ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:113

貧血/鉄欠乏の心臓手術患者、術前日の薬物治療で輸血量減少/Lancet

 鉄欠乏または貧血がみられる待機的心臓手術患者では、手術前日の鉄/エリスロポエチンアルファ/ビタミンB12/葉酸の併用投与により、周術期の赤血球および同種血製剤の輸血量が減少することが、スイス・チューリッヒ大学のDonat R. Spahn氏らの検討で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年4月25日号に掲載された。貧血は、心臓手術が予定されている患者で高頻度に認められ、赤血球輸血量の増加や、死亡を含む有害な臨床アウトカムと関連する。また、鉄欠乏は貧血の最も重要な要因であり、鉄はエネルギーの産生や、心筋機能などの効率的な臓器機能に関与する多くの過程で中心的な役割を担っている。そのため、貧血と関連がない場合であっても、術前の鉄欠乏の治療を推奨する専門家もいるという。

急性期脳梗塞の血栓溶解療法、発症後9時間まで有効?/NEJM

 救済可能な脳組織を有する急性期脳梗塞患者の治療において、発症後4.5~9時間または脳梗塞の症状を呈して起床した場合のアルテプラーゼ投与による血栓溶解療法は、プラセボと比較して神経障害がない/軽度(修正Rankinスケールスコアが0/1)の患者の割合が有意に高いことが、オーストラリア・メルボルン大学のHenry Ma氏らが行ったEXTEND試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年5月9日号に掲載された。急性期脳梗塞に対する静脈内血栓溶解療法の開始時期は、一般に発症後4.5時間以内に限られる。一方、画像所見で、脳組織の虚血がみられるが梗塞は認めない患者では、治療が可能な時間を延長できる可能性が示唆されている。

再発/難治性多発性骨髄腫でCAR-T療法が有望/NEJM

 再発または難治性多発性骨髄腫患者において、B細胞成熟抗原(BCMA)を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法であるbb2121の、安全性と抗腫瘍効果が確認された。米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのNoopur Raje氏らが、bb2121の第I相臨床試験(CRB-401試験)の結果を報告した。bb2121は、前臨床試験において、多発性骨髄腫の治療薬として有望であることが示されていた。NEJM誌2019年5月2日号掲載の報告。  研究グループは、2016年1月31日~2018年4月30日の期間に、プロテアソーム阻害薬および免疫調整薬を含む3レジメン以上の治療歴がある、または両方の薬剤に治療抵抗性の再発/難治性多発性骨髄腫患者を登録した。

新世代DES vs.BMS、2万例超のメタ解析結果/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行後最初の1年における新世代薬剤溶出ステント(DES)の成績は、安全面から従来のベアメタルステント(BMS)を標準治療と見なすべきとする見解を打破するものであることが示唆されたという。イタリア・フェデリコ2世 ナポリ大学のRaffaele Piccolo氏らが、新世代DESとBMSのアウトカムを比較検証した無作為化臨床試験のシステマティックレビューとメタ解析の結果を報告した。新世代DESは、ほとんどが初期DESと直接比較する非劣性試験で検証され、概して同等の有効性と優れた安全性が示されてきたが、BMSとの比較については明確なものがなかった。今回の結果から著者は「1年を超える臨床アウトカムの改善を目標に、DESのさらなる技術開発が望まれる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2019年5月2日号掲載の報告。

院外心停止への経鼻蒸発冷却法は有益か/JAMA

 院外心停止患者への経鼻蒸発冷却法(trans-nasal evaporative intra-arrest cooling)の実施は、通常ケアと比較して90日後の良好な神経学的アウトカムの生存を、統計学的に有意に改善しなかったことが示された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のPer Nordberg氏らが、欧州7ヵ国の救急医療サービス(EMS)を通じて行った国際多施設共同無作為化試験「PRINCESS試験」の結果で、JAMA誌2019年5月7日号で発表した。経鼻蒸発冷却法は、心肺蘇生中(すなわち心停止中)に主に脳を冷却するための手法である。心停止後に実施する低体温治療は、良好な神経学的アウトカムの生存を増大する可能性が示唆されていた。

CVD高リスクCOPD、LAMAの長期安全性確認/JAMA

 心血管疾患リスクの高いCOPD患者に対して、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)アクリジニウムの長期投与はプラセボと比較して、3年時点の主要心血管イベント(MACE)リスクについて非劣性であることが示された。中等症~重症COPDの1年時増悪率も有意に減少した。米国・ジョンズ・ホプキンズ大学のRobert A. Wise氏らが、約3,600例を対象に行った多施設共同無作為化二重盲検試験の結果で、JAMA誌2019年5月7日号で発表した。LAMAについては、COPD患者の心血管罹患率および死亡率を増大するとの懸念が示されていた。

オバマケア、低出生時体重/早産の転帰を改善/JAMA

 米国の低所得者を対象とする公的医療保険制度であるメディケイドの受給資格の拡大(Medicaid expansion)に関連して、これを導入した州と未導入の州で、新生児の低出生時体重および早産のアウトカムに差はないものの、導入州は未導入州に比べ黒人と白人の新生児の間にみられたアウトカムの相対的な差が改善されたことが、米国・University of Arkansas for Medical SciencesのClare C. Brown氏らの調査で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年4月23日号に掲載された。米国では、低出生時体重および早産は、新生児の死亡や新生児~成人の慢性疾患のリスク増大などの有害な結果をもたらすが、黒人の新生児は白人の新生児よりも早産の可能性が高く、死亡や慢性疾患にも差がみられる。一方、1990年の包括財政調整法(OBRA)下では、メディケイドの適用は妊娠が条件であったため、各州の貧困の基準を満たさない低所得の母親は、産後60日で保険適用を失う場合があったが、医療費負担適正化法(ACA、オバマケア)下では、一部の州でメディケイド拡大が導入され、貧困基準の緩和とともに、妊娠の有無にかかわらず低所得の女性も継続的な医療の利用が可能となり、これによって母親の健康および出産前の早期ケアの受診機会が改善された可能性が示唆されていた。

米国成人の座位時間、1日1時間増加/JAMA

 長時間の座位は、多くの疾患や死亡のリスクを増大させる。カナダ・Alberta Health ServicesのLin Yang氏らが、米国における2001~16年の座位行動の傾向を調査した結果、1日に2時間以上のテレビ/ビデオ視聴の割合は高いまま安定しており、余暇におけるコンピュータ使用は全年齢層で増加し、1日の総座位時間は青少年および成人で有意に延長したことが明らかとなった。2018年に発表された「米国人のための身体活動ガイドライン(Physical Activity Guidelines for Americans)第2版」により、座位に伴う健康上のリスクが知られただけでなく、中~高強度の身体活動の増加と座位時間の短縮の双方によって、多くの人々が健康上の利益を得ていることが初めて示されたが、座位時間の定量的な主要ガイドラインは記載されていないという。JAMA誌2019年4月23日号掲載の報告。

ABO血液型不適合腎移植は、生存・生着を改善するか/Lancet

 ABO血液型不適合腎移植(ABOi-rTx)は、脱感作プロトコルや最適化に進展がみられるものの、3年以内の死亡率や移植腎の非生着率がABO血液型適合腎移植(ABOc-rTx)を上回ることが、ドイツ・オットー・フォン・ゲーリケ大学マクデブルクのFlorian G. Scurt氏らによるメタ解析で示された。研究の成果はLancet誌オンライン版2019年4月18日号に掲載された。ABOi-rTxは、提供臓器不足の打開策としてその使用が増加しているが、早期および長期のABOc-rTxに対する非劣性のエビデンスが求められている。

親密なパートナーからの暴力への介入、妊婦の産後QOLを改善するか/JAMA

 親密なパートナーからの暴力(intimate partner violence:IPV)は公衆衛生上の課題であり、女性や子供に重大で有害な結果をもたらす。カナダ・マックマスター大学のSusan M. Jack氏らは、初めての子供を持つ社会的および経済的な不利益を経験している妊婦への看護師による自宅訪問プログラム(nurse home visitation program)に、IPVへの包括的な介入を加えても、出産後の母親の生活の質(QOL)の改善は得られないことを示した。研究の詳細はJAMA誌2019年4月23日号に掲載された。米国の3つの無作為化試験では、看護師による自宅訪問プログラムは妊娠アウトカム、子供の健康、母親のライフコース(life-course)における成長を改善すると報告されているが、IPVが中等度~重度の母親ではこの効果は得られていない。また、他の米国とオランダの試験では、IPVへの同プログラムの効果に関して相反する知見が得られているという。

蠕虫感染症治療のベース、学校集団vs.地域集団/Lancet

 英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のRachel L. Pullan氏らは、土壌伝播蠕虫感染症に対する、学校集団を対象とした駆虫プログラムの代わりとなる集団治療の有効性を評価したクラスター無作為化比較試験を実施した。その結果、地域社会全体を対象に行った年1回の治療が、学校集団を対象とした同じく年1回の治療と比較して、鉤虫症の罹患率および感染強度の低下に有効であることが明らかにされた。検討では、年2回の介入も検討され、付加的利点はほとんど認められなかったことも判明した。学校集団を対象とした駆虫プログラムは、小児の土壌伝播蠕虫感染症の罹患率を低下させうるが、より広い地域社会への伝播は阻止できていなかった。今回の結果について著者は、「介入の範囲および効果の点で、地域社会全体への治療が非常に公正であることが示された」と述べている。Lancet誌オンライン版2019年4月18日号掲載の報告。

芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍にtagraxofuspが効果/NEJM

 未治療または再発の芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)成人患者において、tagraxofusp(SL-401)の投与が臨床的奏効をもたらしたことが示された。発現頻度が高かった有害事象は肝機能異常および血小板減少症であり、重篤な有害事象は毛細血管漏出症候群であった。tagraxofuspは、短縮ジフテリア毒素と遺伝子組み換えヒトインターロイキン-3(IL-3)が融合したCD123標的細胞毒素である。米国・テキサス州立大学M.D.アンダーソンがんセンターのNaveen Pemmaraju氏らが、BPDCN患者11例を対象としたパイロット試験の良好な結果を受けて、tagraxofusp単独療法の安全性および有効性を検証する多施設共同非盲検第II相臨床試験を実施し、結果を報告した。BPDCNは、IL-3受容体サブユニットα(IL3RAまたはCD123)を過剰発現する形質細胞様樹状細胞の形質転換によって引き起こされる予後不良の進行性血液がん(造血器腫瘍)であり、白血病やリンパ腫に対する従来の治療法では効果がない。NEJM誌2019年4月25日号掲載の報告。

進行性多巣性白質脳症、ペムブロリズマブで臨床的改善/NEJM

 進行性多巣性白質脳症(PML)の患者に対し、PD-1阻害薬ペムブロリズマブ投与により8例中5例で脳脊髄液(CSF)中のJCウイルス量が減少し、臨床的改善や安定化につながったことが示された。米国・国立神経疾患・脳卒中研究所のIrene Cortese氏らによる試験の結果で、著者は「PML治療における免疫チェックポイント阻害薬のさらなる研究の根拠が得られた」とまとめている。NEJM誌2019年4月25日号掲載の報告。  PMLは、JCウイルスが原因の脳の日和見感染症で、免疫機能が回復できなければ通常は致死的である。PD-1は、ウイルスクリアランスの障害に寄与する可能性がある免疫応答の制御因子であることが知られている。しかし、PD-1阻害薬ペムブロリズマブがPML患者において、抗JCウイルス免疫活性を再活性化しうるかは明らかになっていなかった。

BZP系薬剤抵抗性の小児けいれんてんかん重積、2次治療は?/Lancet

 ベンゾジアゼピン系薬剤抵抗性のけいれん性てんかん重積状態の小児における第2選択薬について、レベチラセタムはフェニトインに対し優越性は示されなかった。ニュージーランド・Starship Children's HospitalのStuart R. Dalziel氏らによる233例を対象とした非盲検多施設共同無作為化比較試験「ConSEPT」の結果で、Lancet誌オンライン版2019年4月17日号で発表した。本症の小児における第2選択薬は、フェニトインが現行では標準薬とされているが、効果があるのは60%に過ぎず、副作用が多く認められるという。レベチラセタムは新しい抗けいれん薬で、急速投与が可能であり、潜在的により有効であること、副作用プロファイルへの許容もより大きいことが示唆されている。

局所進行胃がん周術期療法、FLOT vs.ECF/ECX/Lancet

 切除可能な局所進行胃・胃食道接合部腺がんの治療において、ドセタキセルベースの3剤併用レジメンによる術前後の化学療法は標準レジメンと比較して、全生存期間(OS)を1年以上延長することが、ドイツ・UCT-University Cancer Center FrankfurtのSalah-Eddin Al-Batran氏らが行ったFLOT4-AIO試験で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年4月11日号に掲載された。術前後のエピルビシン+シスプラチン+フルオロウラシル(ECF)の有用性を示した大規模臨床試験(MAGIC試験)以降、いくつかのレジメンが検討されたが、いずれも不成功に終わっている。ドセタキセルベースの化学療法では、転移を有する胃・胃食道接合部腺がんにおける有効性が報告されている。

認知症への運動不足の影響、発症前10年から?/BMJ

 運動不足(physical inactivity)と認知症の関連についての観察研究は、逆の因果関係バイアスの影響が働く可能性があるという。フィンランド・ヘルシンキ大学のMika Kivimaki氏らIPD-Work consortiumは、このバイアスを考慮したメタ解析を行い、運動不足はあらゆる原因による認知症およびアルツハイマー病との関連はないのに対し、心血管代謝疾患を発症した集団では、運動不足により認知症リスクがある程度高い状態(1.3倍)にあることを示した。研究の詳細はBMJ誌2019年4月17日号に掲載された。無作為化対照比較試験では、運動による認知症の予防および遅延のエビデンスは得られていない。一方、観察コホート研究の多くはフォローアップ期間が短いため、認知症の発症前(前駆期)段階における身体活動性の低下に起因するバイアスの影響があり、運動不足関連の認知症リスクが過大評価されている可能性があるという。

英国で食品中の砂糖20%削減へ、関連疾患は抑制されるか/BMJ

 2017年3月、英国政府は、食品製造および小売業界との協働で、シリアルや菓子類など特定の食品群の砂糖含有量を2020年までに20%削減する計画を発表した。イングランド公衆衛生庁(Public Health England)は、砂糖摂取目標を1日摂取カロリーの5%までとすることで摂取カロリーを11%削減し、これによって年間砂糖関連死を4,700件減らし、医療費を年間5億7,600万ポンド抑制するとのモデルを打ち出した。今回、同国オックスフォード大学のBen Amies-Cull氏らは、砂糖減量計画の潜在的な健康上の有益性について予測評価を行い、BMJ誌2019年4月17日号で報告した。

小児けいれん重積2次治療、レベチラセタムvs.フェニトイン/Lancet

 小児のけいれん性てんかん重積状態の2次治療において、レベチラセタムの静脈内投与はフェニトインに比べ、てんかん重積状態の抑制に要する時間が短いものの、有意な差はなかったとの研究結果が、英国Bristol Royal Hospital for ChildrenのMark D. Lyttle氏らが実施したEcLiPSE試験で示された。研究の詳細はLancet誌オンライン版2019年4月17日号に掲載された。英国では、小児における本症の2次治療では、抗けいれん薬フェニトインの静脈内投与が推奨されている。一方、レベチラセタムは、本症に有効であり、より安全性が高い選択肢となる可能性を示唆するエビデンスがあるという。

放射線療法による口内炎の疼痛、有効な含嗽薬は?/JAMA

 頭頸部放射線療法を実施している患者において、doxepin含嗽あるいはジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽は、プラセボと比較し、含嗽後最初の4時間の口腔粘膜炎の疼痛を有意に軽減させたものの、その効果は臨床的に意味のある最小の差より小さかった。米国・Mayo Clinic HospitalのTerence T. Sio氏らが、doxepin含嗽またはジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽の有効性を評価する第III相無作為化試験「Alliance A221304」の結果を報告した。doxepin含嗽により口腔粘膜炎関連の疼痛が軽減することが無作為化試験で示されているが、一般的に広く用いられているジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽については、無作為化プラセボ対照比較試験やCochraneレビューで使用を支持するエビデンスは示されていなかった。JAMA誌2019年4月16日号掲載の報告。

PCV10ワクチン導入、ケニアでIPDが激減/Lancet

 ケニアにおいて、キャッチアップキャンペーンを伴う10価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV10)接種の導入により、小児/成人におけるPCV10型の侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)が有意な血清型置換を伴わず大幅に減少したという。米国・ジョンズホプキンス大学公衆衛生学大学院のLaura L. Hammitt氏らが、ケニア海岸農村部キリフィ県の「健康と人口動態追跡調査システム」に登録されている住民を対象とした、ケニア中央医学研究所とイギリス・ウェルカムトラスト財団の共同研究プログラムによるサーベイランス研究の結果で、著者は「幼児のPCV10型定期予防接種プログラムが熱帯アフリカの低所得地域において直接的および間接的に大きな予防効果を上げる可能性が示唆された」と述べている。