医療一般|page:36

セマグルチドを使用しても自殺リスクは上昇せず

 肥満症治療薬であるGLP-1受容体作動薬のセマグルチドの人気が急上昇する一方で、その潜在的な副作用に対する懸念も高まりを見せている。しかし、新たな研究により、そのような懸念の一つが払拭された。米ペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院ペン自殺予防センター所長のGregory Brown氏らによる研究で、セマグルチドの使用により抑うつ症状や自殺念慮、自殺行動のリスクは増大しないことが示されたのだ。セマグルチドを有効成分とするオゼンピックやウゴービを製造するノボ ノルディスク社の資金提供を受けて実施されたこの研究の詳細は、「JAMA Internal Medicine」に9月3日掲載された。  2型糖尿病治療薬として開発されたセマグルチドは、臨床試験で肥満症治療薬としての有効性が明らかにされて以降、大きな注目を集め、今や医師が患者に週1回のセマグルチドの皮下注射を処方することは珍しいことではなくなっている。実際に、2023年には500万人もの米国人がセマグルチドを処方されており、そのような人の10人に4人は体重管理のために同薬を使用しているという。

愛情に関わる脳領域を科学的に証明

 愛情は脳のどこに存在するのだろうか。また何に対する愛情が最も強いのだろうか。機能的MRI(fMRI)を用いた新たな研究で、その答えが示唆された。それによると、愛情を感じているときには主に社会的手掛かりの処理に関連する脳領域が活性化し、最も強い脳活動を引き起こしたのは子どもに対する愛情であったという。アアルト大学(フィンランド)のParttyli Rinne氏らによるこの研究の詳細は、「Cerebral Cortex」に8月26日掲載された。  この研究は、6つの対象(恋人や配偶者、自分の子ども、友人、見知らぬ人、ペット、自然)に対する愛情に関する短い物語を聞き、それぞれについてじっくり考えている間の脳活動をfMRI検査により調査したもの。対象は、1人以上の子どもを持ち、愛情を注ぐ配偶者や恋人などがいることを報告した、28〜53歳の成人55人(平均年齢40.3歳、女性29人)だった。55人中27人はペットを飼っていた。

オシメルチニブ耐性NSCLCへのamivantamab+化学療法、第2回OS中間解析(MARIPOSA-2)/ESMO2024

 オシメルチニブ単剤療法で病勢進行が認められたEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、amivantamab+化学療法±lazertinibの併用療法は、化学療法単独と比べて無増悪生存期間(PFS)を改善したことが、国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA-2試験」で報告されている。また、同時に実施された全生存期間(OS)の第1回中間解析において、amivantamab+化学療法の併用療法はOSも良好な傾向にあった。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)において、英国・Royal Marsden HospitalのSanjay Popat氏がOSの第2回中間解析の結果を発表した。

未治療TN乳がんへのカピバセルチブ、化学療法への上乗せ効果示さず(CAPItello-290)/ESMO2024

 切除不能な局所進行または転移を有する未治療のトリプルネガティブ(TN)乳がん患者を対象に、1次治療としてのカピバセルチブ+パクリタキセル併用療法の有効性および安全性を、プラセボ+パクリタキセルと比較した第III相CAPItello-290試験の結果、全生存期間(OS)は有意に改善しなかったものの、無増悪生存期間(PFS)の改善は認められたことを、米国・UT Southwestern Medical CenterのHeather L. McArthur氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表した。

局所進行直腸がん、TNT+非手術的管理後の遠隔転移とctDNAによる予後予測(NO-CUT)/ESMO2024

 局所進行直腸がんでは、術前に化学療法や放射線療法を集中的に行って腫瘍縮小を最大限に図り、局所制御と遠隔転移のリスクを低減するTotal Neoadjuvant Therapy(TNT)が登場し、世界的な標準治療となりつつある。TNT後に臨床学的完全奏効(cCR)が得られた患者では非手術的管理も検討され、その後の局所転移は19~34%程度と報告されている。非手術的管理後の遠隔転移率と、ctDNA解析によるTNT後の奏効率のバイオマーカー探索を目的とした多施設単群第II相NO-CUT試験が行われ、イタリア・Niguarda Cancer CenterのAlessio Amatu氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)のPresidential Symposiumで初回の結果報告をした。

オンコマインDx、EGFRエクソン20挿入変異肺がんに対するamivantamab+化学療法のコンパニオン診断として承認/サーモフィッシャ

 サーモフィッシャーサイエンティフィックは2024年9月10日、次世代シーケンシングコンパニオン診断システム「オンコマインDx Target Test マルチCDxシステム(オンコマインDx)」に関して、Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)が申請中の「EGFR遺伝子エクソン20挿入変異を有する手術不能又は再発非小細胞肺癌に対するアミバンタマブと化学療法の併用療法」を対象としたコンパニオン診断システムとして、一部変更承認を取得したことを発表した。

精神疾患患者の認知機能と自殺リスクとの関連~メタ解析

 うつ病や双極症などの治療可能な精神疾患は、自殺リスク因子の大部分を占めており、これらの患者は神経認知機能障害を伴うことが少なくない。カナダ・トロント大学のGia Han Le氏らは、統合失調症感情障害、双極症、うつ病患者における認知機能と自殺念慮/自殺企図との関連を調査した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2024年8月19日号の報告。  2024年4月までに公表された研究をPubMed、Ovid、Scopusのデータベースよりシステマティックに検索した。認知機能と自殺念慮/自殺企図との関連についてエフェクトサイズが報告された適格研究を、ランダム効果モデルを用いてプールした。

米国の2型糖尿病有病率が過去10年で2割近く上昇

 米国では過去10年間で2型糖尿病有病率が約20%上昇したとする論文が、「Diabetes, Obesity and Metabolism」に7月18日掲載された。論文の筆頭著者である、米ジョージア大学のSulakshan Neupane氏は同大学発のリリースの中で、「米国では糖尿病患者数が日々増加していて、今後数年間でさらに増加するだろう。糖尿病のために発生する経済的負担は、直接的な医療費のほかに生産性の低下などの間接的なものも含めれば、約4120億ドルに上る。既に莫大な額だが、糖尿病患者の増加を背景に、今後さらに増大するだろう」との予測を述べている。

限局型小細胞肺がんへのデュルバルマブ地固め、OS・PFSサブグループ解析(ADRIATIC)/ESMO2024

 限局型小細胞肺がん(LD-SCLC)患者を対象とした国際共同第III相無作為化比較試験「ADRIATIC試験」の第1回中間解析において、同時化学放射線療法(cCRT)後のデュルバルマブ地固め療法が全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことが報告されている。本試験では、予防的頭蓋照射(PCI)の有無は問わず、cCRT時の放射線照射の回数も1日1回と1日2回が許容されていた。そこで、それらの違いによるOS・PFSへの影響を検討するサブグループ解析(post hoc解析)が実施された。本結果は、オランダ・アムステルダム大学のSuresh Senan氏によって欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表された。

乳がん脳転移例へのT-DXd、安定/活動性によらず良好な結果(DESTINY-Breast12)/ESMO2024

 脳転移の有無を問わず、前治療歴のあるHER2陽性(+)の転移を有する乳がん患者を対象とした第IIIb/IV相DESTINY-Breast12試験の結果、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)は脳転移を伴う患者で全身および中枢神経系における良好な抗腫瘍活性を示し、その活性は持続的であったことを、米国・ダナファーバーがん研究所のNancy U. Lin氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表し、Nature Medicine誌オンライン版2024年9月13日号に同時掲載された。  これまで、T-DXdのDESTINY-Breast01、02、03試験において、ベースライン時に脳転移があるHER2+乳がん患者の探索的プール解析の結果、既治療で安定した脳転移患者および未治療で活動性の脳転移患者で高い頭蓋内奏効率(ORR)が得られたことが報告されている。DESTINY-Breast12試験は、ベースライン時に脳転移がある患者とない患者の2つの別々のコホートによって、脳転移の有無を問わずにT-DXdの有効性と安全性を前向きに評価した非比較研究である。対象は、抗HER2療法の前治療歴があるHER2+の転移乳がん患者であった。脳転移を有するHER2+の転移乳がん患者を含めたT-DXdの前向き研究としては最大規模となる。最終データカットオフは2024年2月8日。

JN.1系統対応の次世代mRNA(レプリコン)コロナワクチン、一変承認取得/Meiji Seika

 Meiji Seikaファルマは9月13日のプレスリリースにて、同社の新型コロナウイルス感染症に対するオミクロン株JN.1系統に対応した次世代mRNA(レプリコン)「コスタイベ筋注用」について、製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表した。  同社は、2024年5月29日に開催された「第2回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの製造株について検討する小委員会」にて、2024/25シーズン向けの新型コロナワクチンの抗原構成がJN.1系統に取りまとめられたことを受け、同年5月31日に本剤のJN.1系統に対応したワクチンの日本における一部変更承認申請を行った。

この20年間、18~26歳で急増しているがんは?

 過去20年間の生活習慣の変化により、若者ががんの危険因子にさらされる機会が増えている可能性があるが、データベースによる研究報告はない。今回、イタリア・Institute of Biochemistry and Cell Biology, National Council of ResearchのAlessandro Cavazzani氏らが、米国・国立がん研究所のがん登録データベース(SEER22)を用いて、部位別のがん罹患率の2000~20年の傾向を調べたところ、18~26歳の女性における膵がん罹患率の平均年変化率が最も高く、年に10%近く増加していた。BMC Medicine誌2024年9月4日号に掲載。

統合失調症の全死亡リスク、抗精神病薬LAI vs.経口剤~メタ解析

 統合失調症患者に対する抗精神病薬治療は、死亡率の低下に寄与しているが、抗精神病薬の治療アドヒアランスが低いことは問題である。長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬を用いると、この問題を部分的に対処可能であると考えられるが、経口抗精神病薬と比較した全死亡率への影響は不明である。スペイン・バスルト大学のClaudia Aymerich氏らは、LAI抗精神病薬治療を行っている患者における全死亡率、自殺死亡率、非自殺死亡率について、経口抗精神病薬治療を行った場合との比較を行った。Molecular Psychiatry誌オンライン版2024年8月22日号の報告。

中等症~重症の尋常性乾癬、経口TYK2阻害薬zasocitinibが有望

 チロシンキナーゼ2(TYK2)に高い選択性を示すアロステリック阻害薬zasocitinib(TAK-279)は、尋常性乾癬の新たな経口治療薬として有望であることが示された。米国・カリフォルニア大学のApril W. Armstrong氏らが、海外第IIb相二重盲検無作為化比較試験の結果を報告した。本試験において、1日1回5mg以上のzasocitinibはプラセボと比較して、12週間にわたり良好な皮膚症状の改善が認められた。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年8月21日号掲載の報告。  研究グループは、中等症~重症の尋常性乾癬患者を対象としてzasocitinibの有効性、安全性および忍容性を評価することを目的に、2021年8月11日~2022年9月12日の期間に米国47施設とカナダ8施設で試験を実施した。

国内初承認のダニ媒介性脳炎ワクチンを発売/ファイザー

 ファイザーは9月13日付のプレスリリースにて、成人および小児におけるダニ媒介性脳炎の発症を予防する国内初の承認ワクチン「タイコバック(R)水性懸濁筋注0.5mL」および「タイコバック(R)小児用水性懸濁筋注0.25mL」(一般名:組織培養不活化ダニ媒介性脳炎ワクチン)を、同日より発売したことを発表した。  本剤は、1970年代にIMMUNO社が開発した不活化ダニ媒介性脳炎ウイルスワクチンで、最初に市販された組織培養由来ダニ媒介性脳炎ワクチン。その後の改良を経て、ダニ媒介性脳炎の流行国を中心に使用されている。ファイザーは、2015年にバクスターから本剤の製造販売承認を承継した。

双極症に対するリチウム使用、23年間の変遷

 薬剤の疫学データによると、双極症に対するリチウムの使用は、徐々に減少しており、他の適応症への注目も低下している。ドイツ・ミュンヘン大学のWaldemar Greil氏らは、1994~2017年のリチウム処方の変化を調査した。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2024年8月22日号の報告。  ドイツ、オーストリア、スイスの精神科病院を含む精神医学における薬物安全性プログラムAMSPのデータを用いて、1994~2017年のリチウム処方を分析した。さまざまな疾患に対するリチウムの使用は、2001年以前と以降および3つの期間(T1:1994~2001年、T2:2002~09年、T3:2010~17年)により比較を行った。

小児の風邪への食塩水点鼻、有症状期間を2日短縮か/ERS2024

 食塩水は風邪症候群の症状の軽減に用いられることがあるが、小児における有効性は明らかになっていない。そこで、上気道感染症を有する小児に対する高張食塩水の点鼻の有用性を検討する無作為化比較試験「ELVIS-Kids試験」が実施された。その結果、高張食塩水を点鼻することで有症状期間の中央値が2日短縮することが示された2024年9月7~11日にオーストリア・ウィーンで開催された欧州呼吸器学会(ERS International Congress 2024)において、英国・エディンバラ大学のSteve Cunningham氏が報告した。

IGTからの糖尿病発症を4年防げば長期予後が改善する

 耐糖能異常(IGT)該当者が食事・運動療法によって糖尿病未発症の状態を4年間維持できれば、長期予後が改善することを示すデータが報告された。ただし、未発症期間が4年よりも短い場合、この効果は得られないという。中国医学科学院・北京協和医学院(中国)のXin Qian氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS Medicine」に7月9日掲載された。  IGTなどの糖尿病予備群の状態から生活習慣を改善し糖尿病発症を防ぐことで、将来の合併症リスクが低下することは、既に複数の研究によって示されている。しかし、糖尿病発症を何年先延ばしにすればそのような効果を期待できるのかは、これまで明らかにされていない。そこでQian氏らは、中国・大慶市(Da Qing)在住のIGT該当者に対する6年間の食事・運動介入による糖尿病抑制効果を検討した「大慶糖尿病予防研究(DQDPS)」のデータを事後解析し、この点を検討した。

仕事のストレスで心房細動に?

 職場で強いストレスにさらされていて、仕事の対価が低いと感じている場合、心房細動のリスクがほぼ2倍に上昇することを示す研究結果が報告された。ラヴァル大学(カナダ)のXavier Trudel氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に8月14日掲載された。  心房細動は不整脈の一種で、自覚症状として動悸やめまいなどを生じることがあるが、より重要な点は、心臓の中に血液の塊(血栓)が形成されやすくなることにある。形成された血栓が脳の動脈に運ばれるという機序での脳梗塞が起こりやすく、さらにこのタイプの脳梗塞は梗塞の範囲が広く重症になりやすい。

脳梗塞入院時の口腔状態が3カ月後の生活自立度と有意に関連

 脳梗塞で入院した時点の歯や歯肉、舌などの口腔状態が良くないほど、入院中に肺炎を発症したり、退院後に自立した生活が妨げられたりしやすいことを示すデータが報告された。広島大学大学院医系科学研究科脳神経内科学の江藤太氏、祢津智久氏らが、同大学病院の患者を対象に行った研究の結果であり、詳細は「Clinical Oral Investigations」に7月19日掲載された。  全身性疾患の予防や治療における口腔衛生の重要性に関するエビデンスが蓄積され、急性期病院の多くで入院中に口腔ケアが行われるようになってきた。ただし、脳梗塞発症時点の口腔状態と機能的転帰や院内肺炎リスクとの関連については不明点が残されていることから、祢津氏らはこれらの点について詳細な検討を行った。