ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:253

CTなど画像診断による1人当たり被曝量、1996~2010年で倍増:米国

米国で1996~2010年の間にCTなどの先端的な画像診断検査を受けた人の割合が増大し、それに伴い1人当たりの放射線被曝量は約2倍に増大したことが報告された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のRebecca Smith-Bindman氏らが、6つの統合ヘルスケアシステム(HMO)加入者について調べた結果で、JAMA誌2012年6月13日号で発表した。米国では近年、診療報酬支払動向での有意な画像診断利用の増加がみられるようになっていたという。しかし患者がどのような画像診断を受けているのかについては不明で、研究グループは、画像診断検査の傾向および被曝との関連について調査を行った。

悪性胸水、呼吸困難症状の緩和には胸腔カテーテル留置も胸膜癒着術も効果は同等

 悪性胸水による呼吸困難症状の緩和に対し、胸腔カテーテル留置法と、タルクを用いた胸膜癒着術とを比較した結果、症状緩和の効果は同等であることが報告された。ただし胸腔カテーテル留置法はタルク胸膜癒着術に比べ、当初の入院期間は短く、再胸膜処置の実施率も少なかったが、有害事象発生率は約5倍と高かったことも示されている。英国・オックスフォード大学のHelen E. Davies氏らが、悪性胸水患者106人について行った非盲検無作為化比較試験の結果で、JAMA誌2012年6月13日号で発表した。悪性胸水は呼吸困難を伴い患者は短命である。胸水ドレナージで症状を緩和できるが最も効果的な第一選択の治療は何かは定まっていない。

高齢者の深部静脈血栓症の診断、Dダイマーは年齢依存性カットオフ値で

 プライマリ・ケアでの深部静脈血栓症診断のためのDダイマー値について、カットオフ値を従来の500μg/Lではなく、50歳超では「年齢×μg/L」、60歳以上では「750μg/L」を用いるのが安全な除外に結びつくことが明らかにされた。オランダ・ユトレヒト大学メディカルセンターのHenrike J Schouten氏らが、後ろ向き断面診断解析の結果、報告した。BMJ誌6月9日号(オンライン版2012年6月6日号)掲載報告より。

慢性めまいに、小冊子ベースの前庭リハビリテーションが有効

慢性めまいに対する小冊子を配布し自宅で行うよう指導する前庭リハビリテーションは症状の改善効果に有効で、プライマリ・ケアにおいて簡易で費用効果に優れた方法であることが報告された。英国・サウサンプトン大学のLucy Yardley氏らが、慢性めまいに対し一般に行われているケアと、小冊子ベースの前庭リハビリテーション(電話サポートあり/なし)の臨床効果と費用対効果を評価することを目的とした単盲検無作為化試験を行った結果で、BMJ誌6月9日号(オンライン版2012年6月6日号)で発表した。前庭リハビリテーションは、前庭機能障害によるめまいの最も効果的な治療法で、簡単な自己エクササイズ法からなるが、自宅で実践可能な適格患者でも本療法を教授されるケースはほとんどないのが現状だという。

世界の5歳未満児死亡の最新動向:2000~2010年

 2000~2010年の最新の世界の5歳未満児死亡率の動向調査の結果、全体に減少はしていたものの、医学的に死因が特定され割合が約3%であったこと、減少には感染症による死亡減少が大きく寄与していたことなどが報告された。米国・ジョンズ・ホプキンス大学(米国)のLi Liu氏らによる調査の結果で、「小児生存戦略はもっと、感染症や新生児期の主因など死亡原因へ目を向けなくてはならない。2010~2015年以降の減少をより迅速なものとするには、最も頻度の高い共通した死因、特に肺炎と早産の合併症の減少を促進することが必要だ」と報告。「質の高いデータを集めて推定方法を強化する継続的努力が、将来の改善にとって必須である」と結論している。「Lancet誌2012年6月9日号(オンライン版2012年5月11日号)掲載報告より。

早産率は、貧困国でも豊かな国でも増えている

早産は、5歳未満児死亡の2番目に大きな原因だが、早産(妊娠37週未満)に関するデータは国連機関も収集しておらず、システマティックな国別推計も年次推移の解析も行われていないという。英国・ロンドン大学のHannah Blencowe氏らは、2010年の世界184の国と地域の早産率と年次推移について推計値を算出し、また推計値を取り巻く誤差の定量的評価も併せて行った。Lancet誌2012年6月9日号掲載報告より。

基底細胞がんへのvismodegib、腫瘍縮小効果と関連

基底細胞がんの多くは外科的に治療されるが、局所進行型や転移性の症例については効果的な治療法が存在しない。その基底細胞がんの発生機序に関与しているヘッジホッグ情報伝達の変化に着目して開発されたvismodegib(GDC-0449)は、画期的医薬品(ファースト・イン・クラス)といわれるヘッジホッグ経路低分子阻害薬で、第1相試験では進行型基底細胞がん患者で奏効率58%という成績を示した。本報告は、米国・メイヨークリニックのAleksandar Sekulic氏らにより行われた多施設共同国際2コホート非無作為化試験の結果で、NEJM誌2012年6月7日号で発表された。

中国全土に深刻な薬剤耐性結核が蔓延

深刻な薬剤耐性結核が中国に蔓延していることが、中国・疾病管理予防センター(CDC)のYanlin Zhao氏らが2007年に行った中国全国サーベイの結果、報告された。公衆衛生および病院医療(特に結核病院)での不適切治療が、多剤耐性(MDR)結核を招いており、大半の症例は一次感染であったという。中国全国にわたる薬剤耐性結核の蔓延状況についての調査はこれが初めて。NEJM誌2012年6月7日号掲載報告より。

糖尿病有無別でみた低用量アスピリン服用と大出血リスクとの関連

アスピリン服用と大出血リスクとの関連について、人口ベースの大規模コホート研究の結果、アスピリン服用が胃腸や脳の大出血リスクと有意に関連することが示された。また、糖尿病患者と非糖尿病患者とで比較した結果、糖尿病の人は出血リスクが増大することが示されたが、アスピリン服用との独立した関連は認められなかったことが報告された。イタリア・Consorzio Mario Negri SudのGiorgia De Berardis氏らが、410万人のコホートについて行った試験で、JAMA誌2012年6月6日号で発表した。心血管イベント一次予防としての低用量アスピリン服用のベネフィットは、糖尿病有無による格差は比較的小さい。その差は出血リスクによって相殺されてしまう可能性があることから研究グループは、アスピリン服用と大出血リスクとの関連を糖尿病有無別で検討した。

電話によるうつ病の認知行動療法、対面療法よりも中断率は低いが……

大うつ病性障害に対する、電話による認知行動療法は、対面による同療法と比較して、治療アドヒアランスは改善されることが示された。一方で、両群18週治療後のフォローアップ6ヵ月時点の効果は同等であった。米国・ノースウエスタン大学のDavid C. Mohr氏らが、300人超について行った前向き無作為化比較試験の結果、報告したもので、JAMA誌2012年6月6日号で発表した。電話による認知行動療法の効果について、対面の場合との効果を比較した研究はほとんど行われていなかったという。

認知症患者の治療効果、物忘れクリニックvs.一般診療所

認知症患者の治療や介護の手配調整の有効性は、物忘れクリニックと一般診療所で差はないことが、オランダ・Radboud大学ナイメーヘン医療センターのEls J Meeuwsen氏らの検討で報告された。従来、物忘れクリニックは認知症の診断に重点を置いてきたが、特に抗認知症薬が臨床導入された1990年代以降、治療や介護手配への関与が急増している。しかし、物忘れクリニックによる認知症治療やフォローアップの有効性を直接的に示すエビデンスはない。英国は数年前、国による対認知症戦略を公表したが、集学的な物忘れ外来の全国的なネットワークの構築によってサービスやサポートへのアクセスのしやすさを提供することで、その目標を達成する意向だという。BMJ誌2012年6月2日号(オンライン版2012年5月15日号)掲載の報告。

心血管疾患リスク予測モデル、バイアスの影響が明らか

既存の心血管疾患リスク予測モデルは有用であり、これらモデルの直接比較はベネフィットをもたらすと考えられるが、比較試験の論文はアウトカムの選択バイアスや楽天主義バイアスの影響を受けていることが、ギリシャ・Ioannina大学のGeorge C M Siontis氏らの検討で示された。臨床での使用が推奨されている心血管疾患リスク予測モデルの中には、異なる集団やアウトカムに関して開発され、妥当性の検証が行われているものがある。最も一般的で広く普及しているリスクモデルでも、その識別、キャリブレーション、再分類に関する予測能はほとんど知られていないという。BMJ誌2012年6月2日号(オンライン版2012年5月24日号)掲載の報告。

亜鉛追加、乳児の重症細菌感染症に有効

重症細菌感染症が疑われる生後7~120日の乳児に対し、標準抗菌薬治療の補助療法として亜鉛を追加投与すると、治療不成功リスクが低減する可能性があることが、全インド医科学研究所(AIIMS)のShinjini Bhatnagar氏らの検討で明らかとなった。重症細菌感染症は開発途上国の乳児期早期の主要な死因である。標準的な抗菌薬治療に安価で入手しやすい介入法を追加することで、乳児死亡率の抑制が可能と考えられている。Lancet誌2012年6月2日号(オンライン版2012年3月31日号)掲載の報告。

頸動脈内膜中膜厚の年間増加率、心血管リスクを反映せず

頸動脈内膜中膜厚(cIMT)の年間増加率は一般人口の心血管リスクとは相関せず、臨床試験の代替指標としては使用できないことが、ドイツ・J W Goethe大学病院(フランクフルト)のMatthias W Lorenz氏らが実施したPROG-IMT試験で示された。cIMTは、早期のアテローム性動脈硬化の非侵襲的超音波検査の生物マーカーであり、一般集団において心血管イベントのリスクと正の相関を示す。すでに多くの臨床試験が、一般集団やリスク集団にみられるcIMTの変化は心血管イベントの発生リスクを反映するとの暗黙の前提の下で行われ、通常cIMTの年間増加率を指標に用いるが、これらの関連を検証した報告はほとんどないという。Lancet誌2012年6月2日号(オンライン版4月27日号)掲載の報告。

新生児脳症に対する低体温療法後の長期アウトカム

新生児脳症に対する低体温療法の有効性に関する無作為化試験の長期アウトカムが報告された。6~7歳時点における死亡またはIQスコア70未満の複合エンドポイント発生率は、通常治療群より全身低体温療法群のほうが低かったものの、有意差は認められなかったという。ただし、低体温療法群のほうが死亡率が低く、生存例における重度障害の発生率の増大は認められなかった。米国・ミシガン小児病院のSeetha Shankaran氏らによる本検討は、これまでに18~22ヵ月時点での早期報告が行われており、その時点では死亡率および中等度~重度障害発生の有意な低下が示されていた。NEJM誌2012年5月31日号掲載報告より。

サルモネラ感染の拡大、通販で購入したひな鳥が原因と特定

2005年に特定されたヒトサルモネラモンテビデオ感染症の集団発生について、米国CDCのNicholas H. Gaffga氏らが、感染源を特定し予防対策を講じる調査を行った結果、通信販売専門の孵化場から出荷されたひな鳥との接触が原因であったことが報告された。感染したのは主に幼児で、孵化場への介入により、ヒトへの感染は減少したが根絶には至らず、「生きているひな鳥からのサルモネラ菌伝播を断つことは難しいことが示された」と結論している。NEJM誌2012年5月31日号掲載報告より。

術前化学放射線療法、治癒の可能性ある食道・胃接合部がん患者の生存率を改善

切除可能な腫瘍を有する食道がんまたは食道胃接合部がん患者に対し、術前に化学放射線療法を行った結果、生存率の改善が認められたこと、有害事象発生率は許容範囲であったことが、オランダ・エラスムス大学医療センターのP. van Hagen氏らによる第3相多施設共同無作為化試験の結果、報告された。数十年間討議されてきた術前化学放射線療法は、これまでは試験結果が不良であったこともあり否定的であったが、同グループによる第2相試験では、毒性作用が低く、切除を受けた患者全員がR0(1ミリ以内の腫瘍なし)を達成していた。第3相試験では、術前に化学放射線療法を施行する群と手術単独群とを比較検討した。NEJM誌2012年5月31日号掲載報告より。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群、持続気道陽圧療法で高血圧リスク低下

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は高血圧発症リスクを増大するが、持続気道陽圧療法(CPAP)によりそのリスクが低下することが、明らかにされた。スペイン・Miguel Servet大学病院のJose M. Marin氏らが約12年間追跡した前向きコホート研究の結果による。OSA患者では高血圧を呈する人が大勢を占める。これまで短期試験では、CPAPが同患者の高血圧リスクを低下することは示されていた。JAMA誌2012年5月23・30日合併号掲載報告より。

国家的「手洗いキャンペーン」が医療従事者関連感染症を低減:英国

イングランドとウェールズでは2004年に、全国のNHS傘下病院の医療従事者に対し、「手洗いキャンペーン(Cleanyourhands campaign)」が開始された。背景には、MRSAやMRSSなどの感染症蔓延の報告に対する懸念、一方の医療従事者の手洗いコンプライアンスが低率という報告があったこと、それらの前提として医療従事者の手指を媒介として患者から患者への感染拡大の可能性があったことなどによるという。キャンペーンは、2008年までに3回にわたって発動され、その効果について、英国・University College London Medical SchoolのSheldon Paul Stone氏らが前向き調査にて評価をした。BMJ誌2012年5月26日号(オンライン版2012年5月3日号)掲載報告より。

手術患者に対するトラネキサム酸、輸血リスク低減は確たる証拠あり

 手術における輸血リスクを低減するとされるトラネキサム酸(商品名:トランサミンほか)の有効性エビデンスについて、英国・London School of Hygiene and Tropical MedicineのKatharine Ker氏らによるシステマティックレビュー・累積メタ解析の結果、過去10年に遡って強いエビデンスがあり、輸血に関してはこれ以上試験を行っても新たな知見はもたらされないだろうと報告した。しかし、「血栓塞栓症イベントと死亡率に対する影響については、いまだ明らかではない」として、手術患者にその情報を提供し選択をさせるべきであると結論。小規模な臨床試験をこれ以上行うのではなく、種々雑多な患者を含む大規模プラグマティックな試験を行うことの必要性について言及した。BMJ誌2012年5月26日号(オンライン版2012年5月17日号)掲載報告より。