の有効性を検証するため、患者から分離したBQ.1.1系統とXBB系統に対するmRNAワクチン被接種者血漿の中和活性を調べた。