ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:262

第VIII因子インヒビター重症血友病A患者に対するAICCの予防的投与戦略

第VIII因子インヒビターを有する重症血友病A患者に対し、乾燥人血液凝固因子抗体迂回活性複合体(AICC、商品名:ファイバ)を予防的に投与することで、関節内出血およびその他の部位での出血頻度が有意に低下することが明らかになった。予防的投与の安全性も確認された。米国・チュレーン大学ルイジアナセンターのCindy Leissinger氏らによる前向き無作為化クロスオーバー試験「Pro-FEIBA」からの報告による。同患者は、重篤な出血性合併症リスク、末期関節症への進行リスクが高いことが知られる。AICCがそうした患者に対し出血を予防する可能性についてはこれまで散発的な報告はなされていたが、最適な投与方法については確立されていなかった。NEJM誌2011年11月3日号掲載報告より。

臓器移植レシピエントのがん発症リスクは2倍以上、最大は非ホジキンリンパ腫の7.5倍

臓器移植を受けた人(レシピエント)のがん発症リスクは、一般の人の2倍以上に増大することが明らかにされた。32種類のがんについてレシピエントの発症リスク増大が認められ、なかでも最も発症頻度が高かったのは非ホジキンリンパ腫で、発症リスクは約7.5倍に上った。米国国立がん研究所(NCI)のEric A. Engels氏らが、約18万人のレシピエントと、13州のがんに関する登録簿を調べ、明らかにしたもので、JAMA誌2011年11月2日号で発表した。これまでの研究から、レシピエントは、免疫機能低下や臓器ウイルス感染が原因で、がんの発症リスクが増大することは知られていた。

胸部X線による肺がん検診、肺がん死亡率低下に効果なし

胸部X線による年1回の肺がん検診は、肺がん死亡率を低下しないと結論する報告が発表された。米国・ミネソタ大学のMartin M. Oken氏らが、15万人超を対象に行われた、がんスクリーニング無作為化比較試験「PLCO」から肺がんスクリーニング4年間の追跡結果を解析した結果で、JAMA誌2011年11月2日号(オンライン版2011年10月26日号)で発表した。胸部X線による肺がん検診の死亡率に対する有効性は、これまで明らかにされていなかった。

英国電子カルテ・NHS医療記録サービス、臨床家の利益は限定的、患者の利益は不明

英国で国家的IT戦略の一つとして2002年により導入が開始された2次急性期病院への電子カルテシステム「NHS医療記録サービス」について、エジンバラ大学集団保健センターeHealth研究グループのAziz Sheikh氏らが、早期導入した12病院の状況の長期質的評価を行った。結果、サービス実行には時間がかかり骨が折れるものであること、臨床家にとって利益は限定的で、患者にとっては明確な利益が不明であったという。英国の全377病院は2010年末までに同システムを導入しなければならなかったが、稼働は5つに1つの病院にとどまっており、今後の進め方について見直しの議論が進められているという。BMJ誌2011年10月29日号(オンライン版2011年10月17日号)掲載報告より。

周術期のトラネキサム酸投与、前立腺がん手術においても輸血率を有意に低下

前立腺がんに対する開腹式の根治的恥骨後式前立腺摘除術は、腹腔鏡手技が普及後もなお標準的手術療法である。ただしこの処置で最も多い重大な合併症が、術中・術後の出血で、実際多くの患者が輸血を必要とする。イタリア・Vita-Salute San Raffaele大学のAntonella Crescenti氏らは、術中に止血剤の低用量トラネキサム酸(商品名:トランサミンほか)を用いることで輸血率が低下するかどうか、二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った。結果、安全で輸血率低下に有効であることが示された。BMJ誌2011年10月29日号(オンライン版2011年10月19日号)掲載報告より。

プライマリ・ケア施設でのCD4ポイント・オブ・ケア検査、HIV陽性例の治療前追跡不能率が低下

HIV陽性例におけるCD4細胞検査を、検査施設ではなくプライマリ・ケアの現場でのポイント・オブ・ケア検査とすることで、患者登録後の迅速なCD4ステージングが可能となり、抗レトロウイルス療法開始前に追跡不能となる患者が減少したことが、モザンビークInstituto Nacional da SaúdeのIlesh V Jani氏らの調査で明らかとなった。低所得国では抗レトロウイルス療法開始前に追跡不能となるHIV陽性例が増加しており、治療普及上の課題となっている。追跡不能となった患者を見つけ出すことは困難で、費用がかかり、非効率的でもあるため、追跡不能の防止に焦点を当てた検討が進められている。Lancet誌2011年10月29日号(オンライン版2011年9月26日号)掲載の報告。

プライマリ・ケアにおける腰背部痛治療、予後リスクによる層別化管理法が有効

プライマリ・ケアにおける腰背部痛の治療では、予後のスクリーニングに基づく層別化管理法(http://www.keele.ac.uk/sbst/)が現在の最良の治療法よりも有効な可能性があることが、イギリス・キール大学のJonathan C Hill氏らの検討で示された。腰背部痛は、現在も世界中でプライマリ・ケアにおける大きな課題となっており、最近では、従来のすべての患者を一律に管理する戦略は患者の不均一性を無視しているため最適な治療とはいえないと考えられている。著者らが開発した予後のリスクで層別化(低、中、高リスク)した管理モデルは、画一的な治療アプローチを超えて、プライマリ・ケアにおいて臨床的、経済的なベネフィットをもたらすものと期待されていた。Lancet誌2011年10月29日号(オンライン版2011年9月29日号)掲載の報告。

4価HPVワクチン、男性同性愛者の肛門上皮内腫瘍予防に有効

男性との性交渉を持つ男性のHPV感染関連の肛門上皮内腫瘍に対する、4価HPVワクチンの有効性と安全性を検討した試験の結果、グレード2または3の腫瘍の発生率低下が認められ、安全性プロファイルも良好であり、肛門がんリスクの低下に役立つ可能性が示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のJoel M. Palefsky氏らが、ワクチンに関する大規模無作為化試験に参加した男性との性交渉を持つ男性602例についてサブ解析を行った結果、報告した。肛門がんは男女ともに増えており、特に男性との性交渉を持つ男性で増大している。HPV-16、-18を主としたHPV感染によって引き起こされる肛門がんは、先行して高度な(グレード2または3)肛門上皮内腫瘍が認められることから、本検討が行われた。NEJM誌2011年10月27日号掲載より。

COPDでは末梢気道の狭窄と閉塞が肺気腫性の組織破壊よりも先行している

COPDでは、肺気腫性の組織破壊が発生する以前に、末梢気道(直径2mm未満)の狭窄および閉塞が起こっていることが明らかにされた。カナダのブリティッシュ・コロンビア大学ジェイムズ・ホッグ研究センターのJohn E. McDonough氏らがCOPD患者のCT所見および肺移植後の肺所見などで末梢気道閉塞と肺気腫性組織破壊との関連について検討した結果、報告したもので、McDonough氏は、「この結果は、COPDでは、肺気腫性の組織破壊が始まる以前に末梢気道の狭窄と閉塞が、末梢気道抵抗の報告を増大する要因となっている可能性があることを示すものだ」と結論している。NEJM誌2011年10月27日号掲載報告より。

現在・元ヘビースモーカーへの低線量CT肺がんスクリーニングで、COPD検出可能

現在および以前にヘビースモーカーであった人に対する、低線量CT肺がんスクリーニングは、感度63%、特異度は88%と、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を検出可能であることが示された。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのOnno M. Mets氏らが、1,140人を対象に行った前向き横断試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年10月26日号で発表した。

PCI後の早期ステント血栓症リスク、遺伝的要因と臨床要因で予測可能

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の早期ステント血栓症リスクは、遺伝的要因と臨床要因によって予測可能であることが示された。同発症に関連している遺伝子として3つが関連していること、また2つのクロピドグレル関連因子(高用量服用、PPI服用)が明らかになった。フランス・INSERM循環器研究所のGuillaume Cayla氏らが、PCI後に早期ステント血栓症を発症した123人とその症例対照群について調べたケースコントロール試験により明らかにしたもので、JAMA誌2011年10月26日号で発表した。

自殺企図者、家族や友人による予防の難しさが明らかに

自殺をした人の家族や友人、同僚に対する詳しい聞きとり調査により、自殺企図の兆候に気づいたり、その予防策を行うにあたっての困難な点が明らかにされた。英国・Devon Partnership NHS TrustのChristabel Owens氏らが、自殺既遂者14人の家族や友人など合わせて31人に対し聞き取り調査をして明らかにしたもので、BMJ誌2011年10月22日号(オンライン版2011年10月18日号)で発表した。自殺を予防するための近親者の役割や、予防の障害などについての研究は、これまでほとんど行われていないという。一方で、WHOの予測によれば、世界中で自殺による死亡は年間約100万人に上ると報告されている。

無作為化試験の結果から個人の治療効果を予測し治療するほうが実質的ベネフィットが大きい

無作為化試験のデータを基にした個人の治療効果予測は可能であり、その効果予測に基づき個々人の治療を行うことは実質的なベネフィットをもたらすとの報告が、BMJ誌2011年10月22日号(オンライン版2011年10月3日号)で発表された。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのJohannes A N Dorresteijn氏らが、一例としてJUPITER試験[ロスバスタチン(商品名:クレストール)投与による心血管疾患予防に関する試験]のデータを基に、新たに開発した予測モデルなどを用いて治療効果を予測し、それに基づく治療を行った場合の実質的なベネフィットを評価した結果による。

民間減量プログラム参加者の減量効果は、プライマリ・ケア医による減量治療の2倍

過体重、肥満者の減量達成について、プライマリ・ケア医による標準的な減量治療と、プライマリ・ケア医が地域ベースの民間健康プログラム提供者へと対象者を紹介した場合とを比較した結果、後者のほうが2倍量の減量を達成したことが報告された。過体重、肥満者の増大により、プライマリ・ケアと地域ベースでの減量のための効果的なアプローチが必要とされているなか、英国・MRC Human Nutrition ResearchのSusan A Jebb氏ら研究グループが、オーストラリア、ドイツ、英国の3ヵ国で772例の過体重または肥満者を対象に、前述の比較について検討する平行群非盲検無作為化試験を行った。Lancet誌2011年10月22日号(オンライン版2011年9月8日号)掲載報告より。

開発途上国の若年層で乳がん、子宮頸がんの死亡が顕著に

1980~2010年の世界187ヵ国の乳がんおよび子宮頸がんの発症率や死亡率などの動向を調査した結果、開発途上国の若年層(15~49歳)の乳がん死亡および子宮頸がん死亡が顕著であることが明らかにされた。米国・ワシントン大学健康調査・評価研究所のMohammad H Forouzanfar氏らが、がん登録データ、人口動態調査、聞き取り調査のデータをシステマティックに集め解析した結果で、著者は「開発途上国での乳がん、子宮頸がんの対策強化が必要だ」と結論している。乳がん、子宮頸がんは15歳以上の女性の重大な死亡要因となっている。Lancet誌2011年10月22日号(オンライン版2011年9月15日号)掲載報告より。

結核/HIV二重感染患者へのART療法開始時期 その2

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者で結核感染が認められた二重感染患者について、抗レトロウイルス療法(ART)の開始時期に関する試験結果が報告された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のDiane V. Havlir氏らAIDS Clinical Trials Group Study A5221試験グループによる本報告は、ART開始時期について抗結核療法開始2週以内の早期開始群と同8~12週以内の待機的開始群とを比較したもので、AIDS疾患の新規発症率および死亡率に両群間で有意差は認められなかったという。被験者のCD4+T細胞数中央値は77個/mm(3)だった。なお試験では無作為化の際、CD4+T細胞数50個/mm(3)未満と50個/mm(3)以上とで階層化しての検討も行っており、その結果50個/mm(3)未満群においては早期開始群でのAIDS疾患の新規発症率および死亡率は有意な低下が認められたという。NEJM誌2011年10月20日号掲載報告より。

結核/HIV二重感染患者へのART療法開始時期 その1

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者で結核感染が認められた二重感染患者について、抗レトロウイルス療法(ART)の開始時期に関する試験結果が報告された。フランス・ビセートル病院(パリ)のFrancois-Xavier Blanc氏らCAMELIA試験グループによる本報告は、ART開始時期について抗結核療法開始2週後と8週後を比較したもので、2週後のほうが生存が有意に改善されたという。本報告の被験者のCD4+T細胞数中央値は25個/mm(3)だった。NEJM誌2011年10月20日号掲載報告より。

血液透析、電子線滅菌透析膜使用は重篤な血小板減少症リスクを増大する

血液透析患者において、電子線滅菌処理をした透析膜を用いた装置を使った場合、使わなかった場合と比べて、血小板減少症リスクがおよそ2.5~3.6倍に増大するとの報告が、JAMA誌2011年10月19日号で発表された。カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学腎臓病学部門のMercedeh Kiaii氏らが、約2,100人の人工透析患者を対象に行った後ろ向き調査で明らかにした。血小板減少症は透析膜関連の合併症とみなされることはなかったが、透析膜を電子線(eビーム)で滅菌した血液透析装置を導入した1つの透析部門において、患者20人に有意な血小板減少症がみられたことを受けて、大規模な調査が行われることとなった。

米国で高齢者の心不全入院率が過去10年間で3割低下

米国高齢者の心不全による入院の割合は1998年からの10年間で、およそ3割低下したことが報告された。米国・エール大学医学部循環器内科部門のJersey Chen氏らが、米国とプエルトリコに住む約5,500万人超の高齢者について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年10月19日号で発表した。米国では心不全の原因の一つである虚血性心疾患の罹患率が近年低下傾向にあり、また高血圧に対する降圧薬でのコントロールなども改善してきているが、一方でそれらと関連が深い心不全による入院や死亡が減少しているのかどうかについては検討されていなかった。

2004年のCONSORT拡張版発表後も、臨床試験報告の方法論基準に改善認められず

臨床試験報告に関する統合基準「CONSORT」(consolidated standards of reporting trials)の拡張版が2004年に発表されて以降、クラスター無作為化試験の報告基準には多少の改善がみられたものの、方法論基準には改善が認められないことが報告された。カナダ・Women’s College Hospital(トロント)のN M Ivers氏らが、300のクラスター無作為化試験について調べ明らかにしたもので、BMJ誌2011年10月15日号(オンライン版2011年9月26日号)で発表した。