医療一般|page:115

統合失調症における抗精神病薬の多剤併用と単剤療法の安全性比較

 東フィンランド大学のHeidi Taipale氏らは、抗精神病薬の単剤療法と比較した多剤併用療法の安全性を検討した。その結果、抗精神病薬の単剤療法は、多剤併用療法と比較し、重度の身体的併存症による入院リスクの低下と関連していないことが示唆された。著者らは、安全性の問題に関する既存のエビデンスがない以上は、ガイドラインで抗精神病薬の多剤併用療法の代わりに単剤療法を推奨するべきではないとしている。The American Journal of Psychiatry誌2023年5月1日号の報告。  フィンランドの全国入院患者レジストリより統合失調症患者6万1,889例を特定し、1996~2017年にわたりフォローアップ調査を行った(フォローアップ期間中央値:14.8年[IQR=7.4~22.0])。非精神疾患および心血管系による入院など、重度の身体的併存症リスク(調整ハザード比:aHR)を、抗精神病薬の単剤療法と多剤併用療法における7つの用量カテゴリで比較した。7つの用量カテゴリは、1日当たりの服用量(DDD:defined daily doses)0.4未満、0.4~0.6未満、0.6~0.9未満、0.9~1.1未満、1.1~1.4未満、1.4~1.6未満、1.6以上であった。選択バイアスを除外するため、個別分析(Within-individual analysis)を用いた。

がん死亡率、ファストフード店の多さと関連

 住居地を選ぶ際にスーパーや飲食店へのアクセスの良さを考慮する人は少なくない。今回、米国・オーガスタ大学のMalcolm Seth Bevel氏らは米国における飲食店へのアクセス条件が肥満関連のがん死亡率と関係するのかどうかを調査した。近年、野菜などの生鮮食料品が入手困難な地域はFood Desert(食の砂漠)と呼ばれ、一方でファストフード店が多く集中し生鮮食品を取り扱う店が少ない地域はFood Swamp(食品沼)と呼ばれている。  今回の横断研究では、2012年、2014~15年、2017年、2020年の米国農務省(USDA)のFood Environment Atlasと、2010~20年の米国疾病予防管理センター(CDC)の18歳以上の成人の死亡率データを使用し、Food DesertとFood Swampの両スコアと肥満関連のがん死亡率との関連について調査した。

高齢化の進む米国、在宅介護利用者の増加に介護士の数が追いつかず

 高齢化が進む米国では過去10年間、老人ホームよりも自宅で介護士の手を借りながら日常生活動作をこなすこと(Home and Community-Based Services;HCBS、自宅およびコミュニティーに根差したサービス)を好む人が増加している。しかし、そのようなHCBSのニーズが大きな高まりを見せる一方で、それに対応できる介護士の増加の幅はわずかであることが、新たな調査から明らかになった。米ペンシルベニア大学Leonard Davis Institute of Health EconomicsのAmanda Kreider氏とRachel Werner氏らによるこの調査結果は、「Health Affairs」に4月19日掲載された。

初夏はとくに注意!熱帯夜で死亡リスク増~47都道府県のデータ解析

 高過ぎる気温は死亡リスク上昇につながることが示唆されているが、ほとんどの研究は最高気温や平均気温を使用している。しかし、気温上昇は最高気温より最低気温のほうが速い。今回、筑波大学のSatbyul Estella Kim氏らは、最低気温が高い熱帯夜と死亡リスクとの関連を検討した。その結果、熱帯夜により死亡リスクが有意に増加し、さらに晩夏より初夏の熱帯夜で死亡リスクが高いことがわかった。Environmental Health Perspective誌2023年5月号に掲載。

脂漏性皮膚炎に1日1回のroflumilast外用薬が有望

 脂漏性皮膚炎による紅斑、鱗屑、そう痒の治療において、1日1回塗布のroflumilastフォーム0.3%(泡[フォーム]を形成する製剤)は、良好な有効性、安全性、および局所忍容性を示した。米国・オハイオ大学のMatthew J. Zirwas氏らが第IIa相二重盲検溶媒対照並行群無作為化試験の結果を報告した。脂漏性皮膚炎に対する局所治療の選択肢は、有効性や安全性の観点から限られている。脂漏性皮膚炎はあらゆる年代にみられ、全世界の有病率は5%以上とされる。roflumilastは選択的ホスホジエステラーゼ(PDE)4阻害薬であり、抗炎症作用を有する。経口薬は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療薬として承認されており(本邦未承認)、外用薬は2022年7月に慢性尋常性乾癬への適応で米国食品医薬品局(FDA)により承認されている。著者は、「今回の結果は、本剤の非ステロイド系外用薬としてのさらなる研究を支持するものである」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年5月3日号掲載の報告。

他の抗CGRP抗体への切り替えが有効な片頭痛患者の特徴は

 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を介したモノクローナル抗体(mAb)は、片頭痛治療に有効な治療薬として承認されている。特定のmAbで治療反応が得られなかった患者に対し、別のmAbへ切り替えることで、ある程度の有効性が得られることが示唆されている。イタリア・フィレンツェ大学のLuigi Francesco Iannone氏らは、抗CGRP/リガンドmAbで治療反応が得られなかった患者における抗CGRP/受容体mAbへの切り替えによる治療効果、およびその逆における効果を評価した。その結果、特定の抗CGRP mAbで効果が不十分であった場合、他の抗CGRP mAbへの切り替えは臨床上の重要なオプションである可能性が示唆された。Cephalalgia誌2023年4月号の報告。

軽度の心筋梗塞経験者にβ遮断薬の長期投与は必要ない?

 心筋梗塞を経験した人は通常、その後、何年にもわたってβ遮断薬を服用する。しかし、生じた心筋梗塞が軽度だった場合には、その必要はない可能性のあることが新たな研究で明らかになった。心臓のポンプ機能が正常な心筋梗塞の患者に1年以上β遮断薬を投与しても、投与しなかった患者と比較して心血管アウトカムが改善するわけではないことが示されたのだ。ウプサラ大学(スウェーデン)医学部の循環器専門医であるGorav Batra氏らによるこの研究結果は、「Heart」に5月2日掲載された。

認知症の人に配偶者の死を伝えるべきか?

 認知症の人の配偶者が亡くなった場合に、その事実を伝えるべきだろうか。また、伝えた場合や伝えなかった場合に、どのような問題が発生し得るのだろうか。このような疑問について、国内のケアマネージャーを対象に行った調査の結果が、「European Journal of Investigation in Health, Psychology and Education」に2月8日掲載された。東京大学医学部医学倫理学分野・秩父市立病院の加藤寿氏らの研究によるもの。  認知症の人に対しても自律的な人間として接し、患者本人の知る権利に配慮する必要がある。

砂糖代替品に体重減少効果はなく、むしろ疾病リスク高める/WHOガイドライン

 世界保健機関(WHO)は、2023年5月15日付で、非糖質系甘味料(non-sugar sweeteners:NSS)に関するガイドラインを公開し、体重コントロールや非伝染性疾患(NCD)のリスク低減を目的としてNSSを摂取しないよう勧告する、と発表した。  この勧告は、新たな研究のシステマティックレビューの結果に基づいたもので、NSSの使用は、成人および小児の体脂肪を減らすうえで長期的な利益をもたらさないことを示唆している。さらにシステマティックレビューの結果として、成人の2型糖尿病、心血管疾患、死亡率のリスク増加など、NSSの長期使用による望ましくない影響の可能性が示唆されている。

進行乳がんへのHER3-DXd、効果予測因子は?(ICARUS-BREAST01)/ESMO BREAST 2023

 HR+/HER2-の進行乳がん患者に対し、HER3を標的としたpatritumab deruxtecan(HER3-DXd)を投与した第II相ICARUS-BREAST01試験において、ベースライン時のHER3+の血中循環腫瘍細胞(CTC)数が多い患者、または1サイクル後にHER3+のCTC数が大きく減少した患者では、治療反応が早期に得られやすい傾向にあったことを、フランス・Gustave RoussyのBarbara Pistilli氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2023、5月11~13日)で報告した。  これまで、HER3+の再発/転移乳がん患者(HR+/HER2-、HER2+、トリプルネガティブ)に対する第I/II相U31402-A-J101試験において、HER3-DXdの有効性と安全性が示されている。この有用性はすべてのサブタイプで同様であり、HER3-DXdはHER3の発現量にあまり依存しない可能性が示唆されており、HER3-DXdに対する反応性/抵抗性のバイオマーカーは不明である。

認知症のリスク軽減とスクリーニングに対する意識調査

 認知症に対する薬理学的および非薬理学的介入は進歩しており、将来の認知症予防において、対象を絞ったスクリーニングやライフスタイルの改善に組み込まれていくことが期待される。認知症予防を推進していくうえで、コミュニティの関与を妨げる潜在的な問題を解決することは、認知症予防へのアクセスや実現の可能性を最大化するために重要である。オーストラリア・認知症研究連携センター(DCRC)のNikki-Anne Wilson氏らは、認知症のリスク軽減とスクリーニングに対する現在の考えおよび問題点を調査した。その結果、認知症のリスク軽減行動やスクリーニングに対する意欲が社会人口統計学的要因と有意に関連していることが明らかとなった。Alzheimer's Research & Therapy誌2023年4月10日号の報告。

高サポートのスポーツブラ着用でランニングパフォーマンスが向上

 良質なスポーツブラの長所は、そのサポート力だけではないようだ。サポート力の高いスポーツブラを着用している女性ではランニングパフォーマンスも向上する可能性が、新たな研究で示唆された。米メンフィス大学ブレストバイオメカニクス研究センターのDouglas Powell氏らによる研究で、「Frontiers in Sports and Active Living」に4月21日掲載された。  Powell氏は、「この研究は、胸部のサポートと全身のバイオメカニクスに関する一連の研究調査の一つだ。われわれは、運動中の女性に生じる乳房の痛みを軽減するための方法を見つけたかった」と話している。

白髪が増えるのは毛包の幹細胞に原因がある?

 加齢とともに白髪が増えるのは、髪の色を作る幹細胞が毛包の中で「動けなく」なり、機能しなくなるためであることが、新たな動物実験から明らかになった。米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部皮膚科・細胞生物学科の伊藤真由美氏らによる研究で、「Nature」に4月19日掲載された。  毛髪の色は、毛包のバルジ領域に存在するメラニン細胞幹細胞(McSC)によってコントロールされている。毛髪が成長期に入ると、McSCは活性化されて下方へ移動し、毛髪を黒や金などにするメラニン色素を生成するメラノサイト(色素細胞)へと分化し、その色素が取り込まれて毛髪に色が付く。毛髪が白くなるのは、McSCをメラノサイトに分化させるシステムが機能しなくなるためである。今回、伊藤氏らは、このMcSCシステムが機能不全に陥るメカニズムを解明するために、マウスを用いた実験を行った。

尿酸値の低さとCOVID-19重症化リスク上昇の関連には炎症が関与

 尿酸値が低い新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者は重症化リスクが高く、そのメカニズムとして、尿酸値の低さのために炎症反応が亢進していることの関与が想定されるとする研究結果が報告された。大阪公立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学の藏城雅文氏らの研究によるもので、詳細は「Biomedicines」に3月10日掲載された。  尿酸値は高すぎると痛風などのリスクとなるが、一方で尿酸には強力な抗酸化作用があるため、低すぎることでも腎機能低下などのリスクが上昇することが分かっている。またCOVID-19パンデミック以降は、尿酸値の低さとCOVID-19重症化リスクの高さとの関連を示唆する研究結果も報告されている。ただし、そのメカニズムについてはまだ不明点が多い。藏城氏らは、COVID-19重症化リスク因子である、炎症、肺胞損傷、凝固能亢進という3点と、尿酸値の低さとの関連に焦点を当て、患者データを用いた後方視的観察研究を行った。

SGLT2阻害薬の高齢者への処方の安全性-EMPA-ELDERLY/糖尿病学会

 5月11~13日、鹿児島で第66回日本糖尿病学会年次学術集会(会長:西尾 善彦氏[鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 糖尿病・内分泌内科学 教授])が「糖尿病学維新-つなぐ医療 拓く未来-」をテーマに開催された。  本稿では、近年、心血管疾患への治療適応も拡大しているSGLT2阻害薬について、口演「日本人高齢2型糖尿病患者を対象としたエンパグリフロジンの製販後試験」(矢部 大介氏[岐阜大学医学系研究科糖尿病・内分泌代謝内科学/膠原病・免疫内科学 教授])をお届けする。

新型コロナの発生状況、「定点把握」の発表開始/厚労省

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、2023年5月8日から感染症法上の5類感染症の位置づけとなり、新規患者数の発生状況等の把握は、定点医療機関(全国約5,000ヵ所のインフルエンザ/COVID-19定点)からの報告に基づくものとなった。厚生労働省は5月19日に、これに基づく発生状況の発表を開始した。今回の発表では、5月8~14日の発生状況が報告された。今後、発生状況等については、毎週金曜日14時を目途に公表される予定。

TN乳がんへのHER3-DXd、CelTILスコアが有意に増加(SOLTI TOT-HER3)/ESMO BREAST 2023

 未治療のHER2-早期乳がん患者に対するHER3を標的とした抗体薬物複合体(ADC)patritumab deruxtecan(HER3-DXd)5.6mg/kgを単回投与した第II相SOLTI TOT-HER3試験(part B)の結果、病理学的完全奏効(pCR)の予測スコアとして開発されたCelTILスコアが有意に増加し、ホルモン受容体の発現状況にかかわらず約30%の奏効率(ORR)が得られたことを、スペイン・Vall d'Hebron University HospitalのA.M. Antunes De Melo e Oliveira氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2023、5月11~13日)で報告した。

不眠症治療薬の有効性と安全性の比較~メタ解析

 不眠症のマネジメントにおいては、薬理学的治療が最も一般的に用いられる。しかし、不眠症に対する薬剤クラス間および各薬剤間の相対的な有効性および安全性、そのエビデンスの確実性を比較した研究は十分ではなかった。中国・蘭州大学のBei Pan氏らは、不眠症に対する治療薬の相対的な有効性、安全性、忍容性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、非ベンゾジアゼピンは、総睡眠時間、入眠潜時、中途覚醒に対する改善効果が認められた。他の不眠症に対する薬剤クラスおよび各薬剤においても、不眠症状の改善に対するベネフィットが認められた。著者らは、不眠症治療薬の選択に当たっては、不眠症の病態および各薬剤の安全性、忍容性に基づき治療薬を選択する必要があるとしている。Drugs誌2023年5月号の報告。

絵を用いた簡単なテストで認知症リスクをスクリーニング可能

 簡単なテストの結果を基にかすかな認知障害を検出するSOMI(Stages of Objective Memory Impairment、客観的記憶障害のステージ)システムにより、記憶障害や思考障害の兆候が現れる何年も前に、高齢者の認知症リスクをスクリーニングできるという研究結果が報告された。米アルベルト・アインシュタイン医学校神経学部のEllen Grober氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に4月19日掲載された。  SOMIでは、認知症の症状がない患者に絵を見せた後に、必要であればヒントをもらいながら見たものを思い出す、自由および手掛かりによる選択的想起検査テスト(Free and Cued Selective Reminding Test;FCSRT)の結果に基づき、患者をステージ0(現時点で記憶に問題がなく将来的な認知症リスクも低い)からステージ4(記憶の信頼性が最も低く、将来の認知症リスクが最も高い)までの5段階に分類する。

午前中だけ食べる断続的断食でカロリー制限より糖代謝が改善

 カロリー制限に比べて断続的断食の方が、糖代謝改善効果に優れている可能性を示唆するデータが報告された。アデレード大学(オーストラリア)のXiao Tong Teong氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Medicine」に4月6日掲載された  断続的断食(time-restricted eating;TRE)は、カロリー計算が不要なため手軽で、減量効果に関する一定のエビデンスもあることなどから、近年人気の食事療法となっている。そして新たな研究から、2型糖尿病ハイリスク者の場合、摂食する時間帯を午前中に限定した断続的断食(intermittent fasting plus early time-restricted eating;iTRE)のメリットは、摂取エネルギー量を30%減らすカロリー制限(calorie restriction;CR)よりもメリットが大きい可能性が示された。