医療一般|page:22

睡眠時無呼吸は将来の入院リスクと関連

 睡眠時無呼吸を有する50歳以上の人では症状がない人に比べて、将来、病気で入院するオッズが21%高いことが新たな研究で明らかになった。この研究を実施した米フロリダ大学医学部のChristopher Kaufmann氏は、「この結果は、過体重、健康不良、うつ病といった医療サービス利用の増加に寄与する可能性のある因子を考慮した後でも変わらなかった」と話している。この研究結果は、米国睡眠学会および睡眠研究学会の年次総会(SLEEP 2024、6月1〜5日、米ヒューストン)で発表され、要旨が「Sleep」5月増刊号1に掲載された。

軽い健康問題なら薬剤師による治療が低コストの選択肢に

 薬剤師が軽症の疾患を治療できるようにすることで、患者の治療費を抑えられるとともに、より多くの人が医療にアクセスできるようになり、何百万ドルもの医療費を削減できる可能性のあることが、米ワシントン州立大学薬物療法学准教授のJulie Akers氏らの研究で示された。研究結果は、「ClinicoEconomics and Outcomes Research」に5月3日掲載された。  この研究で検討の対象となった米ワシントン州では、1979年以降、医師から特定の医薬品を処方および投与する許可を得た薬剤師には、患者を治療する法的権利が認められている。薬剤師はその教育の一環として、日常的によく見られる疾患の臨床評価の研修を受けており、OTC医薬品(市販薬)で治療可能な疾患についての助言を行っている。薬剤師が関与できるレベルをさらに上げて、患者を治療する権利である「処方権」を与えれば、薬剤師は、OTC医薬品では不十分な場合に医療用医薬品を処方することも可能になる。

日本の大学生の2割がロコモ

 日本の大学生400人以上を対象とした研究の結果、ロコモティブシンドローム(ロコモ)の有病率が20%を超えていることが示された。また、ロコモと関連する要因は男性と女性で違いがあることも明らかとなった。国際医療福祉大学理学療法学科の沢谷洋平氏、同大学医学部老年病学講座の浦野友彦氏らによる研究であり、「BMC Musculoskeletal Disorders」に5月10日掲載された。  ロコモは、運動器の障害により起立や歩行などの移動機能が低下した状態であり、ロコモが進行すると最終的には介護が必要となる。若年者にも一定の割合でロコモの兆候が見られると報告されているが、10代~20代の若年者を対象とする研究は不足している。また、男性と女性では筋力や体格に違いがあるため、ロコモと関連する要因も性別により異なる可能性がある。

片頭痛患者に対するフレマネズマブ治療の日本における費用対効果

 日本においてフレマネズマブは、反復性片頭痛(EM)および慢性片頭痛(CM)患者に対して有効な治療薬だが、その費用対効果は明らかになっていなかった。大阪・富永病院の竹島 多賀夫氏らは、日本の医療観点から、治療歴を有するEMおよびCM患者に対するフレマネズマブの費用対効果について標準治療(SOC)との比較を行った。PharmacoEconomics誌オンライン版2024年5月21日号の報告。  フレマネズマブとSOCの有効性および健康関連QOLに関連するデータを分析するため、マルコフモデルで推定回帰モデルを行った。モデルには、さらに文献データを追加した。調整された日本の医療観点には、生産性の損失も含めた。主なモデルアウトカムは、質調整生存年(QALY)、コスト(2022年時点の日本円)、増分費用効果比(ICER)を含む費用増加アウトカムとした。分析は、EM患者とCM患者の個別に実施し、その後組み合わせた。費用と効果は、年率2.0%の割引を行った。

長距離フライト中の飲酒は心臓に悪影響を与える可能性も

 飛行機に乗っている間、とりわけ長距離フライト中に飲酒すると、眠っている間に心臓の健康が脅かされる可能性のあることが、ドイツ航空宇宙センター・航空宇宙医学研究所のEva-Maria Elmenhorst氏らによる研究で示された。同研究では、飲酒と飛行機の巡航高度での機内気圧が組み合わさることで、血液中の酸素量が低下し、若くて健康な人でも心拍数が長時間にわたって上昇し続けることが示されたという。この研究結果は、「Thorax」に6月3日掲載された。

米国てんかんセンター協会がガイドライン改訂

 米国てんかんセンター協会(National Association of Epilepsy Centers;NAEC)はこのほど、てんかんセンターが提供する医療に関するガイドラインを改訂。米ホフストラ大学ザッカー医学部のFred A. Lado氏らが作成したガイドラインの要約版が、「Neurology」に2月2日掲載された。  NAECは米国内の260以上のてんかんセンターが加盟している非営利団体で、1990年に初のガイドラインを発行。初版発行以降、約10年サイクルで改訂を重ねてきており、前回の改訂は2010年だった。今回の改訂に際してはPubMedとEmbaseを用いたシステマティックレビューが行われ、重複削除後の5,937報から197報を抽出。医師、患者、介護者、看護師、検査技師などさまざまなバックグランドを持つ41人から成る委員会が、それらの報告に基づき推奨の草案を作成。その後、修正デルファイ法によって最終的な合意を得るという手法により、信頼できるコンセンサスベースの推奨(trustworthy consensus-based statements;TCBS)として52項目がまとめられた。

SGLT2iはステージ5のDKDの予後も改善し得る

 腎機能が高度に低下した糖尿病患者であっても、SGLT2阻害薬(SGLT2i)によって予後が改善することを示すデータが報告された。Dr. Yen'sクリニック(台湾)のFu-Shun Yen氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に4月30日掲載された。SGLT2iの処方が、透析導入や心不全、急性心筋梗塞(AMI)、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)、急性腎障害(AKI)による入院リスクの有意な低下と関連しているという。  SGLT2iは血糖降下作用とともに腎保護作用や心保護作用を有することが明らかになっており、ガイドラインでも使用が推奨されている。しかし、そのエビデンスは腎機能が一定程度以上に保たれている患者を対象に行われた研究から得られたものであり、高度腎機能低下例でのエビデンスは数少ない。これを背景としてYen氏らは、台湾の国民健康保険研究データベース(NHIRD)を用いて、ステージ5(eGFR20mL/分/1.73m2未満で定義)の慢性腎臓病(CKD)を有する糖尿病患者でのSGLT2iの有用性を検討した。なお、同国は1995年に皆保険制度が施行され、国民の99%が国民健康保険に加入しており、NHIRDにはその医療行為が記録されている。

急性膵炎の管理にエビデンスに基づく推奨事項を提起、米ACG

 急性膵炎(AP)患者の管理について、エビデンスに基づく推奨が示された臨床ガイドラインが、米国消化器病学会(ACG)発行の「The American Journal of Gastroenterology」3月号に掲載された。  米ニューヨーク州立大学ブルックリン校のScott Tenner氏らは、膵臓の急性炎症と定義されるAPの管理について論じている。  著者らは、APは不均一な疾患であり、患者によって進行が異なることを指摘している。ほとんどの患者は数日間症状が続くが、約20%の患者は、膵壊死と臓器不全の一方または両方を含む合併症を経験する。AP患者には、胆道原性膵炎を評価するための経腹超音波検査が推奨され、特発性AP患者には、追加の診断的評価が推奨される。患者には、輸液蘇生を中等度の強度で実施することが推奨される。静脈路からの輸液蘇生には、生理食塩水よりも、乳酸リンゲル液が推奨される。胆管炎を伴わない急性胆道原性膵炎では、早期の内視鏡的逆行性胆管膵管造影よりも、薬剤治療が推奨される。重度のAP患者には、予防抗菌薬を使用しないことが推奨される。感染性膵壊死が疑われる患者には、穿刺吸引は推奨されない。軽度のAP患者には、従来の絶食の手法よりも、患者が許容できれば経口摂取の早期開始(24~48時間以内)が推奨される。軽度のAP患者には、流動食から固形食へと段階的に進める手法よりも、初回からの低脂肪固形食の経口摂取が推奨される。

学校健康診断に関する報道についての見解/日医

 2024年6月に群馬県みなかみ町の小学校で行われた健康診断において、医師が本人や保護者の同意を得ずに児童の下半身を視診していたことが明らかになり、学校健康診断に関する報道が過熱している。そこで、日本医師会常任理事の渡辺 弘司氏が、6月19日の定例記者会見で、日本医師会としての学校健康診断に関する見解を明らかにした。  まず、渡辺氏は、「学校健康診断のマニュアルである『児童生徒等の健康診断マニュアル』には、健康診断時に注意すべき疾病および異常として思春期早発症への言及がある。当該医師は小児内分泌の専門医であり、医学的に診察を行ったことの妥当性はある」としつつ、「一般的な学校健康診断では、児童・生徒全例に2次性徴の診察を実施することは想定されていないことから、事前に保護者に説明する必要があった。学校設置者・学校・学校医の連携や共通認識が必要だったのではないか」と述べた。

スタチンにEPA併用、日本人の心血管イベント再発予防効果は?/Circulation

 スタチン治療を受けている慢性冠動脈疾患の日本人患者で、エイコサペンタエン酸/アラキドン酸(EPA/AA)比の低い患者において、高純度EPAのイコサペント酸エチルによる心血管イベント再発予防の可能性を検討したRESPECT-EPA試験で、心血管イベントリスクは数値的には減少したが統計学的有意差は認められなかった。一方、冠動脈イベントの複合は有意に減少した。順天堂大学の宮内 克己氏らがCirculation誌オンライン版2024年6月14日号で報告。

NSCLC患者への周術期ペムブロリズマブ、QOLの評価(KEYNOTE-671)/ASCO2024

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象としたKEYNOTE-671試験では、術前補助療法としてペムブロリズマブ+化学療法、術後補助療法としてペムブロリズマブを用いた場合、術前補助療法として化学療法を用いた場合と比較して、無イベント生存期間(EFS)、全生存期間(OS)などが有意に改善したことが報告されている。今回、本試験における健康関連QOL(HRQOL)の解析結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で、イタリア・Fondazione IRCCS Istituto Nazionale dei TumoriのMarina Garassino氏より発表された。  KEYNOTE-671試験では、対象患者797例を以下のとおり試験群と対照群に1対1で無作為に割り付けた。 ・試験群(397例):ペムブロリズマブ200mg+化学療法(シスプラチン[75mg/m2]+ゲムシタビン[1,000mg/m2を各サイクル1、8日目]またはペメトレキセド[500mg/m2])を3週ごと最大4サイクル→手術→ペムブロリズマブ200mgを3週ごと最大13サイクル ・対照群(400例):プラセボ+化学療法(同上)を3週ごと最大4サイクル→手術→プラセボを3週ごと最大13サイクル

片頭痛予防の再定義、抗CGRPモノクローナル抗体による早期治療が治療反応を強化

 片頭痛予防に承認されている抗CGRPモノクローナル抗体による治療は、患者によって治療反応が異なり、多くの国では費用償還(reimbursement)ポリシーがあるため、治療が妨げられることもある。スペイン・Vall d'Hebron HospitalのEdoardo Caronna氏らEUREkA study groupは、6ヵ月間の抗CGRP抗体に対する良好/優良な治療反応およびそれに関連する臨床的因子を調査するため、本研究を実施した。Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry誌オンライン版2024年5月22日号の報告。  本研究は、2018年3月以降に抗CGRP抗体による治療を行った高頻度の反復性片頭痛または慢性片頭痛患者を対象とした欧州の多施設共同プロスペクティブリアルワールド研究である。良好/優良な治療反応の定義は、6ヵ月後の1ヵ月あたりの頭痛日数(MHD)の減少がそれぞれ50%以上、75%以上とした。治療反応と独立して関連する変数を特定するため、一般化混合効果回帰モデルを用いた。

オンライン特定保健指導、減量効果は対面に劣らない

 2020年度に特定保健指導を受けた人のデータを用いて、オンライン面接と対面面接の効果を比較する研究が行われた。その結果、翌年までのBMI変化量に関して、オンライン面接は対面面接に劣らないことが明らかとなり、特定保健指導にオンライン面接を活用することの有用性が示唆された。帝京大学大学院公衆衛生学研究科の金森悟氏、獨協医科大学研究連携・支援センターの春山康夫氏らによる研究であり、「Journal of Occupational Health」に5月10日掲載された。  特定健康診査(特定健診)・特定保健指導は、40~74歳の人を対象に、メタボリックシンドロームの予防や解消を目的として実施される。新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、オンラインで特定保健指導を行う機会が増えたが、特定保健指導後の体重減量効果について、オンライン面接と対面面接で差があるのかどうかは分かっていなかった。

飛行機でのコロナ感染リスク、マスクの効果が明らかに~メタ解析

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの拡大は、航空機の利用も主な要因の1つとなったため、各国で渡航制限が行われた。航空業界は2023年末までに回復したものの、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の多い時期は毎年発生しており注意が必要だ。米国・スタンフォード大学のDiana Zhao氏らは、ワクチン導入前のCOVID-19パンデミック時の民間航空機の飛行時間とSARS-CoV-2感染に関するシステマティックレビューとメタ解析を実施した。

進展型小細胞肺がん、アテゾリズマブ+化学療法へのベバシズマブ上乗せの有用性は?(BEAT-SC)/ASCO2024

 進展型小細胞肺がん(ED-SCLC)の標準治療の1つに、アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド(ACE療法)がある。非小細胞肺がんでは、アテゾリズマブ+ベバシズマブ+化学療法は、アテゾリズマブ+化学療法と比較して優れた治療効果を有し、アテゾリズマブとベバシズマブには相乗効果があることが示されている。そこで、ED-SCLC患者を対象に、ACE療法へのベバシズマブ上乗せ効果を検討する「BEAT-SC試験」が、日本および中国で実施された。本試験において、ベバシズマブ上乗せにより無増悪生存期間(PFS)が有意に改善したが、全生存期間(OS)の改善はみられなかった。大江 裕一郎氏(国立がん研究センター中央病院 副院長/呼吸器内科長)が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)において、本試験の結果を報告した。

循環器領域の論文著者、男女に差/JACC

 過去10年間の循環器領域の主要4誌のすべての論文について、米国・マウントサイナイ医科大学のRidhima Goel氏らが調査したところ、女性著者の割合は低いままであることがわかった。Journal of the American College of Cardiology誌2024年6月18日号に掲載。著者らは「循環器領域における女性の活躍を促進し公平な機会を提供するために、行動喚起が必要」としている。

双極性障害患者の精神疾患生涯有病率〜メタ解析

 双極性障害は、重篤な精神疾患であり、その負担の一部は生涯にわたる精神疾患の併存と関連しており、診断、治療、予後にも影響を及ぼす。ブラジル・Universidade Federal da BahiaのGabriela Leda-Rego氏らは、双極性障害患者の精神疾患生涯有病率を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Psychiatry Research誌オンライン版2024年5月8日号の報告。  1993〜2022年に公表された関連論文をMedline/PubMed、Embase、Cochrane Library(Central)、PsycINFO、Scopus、Web of Science、および言語制限なしの手動で検索し、メタ解析を実施した。最初に特定された1万2,698件のうち、最終的に適格基準を満たした114件を選択した。双極性障害患者における精神疾患に関する2つのメタ解析(有病率、リスク比)を実施し、その後、単変量分析で有意であると特定されたモデレーターについて多変量メタ回帰モデルを用いて、モデレーター効果の包括的な調査を行った。

女性では短時間睡眠がNAFLD発症と関連

 女性では、短時間睡眠が非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease;NAFLD)の危険因子であるとの研究結果が発表された。日本人を対象とする縦断研究として、福島県立医科大学医学部消化器内科学講座の高橋敦史氏らが行った研究であり、「Internal Medicine」に4月23日掲載された。  NAFLDの発症や進行には不健康な生活習慣が関連しており、食習慣や運動などの身体活動に関するエビデンスは確立されている。一方で、睡眠時間とNAFLDのリスクとの関連については研究結果が一致せず、明らかになっていない。

塩分摂取のタイミングが悪いと熱中症のリスクが上昇

 塩分の摂取は熱中症の予防に重要である。しかし、日本の消防士を対象とした新たな研究の結果、不適切なタイミングで塩分を摂取することにより、熱中症のリスクが高まる可能性のあることが明らかとなった。これは福島県立医科大学衛生学・予防医学講座の各務竹康氏らによる研究の結果であり、「PLOS ONE」に1月2日掲載された。  地球温暖化や気候変動により、熱中症のリスクは高まりつつある。特に労働災害の対策は重要であり、厚生労働省は職場における熱中症予防対策を徹底するために毎年キャンペーンを実施しているが、熱中症による死亡者数は過去10年間、減少していない。

ALK陽性NSCLCにおける術後アレクチニブ、健康関連QOLへの影響(ALINA)/ASCO2024

 ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するアレクチニブの術後補助療法における有用性を検討したALINA試験では、アレクチニブがプラチナベースの化学療法と比較して、無病生存期間(DFS)を有意に改善したことが報告されている1)。今回、本試験における健康関連QOL(HRQOL)を解析した結果、精神的、身体的項目のベースラインからの改善が認められ、投与期間中維持されたことが米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で、がん研有明病院の西尾 誠人氏より発表された。