ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:31

潰瘍性大腸炎へのミリキズマブ、導入・維持療法で有効性示す/NEJM

 中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎患者において、ミリキズマブはプラセボよりも、臨床的寛解の導入・維持に有効であることが、オランダ・アムステルダム大学医療センターのGeert D'Haens氏らが行った2つの第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験(導入療法試験と維持療法試験)で示された。一方で、ミリキズマブ群では少数の患者ではあるが、帯状疱疹などの日和見感染症およびがんの発生も報告されている。ミリキズマブはIL-23p19を標的とするヒト化モノクローナル抗体で、第II相試験で潰瘍性大腸炎の治療における有効性が示されていた。NEJM誌2023年6月29日号掲載の報告。

1日1回の経口orforglipron、肥満成人の体重減少に有効/NEJM

 非糖尿病の肥満成人において、1日1回の経口剤である非ペプチドGLP-1受容体作動薬orforglipronは、体重減少と関連することが示された。orforglipronに関して報告された有害事象は、GLP-1受容体作動薬の注射製剤と類似したものだったという。カナダ・マクマスター大学のSean Wharton氏らが、272例を対象に行った第II相の多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照並行群比較試験の結果を報告した。肥満は、世界中で疾患および死亡に結びつく重大リスク因子となっており、1日1回の経口orforglipronの肥満成人における体重減少の有効性と安全性に関するデータが求められていた。NEJM誌オンライン版2023年6月23日号掲載の報告。

男性性腺機能低下症、テストステロン補充で心血管リスクは?/NEJM

 性腺機能低下症の中高年男性で、心血管疾患を有するか、そのリスクが高い集団において、テストステロン(ゲル剤)補充療法は、心血管系の複合リスクがプラセボに対し非劣性で、有害事象の発現率は全般に低いことが、米国・クリーブランドクリニックのA Michael Lincoff氏らが実施した「TRAVERSE試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年6月16日号に掲載された。  TRAVERSE試験は、米国の316施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照非劣性第IV相試験であり、2018年5月23日に患者の登録が開始された(AbbVieなどの助成を受けた)。

fruquintinib、難治転移大腸がんに有効/Lancet

 難治性の転移を有する大腸がんの治療において、VEGFR-1、2、3を標的とする経口チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)fruquintinibはプラセボと比較して、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)が有意に長く、安全性も良好であることが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのArvind Dasari氏らが実施した「FRESCO-2試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年6月15日号で報告された。  FRESCO-2試験は、日本を含む14ヵ国124施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年8月~2021年12月の期間に患者の登録が行われた(中国・HUTCHMEDの助成を受けた)。

急性脳梗塞の血栓除去術、術前ビタミンK拮抗薬は出血リスク?/JAMA

 急性期脳梗塞で血管内血栓除去術(EVT)を受けた患者では、術前のビタミンK拮抗薬(VKA)の使用と術後の症候性頭蓋内出血(sICH)には関連がないが、国際標準比(INR)が1.7を超えるサブグループではVKAの使用はsICH発生のリスクを高めることが、米国・デューク大学医学大学院のBrian Mac Grory氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年6月20日号で報告された。  研究グループは、EVTを受ける脳梗塞患者における術前のVKAの使用とアウトカムとの関連を明らかにする目的で、後ろ向きコホート研究を行った(ARAMIS registry[Daiichi Sankyo、Genentech、Janssenの助成で運営]の支援を受けた)。

臨床試験で有意差なし、本当に効果なし?/JAMA

 無作為化臨床試験の多くは統計学的に有意でない結果をもたらすが、このような知見は一般的な統計学的枠組みで解釈することは困難とされる。スイス・ジュネーブ大学のThomas Perneger氏らは、尤度比を適用することで、有意でない主要アウトカムの結果のうち、効果なしとする帰無仮説を支持するエビデンスの強度と、事前に規定された有効であるとする対立仮説を支持するエビデンスの強度を推定した。その結果、対立仮説(尤度比<1)が支持されたのは8.9%に過ぎず、91.1%では帰無仮説(尤度比>1)が支持された。研究の成果は、JAMA誌2023年6月20日発行号に掲載された。

腎不全死亡、オンラインHDFが従来血液透析よりリスク低下/NEJM

 腎不全患者において、大量血液透析濾過(high-dose hemodiafiltration with on-line production:オンラインHDF)は従来のハイフラックス膜を使用した血液透析(HFHD)と比較して、全死因死亡リスクを低下することが示された。オランダ・ユトレヒト大学病院のPeter J. Blankestijn氏らが欧州8ヵ国の61施設で実施した実用的な無作為化比較試験「CONVINCE研究」の結果を報告した。いくつかの研究で、腎不全患者では標準的な血液透析と比較し、オンラインHDFが有用である可能性が示唆されているが、発表されている研究には限界があり追加データが必要とされていた。NEJM誌オンライン版2023年6月16日号掲載の報告。

発作性上室頻拍、etripamil点鼻スプレーが有用/Lancet

 発作性上室頻拍に対する短時間作用型のL型Caチャネル拮抗薬であるetripamilの点鼻投与は、房室結節依存性の発作性上室頻拍の洞調律への迅速な復帰に関してプラセボより優れており、忍容性および安全性は良好であることが、北米および欧州の160施設で実施された多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照イベントドリブン試験「RAPID試験」の結果、示された。米国・Piedmont Heart InstituteのBruce S. Stambler氏らが報告した。RAPID試験は、NODE-301試験のパート2として実施された試験である。Lancet誌オンライン版2023年6月15日号掲載の報告。

HIVの2次治療、ドルテグラビルへの切り替えは可能か?/NEJM

 既治療のヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者で、薬剤耐性変異の有無に関するデータがなく、ウイルス抑制下にある患者において、リトナビルブーストプロテアーゼ阻害薬(PI)ベースのレジメンからドルテグラビルへの切り替えは、リトナビルブーストPIを含むレジメンに対して非劣性であることが、ケニア・ナイロビ大学のLoice A. Ombajo氏らが同国4施設で実施した多施設共同無作為化非盲検試験の結果で示された。遺伝子型の情報がなく、リトナビルブーストPIを含む2次治療でウイルスが抑制されているHIV感染患者において、ドルテグラビルへの切り替えに関するデータは限られていた。NEJM誌2023年6月22日号掲載の報告。

院外心停止後のPaCO2目標値、軽度高値vs.正常/NEJM

 院外心停止後に蘇生された昏睡患者において、目標PaCO2値を軽度高値とする治療(targeted mild hypercapnia)が正常値とする治療(targeted normocapnia)と比較して、6ヵ月後の良好な神経学的アウトカムに結びつかなかったことが示された。オーストラリア・Austin HospitalのGlenn Eastwood氏らが、17ヵ国63施設のICUが参加した医師主導の評価者盲検無作為化非盲検試験「Targeted Therapeutic Mild Hypercapnia after Resuscitated Cardiac Arrest trial:TAME試験」の結果を報告した。ガイドラインでは、院外心停止後に蘇生した昏睡状態の成人患者に対して、正常PaCO2値を治療目標とすることが推奨されているが、軽度高値とするほうが脳血流を増加させ神経学的アウトカムを改善する可能性が示唆されていた。NEJM誌オンライン版2023年6月15日号掲載の報告。

乳房温存術後の同側再発率、SIB照射vs.標準的照射/Lancet

 乳房温存手術後の早期乳がんに対する標的体積内同時ブースト(SIB)法を用いた強度変調放射線治療(IMRT)および画像誘導放射線治療(IGRT)では、48Gy SIBは5年後の同側乳房の腫瘍再発(IBTR)率が、逐次照射を行う標準的放射線治療に対し非劣性であり、乳房硬結の発生率も同程度であるが、53Gy SIBではIBTR、硬結とも標準的照射に比べ高率にみられることが、英国・ケンブリッジ大学のCharlotte E. Coles氏らが実施した「IMPORT HIGH試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2023年6月8日号で報告された。

低リスク骨髄異形成症候群の貧血にluspaterceptは?/Lancet

 赤血球造血刺激因子製剤(ESA)による治療歴のない低リスクの骨髄異形成症候群(MDS)患者の貧血治療において、エポエチンアルファと比較してluspaterceptは、赤血球輸血非依存状態とヘモグロビン増加の達成率に優れ、安全性プロファイルは全般に既知のものと一致することが、ドイツ・ライプチヒ大学病院のUwe Platzbecker氏らが実施した「COMMANDS試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年6月10日号に掲載された。  COMMANDSは、26ヵ国142施設が参加した第III相非盲検無作為化対照比較試験であり、2019年1月~2022年8月の期間に患者の登録が行われた(CelgeneとAcceleron Pharmaの助成を受けた)。今回は、中間解析の結果が報告された。

慢性硬膜下血腫、デキサメタゾンvs.手術/NEJM

 慢性硬膜下血腫患者において、デキサメタゾンによる治療は穿頭ドレナージと比較し機能的アウトカムに関して非劣性は示されず、合併症の発現頻度や追加手術を要する患者の割合が高かった。オランダ・Amphia HospitalのIshita P. Miah氏らが、医師主導、評価者盲検の多施設共同無作為化非盲検非劣性試験の結果を報告した。慢性硬膜下血腫の治療において、外科的除去を伴わないグルココルチコイドの役割は不明であった。NEJM誌2023年6月15日号掲載の報告。

抗CD7塩基編集CAR-T細胞療法、T細胞性ALLに有望/NEJM

 英国・Great Ormond Street Hospital for Children NHS TrustのRobert Chiesa氏らは、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)の小児患者を対象とした、抗CD7塩基編集キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法の第I相試験において、最初の3例中2例で寛解が得られたことを報告した。CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)によるシチジンの脱アミノ化は、DNAに切断を生じさせることなくシトシンからチミンへ極めて正確に塩基置換変異を起こすことができる。すなわち、転座やその他の染色体異常を誘発することなく遺伝子を塩基編集し不活性化できることから、再発T細胞白血病小児患者において、この技術の使用が検討されている。著者は、「今回の中間結果は、再発白血病患者に対する塩基編集T細胞療法のさらなる研究を支持するもので、また、免疫療法に関連した合併症の予想されるリスクも示している」とまとめている。NEJM誌オンライン版2023年6月14日号掲載の報告。

僧帽弁形成術、小切開vs.胸骨正中切開/JAMA

 僧帽弁形成術において、術後12週時の身体機能の回復に関して、小開胸術の胸骨切開術に対する優越性は示されなかった。弁修復率および安全性については両手術で同等であることが確認された。英国・South Tees Hospitals NHS Foundation TrustのEnoch F. Akowuah氏らが、実用的多施設共同無作為化優越性試験の結果を報告した。変性による僧帽弁逆流を有する患者における、胸腔鏡下小開胸vs.胸骨正中切開の僧帽弁形成術の安全性と有効性は不明であった。JAMA誌2023年6月13日号掲載の報告。

早期乳がんの死亡率、どのくらい下がったのか/BMJ

 英国・オックスフォード大学のCarolyn Taylor氏らは、National Cancer Registration and Analysis Service(NCRAS)のデータを用いた観察コホート研究を行い、早期浸潤性乳がん女性の予後は1990年代以降大幅に改善され、ほとんどの人が長期がんサバイバーとなっているものの、依然として少数例で予後不良リスクが伴うことを報告した。早期浸潤性乳がん診断後の乳がん死亡リスクは、過去数十年間で低下しているが、その低下の程度は不明であり、また低下は特定の特性を持つ患者に限定されるのか、すべての患者に当てはまるのか不明であった。BMJ誌2023年6月13日号掲載の報告。

外傷性急性硬膜下血腫、開頭術vs.減圧開頭術/NEJM

 外傷性急性硬膜下血腫の手術において、骨弁を還納する開頭術と還納しない減圧開頭術では、1年時点の障害およびQOLのアウトカムは同等だった。一方で、2週間以内の追加手術の発生率は開頭術群で高く、創部合併症の発生率は減圧開頭術群が高かった。英国・Addenbrooke's HospitalのPeter J. Hutchinson氏らが、11ヵ国40施設で行った無作為化比較試験の結果を報告した。外傷性急性硬膜下血腫の手術の選択肢である減圧開頭術は、頭蓋内圧亢進症を予防する可能性が示唆されているが、より良好なアウトカムと関連するかは明らかになっていなかった。NEJM誌2023年6月15日号掲載の報告。

医療ジャーナル査読者、コロナ流行で変化か/BMJ

 BMJ出版グループの医療ジャーナルについて、査読依頼と依頼同意に関するジェンダーおよび地域性の格差について調べたところ、女性への依頼率が低いことや、依頼同意率は編集者が女性の場合のほうが男性の場合よりも低いといった偏りがあることが示された。また、地域的に欧州に比べアジアやオセアニアへの査読依頼率が低く、高所得国に偏っていることも明らかになったという。スイス・ジュネーブ大学病院のKhaoula Ben Messaoud氏らが後ろ向きコホート研究の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「編集者は、偏りを減らしダイバーシティ(多様性)を改善するために、効果的な戦略を見つけて実行する必要があり、上位中所得国・低所得国からより多くの女性や研究者が査読に参加するよう、戦略の進捗状況を評価し続けなければならない」と述べている。BMJ誌2023年6月13日号掲載の報告。

がん遺伝子検査、よく受けるがん種・人種は?/JAMA

 米国・スタンフォード大学のAllison W. Kurian氏らは、2013~19年に同国カリフォルニア州とジョージア州でがんと診断された患者のうち、生殖細胞系列遺伝子検査を受けた患者の割合が6.8%とごくわずかであり、非ヒスパニック系白人に比べ、黒人、ヒスパニック系、アジア系の患者ではより低いことを示した。同検査は遺伝性のがんリスクを明らかにし、遺伝学的な標的治療を可能にすることで、がん患者の生存率を向上させるが、米国ではどのくらいの患者が受けているかは、これまで知られていなかった。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年6月5日号で報告された。

進行腎細胞がん、免疫チェックポイント阻害薬の再投与は有効か/Lancet

 免疫チェックポイント阻害薬の投与中または投与後に病勢が進行した腎細胞がん患者の治療において、免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブとチロシンキナーゼ阻害薬カボザンチニブの併用療法はカボザンチニブ単独療法と比較して、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を改善せず、重篤な有害事象が増加したことが、米国・シティ・オブ・ホープ総合がんセンターのSumanta Kumar Pal氏らが実施した「CONTACT-03試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2023年6月5日号に掲載された。