医療一般|page:139

ゲノム編集技術を用いた個別化がん免疫療法で大きな飛躍

 ゲノム編集技術CRISPR/Cas9を用いて、標的とするがん細胞を攻撃するようにDNA配列を改変した免疫細胞(T細胞)を作成することに成功したとする小規模臨床試験の結果が報告された。がん治療で熱心に研究が進められている2つの領域である、がんの遺伝子情報に基づく個別化医療と、T細胞の遺伝子改変によりがん細胞に対する攻撃力を高める治療法とを組み合わせた初めての試みだという。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のがん専門医であるAntoni Ribas氏らによるこの研究結果は、「Nature」に11月10日掲載されるとともに、米がん免疫療法学会(SITC 2022、11月8〜12日、米ボストン)で発表された。  この研究では、まず、乳がんや大腸がんなどさまざまな固形がん患者16人の血液サンプルと腫瘍の生検組織を用いてDNA解析を行い、生検組織にのみ認められる遺伝子変異を検索した。Ribas氏らによると、がんの発生に関わる遺伝子変異はがん種ごとに異なり、共通するものがあってもごく一部であるため、この作業は患者ごとに行う必要があるという。

既治療のNSCLCに対するアテゾリズマブ単剤のリアルワールドデータ(J-TAIL)/日本肺癌学会2022

 既治療の切除不能非小細胞肺がん(NSCLC)に対するアテゾリズマブの単剤療法は、実臨床においても開発治験と同様の臨床効果を示すことが明らかとなった。  既治療の切除不能NSCLCにおいて、ドセタキセルに対し優越性を示したOAK試験の結果に基づき、アテゾリズマブの単剤療法は2次治療以降の治療選択肢となっている。しかし、開発治験における日本人データは限定されており、日常臨床での再現性は明らかではない。  そこで、日本の実臨床における同レジメンの安全性と有効性を検討する前向き試験J-TAILが行われている。第63回日本肺癌学会学術集会では、松坂市民病院の畑地治氏がJ-TAIL試験の最終解析を発表した。

EGFR陽性T790M陰性NSCLCに対するオシメルチニブの2次治療は有効(WJOG12819L/KISEKI)/日本肺癌学会2022

 第1/2世代EGFR-TKIで増悪したEGFR陽性T70M陰性非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、オシメルチニブの2次治療が有効性を示した。  第1/2世代EGFR-TKIのPD症例に対するオシメルチニブの2次治療は、T790M変異陽性例にのみ適用できる。反面、残りの半数のT709M陰性例は、オシメルチニブによる治療の恩恵を受けることができないのが現状である。  そのような中、第1/2世代EGFR-TKIおよびプラチナ化学療法耐性のEGFR陽性T70M陰性NSCLCに対するオシメルチニブ2次治療を評価するWJOG12819L/KISEKI試験が行われている。第63回日本肺癌学会学術集会では、奈良県立医科大学の武田真幸氏が、同試験の初回解析結果を発表した。なお、この試験は、わが国初の患者提案型医師主導試験である。

新型コロナ抗体保有率が高い/低い都道府県は?/COVID-19対策アドバイザリーボード

 第108回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが、11月30日に開催された。その中で鈴木 基氏(国立感染症研究所感染症疫学センター長)らのチームが、「献血時の検査用検体の残余血液を用いた新型コロナウイルスの抗体保有率実態調査」について結果を報告した。 本調査は、わが国における今夏の感染拡大を踏まえた市中での感染状況の把握を目的に、2022年11月6日~13日にかけて行われた。対象は、全国の日本赤十字社の献血ルームなどを訪れた献血者8,260人で、献血時の検査用検体の残余血液を用いて抗N抗体の有無が調べられた。日本全体および都道府県・男女・年齢群別の抗体保有率が解析されている。

国内初の経口TYK2阻害剤デュークラバシチニブが乾癬治療にもたらす可能性

 2022年11月10日、ブリストル マイヤーズ スクイブ主催により、「乾癬治療の課題と新たな治療選択肢~国内初のTYK2阻害剤登場の意義~」についてプレスセミナーが開催された。同セミナーで帝京大学医学部皮膚科学講座の多田 弥生氏は、乾癬を取り巻く社会課題として患者の生活の質(Quality of Life:QOL)に及ぼす影響について講演を行った。また、名古屋市立大学大学院医学研究科の森田 明理氏は、国内初の経口TYK2阻害剤として同年9月に承認されたデュークラバシチニブ(商品名:ソーティクツ錠)の開発経緯、作用機序や臨床試験の紹介に加え、同剤への期待を述べた。

術前化療で完全奏効のTN or HER2+乳がん、手術省略できるか/Lancet Oncol

 トリプルネガティブ(TN)およびHER2陽性乳がん患者において、術前化学療法により病理学的完全奏効を達成した場合は予後良好とされ、経皮的画像ガイド下吸引補助式乳房組織生検(VACB)により正確に判断することが可能である。今回、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのHenry M. Kuerer氏らは、術前化学療法を受けたTNまたはHER2陽性の早期乳がん患者において、画像ガイド下VACBにより病理学的完全奏効と判定された場合に、手術を省略し放射線治療のみにできるかどうか検討した。The Lancet Oncology誌2022年12月号に掲載。  本試験は米国の7施設による多施設共同単群第II相試験で、対象はcT1-2N0-1M0のTNまたはHER2陽性乳がんの妊娠していない40歳以上の女性で、標準的な術前化学療法後に残存病変が画像上2cm未満の患者とした。画像ガイド下VACBで浸潤性・潜在性がんが確認されなかった場合、手術を省略し、標準的な全乳房放射線治療を行った。主要評価項目は、生検による同側乳がん再発率、安全性はVACBを受けた全患者を対象に評価した。  主な結果は以下のとおり。

米FDAが転移性非小細胞肺がんに対する併用療法を承認

 米食品医薬品局(FDA)は11月10日、感作性上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異または未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)融合遺伝子を伴わない転移性非小細胞肺がん(NSCLC)の成人患者に対して、デュルバルマブ(商品名イミフィンジ)とプラチナ製剤による化学療法(以下、化学療法)にトレメリムマブ(商品名Imjudo)を追加する併用療法を承認した。  体重30kg以上の患者で推奨されている併用療法は、トレメリムマブ75mgとデュルバルマブ1,500mgの併用投与と化学療法を3週間おきに4サイクル実施し、その後は4週間ごとにデュルバルマブ1,500mgの投与と維持療法を実施するというもの。トレメリムマブ75mgの5回目の投与は16週後とされている。

ジムでトレーニング中に心停止した女性を救った人々―AHAニュース

 米国ジョージア州に住む37歳の女性、Nicole Tetreaultさんは数日間、頭痛と吐き気に悩まされていた。しかしそれも回復したため、日曜日には夫のBrianさんと2歳になる長女のEllaちゃんとともに、朝食後の散歩を楽しんだ。また、しばらく休んでいたジム通いも再開した。ジムのクラスには、会ったことのない新しいメンバーの顔も見られた。  ウォームアップ中、Nicoleさんは鏡に映った自分の姿を見て、「疲れているな。今日は追い込まないようにしよう」と思った。それから数分後、彼女は最初のセットをスタートしてウェイトを上げ始めた時、その場に倒れ込んだ。体はけいれんし、口から泡を吹き、皮膚は紫色に変色していた。そして、息をしていなかった。

除脂肪量指数でサルコペニアをスクリーニング

 比較的簡便な体組成の評価方法である、生体インピーダンス(BIA)法で測定した除脂肪量指数〔FFMI(除脂肪量(kg)を身長(m)の二乗で除した値)〕が、サルコペニアの低筋肉量スクリーニングに利用できる可能性を示唆するデータが報告された。早稲田大学スポーツ科学研究センター招聘研究員・明治安田厚生事業団体力医学研究所の川上諒子氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Medical Directors Association」に9月27日掲載された。  サルコペニアは筋肉量や筋力が低下した状態のことで、要介護などのリスクが上昇するため、早期介入による是正が重要。サルコペニア診断の低筋肉量判定には、二重X線エネルギー吸収測定(DXA)法または生体インピーダンス法による四肢筋肉量(ASM)の測定が必要とされる。このうち特に前者のDXA法は、測定機器が大型で可動性が乏しく健診会場などへ移動が困難なことや、コストや被曝の懸念があることが、現場での利用のハードルとなっている。後者のBIA法は機器に可動性があり、比較的低コストで被曝の懸念もないものの、ASMの測定が可能な機器はあまり普及していない。その一方で、除脂肪量指数(FFMI)であれば家庭用に普及している体組成計でも評価可能である。

治療抵抗性の幻聴に対する低刺激rTMS療法の有用性

 治療抵抗性の幻聴を有する患者に対する治療として、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法が注目されている。しかし、とくにクロザピン耐性症状が認められる患者における最適な刺激パラメータはよくわかっていない。フランス・リヨン大学のJerome Brunelin氏らは、治療抵抗性の幻聴を伴う統合失調症患者に対して、うつ病性障害への刺激パラメータが有用かどうかを調査するため、非盲検レトロスペクティブ研究を実施した。その結果、クロザピン耐性症状が認められる患者を含む治療抵抗性の幻聴に対し、低刺激rTMS療法(3週間で30セッション)は有用なアプローチであることが示唆された。International Journal of Clinical and Health Psychology誌2023年1~4月号の報告。

アナフィラキシーなどの治療を非専門医向けに/アレルギー総合ガイドライン改訂

 多くの診療科に関係するアレルギー疾患。2022年10月に刊行された『アレルギー総合ガイドライン2022』は、2019年版の全面改訂版だ。各診療ガイドラインのエッセンスを精選して幅広いアレルギー診療の基本をまとめ、前版より大幅なコンパクト化を実現した。編纂作業にあたった日本アレルギー学会・アレルギー疾患ガイドライン委員会委員長の足立 雄一氏(富山大学 小児科学講座 教授)に改訂のポイントを聞いた。 ――『アレルギー総合ガイドライン』は、各分野のガイドラインや診療の手引きの短縮版を合本してつくられています。これまではそのまま合本していたため、どうしても重複箇所が多くなり、2019年版は700ページを超えました。読者から「読みにくい」「重くて持ち運べない」といった声が出ており、今回はガイドライン委員が全ページに目を通して重複を削る作業をした結果、300ページ近いコンパクト化を図ることができました。

中程度の運動で乳がん患者の死亡リスクが60%減!?

 乳がん患者における日常動作以上の身体活動レベルと全死因死亡リスクの関連を評価した結果、中程度の身体活動であっても死亡リスクが60%低いことを、米国・カイザーパーマネンテ南カリフォルニアのLie Hong Chen氏らが明らかにした。身体活動による乳がんの発症リスク低減効果は知られているが、乳がんと診断された後の身体活動の効果に関する評価はまだ不十分であった。JAMA Netw Open誌2022年11月17日リサーチレター掲載の報告。  研究グループは、2年以上前に乳がんの診断を受け(生存期間中央値6年)、カリフォルニア州のヘルスケアプランのメンバーであった閉経後乳がん患者のコホート研究を実施した。対象は、1996~2012年に初期の乳がん(TNM分類0~II期)と診断された患者で、調査は2013年8月1日~2015年3月31日に行われ、2022年4月30日または患者死亡まで追跡された。  身体活動レベルと疲労度は、ゴーディン式余暇運動調査票(GSLTPAQ)およびFatigue Severity Inventory(簡易倦怠感尺度)の2つのアンケートによって聞き取った。身体活動レベルと全死因死亡リスクの関連を、年齢、乳がんの病期、疲労度、併存疾患、診断からの年数、人種・民族、不眠症とうつ病の既往、がん治療の種類(内分泌療法、化学療法、放射線治療)によって調整し、Cox比例ハザードモデルを用いて評価した。

マインドフルネスストレス低減法は不安の軽減に役立つ

 マインドフルネスストレス低減法(MBSR)には過度に不安を覚える人を落ち着かせる力があり、その効果は抗うつ薬の使用と同等である可能性が、新たな研究で示唆された。米ジョージタウン大学医療センターのElizabeth Hoge氏らによるこの研究結果は、「JAMA Psychiatry」に11月9日掲載された。  この研究では、不安障害の診断を有する276人の成人(平均年齢33歳、女性75%)が、8週間、MBSRを受ける群と、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)のエスシタロプラム(商品名レクサプロ)による治療を受ける群に、1対1の割合でランダムに割り付けられた。MBSRは、毎週1回、2.5時間の講習を受け、毎日自宅で45分間の実習を行うほか、5週目と6週目の間に瞑想の講習を終日受けるという内容だった。試験参加者の不安のレベルは、CGI-S(Clinical Global Impression Severity scale)という7段階の評価スケールで評価した(1:正常、7:非常に重度の精神疾患)。

食事療法の自己評価は実際より高くなりがち

 米国心臓協会(AHA)学術集会(Scientific Sessions 2022、11月5~7日、米シカゴ/バーチャル開催)における、米ハーバードT. H.チャン公衆衛生大学院のJessica Cheng氏らの報告によると、何らかの食事療法に取り組んでいる人は、自分の食生活を実際よりも健康的だと過大評価しがちのようだ。減量のために食事療法を1年間続けた人に、自分の食事スタイルを評価してもらい医療者の評価と比較した結果、両者の評価が一致していたのは4人に1人にとどまり、さらに1年前からの改善幅が一致していたのはごくわずかだったという。

不幸な結婚生活は心筋梗塞後の回復の障壁に

 結婚生活がうまくいかなくて心を痛めることがあるが、結婚生活の破綻は本当に心臓に悪いことを示唆する研究結果が明らかになった。心筋梗塞を経験した人のうち、夫婦関係でストレスを抱えている人は、その後の回復状態の悪いことが、米イェール大学公衆衛生大学院のCenjing Zhu氏らの研究で示された。Zhu氏は、「夫婦間ストレスは、心筋梗塞発症後1年以内の転帰不良に独立して関連していることを、われわれは突き止めた」と説明している。この研究結果は米国心臓協会(AHA)学術集会(Scientific Sessions 2022、11月5~7日、米シカゴ/バーチャル開催)で発表された。

「肥満」との違いは?肥満症診療ガイドライン改訂

 11月24日に日本肥満学会(理事長:横手 幸太郎氏[千葉大学医学部附属病院長])は、『肥満症診療ガイドライン2022』についてプレスセミナーを開催した。  セミナーでは、肥満症の現況や治療に関する解説と今回刊行されたガイドラインの概要が説明された。また、本ガイドラインは12月2・3日に那覇市で開催される第43回日本肥満学会(会長:益崎 裕章氏[琉球大学大学院 医学研究科 内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座 教授])で発刊される。

母子手帳アプリ『母子モ』で疾患啓発/AZ

 アストラゼネカは、11月28日付のプレスリリースで、母子手帳アプリ『母子モ』を通じた早産児やRSウイルス感染症に関する情報提供を11月11日より開始したことを発表した。  RSウイルスは、2歳までにほとんどの乳幼児が感染するといわれており、早産児や生まれつき肺や心臓等に疾患を抱える乳児では感染すると重症化しやすいとされている。また、正期産であっても生後6ヵ月未満は感染後重症化するリスクが高いため、該当する年齢の乳幼児を持つすべての保護者に疾患情報や感染対策について知ってもらうことが重要である。

認知症で修正可能な危険因子は?~ランセット認知症予防モデルを検証

 認知症リスクに対し修正可能なリスク因子は、40%の影響を与えるといわれており、認知症の予防または進行遅延につながると考えられる。Lancet委員会による認知症予防のリスク因子ライフコースモデルは、一般集団においてまだ検証されていない。ニュージーランド・オタゴ大学のCharlotte Mentzel氏らは、高齢者の大規模データセットを用いて、本モデルの評価を行った。その結果、ニュージーランドの高齢者集団においてBMI、高血圧、聴覚障害、うつ病が、認知症の修正可能なリスク因子として確認されたことから、認知症予防のためのこれらのリスク因子に対する介入の信頼性が向上したことを報告した。Archives of Gerontology and Geriatrics誌オンライン版2022年11月2日号の報告。

1型2型ともに糖尿病はばね指のリスクと関連

 指が曲がった状態で動かしにくくなる、ばね指という症状が、糖尿病の人に多いことを示すデータが「Diabetes Care」11月号に掲載された。ルンド大学およびスコーネ大学病院(いずれもスウェーデン)のMattias Rydberg氏、Lars Dahlin氏らの研究によるもの。  ばね指は、指を曲げるための腱とその結合組織の肥厚を特徴とする状態。それらの肥厚のために、指が手のひらに向かって曲がった位置に固定され、痛みを生じやすい。多くの場合、ステロイド注射で治療できるが、手術が必要になることもある。

日本人では重症COVID-19にもレムデシビルが有効の可能性

 ICU入室を要する重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者にも、抗ウイルス薬のレムデシビルが有効であることを示すデータが報告された。発症9日以内に同薬が投与されていた場合に、死亡リスクの有意な低下が観察されたという。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Medical Virology」に9月23日掲載された。  COVID-19に対するレムデシビルの有効性はパンデミックの早い段階で報告されていた。同薬は現在までに流行した全ての変異株に有効とされてきており、世界保健機関(WHO)のCOVID-19薬物治療に関するガイドラインの最新版でも、軽症患者への使用が推奨されている。ただし重症患者での有効性のエビデンスが少なく、同ガイドラインでも条件付きの推奨にとどまっている。