医療一般|page:131

クライオ生検vs.従来法、日本人末梢肺病変の診断率と安全性/Lung Cancer

 2017年に本邦でも使用可能となったクライオ生検は、従来の経気管支肺生検よりも大きく、かつ良質な検体が得られる手法である。しかし、末梢肺病変の診断率について、クライオ生検と従来法を直接比較した報告は、ほとんどないのが現状である。そこで、国立がん研究センター中央病院の古瀬 秀明氏らは、診断的気管支鏡検査を受けた患者のデータを後ろ向きに解析し、クライオ生検は従来法と比べて末梢肺病変の診断率が高かったことを報告した。本研究結果は、Lung Cancer誌2023年4月号に掲載された。

アルツハイマー病治療薬lecanemab、FDAフル承認への優先審査に指定/エーザイ・バイオジェン

 エーザイとバイオジェン・インクは3月6日付のプレスリリースにて、同社のアルツハイマー病治療薬lecanemab(米国での商品名:LEQEMBI)について、迅速承認かららフル承認への変更に向けた生物製剤承認一部変更申請(supplemental Biologics License Application:sBLA)が米国食品医薬品局(FDA)に受理されたことを発表した。本申請は優先審査に指定され、審査終了目標日であるPDUFA(Prescription Drugs User Fee Act)アクションデートは2023年7月6日に設定された。  本剤は、米国において、2023年1月6日にアルツハイマー病の治療薬として迅速承認され、同日にフル承認に向けたsBLAがFDAに提出されていた。ヒト化IgG1モノクローナル抗体のlecanemabによる治療は、アミロイドβ病理が確認されたアルツハイマー病による、軽度認知障害または軽度認知症患者を対象としている。今回のsBLAは、大規模グローバル臨床第III相検証試験であるClarity AD試験のデータに基づく。

尿酸と認知機能障害との関係~新規双極性障害患者の横断研究

 認知機能障害は、双極性障害患者の主要な症状の1つである。また、認知機能障害に対しプリン体関連の障害が重要な影響を及ぼしていることが示唆されている。しかし、双極性障害における認知機能障害とプリン体作動性代謝との関連を調査した研究は十分ではない。中国・The Second Xiangya Hospital of Central South UniversityのSujuan Li氏らは、これらの関連性とその潜在的な生死学的メカニズムについて調査を行った。その結果、尿酸値レベルの上昇は、双極性障害患者の認知機能に対する潜在的なメカニズムである可能性があり、尿酸値のコントロールが双極性障害の予防や治療においての新たな戦略となりうる可能性が示唆された。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2023年2月2日号の報告。

看護師からの電話が心不全患者の延命につながる?

 高血圧や腎不全などの併存疾患による負荷の高い心不全患者の退院後の生存率が、看護師からの電話により改善する可能性が新たな研究で示された。研究論文の上席著者である、米シダーズ・サイナイ医療センター、シュミット心臓研究所のIlan Kedan氏は、「心不全患者を遠隔で管理する方法には、多くの最新テクノロジーやアイデアがある。しかしわれわれの研究では、昔ながらのローテクな電話で患者の状態を尋ねることにより、転帰が改善する可能性が示された」と述べている。この研究の詳細は、「Journal of Cardiac Failure」に12月12日掲載された。

日本人における砂糖と大腸がんリスクの関連は?

 日本の中年成人における砂糖摂取量と大腸がんリスクとの関連を大規模コホート研究のJPHC研究で検討した結果、明らかな関連はみられないものの、総摂取量が多い女性で直腸がんリスクが増加する可能性が否定できなかった。国立がん研究センターの金原 理恵子氏らの報告がCancer Science誌オンライン版2023年2月27日号に掲載された。  砂糖の摂取量が大腸がんリスクに及ぼす影響はまだ定まっていない。アジア人が摂取する砂糖の原料は欧米人とは異なり、アジア人集団における砂糖の総摂取量および特定の種類の摂取量における前向きコホート研究はほとんどない。

コロナワクチンの重症化と死亡減少効果、RCT28件をメタ解析/Lancet Microbe

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンのCOVID-19重症や死亡に対する有効性と、ワクチンによって得られた抗体濃度と有効性の相関性を評価するため、中国科学院深セン先進技術研究院のZhi-Rong Yang氏らの研究グループは、ワクチンの有効性に関する28件のランダム化比較試験(RCT)について、系統的レビューとメタ解析を行った。その結果、ワクチンはCOVID-19感染予防よりも、重症化や死亡に対する予防効果のほうが高いことや、接種後の時間経過とともに有効性は低下するが、ブースター接種によって効果を強化することが可能であることが示された。Lancet Microbe誌オンライン版2023年2月28日号に掲載の報告。

うつ病に対するSSRIの治療反応

 うつ病に対する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の臨床反応の発現には、数週間を要することも少なくない。また、そのメカニズムは十分に把握されているとはいえない。オランダ・ユトレヒト大学のLynn Boschloo氏らは、うつ病の臨床症状に対するSSRIの直接的および間接的な効果について、プラセボ対照の状態と比較し評価を行った。その結果、SSRIは主に感情症状の改善を介して、間接的に認知症状やいくつかの覚醒/身体症状を改善することが明らかとなった。著者らは、本結果はSSRIの作用機序の解明や、臨床でのSSRIに対するレスポンダーおよび非レスポンダーの早期特定に役立つ可能性があると述べている。Translational Psychiatry誌2023年1月21日号の報告。

甘味料エリスリトールに心血管リスク、想定される機序は?

 人工甘味料は砂糖の代用として広く使用されているが、人工甘味料の摂取が2型糖尿病や心血管疾患と関連するという報告もある。米国・クリーブランドクリニック・ラーナー研究所のMarco Witkowski氏らは、アンターゲットメタボロミクス研究において、糖アルコールに分類される甘味料エリスリトール(多くの果物や野菜に少量含まれる)が3年間の主要心血管イベント(MACE:死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)の発生と関連していることを発見し、その後の米国および欧州の2つのコホートを用いた研究でも、その関連は再現された。また、エリスリトールはin vitroにおいて血小板反応性を亢進し、in vivoにおいて血栓形成を促進することを明らかにした。健康成人にエリスリトールを摂取させたところ、血小板反応性の亢進および血栓形成の促進についての閾値を大きく超える血漿中エリスリトール濃度の上昇が引き起こされた。Nature Medicine誌オンライン版2023年2月27日号の報告。

米国では長年減少し続けていた脳卒中による死亡が再び増加傾向

 米国では過去40年間で脳卒中による死亡が劇的に減ったものの、最近は再び増加する傾向にあることが分かった。肥満や糖尿病の増加がそのような変化に影響を与えていると考えられ、ミレニアル世代が歳を取るにつれて、脳卒中による死亡がさらに増加することが予測されるという。米ラトガース・ニュージャージー医科大学のCande Ananth氏らの研究によるもので、詳細は「International Journal of Epidemiology」に11月7日掲載された。論文の筆頭著者である同氏は、「われわれの研究結果は、脳卒中による死亡が増加するという憂慮すべき傾向に対応して、いま新たな戦略が必要であることを強調している」と述べている。

リチウムは自殺行動を減らし、アラキドン酸は自傷行為を増やす可能性

 薬剤としてではなく、水道水やふだんの食事などを介して血清リチウムレベルが微量ながらも高い状態にある人は、自殺リスクが低い可能性を示唆するデータが報告された。また、EPA(エイコサペンタエン酸)は自傷行為のリスクを減らし、一方、AA(アラキドン酸)はそのリスクを高める可能性があるという。大分大学医学部精神神経医学講座の泉寿彦氏、寺尾岳氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Psychiatry」に12月16日掲載された。  オメガ3脂肪酸であるEPAやDHA(ドコサヘキサエン酸)が、うつ病リスクを抑制するという研究結果が報告されている。しかし、DHAよりもEPAがうつ病に効果的であるという報告があり、さらに、いずれの効果も否定する最近の報告もある。一方、リチウムについては既に気分安定薬として使用されており、自殺リスクを抑制するというデータがある。薬剤としてではなく、食品や水から摂取する微量のリチウムが、自殺関連行動のリスクを抑制するという報告があるものの、それを否定する報告もある。このほか、オメガ6脂肪酸であるAAレベルの高さが、自殺関連行動のリスクの高さと相関するといった報告もある。

リンパ節転移のないHER2+乳がん、術後PTX+トラスツズマブでの10年生存率/Lancet Oncol

 リンパ節転移のないHER2陽性(HER2+)乳がんに対するパクリタキセル+トラスツズマブでの術後補助療法の長期アウトカムを調査した非盲検単群第II相試験の10年間の解析結果について、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのSara M. Tolaney氏らがLancet Oncology誌2023年3月号で報告した。著者らはこの結果から、「腫瘍サイズが小さくリンパ節転移のないHER2+乳がんの術後補助療法の標準治療として、パクリタキセル+トラスツズマブが妥当である」としている。

コロナ感染拡大しやすいのは夜間営業店~東京都で大規模調査/東北大

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック下では、ロックダウンなど人流の抑制や行動制限の介入による感染拡大のコントロールが世界的に実施されてきたが、社会経済への影響も大きかった。現在はワクチン接種の普及に伴い行動制限の緩和が進んでいるものの、直近の第8波ではコロナ関連死亡者数が過去最多を更新し、依然として感染拡大のコントロールは困難だ。  社会経済活動を維持しつつ感染拡大リスクが高い場面に焦点を絞った感染防止対策の構築のため、東北大学の今村 剛朗氏らによる東京都、東北大学医科学研究科、国立感染症研究所の合同チームは、東京都に報告されたコロナ感染者4万4,054例を対象として、保健所での積極的疫学調査による情報を用いた後ろ向き解析を行った。

統合失調症における抗精神病薬使用と心臓突然死リスク

 抗精神病薬で治療される統合失調症患者は、心臓突然死のリスクが高いといわれている。獨協医科大学の岡安 寛明氏らは、統合失調症患者における抗精神病薬の使用と心臓突然死リスクとの関連を明らかにするため、deceleration capacity(DC)(心臓突然死の予測因子として用いられる心拍変動の指標)の低下を調査し、抗精神病薬の使用による心臓突然死リスクを、DCの評価と補正QT間隔(QTc)との関連で評価した。その結果、抗精神病薬を使用している統合失調症患者においてDCを評価することは、心臓突然死リスク増加のモニタリングおよび特定に役立つ可能性が示唆された。また、DCとQTcの両方の評価で、心臓突然死の予測精度が向上する可能性があることも報告された。General Hospital Psychiatry誌オンライン版2023年1月14日号の報告。

医学生に労働法の知識を!医師や弁護士がモデル講義/厚生労働省

 医師の過重労働の問題が指摘されて久しいが、2024年4月から医師に対する時間外労働の上限規制をはじめとした「医師の働き方改革」がスタートする。これを踏まえ、厚生労働省では、今後医師となる医学生に対し、労使関係の基本となる労働法や医師の働き方改革の基本を知ってもらうべく、医師や弁護士を講師としたモデル授業をスタートした。  2022年度からスタートしたこのモデル講義について、大学関係者に対して紹介する「医学部等における労働法教育を考えるシンポジウム」が開催され、モデル授業を担当した医師や弁護士が講義内容やその意義を報告した。

化学療法、女性は午後に受けると効果が高い

 体内時計機能を勘案し、投薬時間を調節するクロノセラピー(時間治療)の考え方は以前より提唱されており、大腸がんなどにおいて一定の効果が報告されている。しかし、その後の試験に一貫性がないため、日常臨床を変えるには至っていない。今回、造血器腫瘍の成人患者におけるクロノセラピーの効果を検討した、韓国科学技術院のDae Wook Kim氏らによる研究結果が JCI Insight誌2022年12月号に掲載された。

87歳で脳卒中になるも周囲を説得し独居を続けた女性が見事に回復―AHAニュース

 8月のある日曜日の朝、米国カリフォルニア州に住む87歳の女性、Barbara Bartelsさんは、自宅近くのカフェで友人とコーヒーを飲んでいた。彼女はミクストメディアアーティスト(複数の素材を組み合わせた作品を創造する芸術家)だが、自分自身のことを“隠者”と呼び、アーティスト仲間以外との交流はほとんどなかった。  そんなBartelsさんは元ファッションデザイナーでもあり、自分の身体的・精神的健康をよく気遣っていた。毎日ヨガを続けていたし、最近は気功も始めた。かつて、多くのアーティストがそうであったように、彼女も以前は喫煙者だったが50代前半で禁煙した。唯一の気がかりは体質的なものによる高血圧で、降圧薬を服用していた。

Yes/No調査による認知症スクリーニングの精度~福井県での調査

 認知症の予防には、早期介入が非常に重要である。しかし、認知症の早期発見に、どのようなスクリーニングが有用であるかは、これまで明らかになっていない。福井大学の濱野 忠則氏らは、サポートやケアを必要とするリスクが高い高齢者を特定するため厚生労働省が作成した基本チェックリストに基づき福井県の認知症予防チームが開発したYes/No自己申告調査の結果と、ミニメンタルステート検査(MMSE)との関連を検討し、Yes/No自己申告調査の認知症スクリーニングに対する有効性を評価した。その結果、認知症スクリーニングに対するYes/No自己申告調査の有効性が示された。とくに、「電話番号を調べて電話をかけられない」「銀行やATMで自身の預貯金を管理できない」などは、認知症のサインであると報告されている。Frontiers in Aging Neuroscience誌2023年1月4日号の報告。

ChatGPTが医師の代わりに?抗菌薬処方の助言を求めると…

 人工知能(AI)言語モデルを用いたチャットサービス『ChatGPT』は、米国の医師免許試験において医学部3年生に匹敵する成績を収めるなど、注目を集めている。そこで、抗菌薬への耐性や微生物の生態、臨床情報を複合的に判断する必要のある感染症への対応について、8つの状況に関する質問をChatGPTへ投げかけ、得られる助言の適切性、一貫性、患者の安全性について評価した。その結果、ChatGPTは質問の状況を理解し、免責事項(感染症専門医へ相談することを推奨)も含めて一貫した回答を提供していたが、状況が複雑な場合や重要な情報が明確に提供されていない場合には、危険なアドバイスをすることもあった。本研究は英国・リバプール大学のAlex Howard氏らによって実施され、Lancet infectious diseases誌オンライン版2023年2月20日号のCORRESPONDENCEに掲載された。  臨床医がChatGPTに助言を求めるという設定で、以下の8つの状況に関する質問を投げかけた。

勃起機能を改善させる食事とは?

 低炭水化物食はテストステロンの血清レベルを上昇させ、メタボリックシンドロームに伴う男性の性腺機能低下症の勃起機能を改善する可能性があることがブラジルのCaio da Silva Schmitt氏らが行った非盲検ランダム化臨床試験によってわかった。BMC Endocrine Disorders誌2023年2月2日号の報告。  メタボリックシンドロームはいくつかの疾患の危険因子であり、その中でもメタボリックシンドロームと性腺機能低下症の関係はよく知られている。著者らは、低炭水化物食が血清総テストステロンを増加させ、メタボリックシンドロームに伴う性腺機能低下症の男性の勃起機能を改善できるかどうかを評価する目的で研究を行った。

オキシトシンは本当に「愛情ホルモン」?

 「愛情ホルモン」と呼ばれるオキシトシンは、これまで考えられてきたほど社会的絆の形成に必要不可欠なものではない可能性のあることが、プレーリーハタネズミを用いた研究で示された。研究論文の上席著者である米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)ワイル神経科学研究所のDevanand Manoli氏は、「この研究結果は、オキシトシンが複雑な遺伝的プログラムの一つに過ぎないことを示すものだ」と述べている。この知見は、「Neuron」に1月27日掲載された。