医療一般|page:22

結核が再び最も致命的な感染症のトップに

 世界保健機関(WHO)は10月29日に「Global Tuberculosis Report 2024」を公表し、2023年に世界中で820万人が新たに結核と診断されたことを報告した。この数は、1995年にWHOが結核の新規症例のモニタリングを開始して以来、最多だという。2022年の新規罹患者数(750万人)と比べても大幅な増加であり、2023年には、世界で最も多くの死者をもたらす感染症として、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を抑えて再びトップに躍り出た。  WHOのテドロス事務局長(Tedros Adhanom Ghebreyesus)は、「結核の予防・検出・治療に有効な手段があるにもかかわらず、結核が依然として多くの人を苦しめ、死に至らしめているという事実は憤慨すべきことだ」とWHOのニュースリリースで述べている。同氏は、「WHOは、各国が、これらの手段を積極的に活用し、結核の撲滅に向けて約束した取り組みを確実に実行するよう求めている」と付言している。

境界性パーソナリティ障害に非定型抗精神病薬は有効なのか〜メタ解析

 境界性パーソナリティ障害(BPD)患者は、心理社会的機能に問題を抱えていることが多く、その結果、患者自身の社会的関与能力の低下が認められる。英国・サセックス大学のKatie Griffiths氏らは、成人BPD患者の心理社会的機能の改善に対する非定型抗精神病薬の有効性を検討した。Psychiatry Research Communications誌2024年9月号の報告。  1994〜2024年に実施されたプラセボ対照ランダム化比較試験6件をメタ解析に含めた。対象は、オランザピン、クエチアピン、ziprasidone、アリピプラゾールのいずれかで治療されたBPD患者1,012例。

非肥満2型糖尿病患者の心血管障害へのSGLT2阻害薬の効果は/京大

 糖尿病の薬物治療で頻用されているSGLT2阻害薬。しかし、SGLT2阻害薬の有効性を示した過去の大規模臨床研究の参加者は、平均BMIが30を超える肥満体型の糖尿病患者が多数を占めていた。  わが国の実臨床現場ではBMIが25を下回る糖尿病患者が多く、肥満のない患者でも糖分を尿から排泄するSGLT2阻害薬が本当に有効なのかどうかは、検証が不十分だった。そこで、森 雄一郎氏(京都大学大学院医学系研究科)らの研究グループは、協会けんぽのデータベースを活用し、わが国のSGLT2阻害薬の効果検証を行った。その結果、肥満傾向~肥満の患者ではSGLT2阻害薬の有効性が確認できたが、BMI25未満の患者では明らかではなかったことがわかった。本研究の結果はCardiovascular Diabetology誌2024年10月22日号に掲載された。

EGFR陽性NSCLC、CRT後のオシメルチニブは日本人でも良好(LAURA)/日本肺癌学会

 2024 ASCO Annual Meetingにて、第III相無作為化比較試験「LAURA試験」の結果、切除不能なEGFR遺伝子変異陽性StageIII非小細胞肺がん(NSCLC)における化学放射線療法(CRT)後のオシメルチニブ投与により、無増悪生存期間(PFS)が大幅に改善することが報告された。本試験の日本人集団の結果について、神奈川県立がんセンターの加藤 晃史氏が第65回日本肺癌学会学術集会で発表した。 試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験 対象:18歳以上(日本は20歳以上)の切除不能なStageIIIのEGFR遺伝子変異(exon19delまたはL858R)陽性NSCLC患者のうち、CRT(同時CRTまたはsequential CRT)後に病勢進行が認められなかった患者216例 試験群(オシメルチニブ群):オシメルチニブ(80mg、1日1回)を病勢進行または許容できない毒性、中止基準への合致のいずれかが認められるまで 143例

1日わずか5分の身体活動の追加が血圧低下に効果的

 毎日の生活の中に、自転車に乗るなどの運動に近い身体活動をわずか5分加えるだけで、血圧が下がり、心血管疾患のリスク低下につながる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。論文の筆頭著者である、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のJoanna Blodgett氏は、「良いニュースは、身体能力にかかわりなく、短時間で血圧に良い影響がもたらされることだ。われわれの研究は、階段を上ることやちょっとした用事に自転車を使うことなど、日常生活に組み込むことができる、運動に近いあらゆる身体活動の効果を検討した点がユニークだ」と述べている。この研究結果は、「Circulation」に11月6日掲載された。

便秘は心臓病のリスクを高める?

 便秘は心筋梗塞や脳卒中のリスクを高める可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。この研究では、便秘のある人における主要心血管イベント(MACE)の発生リスクは、正常な排便習慣を持つ人より2倍以上高いことが示されたという。セント・ヴィンセント病院(オーストラリア)の臨床データアナリストであるTenghao Zheng氏らによるこの研究の詳細は、「American Journal of Physiology-Heart and Circulatory Physiology」に9月24日掲載された。研究グループは、「便秘はMACEのリスク上昇と独立して関連する潜在的なリスク因子であることが明らかになった」と同誌のニュースリリースの中で述べている。

BRCA1/2病的バリアント保持者における乳がん後の二次原発がんリスク/JCO

 乳がんと診断された男女2万5千例以上を対象とした研究で、BRCA1/2病的バリアント保持者における二次原発がんリスクの高さが明らかになった。英国・ケンブリッジ大学のIsaac Allen氏らによるJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年10月29日号掲載の報告より。  本研究では、1995~2019年に英国国民保健サービス(NHS)臨床遺伝学センターで乳がんと診断され、生殖細胞系列のBRCA遺伝子検査を受けた女性2万5,811例と男性480例について、二次原発がん診断、死亡、転移、対側乳房/卵巣手術の1年後または2020年12月31日まで追跡調査が行われた。

家庭内のインフル予防、手指衛生やマスクは効果ある?~メタ解析

 インフルエンザの感染対策では、手指衛生やマスク着用などの非薬物介入が推奨されることが多いが、家庭における感染対策は比較的研究が進んでいない分野である。今回、中国・香港大学のJessica Y. Wong氏らによるシステマティックレビューおよびメタ解析により、非薬物介入は家庭内感染には影響を及ぼさなかったことが明らかになった。International Journal of Infectious Diseases誌オンライン版2024年11月4日号掲載の報告。  インフルエンザウイルス感染は、主に人と人との濃厚接触によって広がり、伝播の多い環境の1つが家庭である。そのため、家庭内で実施可能な非薬物介入はインフルエンザの制御において重要な役割を果たす可能性がある。そこで研究グループは、多くの国で推奨されている9つの非薬物介入(手指衛生、咳エチケット、マスク、フェイスシールド、清掃、換気、加湿、感染者の隔離、物理的距離の確保)が家庭内のインフルエンザ感染予防として有効かどうかを評価するために調査を実施した。

統合失調症患者に対する抗精神病薬の投与経路変更の影響は〜メタ解析

 長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬は、症状の重症度や入院リスクの軽減など、統合失調症患者のアウトカム改善に寄与する。しかし、経口抗精神病薬からLAI抗精神病薬に切り替えた場合のアウトカムは十分に明らかになっていない。サウジアラビア・Jazan UniversityのAmani Kappi氏らは、統合失調スペクトラム症患者における経口抗精神病薬からLAI抗精神病薬に切り替えた際の臨床アウトカム、QOL、医療利用アウトカムを明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of the American Psychiatric Nurses Association誌オンライン版2024年10月23日号の報告。

「週末戦士」でも脳の健康に利点あり

 週に1〜2回しか運動をしない「週末戦士」でも、運動を全くしない人に比べると、高齢になったときの頭の回転の速さは定期的に運動をしている人と同等であることが、新たな研究で明らかになった。ロス・アンデス大学(コロンビア)スポーツ科学分野のGary O’Donovan氏らによるこの研究結果は、「British Journal of Sports Medicine」に10月29日掲載された。研究グループは、「本研究は、週末戦士の運動パターンと定期的な運動パターンの双方が、軽度認知症(MCI)のリスク低下に同程度の効果があることを示した初の前向きコホート研究だ」と述べている。

減量薬のアクセス拡大が年4万人以上の米国人の命を救う可能性

 インクレチン製剤であるGLP-1受容体作動薬などの減量薬を、より広い対象に適用して多くの人がアクセスできるようにすることで、米国では年間4万人以上の命が救われる可能性があるとする論文が発表された。米イェール大学公衆衛生大学院のAlison Galvani氏らの研究によるもので、詳細は「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に10月15日掲載された。  肥満が死因として記録されることはめったにない。しかし、肥満は心血管代謝疾患をはじめとする多くの疾患のリスクを押し上げ、結果としてそれらの疾患による死亡リスクを高めている。米国では人口の74%が過体重や肥満(うち43%が肥満)に該当し、公衆衛生上の極めて大きな問題となっている。

抗てんかん薬の早期処方が認知症リスクの低さと関連

 抗てんかん薬が早期に処方されていた患者は、そうでない患者に比べて認知症発症リスクが低下する可能性を示唆するデータが報告された。横浜市立大学大学院医学研究科脳神経外科学の池谷直樹氏らが国内のレセプトデータを用いて行った解析の結果であり、「Alzheimer's & Dementia: Translational Research & Clinical Interventions」に9月10日、短報として掲載された。  アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患による認知症(変性性認知症)は、脳内でのアミロイドβやタウタンパク質の蓄積が主要な原因と考えられており、それらの変化は変性性認知症発症のかなり以前から生じていることが知られている。また、変性性認知症と関連しててんかん様の症状を来すことがあり、そのような病態に対しては抗てんかん薬が変性性認知症治療に対して現在使われている薬剤とは別の機序で、進行抑制に寄与する可能性が、基礎実験や小規模な症例報告で示されている。しかし、これまで大規模なデータを用いた研究で、その効果が示されたことがなかった。これを背景として池谷氏らはレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用いたコホート研究を行った。

肺動脈性肺高血圧症治療剤ユバンシ配合錠が発売/ヤンセン

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は2024年11月20日、肺動脈性肺高血圧症治療薬として、エンドセリン受容体拮抗薬マシテンタン10mgとホスホジエステラーゼ5阻害薬タダラフィル40mgとの配合薬「ユバンシ配合錠」を発売した。  マシテンタン/タダラフィルは、国際共同第III相ピボタル試験(A DUE試験)の結果に基づき、9月24日に肺動脈性肺高血圧症を効能または効果として国内の製造販売承認を取得した、1日1回服用の配合錠である。

TN乳がんへのサシツズマブ ゴビテカン、販売開始/ギリアド

 ギリアド・サイエンシズは2024年11月20日、化学療法歴のある手術不能または再発のホルモン受容体陰性/HER2陰性(トリプルネガティブ)乳がんの治療薬として、TROP-2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)であるサシツズマブ ゴビテカン(商品名:トロデルビ)の日本における販売開始を発表した。  サシツズマブ ゴビテカンは、2024年9月24日に国内製造販売承認を取得。この承認は、2つ以上の化学療法歴のある手術不能または再発のトリプルネガティブ乳がん患者を対象に、サシツズマブ ゴビテカンと医師が選択した治療の有効性と安全性を比較した海外での第III相臨床試験(ASCENT)と、2つ以上の化学療法歴のある手術不能または再発のトリプルネガティブ乳がん患者を対象にサシツズマブ ゴビテカンの有効性と安全性を評価した国内の第II相臨床試験(ASCENT-J02)の結果に基づくものである。

ROS1陽性NSCLCへの新たな選択肢レポトレクチニブ、その特徴は?/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブは、ROS1阻害薬レポトレクチニブ(商品名:オータイロ)について、2024年9月24日に「ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の適応で製造販売承認を取得した。そこで、ブリストル・マイヤーズ スクイブは「ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺癌についてのメディアセミナー」を2024年11月14日に実施した。  「ROS1融合遺伝子陽性肺癌に対する治療戦略」と題し、後藤 功一氏(国立がん研究センター東病院 副院長・呼吸器内科長)がROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の治療の変遷とレポトレクチニブの特徴について紹介した。

低リスク肺塞栓症がん患者のVTE再発、リバーロキサバン18ヵ月vs. 6ヵ月(ONCO PE)/AHA2024

 低リスク肺塞栓症(PE)を発症したがん患者を対象に、直接経口抗凝固薬(DOAC)であるリバーロキサバンの投与期間を検討したONCO PE試験の結果が、京都大学循環器内科の山下 侑吾氏らにより、11月16~18日に米国・シカゴで開催されたAmerican Heart Association’s Scientific Sessions(AHA2024、米国心臓学会)のFeatured Scienceで発表され、Circulation誌2024年11月18日号に同時掲載された。  本研究より、リバーロキサバンの18ヵ月間の投与は6ヵ月間の投与に比べ、静脈血栓塞栓症(VTE)の再発リスクを有意に低下させ、一方で出血リスクは有意な上昇を認めず、「がん患者の低リスクPEに対するDOACを用いた抗凝固療法は、血栓症予防の観点から18ヵ月間のより長期的な投与が望ましい」との結果が得られた。

大腸がん検診、現時点では血液検査よりも大腸内視鏡検査が優れる

 大腸がん検診において、新たな検査選択肢である血液検査は大腸内視鏡検査ほど有効ではないことが、米スタンフォード大学医学部消化器・肝臓内科学教授のUri Ladabaum氏らのレビューによって明らかになった。血液検査を推奨通りに3年に1回受けている人では、大腸内視鏡検査を10年に1回受けている人と比べて、大腸がんによる死亡が約2.5倍多く発生すると推定された。Ladabaum氏らは、大腸内視鏡検査や便の検査ではなく血液検査を選択する人が多くなると、大腸がんによる死亡が増加するとの予測を示している。この研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に10月29日掲載された。

うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法、安定後は継続または中止?

 カナダ・トロント大学のRoger S. McIntyre氏らは、抗うつ薬治療とブレクスピプラゾール補助療法の併用により安定したうつ病患者における、ブレクスピプラゾール補助療法の継続または中止による再発までの期間を比較するため、第III相多施設共同二重盲検プラセボ対照並行群間ランダム化中止試験を実施した。Acta Neuropsychiatrica誌オンライン版2024年10月17日号の報告。  対象は、2〜3回の抗うつ薬治療で効果不十分であったうつ病成人患者1,149例。すべての患者に対し、ブレクスピプラゾール2〜3mg/日による補助療法を開始した(第A相、6〜8週間)。症状が安定した患者(第B相、12週間)489例は、ブレクスピプラゾール補助療法群(継続群)240例またはプラセボ補助療法群(中止群)249例に1:1でランダムに割り付けられた(第C相、26週間)。主要エンドポイントは第C相における再発までの期間、副次的エンドポイントはうつ病評価尺度スコアの変化とした。

アジア人女性のBMIと乳がんの関連、欧米人との違い~32万人のデータ解析

 BMIと乳がんリスクの関連は、アジア人女性と欧米人女性で異なることが示唆されている。アジア人においては、閉経後女性でBMIと乳がんの正の相関が線形か非線形か、また閉経前女性でBMIと乳がんの相関が正か負かについて、以前の研究で矛盾した結果が報告されている。今回、岐阜大学の和田 恵子氏らは、複数のコホート研究から集められた約32万人のデータを使用して、閉経前および閉経後の日本人を含む東アジア人女性におけるBMIと乳がん発症率との関連を調べた。その結果、閉経後女性ではBMIと乳がんリスクに正の相関がみられたが、BMIが高くなると傾きが緩やかになった。また、閉経前女性で逆相関はみられなかった。Breast Cancer Research誌2024年11月14日号に掲載。

フィネレノンによるカリウムの影響~HFmrEF/HFpEFの場合/AHA2024

 左室駆出率(LVEF)が軽度低下した心不全(HFmrEF)または保たれた心不全(HFpEF)患者において、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)のフィネレノン(商品名:ケレンディア)は高カリウム血症の発症頻度を高めたが、その一方で低カリウム血症の発症頻度を低下させたことが明らかになった。ただし、プロトコールに沿ったサーベイランスと用量調整を行った場合、プラセボと比較し、カリウム値が5.5mmol/Lを超えた患者でもフィネレノンの臨床的な効果は維持されていた。本研究結果は、米国・ミネソタ大学のOrly Vardeny氏らが11月16~18日に米国・シカゴで開催されたAmerican Heart Association’s Scientific Sessions(AHA2024、米国心臓学会)のFeatured Scienceで発表し、JAMA Cardiology誌オンライン版2024年11月17日号に同時掲載された。