医療一般|page:116

不眠症に対する認知療法、行動療法、認知行動療法の長期有効性比較

 不眠症を軽減するためには、長期的な治療が重要である。米国・カリフォルニア大学バークレー校のLaurel D. Sarfan氏らは、不眠症治療に対する認知療法(CT)、行動療法(BT)、認知行動療法(CBT)の長期的な有効性について、相対的に評価した。その結果、セラピストによるCBT、BT、CTの提供は、長期にわたり不眠症による夜間および日中の症状を改善させる可能性が示唆された。Journal of Consulting and Clinical Psychology誌オンライン版2023年2月23日号の報告。

新型コロナワクチン接種後のアレルギー反応は本物?

 ファイザー社製またはモデルナ社製の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン(以下、新型コロナワクチン)接種後のアナフィラキシーの発生率は、他のワクチンでの発生率に比べると高い。こうした中、この現状に疑問を投げかける小規模臨床試験の結果が報告された。同試験では、予防接種ストレス関連反応(ISRR)の症状の多くがアナフィラキシーの症状と酷似しているため、新型コロナワクチンでは、ワクチン接種後に生じたISRRがアナフィラキシーとして報告されるケースが多い可能性が示唆されたという。米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のMuhammad Khalid氏らが実施したこの研究結果は、米国アレルギー・喘息・免疫学会(AAAAI 2023、2月24〜27日、米サンアントニオ)で発表されるとともに、その要旨が「The Journal of Clinical Immunology」2月号(増刊号)に掲載された。

糖尿病患者、女性は男性より静脈血栓塞栓症を発症しやすい

 糖尿病患者は非糖尿病者よりも静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクが高いこと、特に女性患者でリスク差が大きく、かつ男性糖尿病患者との比較でもリスク差がある可能性を示すデータが報告された。ウィーン医科大学(オーストリア)のCarola Deischinger氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes Research and Clinical Practice」12月号に掲載された。  糖尿病と心血管疾患(CVD)リスクとの関連については豊富なエビデンスがあり、糖尿病に伴う凝固亢進状態はCVDのみならずVTEリスクも押し上げることが想定される。ただし、糖尿病とCVDの関連に比べ、糖尿病とVTEに関するエビデンスはまだ十分でない。特に、性差についてはほとんど分かっていない。

ハダカデバネズミは生涯にわたって妊娠可能

 ハダカデバネズミには、さまざまな面で他の哺乳類にはない特徴があるが、とりわけ生涯にわたって妊娠可能な状態が続くという点は例外的である。米ピッツバーグ大学のMiguel Brieno-Enriquez氏らは、こうしたハダカデバネズミの妊孕性の背景にある理由を突き止めることで、不妊に悩む人間のカップルに対する新たな治療法への道を見出せる可能性があると考え、研究を実施。その結果を、「Nature Communications」2月21日号に発表した。  Brieno-Enriquez氏は、「ハダカデバネズミは最も風変わりな哺乳類だ。例えば、体の大きさはマウスと同程度なのに、その寿命は30年以上であり、げっ歯類の中で最も寿命が長い。また、がんに罹患することはほぼ皆無で、痛みを感じることもない。さらに、地下で群れをなして生息し、女王ネズミだけが子を生むことができる。しかし、私を最も驚かせたのは、ハダカデバネズミが高齢になっても妊孕性が低下することなく、子どもを生み続けることだった」と同大学のニュースリリースで語っている。そして、「われわれは、どうしたらそれが可能になるのかを明らかにしたいと考えた」と研究背景について話す。

日本化薬のペメトレキセドGE、非小細胞肺がんの術前補助療法の適応取得

 日本化薬は、2023年3月27日、厚生労働省よりペメトレキセド点滴静注液100mg「NK」・同500mg「NK」・同800mg「NK」、ペメトレキセド点滴静注用100mg「NK」・同500mg「NK」・同800mg「NK」について、「扁平上皮癌を除く非小細胞肺癌における術前補助療法」に対する効能・効果、ならびに用法・用量に係る医薬品製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表した。

ICIの継続判断にも有用、日本初のOnco-cardiologyガイドライン発刊

 本邦初となる『Onco-cardiologyガイドライン』が第87回日本循環器学会学術集会の開催に合わせて3月10日に発刊された。これまで欧州ではESC(European Society of Cardiology、欧州心臓病学会)などがガイドラインを作成・改訂しており、国内でもガイドライン発刊が切望されていたことから、日本臨床腫瘍学会と日本腫瘍循環器学会が協働しMindsに準拠したものを作成した。今回、学術集会の会長企画シンポジウム6「OncoCardiology:診断と治療Up-to-Date」において、ガイドライン(以下、GL)のポイントについて発表された。

T-DXd、HER2低発現乳がんに適応拡大/第一三共

 第一三共は2023年3月27日、HER2に対する抗体薬物複合体(ADC)トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、商品名:エンハーツ)について、「化学療法歴のあるHER2低発現の手術不能又は再発乳癌」の効能又は効果に係る国内製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表した。  本適応は、2022年6月開催の米国臨床腫瘍学会(ASCO2022)で発表された、化学療法による前治療を受けたHER2低発現の乳がん患者を対象としたグローバル第III相試験(DESTINY-Breast04)の結果に基づくもので、2022年6月に国内製造販売承認事項一部変更承認申請を行い、優先審査品目に指定されていた。国内において初めてHER2低発現の乳がんを対象に承認された抗HER2療法となる。

HER2低発現乳がんへのT-DXd、アジア人集団でも有効性・安全性を確認(DESTINY-Breast04)/日本臨床腫瘍学会

 化学療法歴を有するHER2低発現の切除不能または転移のある乳がん患者(MBC)に対して、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)と治験医師選択の化学療法(TPC)を比較した第III相DESTINY-Breast04試験のアジア人サブグループ解析において、T-DXd群では全体集団と同様にアジア人集団でも有意に無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が延長し、管理可能な安全性プロファイルであったことを、昭和大学の鶴谷 純司氏が第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で発表した。

コロナ疾患後症状患者、1年以内の死亡/重篤心血管リスク増

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染から1年間のコロナ罹患後症状(Post-COVID-19 Condition:PCC[いわゆるコロナ後遺症、long COVID])について、米国の商業保険データベースを用いて未感染者と比較した大規模調査が、保険会社Elevance HealthのAndrea DeVries氏らによって実施された。その結果、PCC患者は心血管疾患や呼吸器疾患のリスクが約2倍上昇し、1年間の追跡期間中の死亡率も約2倍上昇、1,000人あたり16.4人超過したことが明らかとなった。JAMA Health Forum誌2023年3月3日号に掲載の報告。  米国50州の18歳以上の健康保険会員において、2020年4月1日~7月31日の期間にCOVID-19に罹患し、その後PCCと診断された1万3,435例と、未感染者2万6,870例をマッチングし、2021年7月31日まで12ヵ月追跡してケースコントロール研究を実施した。

日本の食事パターンと認知症リスク~NILS-LSAプロジェクト

 日本食の順守が健康に有益である可能性が示唆されている。しかし、認知症発症との関連は、あまりよくわかっていない。国立長寿医療研究センターのShu Zhang氏らは、地域在住の日本人高齢者における食事パターンと認知症発症との関連を、アポリポ蛋白E遺伝子型を考慮して検討した。その結果、日本食の順守は、地域在住の日本人高齢者における認知症発症リスクの低下と関連しており、認知症予防に対する日本食の有益性が示唆された。European Journal of Nutrition誌オンライン版2023年2月17日号の報告。  本研究データはNILS-LSA(国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究)プロジェクトの一環として収集され、愛知県在住の認知症でない高齢者1,504人(65~82歳)を対象とした20年間のフォローアップコホート調査が実施された。

地中海食が悪性黒色腫の免疫療法への反応を改善か

 オランダ・フローニンゲン大学のLaura A. Bolte氏らは、食事習慣と免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療反応の関連を調べるコホート研究「PRIMM研究」を行い、地中海食(全粒穀物、魚、ナッツ、豆、果物、野菜が豊富)とICI治療反応に正の関連があることを明らかにした。著者は、今回のコホート登録者がオランダと英国の進行悪性黒色腫患者91例であったことを踏まえて、「今回の結果の再現性を確認し、ICIによる治療における食事の役割を解明するためには、さまざまな国や地域での大規模な前向き研究が必要である」としつつ、「習慣的な食事がICIへの反応を改善する役割を果たす可能性があることが示唆された」と述べている。JAMA Oncology誌オンライン版2023年2月16日号掲載の報告。

ニボルマブのNSCLCネオアジュバント、国内承認/小野薬品・BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、2023年3月27日、ニボルマブについて、化学療法との併用療法で非小細胞肺癌における術前補助療法に対する効能又は効果の追加に係る製造販売承認事項一部変更承認の取得を発表した。  今回の承認は、切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者の術前補助療法として、ニボルマブと化学療法の併用療法を化学療法単独と比較評価した多施設国際共同無作為化非盲検第III相試験であるCheckMate 816試験の結果に基づいている。

切除可能非小細胞肺がんに対する 術前・後ペムブロリズマブ、無イベント生存期間を改善(KEYNOTE-671)/MSD

 Merck社は2023年3月1日、Stage II、IIIA、IIIB(T3-4N2)の切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する周術期療法としてのペムブロリズマブを評価する第III相KEYNOTE-671試験において、2つの主要評価項目のうち無イベント生存期間(EFS)を達成したことを発表した。周術期療法レジメンには術前補助療法(ネオアジュバント療法)とそれに続く術後補助療法(アジュバント療法)が含まれる。

水素吸入で院外心停止患者の救命・予後改善か/慶大ほか

 心停止の際に医療従事者が近くにいないなど、即座に適切な処置が行われなかった場合、1ヵ月の生存率は8%とされる。また、生存できた場合でも、救急蘇生により臓器に血液と酸素が急に供給されることで、非常に強いダメージが加わり(心停止後症候群と呼ぶ)、半数は高度な障害を抱えてしまう。このような心停止後症候群を和らげる治療として、体温管理療法があるが、その効果はいまだ定まっていない。そこで、東京歯科大学の鈴木 昌氏(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任教授)らの研究グループは、病院外で心停止となった後に循環は回復したものの意識が回復しない患者を対象に、体温管理療法と水素吸入療法を併用し、効果を検討した。その結果、死亡率の低下と後遺症の発現率の低下が認められた。本研究結果は、eClinicalMedicine誌2023年3月17日号に掲載された。

うつ、不安、苦痛に対する身体活動介入の有効性~アンブレラレビュー

オーストラリア・南オーストラリア大学のBen Singh氏らは、成人のうつ病、不安、精神的苦痛に関する症状に対する身体活動の影響を明らかにするためアンブレラレビューを行った。その結果、身体活動は、幅広い成人に対しうつ病、不安、精神的苦痛の改善に有益であることが確認された。British Journal of Sports Medicine誌オンライン版2023年2月16日号の報告。  2022年1月1日までに公表された適格研究を、12件の電子データベースより検索した。成人を対象に、身体活動によるうつ病、不安、精神的苦痛を評価したランダム化比較試験のメタ解析によるシステムを適格基準とした。研究の選択は、2人の独立したレビュアーによる重複チェックにより実施した。

米国心臓病学会と米国心臓協会が大動脈疾患の診断・管理のためのガイドラインを発行

 米国心臓病学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)が発表した「大動脈疾患の診断と管理に関するガイドライン2022年版(2022 ACC/AHA Guideline for the Diagnosis and Management of Aortic Disease)」で、集学的な大動脈疾患治療チームの重要性に焦点を当てた勧告が発表され、「Circulation」12月13日号に掲載された。  米マサチューセッツ総合病院のEric M. Isselbacher氏らは、大動脈疾患患者の診断、遺伝的評価、家族のスクリーニング調査、薬物療法、血管内治療と外科的治療、および長期的なサーベイランスに関するガイドラインを作成するために、2019年5月~9月にPubMed、EMBASE、Cochrane Collaboration、CINHL Completeなどのデータベースの包括的な文献検索を実施した。今回のガイドラインでは、胸部大動脈疾患、末梢動脈疾患および二尖大動脈弁疾患の項目が更新された。概要として、以下のテイクホームメッセージが発表された。

米国の成人1型糖尿病患者の肥満有病率は一般人口と同等

 従来、1型糖尿病患者は痩せていることが多いと考えられてきたが、米国ではそのような捉え方が当てはまらなくなってきたことを示すデータが報告された。米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のMichael Fang氏らの研究によるもので、「Annals of Internal Medicine」に2月14日、レターとして掲載された。  この研究は、米国国民健康インタビュー調査に回答した、12万8,000人以上の一般住民のデータを解析するという手法で行われた。著者らは、「本研究は、米国の1型糖尿病患者における過体重・肥満の有病率を調査した初の研究と考えられる」としている。

軽症COVID-19でも脳の構造に変化が生じる可能性

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後には、脳の構造的・機能的な変化が生じており、不安や抑うつ症状のある人ではそのような変化の程度が強いことを示す研究結果が報告された。カンピーナス大学(ブラジル)のClarissa Yasuda氏らの研究によるもので、第75回米国神経学会(AAN2023、4月22~27日、ボストン)での発表に先立ち、研究要旨が2月20日にオンラインで公開された。  COVID-19の急性期以降にさまざまな症状が遷延する、いわゆる「long COVID」では、不安や抑うつといったメンタルヘルス関連症状が現れることが少なくない。ただし、それらの症状の有無と、脳の構造的・機能的な変化の関連はほとんど明らかにされていない。Yasuda氏は、「long COVIDについてはまだ研究すべきテーマが数多く残されている。われわれの研究によって、急性期に軽症であった患者でさえ、罹患から数カ月後に脳の変化が観察されたことは、新たな懸念材料と言える。患者の生活の質(QOL)が長期間低下してしまうことへの予防的な介入法の確立に向けて、さらに多くの研究が必要とされる」と述べている。

HER2+再発/転移乳がんへのT-DXd、予後予測に有望なバイオマーカー/日本臨床腫瘍学会

 トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)はHER2陽性再発/転移乳がんの2次治療以降に承認されているが、信頼できる予後予測バイオマーカーは十分に確立されていない。今回、T-DXdへの反応と予後を予測する血中炎症マーカーを探索すべく後ろ向きに調査した結果、全身免疫-炎症指数(SII)が全生存期間(OS)と有意に関連し、またリンパ球数(ALC)高値と血小板-リンパ球比(PLR)低値が臨床的有用性と関連する可能性が示された。国立がん研究センター中央病院の大西 舞氏が、第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で発表した。

統合失調症患者の体重増加や代謝機能に対する11種類の抗精神病薬の比較

 抗精神病薬の投与量と代謝機能関連副作用との関係を明らかにするため、スイス・ジュネーブ大学のMichel Sabe氏らは、統合失調症患者を対象に抗精神病薬を用いたランダム化比較試験(RCT)の用量反応メタ解析を実施した。その結果、抗精神病薬ごとに固有の特徴が確認され、アリピプラゾール長時間作用型注射剤を除くすべての抗精神病薬において、体重増加との有意な用量反応関係が認められた。著者らは、利用可能な研究数が限られるなどの制限があったものの、本研究結果は、抗精神病薬の用量調整により、体重や代謝機能に対する悪影響を軽減するために有益な情報であるとしている。The Journal of Clinical Psychiatry誌2023年2月8日号掲載の報告。