医療一般|page:24

終末期間近の患者のホスピス移行を促す新プログラムとは?

 終末期にさしかかった患者を救急外来(ED)からホスピスに移行させるプログラムを推進している米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院において、ED受診から96時間以内にホスピスへ移された患者の割合が、プログラム導入前の22.6%から導入後には54.1%に上昇したことが報告された。このようなプログラムが、終末期間近にEDを受診した患者に対するホスピスケアの遅れや見逃しの回避に役立つ可能性を示唆する結果だ。同病院のEDの医師であるChristopher Baugh氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に7月8日掲載された。

最適な食物繊維は人それぞれ

 これまで長い間、食物繊維の摂取量を増やすべきとするアドバイスがなされてきているが、食物繊維摂取による健康上のメリットは人それぞれ異なることが報告された。単に多く摂取しても、あまり恩恵を受けられない人もいるという。米コーネル大学のAngela Poole氏らの研究によるもので、詳細は「Gut Microbes」に6月24日掲載された。  食物繊維は消化・吸収されないため、かつては食品中の不要な成分と位置付けられていた。しかし、整腸作用があること、および腸内細菌による発酵・利用の過程で、健康の維持・増進につながる有用菌(善玉菌)や短鎖脂肪酸の増加につながることなどが明らかになり、現在では「第六の栄養素」と呼ばれることもある。また糖尿病との関連では、食物繊維が糖質の吸収速度を抑え、食後の急激な血糖上昇を抑制するように働くと考えられている。そのほかにも、満腹感の維持に役立つことや、血圧・血清脂質に対する有益な作用があることも知られている。

いびきと認知症リスクとの関連

 年齢とともに増加するいびきと認知症リスクとの関連は、議論の的になっている。英国・オックスフォード大学のYaqing Gao氏らは、いびきと認知症リスクとの関連について観察的および因果関係の調査を実施し、この関連に対するBMIの影響を評価した。Sleep誌オンライン版2024年6月29日号の報告。  ベースライン時、認知症でなかった参加者45万1,250人のデータを用いて、自己申告によるいびきと認知症発症との関連を評価するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。いびきとアルツハイマー病(AD)との因果関係の調査には、双方向2サンプルメンデルランダム化(MR)分析を用いた。

HR+/HER2-早期乳がんにおける早期再発のリスク因子(WJOG15721B)/日本乳癌学会

 HR+/HER2-早期乳がん患者における早期再発のリスク因子を探索したWJOG15721B試験の結果、若年、静脈侵襲、病理学的浸潤径、病理学的リンパ節転移の個数などが独立したリスク因子として同定されたことを、国立がん研究センター東病院の綿貫 瑠璃奈氏が第32回日本乳癌学会学術総会で発表した。  HR+/HER2-乳がんで、術後内分泌療法開始後3年以内の早期に再発した患者の予後は不良であることが報告されている。monarchE試験では再発高リスクのHR+/HER2乳がん患者において内分泌療法にアベマシクリブを加えることで有意な無浸潤疾患生存期間(iDFS)の延長が示されている。monarchE試験の適格基準を満たす患者は極めて再発高リスクであり、この基準を満たさない早期再発の高リスク集団が存在する可能性がある。そこで研究グループは、HR+/HER2-乳がんの臨床病理学的因子や周術期治療と術後3年以内の再発との関連を調べ、早期再発のリスク因子を同定することを目的として後方視的多施設共同観察研究を実施した。

腎機能低下RAへの生物学的製剤、安全性・有効性が明らかに

 血液透析(HD)患者を含む慢性腎臓病(CKD)を併存する関節リウマチ(RA)患者の治療薬についてのエビデンスは限られている。今回、虎の門病院腎センター内科・リウマチ膠原病科の吉村 祐輔氏らはCKD患者における生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(bDMARD)の有効性・安全性を明らかにした。腎機能低下群においてもbDMARDの継続率は概ね保持され、とくに、インターロイキン-6(IL-6)阻害薬は、推定糸球体濾過量(eGFR)が30mL/分/1.73m2未満の患者で薬剤継続率が有意に高く、無効による中止が少なかったことから、IL-6阻害薬はほかの bDMARDと比較し、単剤での治療がより有効であることを示唆した。Annals of the Rheumatic Diseases誌2024年7月4日号オンライン版掲載の報告。

GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬、MASLD併発2型糖尿病のCVイベントを抑制

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)とSGLT2阻害薬(SGLT2i)は、DPP-4阻害薬(DPP-4i)に比べて、MASLD(代謝異常関連脂肪性肝疾患)併発2型糖尿病患者の心血管(CV)イベントや肝臓イベントのリスクを低下させる可能性を示唆するデータが報告された。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院およびハーバード大学医学大学院のAlexander Kutz氏らが、米国内分泌学会(ENDO2024、6月1~4日、ボストン)で発表した。  Kutz氏らは、2013~2020年のメディケアデータベース、および、2013~2022年の米国内の大規模健康保険データベースを利用して、GLP-1RA、SGLT2i、DPP-4iにより治療が開始されていたMASLD併発2型糖尿病患者のCVイベント(急性心筋梗塞、虚血性脳卒中、心不全入院)、および肝臓イベントなどの発生リスクを調査した。

大豆食品は子どもの知能を高める

 大豆食品由来のイソフラボンの摂取量が多い学齢期(7〜13歳)の子どもは、摂取量の少ない子どもよりも注意力と思考能力の高いことが、新たな研究で明らかになった。米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のAjla Bristina氏らによるこの研究結果は、米国栄養学会(ASN)年次総会(NUTRITION 2024、6月29日〜7月2日、米シカゴ)で発表された。  大豆や大豆食品にはイソフラボンが豊富に含まれている。イソフラボンは、成人を対象にした研究では記憶力を向上させることが示されているが、子どもを対象にイソフラボンのベネフィットを検討した研究はあまり実施されていない。また、Bristina氏によると、子どもが日常的に大豆食品を摂取する習慣は米国にはあまりないという。

地中海食はがんサバイバーの寿命を延ばす?

 地中海食は、がんサバイバーが心臓の健康を維持し、長生きするのに役立つことが、イタリアの研究で示唆された。ウンベルト・ベロネージ財団(イタリア)のMaria Benedetta Donati氏らが800人以上のがんサバイバーのデータを分析したこの研究の詳細は、「JACC CardioOncology」に7月2日掲載された。  地中海食は、新鮮な果物や野菜、全粒穀物、種子類、ナッツ類、豆類、オリーブオイルを多く摂取することに重点を置いた食事法である。この食事法では、魚介類の週2回以上の摂取、乳製品および脂肪分の少ないタンパク質を毎日少量摂取することを推奨している。

双極性障害、I型とII型の自殺リスク比較

 双極性障害(BD)は、疾病負担が大きく、自殺による死亡リスクの高い疾患である。これまで、双極性障害II型(BD-II)は、BDの軽症型とされてきたが、近年の文献では、双極性障害I型(BD-I)と同様の疾病負担と自殺傾向を有するとも報告されている。カナダ・Brain and Cognition Discovery FoundationのDonovan A. Dev氏らは、BD-IIのリスクを定量化し、BD-IとBD-IIにおける自殺リスクを評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2024年6月18日号の報告。

一次乳房再建における有害事象のリスク因子/日本乳癌学会

 2013年に乳房インプラントが保険収載されて以降乳房再建は増加傾向にあり、2020年には遺伝性乳がん卵巣がん症候群の予防的切除も保険収載された。一方で、乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)の発生が報告され、再建後有害事象のリスク因子についても多数の報告があるが、結果は一致していない。日本乳癌学会班研究(枝園班)では、一次乳房再建施行患者における有害事象のリスク因子について多施設共同の後ろ向き解析を実施し、聖マリアンナ医科大学の志茂 彩華氏が結果を第32回日本乳癌学会学術総会で発表した。

キエジ・ファーマ・ジャパン、希少疾患に注力 脂肪萎縮症治療薬メトレレプチンを承継

 2024年7月19日、キエジ・ファーマ・ジャパン株式会社は塩野義製薬株式会社からメトレレプチン(遺伝子組み換え)皮下注用製剤の製造販売承認承継の詳細と日本における今後の事業戦略などについて記者会見を開催した。  今回のセミナーでは、キエジグループ取締役 希少疾患事業部門長 ジャコモ・キエジ氏、キエジグループ希少疾患事業部 欧州および成長市場責任者 エンリコ・ピッチニーニ氏、キエジ・ファーマ・ジャパン 代表取締役社長 中村 良和氏らがそれぞれグループの歴史や事業戦略、日本法人のビジョンや事業戦略について説明を行った。

タトゥーを入れると悪性リンパ腫になりやすい

 近年、欧米では自己表現の1つとして思い思いのタトゥーを入れる人が増えてきている。ただ、以前からタトゥーの弊害として施術での感染症の罹患などが言われてきた。タトゥーの施術で使用されるインク成分への長期的曝露がもたらす健康への影響はほとんど理解されていないことから、スウェーデンのルンド大学医学部臨床検査部産業・環境医学部門のChristel Nielsen氏らの研究グループは、タトゥー施術と悪性リンパ腫全体およびリンパ腫亜型との関連を調査した。その結果、タトゥーのある人はリンパ腫全体のリスクが高いことがわかった。EClinicalMedicine誌オンライン版2024年5月21日の報告。

eGFRは心臓突然死のリスク予測因子

 推算糸球体濾過値(eGFR)は、心不全患者の心臓突然死の独立予測因子であり、リスク予測において左室駆出率(LVEF)にeGFRを追加することが有用であるという研究結果が発表された。藤田医科大学ばんたね病院循環器内科の祖父江嘉洋氏らが行った前向き研究の成果であり、「ESC Heart Failure」に6月10日掲載された。  心不全患者の心臓突然死の予防において、LVEFおよびNYHA心機能分類に基づき植込み型除細動器(ICD)の適応が考慮される。ただ、軽度から中等度の慢性腎臓病(CKD)を有する患者に対するICDの有用性に関して、これまでの研究の結果は一貫していない。そこで著者らは今回、心臓突然死における腎機能の役割を検討するため、2008年1月から2015年12月に非代償性心不全で入院したNYHA分類II~III度の患者を対象として、心臓突然死の発生を追跡し、心臓突然死の予測因子を検討する前向き研究を行った。

日本人で増加傾向の口腔がん、その最大要因とはー診療ガイドライン改訂

 『口腔癌診療ガイドライン2023年版 第4版』が昨年11月に4年ぶりに改訂された。口腔がんは歯科医も治療を担う希少がんだが、口腔がんを口内炎などと見間違われるケースは稀ではないという。そこで今回、日本口腔腫瘍学会学術委員会『口腔癌診療ガイドライン』改定委員会の委員長を務めた栗田 浩氏(信州大学医学部歯科口腔外科学 教授)に口腔がんの疫学や鑑別診断などについて話を聞いた。

HR+/HER2-進行乳がん1次治療、リアルワールドでのパルボシクリブ+フルベストラント/+AIの効果/日本乳癌学会

 HR+/HER2-進行乳がん1次治療におけるパルボシクリブ+フルベストラントとパルボシクリブ+アロマターゼ阻害薬(AI)の効果をリアルワールドデータ(RWD)で評価した結果、ほぼ同様な傾向であったことを京都大学の増田 慎三氏が第32回日本乳癌学会学術総会で発表した。後治療の検討から、増田氏は「後治療におけるホルモン療法の期間を伸ばす工夫が今後大切」とした。  HR+/HER2-進行乳がんにおいてパルボシクリブと内分泌療法の併用療法が内分泌療法単独と比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することは第III相試験において示されているが、実臨床下でフルベストラント併用とAI併用を別々に評価した研究はほとんどない。本研究では、HR+/HER2-進行乳がんに1次または2次治療としてパルボシクリブ+内分泌療法を行った際の実臨床下での有用性を評価した国内20施設の多施設観察研究のデータから、1次治療として登録された420例のうち、術後補助療法終了から再発までの期間(TFI)が12ヵ月以上、および初診時Stage IVの症例を解析対象とした。併用した内分泌療法別に、患者背景、実臨床下でのPFS(rwPFS)、全生存期間(OS)、化学療法開始までの期間(CFS)、後治療の内訳を評価した。

日本の精神科ガイドライン著者におけるCOI分析

 臨床診療ガイドライン(CPG)は、エビデンスに基づく標準的な患者ケアを提供するために、必要不可欠である。しかし、CPGの著者に対する金銭的な利益相反(COI)により、著者への信頼性が損なわれる可能性がある。東北大学の村山 安寿氏らは、日本の精神科CPGの著者におけるCOIの範囲および規模を調査するため、本研究を実施した。BMJ Open誌2024年6月21日号の報告。  製薬会社より開示された支払い金額を横断的に分析し、日本の双極性障害/うつ病のCPGの著者に対し2016〜20年に支払われた講演謝礼、コンサルティング料、執筆謝礼などを評価した。

感謝の気持ちは寿命を延ばす

 感謝の気持ちを持つことは長生きの秘訣となる可能性が、新たな研究で示唆された。Nurses’ Health Study(NHS)に参加した4万9,000人以上の女性を対象にしたこの研究では、感謝の気持ちを測定する質問票での得点が高かった女性では、低かった女性に比べてあらゆる原因による死亡(全死亡)のリスクが9%低いことが明らかになったという。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のYing Chen氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Psychiatry」に7月3日掲載された。  Chen氏は、「感謝の気持ちを持つことで精神的苦痛が軽減する一方で、感情的ウェルビーイングと社会的ウェルビーイングは向上する可能性のあることは、過去の研究で示唆されている。しかし、感謝の気持ちと身体的健康との関連について分かっていることは少ない」と話している。

ベンゾジアゼピン系薬剤は認知症リスクを上げるか

 ベンゾジアゼピン系薬剤の使用が認知症リスクを増加させる可能性は低いが、脳の構造に長期にわたってかすかな影響を及ぼす可能性のあることが、新たな研究で報告された。認知機能の正常なオランダの成人5,400人以上を対象にしたこの研究では、同薬剤の使用と認知症リスクの増加との間に関連性は認められなかったという。研究グループは、ベンゾジアゼピン系薬剤の使用による認知症リスクの増加を報告した過去の2件のメタアナリシスとは逆の結果であると述べている。エラスムス大学医療センター(オランダ)のFrank Wolters氏らによるこの研究の詳細は、「BMC Medicine」に7月2日掲載された。

尿アルブミン/クレアチニン比の基準値、30mg/gCr未満は適切?

 尿アルブミン/クレアチニン比(UACR、単位:mg/gCr)の基準値は30未満とされているが、基準値範囲内であっても、全死亡および心血管疾患リスクに影響を及ぼすことが示唆された。イスラエル・ヘブライ大学のDvora R. Sehtman-Shachar氏らの研究グループは、UACR 30未満の範囲で、全死亡および心血管疾患との関連を調査した研究を対象として、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、UACRが基準値範囲内であっても正常高値では、心血管疾患および全死亡のリスクが上昇した。本研究結果は、Diabetes, Obesity and Metabolism誌オンライン版2024年7月17日号に掲載された。

デュルバルマブ+化学療法±オラパリブの日本人子宮体がんに対する成績(DUO-E)/日本婦人科腫瘍学会

 進行子宮体がんに対してデュルバルマブを含む治療と標準化学療法を比較する第III相試験DUO-Eの日本人サブセット解析が、第66回日本婦人科腫瘍学会学術大会で久留米大学の西尾 真氏により発表された。  DUO-E試験では、進行再発子宮体がん1次治療のITT集団において、化学療法・デュルバルマブ併用+デュルバルマブ維持療法群および、同併用+デュルバルマブ・オラパリブ維持療法群ともに、化学療法と比べ有意に無増悪生存期間(PFS)の改善が報告されている。対化学療法群におけるハザード比(HR)はそれぞれ0.71(95%信頼区間[CI]:0.57〜0.89、p=0.003)、0.55(95%CI:0.43〜0.69、p<0.0001)であった。