日本発エビデンス|page:46

統合失調症患者の乳がん、術後合併症が多い~日本の全国データ

 統合失調症患者は一般集団より乳がん発症リスクが高いが、乳がんの術後合併症を調査した研究はほとんどない。今回、東京大学の小西 孝明氏らの研究から、統合失調症患者では精神疾患のない患者より乳がんの術後合併症発生率や入院の総費用が高いことが示唆された。British Journal of Surgery誌2021年3月号に掲載。  本研究は、全国的な入院患者データベースから、2010年7月~2017年3月にStage 0~III乳がんで手術を受けた患者を特定し、多変量解析を用いて統合失調症患者と精神疾患のない患者について術後合併症と入院費用を比較した。感度分析は、入院時の年齢・施設・年度で1:4にマッチングさせたペアコホート分析、抗精神病薬を服用していなかった統合失調症患者を除外した分析、意思に反して入院した統合失調症患者を除外した分析の3つを実施した。

日本人高齢者の認知症リスクと近隣歩道環境~日本老年学的評価研究コホート

 日常生活に欠かせない環境資源の1つである歩道は、身体活動を促進するうえで重要なポイントとなる。しかし、先進国においても歩道の設置率は十分とはいえない。東京医科歯科大学の谷 友香子氏らは、日本における近隣の歩道環境と認知症リスクとの関連を調査した。American Journal of Epidemiology誌オンライン版2021年2月19日号の報告。  地域在住の高齢者の人口ベースコホート研究である日本老年学的評価研究の参加者を対象に、3年間のフォローアップ調査(2010~13年)を実施した。公的介護保険制度のデータより高齢者7万6,053人の認知症発症率を調査した。436ヵ所の住宅近隣ユニットの道路面積に対する歩道の割合を、地理情報システムを用いて算出した。認知症発症率のハザード比(HR)は、マルチレベル生存モデルを用いて推定した。

潰瘍性大腸炎、患者の90%が持つ自己抗体を発見/京大

 潰瘍性大腸炎(UC)は、その発症に免疫系の異常が関連していると考えられているが、原因はいまだ解明されておらず、国の指定難病となっている。京都大学・塩川 雅広助教らの研究グループは3月9日、潰瘍性大腸炎患者の約90%に認められる新たな自己抗体を発見したことを発表した。現在、この自己抗体を測定する検査キットを企業と共同開発中。Gastroenterology誌オンライン版2021年2月12日号に掲載。  本研究は、潰瘍性大腸炎患者112例と対照患者165例が登録された。潰瘍性大腸炎は、症状、内視鏡所見、組織学的所見、および代替診断の欠如の組み合わせによって診断。血清サンプルは、2017年7月~2019年11月までに京都大学医学部附属病院で採取され、潰瘍性大腸炎患者112例と対照患者155例が、それぞれトレーニング群と検証群に分けられた。

飲酒と乳がんリスク~日本人16万人の解析

 欧米の研究から、飲酒が乳がんリスクを上昇させることが報告されている。しかし、日本人女性は欧米人女性より飲酒習慣が少なく、またアセトアルデヒドの代謝酵素の働きが弱い人が多いなど、飲酒関連の背景が欧米とは異なる。これまで日本人を対象とした大規模な研究は実施されていなかったが、今回、愛知県がんセンターや国立がん研究センターなどが共同で日本の8つの大規模コホート研究から約16 万人以上を統合したプール解析を行い、乳がんリスクと飲酒との関連を検討した。その結果、閉経前女性では飲酒により乳がん罹患リスクが上昇したことを愛知県がんセンターの岩瀬 まどか氏らが報告した。International Journal of Cancer誌オンライン版2021年1月26日号に掲載。

ドンペリドン、胎児の奇形リスクなし/国内大規模データベース

 制吐薬ドンペリドンは動物実験で催奇形性が示されたことから、従来、妊婦禁忌とされてきた。しかし、つわりと知らずに服用し妊娠が判明した後に気付いて妊娠継続に悩む女性が少なくない。一方で、本剤は米国で発売されていないことから疫学研究も少なく、安全性の根拠に乏しい面もあった。今回、国立成育医療研究センターの「妊娠と薬情報センター」と虎の門病院は、両施設が保有する1万3,599例もの妊娠中の薬剤曝露症例のデータベースを用いて、ドンペリドンの催奇形性を解析。その結果、妊娠初期に本剤を服用した例と、リスクがないことが明らかな薬のみを服用した例では、奇形発生率に有意な差は見られなかった。The Journal of Obstetrics and Gynaecology Research誌オンライン版2021年2月25日号に掲載。

研修医の勤務時間と自習時間に関連は?

 4月から医師の初期・後期臨床研修をひかえ、研修医の成長に必要なことは何であろう。研修医にとって十分な自習時間は、専門能力開発にとって重要であり、臨床知識の習得と自習時間は正の関係にあるとされている。2024年以降、わが国で研修医の義務勤務時間が制限されることもあり、水戸協同病院総合診療科の長崎 一哉氏らのグループは、研修医の勤務時間と学習習慣との関連を初期臨床研修医の基本的臨床能力評価試験(GM-ITE)を基に評価を行った。

新たな認知症評価尺度ABC認知症スケールの妥当性

 認知症を評価するための新しいツールとしてABC認知症スケール(ABC-DS)が、日本において開発された。ABC-DSは、日常生活動作(ADL)に関するドメインA、認知症の周辺症状(BPSD)に関するドメインB、認知機能に関するドメインCについて同時に評価できる包括的なツールであり、簡便かつ迅速に実施することが可能であり、認知症の重症度および経時的変化を測定することができる。これまで、ABC認知症スケールは、アルツハイマー型認知症(AD)の評価に有用であることが報告されているが、その他の認知症での研究はまだ行われていなかった。長崎大学の下田 航氏らは、さまざまな認知症のサブタイプや重症度に対するABC認知症スケールの妥当性について再評価を行った。Dementia and Geriatric Cognitive Disorders誌オンライン版2021年2月12日号の報告。  対象は、長崎県の病院1施設における外来患者および施設を利用している患者。ドメインAは認知症機能障害尺度(DAD)、ドメインBはNeuropsychiatric Inventory(NPI)、ドメインCはミニメンタルステート検査(MMSE)、ABC-DS合計スコアは臨床的認知症尺度(CDR)を用いた評価との相関を調査した。

双極性障害の再発に対する抗精神病薬併用の影響~メタ解析

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、気分安定薬(MS)と第2世代抗精神病薬(SGA)の併用療法で安定した双極I型障害におけるSGA中止による再発リスクへの影響を検討するため、二重盲検ランダム化対照試験のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Bipolar Disorders誌オンライン版2021年2月9日号の報告。  SGA+MS療法で安定した双極I型障害患者を対象に、維持期においてSGAを中止した患者(MS単独療法など)と継続した患者における再発リスクを検討した研究を、Embase、PubMed、CENTRALより、システマティックに検索した(2020年5月22日まで)。主要アウトカムは、6ヵ月間の気分エピソード再発率とした。副次的アウトカムは、6ヵ月間の躁/軽躁/混合エピソードとうつ病エピソードの再発率およびすべての原因による治療中止とした。また、1、2、3、9、12ヵ月での再発率も調査した。

双極性障害のうつ病エピソード再発に対する光曝露の影響

 光線療法は、双極性うつ病に対する効果が示唆されている治療方法であるが、うつ病エピソードに対する予防効果が認められるかは、よくわかっていない。桶狭間病院の江崎 悠一氏らは、実生活環境における光曝露が、双極性障害患者のうつ病エピソードの再発に対する予防効果と関連しているかについて、評価を行った。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2021年2月15日号の報告。  本研究は、2017年8月~2020年6月に日本で行われたプロスペクティブ自然主義的観察研究である。双極性障害外来患者202例を対象に、ベースラインから7日間連続して日中の光曝露を客観的に評価し、その後の気分エピソードの再発について、12ヵ月間フォローアップを行った。光曝露の測定には、周囲の光を測定できるアクチグラフを用いた。

日本における産後のうつ症状と妊娠中の体重増加との関係

 産後のうつ症状(PPDS)と妊娠中の体重増加との関係については、依然として議論の余地が残っている。福島県立医科大学の山口 明子氏らは、産後1ヵ月のPPDSと妊娠中の体重増加との関係について、妊娠前のBMIに基づいて、調査を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2021年2月2日号の報告。  2011~14年に日本人女性8万927人を対象に、プロスペクティブコホート研究を実施した。妊娠前のBMIに基づき、対象者をG1(18.5kg/m2未満)、G2(18.5~20.0kg/m2)、G3(20.0~23.0kg/m2)、G4(23.0~25.0kg/m2)、G5(25kg/m2以上)の5グループに分類した。PPDSに関連する不十分または過剰な妊娠中の体重増加の潜在的なリスク因子を特定するため、母体年齢、教育、年間世帯収入、喫煙、出産歴、分娩方法、母乳の中止、精神的ストレス、妊娠中のエネルギー摂取量で調整した後、各グループに対して多重ロジスティック回帰分析を行った。

薬物依存リハビリセンターにおける日本人男性の薬物依存と性交との関連

 性行為と薬物使用を組み合わせて行うことは、薬物使用と性交の認知された相互依存(perceived interdependence of drug use and sexual intercourse:PIDS)を形成する可能性がある。また、薬物使用の重症度は、PIDSに有意な影響を及ぼす可能性があるが、この関連はよくわかっていない。国立精神・神経医療研究センターの山田 理沙氏らは、日本の薬物依存リハビリテーションセンター(DARC)の成人男性における薬物使用の重症度とPIDSとの関連について、調査を行った。Substance Abuse Treatment, Prevention, and Policy誌2021年1月7日号の報告。

日本人男性の2型糖尿病はミトコンドリア多型と関連?/順天堂大学

 日本人は、欧米人ほど肥満度が高くないにもかかわらず2型糖尿病になりやすいことが知られているが、その理由はいまだよくわかっていない。今回、順天堂大学の膳法 浩史氏、福 典之氏ら、および佐賀大学と南カリフォルニア大学などの国際共同研究グループが、大規模コホート調査分析により、日本人男性の2型糖尿病発症に関連するミトコンドリア遺伝子多型を発見した。Aging誌オンライン版2021年1月19日号での報告。

新型コロナ、消化管内視鏡検査で飛沫からの感染リスクは?

 消化管内視鏡検査(GIE)は、早期発見と多くの疾患の治療に有用である一方で、医療スタッフが患者の分泌物の飛沫によって感染するリスクがあり、COVID-19パンデミック下においては危険度の高い処置と考えられている。本研究は、横浜市立大学病院の研究チームが、検査を実施する医療スタッフが曝露する可能性のある唾液および消化液により、SARS-CoV-2陽性となる割合を検証した。Digestive endoscopy誌オンライン版2021年2月6日号に掲載。  本研究では、2020年6月1日~7月31日に横浜市立大学病院でGIEを受けたすべての患者が登録された。全員から3mL の唾液と共に、上部消化管内視鏡の場合は胃液10mLを、下部消化管内視鏡の場合は腸液10mLを採取した。主要評価項目は、唾液および胃腸液中のSARS-CoV-2陽性率で、SARS-CoV-2の血清抗体価や患者の背景情報についても併せて解析した。

統合失調症患者における小児期の心理行動特性~日本のレトロスペクティブ研究

 統合失調症は、初期発達障害のフレームワークに適応することを示唆する科学的エビデンスが、疫学的研究や遺伝学的研究によって報告されているが、将来統合失調症を発症する子供の心理的行動の特徴は、十分に解明されていない。京都女子大学の濱崎 由紀子氏らは保護者による報告を通じて、小児期統合失調症患者に特有の特徴を明らかにするため、検討を行った。BMC Psychiatry誌2021年1月26日号の報告。  対象は、DSM-IV-TR基準を満たした20代の統合失調症外来患者54例および性別と年齢をマッチさせた健康対照者192例。すべての対象の6~8歳時の特徴を評価するため、対象者の保護者に対する子供の行動チェックリスト(CBCL)のレトロスペクティブ評価質問票を用いた。小児期統合失調症に特有の心理行動の特徴を推定するため、t検定、ロジスティック回帰、ROC曲線解析を用いた。得られたロジスティック回帰モデルを使用して、CBCLスコアに基づいてリスク予測アルゴリズムのプロトタイプを作成した。

認知症介護者の人道的負担~日本の大規模横断研究

 急速な高齢化社会へ進む日本では、認知症やアルツハイマー病の有病率の増加に伴い、介護者の必要性が高まっている。岐阜薬科大学の大野 慎也氏らは、日本での認知症やアルツハイマー病の介護者における人道的負担について、それ以外の介護者との比較を行った。Journal of Medical Economics誌2021年号の報告。  日本の健康調査National Health and Wellness Survey(NHWS)の2018年のデータを用いて、横断的研究を行った。対象は、認知症やアルツハイマー病の介護者805人、それ以外の介護者1,099人、非介護者2万7,137人。アウトカムの指標は、健康関連QOL尺度(HRQoL)であるSF-12、健康状態を評価するEQ-5D、健康が生産性や活動に及ぼす影響、うつ病と不安症の評価とした。群間比較を行うため、潜在的な交絡因子で調整した後、多変量解析を用いた。

日本人統合失調症患者に対するブレクスピプラゾール切り替え療法の安全性

 CNS薬理研究所の石郷岡 純氏らは、アリピプラゾールまたは他の抗精神病薬(ドパミンD2受容体アンタゴニスト)からブレクスピプラゾールに切り替えた際の、長期的な安全性の評価を行った。Human Psychopharmacology誌オンライン版2021年1月26日号の報告。  日本人統合失調症外来患者を対象とした56週間オープンラベル試験の事後分析を行った。オープンラベル試験では、ブレクスピプラゾール2mg/日へ4週間で切り替えを行った後、52週間フレキシブルドーズ(1~4mg/日)で投与した。主要評価項目は、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライド、血糖、体重、プロラクチンとした。副次的評価項目は、有効性、治療による有害事象(TEAE)、錐体外路症状、補正値QT間隔との関連とした。

日本人高齢者における新たな認知症診断予測因子~コホート研究

 高齢者の認知症を予防することは、公衆衛生上の重要な課題である。認知症の予測因子を早期に発見し、是正することは重要であるが、定期的に収集された医療データに基づく認知症の予測因子は、すべて明らかになっているわけではない。京都大学の中奥 由里子氏らは、定期的に収集したレセプトデータを用いて、認知症診断の潜在的な予測因子を調査した。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2021年1月13日号の報告。

日本人高齢者の認知症リスクと中年期以降の長期的な体重変化~大崎コホート2006

 高齢になるにつれ、体重減少や認知機能障害の頻度が高まるが、日本人高齢者の認知症発症リスクに体重変化が関連しているかは不明である。東北大学の陸 兪凱氏らは、中年期以降の長期的な体重変化と認知症発症リスクとの関連を調査するため、日本人高齢者のコミュニティーベースコホート研究を実施した。Journal of Epidemiology誌オンライン版2020年12月26日号の報告。  2006年に65歳以上の障害のない日本人高齢者を対象としたコホート研究を実施した。対象者は、1994年と2006年に自己報告式質問票を用いて体重データを収集し、体重変化に基づき次のように分類した。安定体重(-1.4~+1.4kg)、体重増加(≧+1.5kg)、体重減少1(-2.4~-1.5kg)、体重減少2(-3.4~-2.5kg)、体重減少3(-4.4~-3.5kg)、体重減少4(-5.4~-4.5kg)、体重減少5(≦-5.5kg)。認知症発症は、公的な介護保険データベースより収集した。対象者のフォローアップ期間は、2007年4月~2012年11月の5.7年間であった。認知症発症に関連する多変量調整ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の推定には、Cox比例ハザードモデルを用いた。

日本における緊急事態宣言下のマタニティハラスメントとうつ病との関連

 妊娠への差別として知られるマタニティハラスメントは、先進国において広まったままである。しかし、マタニティハラスメントによるメンタルヘルスへの影響を調査した研究は、十分とはいえない。北里大学の可知 悠子氏らは、日本における妊娠中のマタニティハラスメントとうつ病との関連を調査した。Journal of Occupational Health誌2021年1月号の報告。  日本において一部地域の緊急事態宣言が続く2020年5月22日~31日に妊婦(妊娠確認時に就業していた女性)359人を対象に横断的インターネット調査を実施した。マタニティハラスメントは、国のガイドラインで禁止されている16事項のいずれかを受けた場合と定義した。うつ病の定義は、エジンバラ産後うつ病自己評価票日本語版(EPDS)スコア9以上とした。分析には、ロジスティック回帰分析を用いた。