医療一般|page:127

米国心臓病学会と米国心臓協会が大動脈疾患の診断・管理のためのガイドラインを発行

 米国心臓病学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)が発表した「大動脈疾患の診断と管理に関するガイドライン2022年版(2022 ACC/AHA Guideline for the Diagnosis and Management of Aortic Disease)」で、集学的な大動脈疾患治療チームの重要性に焦点を当てた勧告が発表され、「Circulation」12月13日号に掲載された。  米マサチューセッツ総合病院のEric M. Isselbacher氏らは、大動脈疾患患者の診断、遺伝的評価、家族のスクリーニング調査、薬物療法、血管内治療と外科的治療、および長期的なサーベイランスに関するガイドラインを作成するために、2019年5月~9月にPubMed、EMBASE、Cochrane Collaboration、CINHL Completeなどのデータベースの包括的な文献検索を実施した。今回のガイドラインでは、胸部大動脈疾患、末梢動脈疾患および二尖大動脈弁疾患の項目が更新された。概要として、以下のテイクホームメッセージが発表された。

米国の成人1型糖尿病患者の肥満有病率は一般人口と同等

 従来、1型糖尿病患者は痩せていることが多いと考えられてきたが、米国ではそのような捉え方が当てはまらなくなってきたことを示すデータが報告された。米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のMichael Fang氏らの研究によるもので、「Annals of Internal Medicine」に2月14日、レターとして掲載された。  この研究は、米国国民健康インタビュー調査に回答した、12万8,000人以上の一般住民のデータを解析するという手法で行われた。著者らは、「本研究は、米国の1型糖尿病患者における過体重・肥満の有病率を調査した初の研究と考えられる」としている。

軽症COVID-19でも脳の構造に変化が生じる可能性

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後には、脳の構造的・機能的な変化が生じており、不安や抑うつ症状のある人ではそのような変化の程度が強いことを示す研究結果が報告された。カンピーナス大学(ブラジル)のClarissa Yasuda氏らの研究によるもので、第75回米国神経学会(AAN2023、4月22~27日、ボストン)での発表に先立ち、研究要旨が2月20日にオンラインで公開された。  COVID-19の急性期以降にさまざまな症状が遷延する、いわゆる「long COVID」では、不安や抑うつといったメンタルヘルス関連症状が現れることが少なくない。ただし、それらの症状の有無と、脳の構造的・機能的な変化の関連はほとんど明らかにされていない。Yasuda氏は、「long COVIDについてはまだ研究すべきテーマが数多く残されている。われわれの研究によって、急性期に軽症であった患者でさえ、罹患から数カ月後に脳の変化が観察されたことは、新たな懸念材料と言える。患者の生活の質(QOL)が長期間低下してしまうことへの予防的な介入法の確立に向けて、さらに多くの研究が必要とされる」と述べている。

HER2+再発/転移乳がんへのT-DXd、予後予測に有望なバイオマーカー/日本臨床腫瘍学会

 トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)はHER2陽性再発/転移乳がんの2次治療以降に承認されているが、信頼できる予後予測バイオマーカーは十分に確立されていない。今回、T-DXdへの反応と予後を予測する血中炎症マーカーを探索すべく後ろ向きに調査した結果、全身免疫-炎症指数(SII)が全生存期間(OS)と有意に関連し、またリンパ球数(ALC)高値と血小板-リンパ球比(PLR)低値が臨床的有用性と関連する可能性が示された。国立がん研究センター中央病院の大西 舞氏が、第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で発表した。

統合失調症患者の体重増加や代謝機能に対する11種類の抗精神病薬の比較

 抗精神病薬の投与量と代謝機能関連副作用との関係を明らかにするため、スイス・ジュネーブ大学のMichel Sabe氏らは、統合失調症患者を対象に抗精神病薬を用いたランダム化比較試験(RCT)の用量反応メタ解析を実施した。その結果、抗精神病薬ごとに固有の特徴が確認され、アリピプラゾール長時間作用型注射剤を除くすべての抗精神病薬において、体重増加との有意な用量反応関係が認められた。著者らは、利用可能な研究数が限られるなどの制限があったものの、本研究結果は、抗精神病薬の用量調整により、体重や代謝機能に対する悪影響を軽減するために有益な情報であるとしている。The Journal of Clinical Psychiatry誌2023年2月8日号掲載の報告。

HER2・リキッド検査追加「大腸がん診療における遺伝子関連検査等のガイダンス」改訂/日本臨床腫瘍学会

 2023年3月、「大腸がん診療における遺伝子関連検査等のガイダンス:第5版」が刊行され、第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)上で改訂のポイントが発表された。  最初に坂東 英明氏(国立がん研究センター東病院 消化管内科)が全体的な説明を行った。  大腸がんにおける遺伝子検査は2010年にKRAS変異検査が登場したことを契機に、2018年にはRASKET-B(RAS/BRAF変異検査)、2020年には血液を用いたRAS変異検査が保険適用となり、2022年にはHER2検査(免疫染色、FISH)、MMR検査(免疫染色)、そして2023年にはBRAF V600E検査(免疫染色)が保険適用となるなど、目まぐるしく新たな検査が登場している。

質の低い教育は高齢期の認知症リスクと関連か

 人種と早期教育は高齢者の認知症リスクと関連するようだ。新たな研究で、子どもの頃に教育の質が低い州の学校に通っていた人と、質の低い教育環境で育てられがちな黒人では、高齢期の認知症発症リスクの高いことが示された。米カイザー・パーマネンテ・北カリフォルニア(KPNC)のYenee Soh氏らによるこの研究結果は、「JAMA Neurology」に2月13日掲載された。  この研究では、1997年1月1日から2019年12月31日までの23年間の縦断データが用いられた。このデータは、米国の大規模なヘルスケアシステムであるKPNCの会員のうち、1964〜1972年に実施された任意調査に参加し、1996年1月1日時点で65歳以上であり、同年には認知症と診断されていなかった、米国出身の非ヒスパニック系の黒人と白人2万788人から収集されたものだった。対象者の平均年齢は74.7歳で、56.5%が女性、18.8%が黒人、81.2%が白人であり、41.0%は高等教育を受けていなかった。対象者の電子カルテから認知症の診断の有無を確認し、認知症の発症と対象者が6歳時に受けた州の教育の質との関連を検討した。教育の質は、学校年度の長さ、生徒と教師の比率、出席率で評価し、三分位値で3つの群(「低い」「中程度」「高い」)に分けた。

幹線道路の近くに住むとアトピー性皮膚炎のリスクが上昇か

 幹線道路からどの程度離れた場所に住んでいるかがアトピー性皮膚炎のリスクに関係することが、米ナショナル・ジューイッシュ・ヘルスのMichael Nevid氏らの研究で示唆された。住んでいる場所が幹線道路から遠く離れている人では、アトピー性皮膚炎を発症するリスクが低い可能性があるという。この研究結果は、米国アレルギー・喘息・免疫学会(AAAAI 2023、2月24~27日、米サンアントニオ)で発表され、要旨は、「The Journal of Allergy and Clinical Immunology」2月号(増刊号)に掲載された。

免疫チェックポイント阻害薬などを横断的に概説、『がん免疫療法ガイドライン』改訂/日本臨床腫瘍学会

 がんに対する免疫を介在した治療方法(がん免疫療法)は、新しい薬剤の開発および臨床試験の蓄積により近年急速に発展している。CTLA-4やPD-1/PD-L1といった免疫チェックポイントを標的とした免疫チェックポイント阻害薬(ICI)ががん種横断的に承認されているほか、エフェクターT細胞療法や、複数のICIを組み合わせて使う併用療法、ICIと従来の抗がん剤、分子標的薬、血管新生阻害薬、放射線治療等とを組み合わせた治療法も続々と登場している。

週1回の投与で血友病に効果を発揮する新しい血液凝固第VIII因子製剤/サノフィ

 サノフィは2023年3月7日、米国食品医薬品局(FDA)が血液凝固第VIII因子製剤efanesoctocog alfaを承認したと発表した。米国におけるefanesoctocog alfaの適応症は、血友病Aの成人患者と小児患者における定期補充療法、出血管理を目的とする出血時補充療法、ならびに周術期管理。  血友病Aは、生涯続く希少疾患であり、血液凝固因子が欠乏する。その結果、血液凝固能の低下による関節での出血によって、関節障害や慢性疼痛が引き起こされ、生活の質(QOL)が低下する恐れがある。

FGFR2融合/遺伝子再構成陽性肝内胆管がんに対するfutibatinib、日本人でも有効(FOENIX-CCA2)/日本臨床腫瘍学会

 新規FGFR阻害薬futibatinib(開発コード:TAS-120)による既治療のFGFR2融合/再構成遺伝子陽性肝内胆管がん(CCA)に対する治療は、日本人でもグローバルと同等の有効性を示した。第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で、国立がん研究センター中央病院の森實千種氏が発表した、futibatinibの国際第II相FOENIX-CCA2試験の日本人サブグループ解析の結果である。

睡眠の時間や質とうつ病リスク~コホート研究

 睡眠の時間や質およびその変化が抑うつ症状リスクに及ぼす縦断的な影響は、よくわかっていない。韓国・Hallym University Dongtan Sacred Heart HospitalのYoo Jin Um氏らは、睡眠の時間や質およびその変化が抑うつ症状の発症にどのような影響を及ぼすかを明らかにするため、検討を行った。その結果、睡眠の時間や質およびその変化は、若年成人の抑うつ症状と独立して関連しており、不十分な睡眠や睡眠の質の低下がうつ病リスクと関連していることが示唆された。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2023年2月14日号掲載の報告。

男性用経口避妊薬の実現に向けて、マウスで有効性確認

 1人の男性が彼女とベッドインする前に、小さな錠剤を口にする。ただしそれはバイアグラではない。セックスの直前に服用するだけで妊娠を防ぐことができる避妊薬だ――。このような男性によるオンデマンドの避妊法が、いつの日か実際に可能になるかもしれない。米ワイルコーネル医科大学のLonny Levin氏らは、精子の泳ぐ力の鍵となる酵素を阻害するという手法を、男性用避妊薬の開発へつなげる研究を行っている。  「Nature Communications」に2月14日掲載された研究によると、実験用マウスにある化合物を投与してその酵素の作用を阻害すると、妊娠が成立しないことが確認された。Levin氏は、「化合物の効果は投与後30分以内に発現し、その後2時間は効果が維持され、翌日には投与前と同じ状態に戻っていた。マウスに何ら悪影響は見られず、性的行動と射精は全く正常だった」と話している。

日本人の睡眠時間と内臓脂肪面積との関連、男女で大きな差

 睡眠時間と内臓脂肪面積の関係は、男性と女性で大きく異なることを示すデータが報告された。8時間以上の長時間睡眠の男性には内臓脂肪型肥満が有意に多く、一方で長時間睡眠の女性には内臓脂肪型肥満が有意に少ないという。東京大学医学部の齊藤活輝氏、同予防医学センターの山道信毅氏らが行った日本人対象横断研究の結果であり、詳細は「Scientific Reports」に11月24日掲載された。  肥満は体に脂肪が過剰に蓄積した状態であり、さまざまな疾患のリスクを高める。特に、内臓の周囲に脂肪が蓄積した内臓脂肪型肥満は、よりハイリスクな状態であることが知られている。近年、BMI(Body Mass Index;肥満指数)高値で定義される肥満と睡眠時間との間に関連のあることが分かり、そのメカニズムとして、睡眠不足によってストレスホルモンや食欲関連ホルモンの分泌、深部体温に影響が生じることなどの関与が想定されている。ただし、BMI高値より正確な肥満指標である内臓脂肪面積高値で定義される内臓脂肪型肥満と睡眠時間の関係については、特にアジアからのデータの報告はほとんどなかった。齊藤氏らはこの点を明らかにするため、日本人成人を対象とする以下の研究を実施した。

再発/転移乳がんへのHER3-DXd、HER2低発現/ゼロでの有効性と日本人での安全性~第I/II相試験サブ解析/日本臨床腫瘍学会

 HER3は乳がんの30~50%に発現しており、HER3を標的とした抗体薬物複合体(ADC)のpatritumab deruxtecan(HER3-DXd)が開発されている。HER3陽性再発/転移乳がんに対する第I/II相U31402-A-J101試験において、本剤の有望な有効性と管理可能な安全性プロファイルを示したことはASCO2022で報告されている。今回、HER2ゼロ(IHC 0)とHER2低発現(IHC 1+、もしくはIHC 2+かつISH-)患者での探索的サブグループ解析と、日本人における安全性について、第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で愛知県がんセンターの岩田 広治氏が発表した。

EGFR-TKI抵抗性NSCLC、HER3-DXd最新データ(U31402-A-U102)/日本臨床腫瘍学会

 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)抵抗性のEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に、抗HER3抗体薬物複合体patritumab deruxtecan(HER3-DXd)を投与したU31402-A-U102試験について、最新の結果が報告された。2023年3月16日~18日に開催された第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で近畿大学病院の林 秀敏氏が発表した。  HER3はHERファミリーに属する受容体型チロシンキナーゼ(RTK)であり、ホモダイマーを形成することはできず、ヘテロダイマーを形成することにより、対となるRTKを活性化するとされている。主にHER2とヘテロダイマーを形成する。

手術前後デュルバルマブ、非小細胞肺がんの無イベント生存を有意に延長(AEGEAN)/AZ

 アストラゼネカ社は2023年3月9日、第III相AEGEAN試験の中間解析の結果を発表した。切除可能な早期(IIA~IIIB期)非小細胞肺がん(NSCLC)を対象とした同試験の中間解析において、術前での化学療法とデュルバルマブの併用および術後デュルバルマブ単剤治療は、術前化学療法単独と比較して、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある無イベント生存期間(EFS)延長を示している。

統合失調症の入院リスクと日照時間の関連性に対する建築環境の影響

 統合失調症と日照時間との関係を検討した研究では、関連性を明らかにすることができていない。要因の1つとして、統合失調症患者の日照時間に対する建築環境の影響が考えられる。中国・安徽医科大学のLi Liu氏らは、統合失調症と日照時間の関連性に対する建築環境の影響について調査を行った。その結果、さまざまな建築環境において、日照時間は統合失調症による入院リスクに影響を及ぼすことが明らかとなった。著者らは、「本結果は、特定の地域居住で脆弱性を有する患者の識別に役立ち、医療資源の合理的な割り当てや悪影響の適時な回避によって、統合失調症発症リスク低減のための助言を政策立案者が提供することを示唆するものである」と述べている。The Science of the Total Environment誌オンライン版2023年2月8日号の報告。

下剤を常用すると認知症リスクが増大する?

 便秘を緩和するために下剤を日常的に使用していると、後年の認知症発症リスクが高まる可能性があるとする研究結果が、「Neurology」に2月22日掲載された。複数のタイプの下剤を併用する人や、浸透圧性下剤(浸透圧を利用して大腸内の水分を増やし、便を柔らかくして排便を促す)を使用している人は、特にリスクが高いという。これまでの研究では、睡眠補助薬やアレルギー薬などのOTC医薬品と認知症との関連が報告されているが、下剤との関連が指摘されたのは今回が初めて。  研究論文の著者の一人で、中国科学院深圳先進技術研究院(中国)准教授のFeng Sha氏は、「しかし、現時点で慌てることはない。この結果を基に何らかの行動を起こす前に、さらに研究を重ねて、結果を確かめる必要がある」と述べている。同氏はさらに、絶対リスクが小さいことや、この研究自体が下剤の使用により認知症リスクが上昇する機序を明らかにするものではないとも述べている。ただし研究グループは、機序に関しての仮説を立てている。それは、下剤の常用により腸内細菌叢が変化することで、腸から脳への神経伝達が影響を受けたり、あるいは脳に影響を及ぼす可能性のある腸内毒素の産生が増えたりするのではないかというものだ。さらに、便秘薬は脳腸相関を妨害し、一部の微生物を脳に到達させてしまう可能性もあるという。

パートナーがいる人はHbA1cが低い

 配偶者がいたり、独身であっても同居しているパートナーがいる人は、一人暮らしの人より、血糖値の平均値を表す検査値であるHbA1cが有意に低いとする論文が発表された。ルクセンブルク大学(ルクセンブルク)のKatherine Ford氏とオタワ大学(カナダ)のAnnie Robitaille氏が、糖尿病と診断されていない人を対象に行った研究の結果であり、「BMJ Open Diabetes Research & Care」に2月6日掲載された。なお、パートナーがいる人において、相手との関係がうまくいっているか否かの違いは、HbA1cに関連がないという。