米食品医薬品局(FDA)は5月23日、Acinetobacter baumannii-calcoaceticus complex(以下、A. baumannii)に起因する細菌性の院内肺炎および人工呼吸器関連細菌性肺炎に対する新しい治療薬として、Xacduro〔一般名sulbactam for injection(スルバクタム静注用);durlobactam for injection(デュロバクタム静注用)〕を承認した。投与対象は18歳以上で、静脈内投与される。
グラム陰性球桿菌であるアシネトバクター属には多くの菌種が存在するが、医療機関で肺炎などの感染症の原因菌となることが最も多いのがA. baumanniiである。A. baumanniiは、互いに区別することが困難な4菌種の総称で、体のさまざまな部位に感染を引き起こす。A. baumanniiはまた、薬剤耐性を獲得しやすい。現状では、薬剤耐性A. baumannii感染に対する治療法は限定的である。
Xacduroは、ペニシリンに似た構造を持つ薬剤であるスルバクタムと、デュロバクタムで構成されている。スルバクタムはA. baumanniiを殺す作用を持ち、デュロバクタムはA. baumanniiが産生する可能性がある酵素によりスルバクタムが分解されるのを防ぐ作用を持つ。
Xacduroの安全性と有効性は、カルバペネム系抗菌薬に対して耐性を示すA. baumanniiによる肺炎で入院した成人患者177人を対象とした、多施設共同アクティブコントロール、オープンラベル(医師非盲検、評価者盲検)非劣性試験に基づいている。対象者は、Xacduroまたは対照抗菌薬としてコリスチンを最長14日間投与された。その結果、治療から28日以内にあらゆる原因で死亡した患者の割合は、Xacduro投与群での19%に対し、コリスチン投与群では32%に上った。Xacduro投与群で最も頻繁に生じた副作用は、肝機能検査での異常だった。
FDA医薬品評価研究センター(CDER)抗感染症部門でディレクターを務めるPeter Kim氏は、「FDAは、A. baumanniiなどの細菌を原因とする治療困難な感染症に対する安全で効果的な治療法の開発への支援に精力を傾けている。米国の重症の細菌性肺炎患者の一部に新たな治療選択肢を提供した今回の承認は、医療に関する高いアンメットニーズに応えるものだ」と述べている。
なお、Xacduroの承認は、Entasis Therapeutics社に対して付与された。
[2023年5月30日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら