ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:255

高齢者早期腎臓がん、腎部分切除の方が根治的腎摘出術より死亡率をおよそ半減

高齢者の早期腎臓がんは、腎部分切除のほうが根治的腎摘出術よりも生存率が高いことが示された。全死亡リスクは、腎部分切除が根治的腎摘出術に比べ、およそ半減するという。米国・ミシガン大学のHung-Jui Tan氏らが、ステージT1aの腎臓がん患者7,000人超について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2012年4月18日号で発表した。

臨床試験のサブグループ解析は信頼できるか?

臨床試験の著者は報告でサブグループ効果を主張することが多いが、その信頼性は主張が強力な場合でも一般に低いことが、米国・Kaiser Permanente Northwest(ポートランド市)のXin Sun氏らの検討で示された。臨床試験のサブグループ解析では、サブグループに関する仮説が事前に規定されていなかったり、統計学的な検証が適切に行われない場合があるという。近年、無作為化比較試験におけるサブグループ解析の限界や、予測されるサブグループ効果の信頼性の評価基準の検討が進められてきた。BMJ誌2012年4月14日号(オンライン版2012年3月15日号)掲載の報告。

健康リテラシーが低い高齢者は死亡率が高い:イギリス

イギリスの高齢者の約3分の1は健康リテラシーが十分でなく基本的な健康関連の書面の読解が困難であり、理解力が低いほど死亡率が高くなることが、英国・ユニバーシティー・カレッジ・ロンドンのSophie Bostock氏らの調査で明らかとなった。健康リテラシー(基本的な健康関連情報を読解する能力)の低さが、有害な健康アウトカムと関連することが示されている。アメリカの2つの試験が、低い健康リテラシーにより高齢者の死亡率が上昇することを報告しているが、イギリスでは高齢者の健康リテラシーの問題は検討されていなかったという。BMJ誌2012年4月14日号(オンライン版2012年3月16日号)掲載の報告。

青少年の慢性疲労症候群に、インターネットベースの認知行動療法プログラムが有効

青少年の慢性疲労症候群の治療法として、インターネットベースの認知行動療法プログラム(FITNET)が有効なことが、オランダ・ユトレヒト大学医療センターWilhelmina子ども病院のSanne L Nijhof氏らの検討で示された。慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎、筋痛性脳症)は持続的な疲労感と重度の身体機能低下を特徴とし、青少年では長期化することが多く、学業や社会的発育に悪影響を及ぼす。治療法として有望と考えられる認知行動療法は、専門的な技能を要するためその利用は限定的なのが現状だが、インターネットの使用によってアクセスが容易になる可能性が示唆されている。Lancet誌2012年4月14日号(オンライン版2012年3月1日号)掲載の報告。

ステント血栓症の抑制効果、コバルトクロム合金製エベロリムス溶出ステントが最も高い

コバルトクロム合金製エベロリムス溶出ステント(CoCr-EES)は、ベアメタルステント(BMS)や他の薬剤溶出ステントに比べステント血栓症のリスクが低いことが、イタリアPoliclinico S Orsola(ボローニャ市)のTullio Palmerini氏らの検討で示された。薬剤溶出ステントとBMSのステント血栓症のリスクについては議論が続いているが、ステント血栓症の総発生率の低さを考慮すると、各ステントの差を正確に評価するには、膨大なサンプル数が必要とされる。ネットワークメタ解析は、共通の治療法をレファランスとして個々の治療法の間接的な比較を可能にする新しい研究法で、サンプル数を増やすことができるという。Lancet誌2012年4月14日号(オンライン版2012年3月23日号)掲載の報告。

ERCP後、インドメタシン直腸投与で膵炎発症を有意に低下

内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)後にインドメタシンの直腸内投与をすることで、ERCP後膵炎の発生率を有意に低下することが、米国・ミシガン大学医療センターのB. Joseph Elmunzer氏らによる多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果、明らかにされた。ERCP後の急性膵炎は、米国では最も頻度の高い重大合併症で、毎年相当な罹患者と場合によっては死亡を伴うケースが発生しており、年間約1億5,000万ドルの保健医療費が投じらていると推計されているという。これまでの予備的研究で、ERCP後にNSAIDsを直腸投与することで膵炎の発生率を低下させる可能性があることが示唆されていた。NEJM誌2012年4月12日号掲載報告より。

急性冠症候群疑いの救急搬送患者にはCCTA戦略が有用

 救急搬送されてきた急性冠症候群の疑い患者に対しては、冠動脈CT血管造影(CCTA)を基本として診断スクリーニング戦略が有用であることが、米国・ペンシルベニア大学のHarold I. Litt氏らによる無作為化試験の結果、明らかにされた。Litt氏は「他の診断スクリーニング戦略では入院したであろう患者が、CCCT戦略であれば安全かつ早期退院できる可能性がある」と結論している。急性冠症候群の疑いの救急搬送患者の入院率は高いが、最終的には心臓に起因する症状ではないことが判明するケースがほとんどである。一方で、CCTAは冠動脈疾患の陰性的中率は非常に高いが、救急部門での判定に有用かどうかはこれまで確立されていなかった。NEJM誌2012年4月12日号(オンライン版2012年3月26日号)掲載報告より。

高齢者の心電図異常、冠動脈性心疾患イベントリスクを40~50%増

高齢者の心電図異常は、その程度にかかわらず、冠動脈性心疾患イベント発生リスク増大と関連することが明らかにされた。軽度の場合は約1.4倍に、重度では約1.5倍に、それぞれ同リスクが増大するという。また、従来のリスク因子による予測モデルに、心電図異常の要素を盛り込むことで、同イベント発生に関する予測能が向上することも示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のReto Auer氏らが、高齢者2,000人超について約8年間追跡して明らかにしたもので、JAMA誌2012年4月11日号で発表した。

高血圧患者、上腕収縮期血圧の左右差10mmHg以上で死亡リスクが3倍以上に

高血圧症患者の上腕収縮期血圧の左右差が10mmHg以上ある人は、全死因死亡リスクが3倍以上増大するという。英国Exeter大学のChristopher E Clark氏らが、高血圧症の治療を受ける230例を約10年間追跡して明らかにした。同左右差は、心血管イベントや心血管死リスクの増大にも関与しており、Clark氏は、「同左右差は、心血管リスク増大の有用なインジケーターとなり得る」と結論している。BMJ誌2012年4月7日号(オンライン版2012年3月20日号)掲載報告より。

日本の経済不況期、男性管理職、専門・技術職の死亡率、自殺率が急上昇

1990年代後半以降、日本の男性管理職や専門・技術職の死亡率、自殺率が急激に上昇し、その他の職種を上回るという西欧諸国の定説とは異なるパターンが出現したことが、北里大学医学部公衆衛生学の和田耕治氏らの調査で明らかとなった。日本の保健医療は現在、1990年代以降の長引く景気低迷により、特に労働年齢男性で危機的状況にあり、これは男性における高い自殺率で特徴づけられる。一方、この間の職種別の死亡率の傾向はほとんど知られていないという。BMJ誌2012年4月7日号(オンライン版2012年3月6日号)掲載の報告。

現金給付プログラム、就学中の若年女性のHIV、HSV-2感染を抑制

現金給付プログラムは、低所得層の就学若年女性においてHIVおよび単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)の感染を抑制するが、すでに退学している場合は効果がないことが、米国・ジョージ・ワシントン大学のSarah J Baird氏らがアフリカで行った調査で示された。世界のHIV感染者の3分の2がサハラ砂漠以南の地域に居住しており、その60%が女性だ。世界の新規感染者の45%が15~24歳の若年者であり、この年齢層の感染率は女性が男性の2倍以上だという。教育の不足や男性への経済的依存が、女性のHIV感染の重大なリスク因子であることが示唆されている。Lancet誌2012年4月7日号(オンライン版2012年2月15日号)掲載の報告。

薬剤師主導の介入により、プライマリ・ケアでの投薬過誤が低減

薬剤師の主導による情報技術ベースの介入により、プライマリ・ケアにおける投薬過誤が有意に低減することが、英国・ノッティンガム大学プライマリ・ケア科のAnthony J Avery氏らが実施したPINCER試験で示された。専門医の領域では、投薬の意志決定のサポートや医師の処方オーダーが電子化されるなど、投薬過誤防止における大きな進展がみられるが、プライマリ・ケアの現場では投薬の過誤が生じており、患者に重大な被害をもたらす場合がある。投薬過誤を抑制する有望な方法として、薬剤師主導の介入の有用性が示唆されているという。Lancet誌2012年4月7日号(オンライン版2012年2月21日号)掲載の報告。

がん診断後に、自殺、心血管死が増大:スウェーデン

スウェーデン人約600万人を対象とした大規模なヒストリカル・コホート研究の結果、がんとの診断を受けた人は、受けなかった人と比べて、自殺および心血管系の死亡が増大することが明らかにされた。スウェーデン・Karolinska InstitutetのFang Fang氏らの報告で、NEJM誌2012年4月5日号で発表された。がんと診断されることは、精神的外傷となる経験であり、がんという疾患やその治療による影響以上に、差し迫った有害な影響をもたらす可能性が指摘されていた。

肺塞栓症に対するリバーロキサバン、標準療法に非劣性

肺塞栓症の初期治療および長期治療に対する、経口第Xa因子阻害薬リバーロキサバン(商品名:イグザレルト)の固定用量レジメンは、標準的な抗凝固療法との比較で非劣性であり、ベネフィット対リスク特性が改善されていることが報告された。EINSTEIN–Pulmonary Embolism(PE)Study研究グループの検討報告で、NEJM誌2012年4月5日号(オンライン版2012年3月26日号)で発表された。リバーロキサバンの固定用量レジメンは、検査室監視が不要で、効果は深部静脈血栓症治療の標準的な抗凝固療法と同程度であることが示されていた。そこで、肺塞栓症の治療をシンプルにする可能性があることから検討が行われた。

フルオロキノロン系薬の網膜剥離発症リスクを検討

 経口フルオロキノロン系薬服用中は、網膜剥離発症リスクが約4.5倍に増大することが報告された。一方で1週間以内、1年以内の使用歴は同リスクを増大しないことも示されている。カナダ・Child and Family Research Institute of British ColumbiaのMahyar Etminan氏らが、約99万人を対象としたコホート内症例対照研究の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2012年4月4日号で発表した。フルオロキノロン系薬の眼毒性については、多くの症例報告があるものの、網膜剥離発症リスクとの関連についての研究報告はこれまでほとんど行われていなかったという。

マンモグラフィに超音波やMRIを追加すると?

乳がん検出のため、マンモグラフィ検査に超音波検査やMRIを追加実施すると、乳がん検出の感受性は向上することが示された。ただし、疑陽性所見も増大する。米国Magee-Womens HospitalのWendie A. Berg氏らが、乳がんハイリスクの女性約2,800人について行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年4月4日号で発表した。マンモグラフィでは見つからない小さなリンパ節陰性乳がんも、年1回の超音波スクリーニングで検知可能とされ、さらにMRIは、マンモグラフィと超音波スクリーニングでは検出不可能な乳がんを見つけられる可能性があるとされる。Berg氏らは、それらを踏まえて本検討を行った。

がんでアルツハイマー病のリスクが低下?

がん患者はアルツハイマー病のリスクが低く、アルツハイマー病患者はがんのリスクが低下するという逆相関の関係がみられることが、米ボストン退役軍人医療センターのJane A Driver氏らの検討で示された。パーキンソン病ではがんのリスクが低減し、がんと神経変性疾患は遺伝子や生物学的経路を共有することが示されている。がんとアルツハイマー病の発症は逆相関することが示唆されているが、この関係はがんサバイバーに限定的な死亡の結果(アルツハイマー病発症年齢に達する前に死亡)なのか、それともアルツハイマー病患者におけるがんの過小診断(重度認知障害患者ではがん症状の検査が少ない)によるものかは不明だという。BMJ誌2012年3月31日号(オンライン版2012年3月12日号)掲載の報告。

DPP-4阻害薬、メトホルミン単独で目標血糖値非達成例の二次治療として有効

 ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害薬は、メトホルミン単独療法で目標血糖値が達成されなかった2型糖尿病患者の二次治療としてHbA1cの低下効果を発揮することが、ギリシャ・アリストテレス大学のThomas Karagiannis氏らの検討で示された。経口血糖降下薬であるDPP-4阻害薬は、2型糖尿病患者のHbA1cを著明に低下させ、体重増加や低血糖のリスクも少ない。種々の血糖降下薬に関する間接的なメタ解析では、二次治療薬としてのDPP-4阻害薬は他の薬剤と同等のHbA1c低下効果を有することが示唆されているが、既存の2型糖尿病の治療ガイドラインはDPP-4阻害薬の使用に関するエビデンスが十分ではないという。BMJ誌2012年3月31日号(オンライン版2012年3月12日号)掲載の報告。

ミレニアム開発目標4/5の2015年達成に向けた保健介入の現状とは?

妊産婦、新生児、子どもへの保健介入の普及度は、介入の種類や国ごとで大きなばらつきがあることが、ブラジル・Pelotas連邦大学のAluísio J D Barros氏らの調査で明らかとなった。ミレニアム開発目標4(乳幼児死亡率の削減)および5(妊産婦の健康の改善)の達成に向けた歩みが、期限とされる2015年へ秒読み体制に入っている現在、死亡率や健康の改善に有効な介入の普及度の不均衡にいかに対処するかが、重要な戦略となっているという。Lancet誌2012年3月31日号掲載の報告。