ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:109

頭蓋内圧亢進の診断に非侵襲的手法は有用か?/BMJ

 重症患者の頭蓋内圧亢進の診断において、身体所見(瞳孔散大、グラスゴー・コーマ・スケール[GCS]の最良運動反応が3以下の異常姿勢、GCS合計8以下の意識レベル低下)、画像診断(脳底槽の消失、正中偏位)、および非侵襲的検査は、いずれも診断精度が乏しく、頭蓋内圧亢進の除外診断にこれらの検査を単独で用いるべきではないことが示された。カナダ・オタワ大学のShannon M. Fernando氏らが、システマティックレビューおよびメタ解析の結果を報告した。頭蓋内圧亢進の確定診断には侵襲的なモニタリングが必要であるが、出血や感染などの合併症が懸念され、すべての状況で利用できるわけではないことから、臨床医はしばしば非侵襲的検査に頼らざるを得ないが、これらの診断精度は不明であった。著者は、「頭蓋内圧亢進が強く疑われる場合は、個々の非侵襲的検査の結果にかかわらず、侵襲的頭蓋内圧モニターの留置が可能な施設へ搬送し治療する必要があろう」とまとめている。BMJ誌2019年7月24日号掲載の報告。

保存期CKD患者の貧血、roxadustatが有効/NEJM

 人工透析を導入していない保存期慢性腎臓病(CKD)の中国人患者において、roxadustat(FG-4592)投与はプラセボと比較して、8週後のヘモグロビン(Hb)値を増加したことが示された。中国・上海交通大学医学院のNan Chen氏らが患者154例を対象に行った、第III相のプラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果で、NEJM誌オンライン版2019年7月24日号で発表された。roxadustatは、経口の低酸素誘導因子(HIF)プロリン水酸化酵素阻害薬で、赤血球新生を促進し、鉄代謝を調整する。CKD患者が参加した第II相試験で、roxadustatは内因性エリスロポエチン値を生理的閾値内または閾値近くまで増大させ、Hb値についても上昇し、鉄代謝を改善することが示されていた

難治性RA、filgotinibで短期アウトカムが改善/JAMA

 1種類以上の生物学的製剤の疾患修飾性抗リウマチ薬(bDMARD)による治療が効果不十分または忍容性がない、中等度~重度の活動期関節リウマチ(RA)患者において、filgotinib(100mg/日または200mg/日)がプラセボとの比較において、12週時の臨床的アウトカムを有意に改善したことが示された。米国・スタンフォード大学のMark C. Genovese氏らによる、約450例を対象に行った第III相のプラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果で、JAMA誌2019年7月23日号で発表した。結果を踏まえて著者は、「さらなる研究を行い、長期の有効性・安全性を評価する必要がある」と述べている。filgotinibは、経口JAK1選択的阻害薬で、第II相治験で中等度~重度の活動期RAに対して、単独およびメトトレキサートとの併用の両療法において臨床的有効性が確認されていた。

急性脳梗塞、迅速な血管内治療開始でアウトカム改善/JAMA

 脳主幹動脈閉塞による急性虚血性脳卒中(AIS)患者の実臨床治療では、血管内治療開始までの時間の短縮によりアウトカムが改善することが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校David Geffen医学校のReza Jahan氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2019年7月16日号に掲載された。AISにおける脳主幹動脈閉塞への血管内治療の有益性は時間依存性とされる。一方、治療開始までの時間短縮が、アウトカムや実臨床への一般化可能性に、どの程度の影響を及ぼすかは不明だという。

地域全員への抗HIV療法は有効か/NEJM

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の予防において、複合的予防介入と地域のガイドラインに準拠した抗レトロウイルス療法(ART)の組み合わせは、標準治療に比べ新規HIV感染を有意に抑制するが、地域住民全員を対象とするARTは標準治療と差がないことが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のRichard J. Hayes氏らが行ったHPTN 071(PopART)試験で示された。研究の詳細は、NEJM誌2019年7月18日号に掲載された。新規HIV感染を抑制するアプローチとして、地域住民全員を対象とする検査と治療は有効な戦略となる可能性が示唆されているが、これまでに行われた試験の結果は一貫していないという。

認知症発症に生活様式と遺伝的リスクはどう関連?/JAMA

 認識機能障害および認知症のない高齢者において、好ましくない生活様式と高い遺伝的リスクの双方によって認知症リスクは増加し、同じ遺伝的リスクが高い集団であっても、生活様式が好ましい群はリスクが低いことが、英国・エクセター大学のIlianna Lourida氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2019年7月14日号に掲載された。遺伝的要因により認知症リスクは増加することが知られている。一方、生活様式の改善によってこのリスクをどの程度減弱できるかは明らかになっていない。

敗血症診療規則の導入で死亡低減/JAMA

 米国ニューヨーク州の病院は、プロトコール化された敗血症診療(Rory's Regulations)の実施が義務付けられている。米国・ピッツバーグ大学のJeremy M. Kahn氏らは、この診療規則の有効性に関する調査を行い、導入以降ニューヨーク州は、非導入の他州に比べ敗血症による死亡が減少していることを示した。研究の詳細は、JAMA誌2019年7月16日号に掲載された。2013年以降、ニューヨーク州の病院は、敗血症管理においてエビデンスに基づくプロトコールの実施とともに、プロトコール順守や臨床アウトカムに関する情報の州政府への報告が義務付けられている。

ICU患者のせん妄、家族の自由面会で減少せず/JAMA

 集中治療室(ICU)における家族の面会時間を自由にしても、制限した場合と比較してせん妄発生の有意な低下は確認されなかった。ブラジル・Hospital Moinhos de VentoのRegis Goulart Rosa氏らが、ICUにおける家族の面会がせん妄の発生に及ぼす影響を検証したクラスター・クロスオーバー無作為化臨床試験の結果を報告した。ICUにおける家族の面会時間を自由にする方針は、患者および家族中心のケアの重要なステップとして、米国クリティカルケア看護師協会(AACN)や米国集中治療医学会(SCCM)のガイドラインにより推奨されているが、その影響ははっきりしていなかった。JAMA誌2019年7月16日号掲載の報告。

地域ベースの高血圧スクリーニング、血圧を改善する?/BMJ

 地域ベースの高血圧スクリーニングと、血圧上昇が認められた人々に対する降圧治療と行動変容の勧奨は、長期的には地域レベルでの収縮期血圧に重要な影響を与えうることが示された。ドイツ・ハイデルベルク大学のSimiao Chen氏らが、中国全土の高齢者を対象としたコホート研究のデータを用いた解析結果を報告した。著者は、「このアプローチは、中国ならびに高血圧の診断と治療について大きなアンメットニーズを有する国々において、心血管疾患の高い負荷を解決するだろう」と述べている。中国や他の中低所得国において、地域ベースの高血圧スクリーニングがその後の血圧にもたらす影響に関するエビデンスは不足していた。BMJ誌2019年7月11日号掲載の報告。

膝OAの人工膝関節置換術、部分vs.全置換術/Lancet

 晩期発生の孤立性内側型変形性膝関節症(膝OA)で人工膝関節置換術が適応の患者に対し、人工膝関節部分置換術(PKR)と人工膝関節全置換術(TKR)はともに、長期の臨床的アウトカムは同等であり、再手術や合併症の頻度も同程度であることが示された。英国・Botnar Research CentreのDavid J. Beard氏らによる、528例を対象とした5年間のプラグマティックな多施設共同無作為化比較試験「Total or Partial Knee Arthroplasty Trial(TOPKAT)試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2019年7月17日号で発表した。費用対効果はPKRがTKRに比べ高いことも示され、著者は「PKRを第1選択と考えるべきであろう」と述べている。

高血圧症、閾値を問わず心血管転帰の独立リスク因子/NEJM

 高血圧症は、その定義(収縮期・拡張期血圧値)が130/80mmHg以上または140/90mmHg以上にかかわらず、有害心血管イベントのリスク因子であることが、一般外来患者130万例を対象に行ったコホート試験で示された。収縮期高血圧および拡張期高血圧はそれぞれ独立したリスク因子であることや、収縮期血圧上昇のほうがアウトカムへの影響は大きいことも示されたという。米国・カイザーパーマネンテ北カリフォルニア(KPNC)のAlexander C. Flint氏らによる検討で、NEJM誌2019年7月18日号で発表された。外来での収縮期・拡張期血圧値と心血管アウトカムの関連は不明なままである中、2017年に改訂された高血圧症のガイドラインでは2つの閾値が示され、治療における複雑さが増していた。

HIV感染の1次治療、4剤cARTは3剤より優れるか/BMJ

 未治療のヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者の治療において、4剤による併用抗レトロウイルス薬療法(cART)の効果は、3剤cARTと比較して高くないことが、中国・香港中文大学のQi Feng氏らの調査で示された。研究の詳細は、BMJ誌2019年7月8日号に掲載された。4剤と3剤のcARTを比較する無作為化試験は、過去20年間、継続的に行われてきた。その一方で、同時期の診療ガイドラインでは、標準的1次治療として3剤cARTが継続して推奨されており、4剤cARTへの言及はまれだという。

アカラシアの1次治療、経口内視鏡的筋層切開術が有効/JAMA

 未治療の食道アカラシアの治療において、経口内視鏡的筋層切開術(peroral endoscopic myotomy:POEM)は、内視鏡的バルーン拡張術(pneumatic dilation)に比べ、2年後の治療成功率が有意に高いことが、オランダ・アムステルダム大学のFraukje A. Ponds氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2019年7月9日号に掲載された。症例集積研究により、アカラシアの治療におけるPOEMの良好な結果が報告されている。アカラシアの現在の標準的な1次治療はバルーン拡張術とされ、より侵襲性の高いPOEMや腹腔鏡下 Heller 筋層切開術を1次治療とすることには疑問を呈する意見があり、これらの直接比較には意義があるという。

片頭痛の急性期治療、CGRP受容体拮抗薬rimegepantが有効/NEJM

 片頭痛発作の治療において、経口カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬rimegepantはプラセボに比べ、急性期の痛みおよび痛み以外の最も苦痛な症状の改善効果が優れることが、米国・アルベルト・アインシュタイン医学校のRichard B. Lipton氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年7月11日号に掲載された。片頭痛の成因には、CGRP受容体の関与が示唆されており、rimegepantは片頭痛の急性期治療に有効である可能性がある。本薬はトリプタンとは作用機序が異なるため、トリプタンに反応しない患者にも有効である可能性があるという。

砂糖入り飲料、がんのリスク増大/BMJ

 砂糖入り飲料の消費は、全がんおよび乳がんのリスクを増加させ、100%果物ジュースも全がんのリスクと関連することが、フランス・パリ第13大学のEloi Chazelas氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2019年7月10日号に掲載された。砂糖入り飲料の消費は最近10年で世界的に増加しているという。砂糖入り飲料と肥満リスクには明確な関連が認められ、肥満は多くのがんの強力なリスク因子とされる。  研究グループは、100%果物ジュースを含む砂糖入り飲料および人工甘味料入り飲料と、がんのリスクとの関連の評価を目的とする住民ベースの前向きコホート研究を行った(フランス保健省などの助成による)。

反復性群発頭痛の予防にgalcanezumabが有効/NEJM

 抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)ヒト化モノクローナル抗体galcanezumabは、1回用量300mgを月1回皮下注射することにより、プラセボと比較して初回投与後1~3週における1週間当たりの反復性群発頭痛の頻度を減少させることが示された。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのPeter J. Goadsby氏らが、反復性群発頭痛に対するgalcanezumabの安全性と有効性を検証した国際無作為化二重盲検第III相試験の結果を報告した。反復性群発頭痛は、数週間あるいは数ヵ月間毎日生じる頭痛発作を特徴とする日常生活に支障を来す神経疾患で、galcanezumabは群発頭痛を予防する可能性が示唆されていた。結果を踏まえて著者は、「galcanezumabの効果の持続性と安全性を確認するため、より長期で大規模な臨床試験が必要である」とまとめている。NEJM誌2019年7月11日号掲載の報告。

初期研修医の労働時間、大幅減でもアウトカムに関連せず/BMJ

 米国の卒後医学教育認定評議会(ACGME)は2003年、初期研修医の労働時間を改正した。それまでは週80時間以上、交替勤務の拘束時間は30時間以上が慣習化されていたが、週の労働時間の上限を80時間とし、交替勤務の上限は24時間、当直勤務は3日ごと、28日間に休日4日の義務化が課せられた。この改正の影響について、米国・ハーバード大学医学大学院のAnupam B. Jena氏らが改正前後の入院患者の30日死亡率、30日再入院率および入院費について調べた結果、初期研修期間の労働時間の大幅な削減は、医師訓練の質の低下とは関連していなかったという。BMJ誌2019年7月10日号掲載の報告。

COPD増悪時のCRP検査、抗菌薬使用率を3割減/NEJM

 COPDの急性増悪でプライマリケア医の診察時に、C反応性蛋白(CRP)のポイントオブケア(臨床現場即時)検査を行い、その結果に基づく処方を行うことで、患者報告に基づく抗菌薬の使用率と医師から受け取る抗菌薬の処方率がいずれも低下することが示された。有害性は伴わなかった。英国・オックスフォード大学のChristopher C. Butler氏らが、653例の患者を対象に行った多施設共同非盲検無作為化比較試験の結果で、NEJM誌2019年7月11日号で発表された。

治験の非特定化被験者データ、共有基準を満たした大手企業は25%/BMJ

 米国・イェール大学のJennifer Miller氏らは、臨床試験の非特定化された被験者レベルデータについて、その共有の実態を調べると同時に改善するためのランキングツールを開発した。同ツールを用いたところ、大手製薬企業においてデータ共有評価基準を完全に満たしていたのは25%であったという。同値はランキングツール使用後に33%まで改善したことや、その他の試験の透明性については高得点であったこと、また一部の会社については透明性やデータの共有について、改善にはほど遠い結果が示されたことなども報告した。BMJ誌2019年7月10日号掲載の報告。

アジア・アフリカの小児重症肺炎、原因はRSVが最多/Lancet

 肺炎は、5歳未満の子供の主要な死因とされる。米国・ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院のKatherine L. O'Brien氏ら「Pneumonia Etiology Research for Child Health(PERCH)試験」の研究グループは、アフリカとアジアの子供を対象に、臨床所見と微生物学的所見を適用した最新の分析法を用いて検討を行い、入院を要する肺炎の多くはRSウイルス(RSV)などの少数の病原体群が主な原因であることを明らかにした。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年6月27日号に掲載された。