ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:19

性腺機能低下症のテストステロン補充、骨折リスクを増大/NEJM

 性腺機能低下症の中年以上の男性において、テストステロン補充療法はプラセボと比較し臨床的骨折の発生率を低下させることはなく、むしろ同発生率は数値的には増加していた。米国・ペンシルベニア大学のPeter J. Snyder氏らが、テストステロン補充療法の心血管安全性を評価した無作為化二重盲検プラセボ対照試験「TRAVERSE試験」のサブ試験の結果を報告した。性腺機能低下症の男性におけるテストステロン補充療法は、骨密度や骨質を改善することが報告されているが、骨折リスクを減少させるかどうかの判断には十分な症例数と期間による試験が必要であることから、TRAVERSE試験のサブ試験として検討が行われていた。NEJM誌2024年1月18日号掲載の報告。

米国の乳がん死亡率の低下、治療の変化との関連は?/JAMA

 米国の乳がん死亡率は、乳がんのスクリーニングと治療の改善によって、1975年から2019年までに58%低下したことが、米国・スタンフォード大学のJennifer L. Caswell-Jin氏らによるシミュレーションモデル研究で示された。シミュレーションでは、StageI~IIIの乳がんの治療が、47%の低下に寄与していることが示された一方で、転移のある乳がんについては、治療の寄与は29%、スクリーニングの寄与は25%であった。米国における乳がん死亡率は、1975年から2019年の間に減少したことが報告されていたが、転移のある乳がん治療の変化と乳がん死亡率低下との関連はわかっていなかった。JAMA誌2024年1月16日号掲載の報告。

軽症~中等症の新型コロナ、経口simnotrelvirの早期投与は?/NEJM

 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の成人患者において、simnotrelvir+リトナビルの早期投与(発症後72時間以内)は、明らかな安全性の懸念はなく、症状消失までの時間を短縮したことが、中国・中日友好医院のBin Cao氏らが1,208例を対象に行った第II/III相プラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果で示された。simnotrelvirは、中国で開発中の経口3-キモトリプシン様プロテアーゼ阻害薬で、in vitroでSARS-CoV-2に対する活性を示すことが見いだされ、第Ib相試験で有用である可能性が示されていた。NEJM誌2024年1月18日号掲載の報告。

NYHA分類II/III心不全への除細動の長期転帰、CRT-D vs.ICD/NEJM

 駆出率低下、QRS幅延長を認めるニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類II/III度の心不全患者は、植込み型除細動器(ICD)と比べて両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)の治療を受けたほうが、追跡期間中央値約14年時点においても、生存ベネフィットが維持されていたことが示された。カナダ・アルバータ大学のJohn L. Sapp氏らが、「Resynchronization-Defibrillation for Ambulatory Heart Failure Trial(RAFT)」の長期アウトカムの結果を報告した。RAFT試験では、CRT-D治療を受けた患者のほうがICD治療を患者と比べて、5年時点で、死亡率に関するベネフィットが大きかったことが示されていたが、長期生存へのCRT-D治療の効果は明らかになっていなかった。NEJM誌2024年1月18日号掲載の報告。

ガイダンスに基づくオピオイド処方で死亡率が低減/BMJ

 オピオイド使用障害の患者では、「リスク軽減ガイダンス(Risk Mitigation Guidance; RMG)」に基づくオピオイド処方により、過剰摂取による死亡および全死因死亡の発生率が有意に低下し、違法薬物に代わる医薬品の提供は有望な介入策となる可能性があることが、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のAmanda Slaunwhite氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年1月10日号で報告された。  研究グループは、RMGに基づくオピオイド(モルヒネ)および精神刺激薬(デキストロアンフェタミン、メチルフェニデート)の処方が、薬物の過剰摂取と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)という公衆衛生上の二重の緊急事態下に、死亡と急性期治療のための受診に及ぼした影響を明らかにする目的で、住民ベースの後ろ向きコホート研究を行った(カナダ健康研究所[CIHR]などの助成を受けた)。

ERCP後膵炎予防、インドメタシン単独の効果は?/Lancet

 内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)施行後の膵炎のリスクが高い患者における膵炎予防では、標準治療である非ステロイド性抗炎症薬インドメタシン+予防的膵管ステント留置の併用と比較して、インドメタシン単独投与は非劣性に至らないだけでなく予防効果が劣ることが、米国・サウスカロライナ医科大学のB. Joseph Elmunzer氏らの検討で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2024年1月11日号に掲載された。  本研究は、米国とカナダの20施設で実施した無作為化非劣性試験であり、2015年9月~2023年1月に患者を登録した(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。

周産期うつ病、家族要因を問わず死亡リスク増大/BMJ

 スウェーデン・カロリンスカ研究所のNaela Hagatulah氏らは、同国の全国規模の住民ベース適合コホート試験の結果、周産期うつ病と診断された女性では、家族的要因を考慮してもとくに診断直後の1年間の自殺による死亡リスクが増加していたことを報告した。周産期うつ病は、妊娠に伴い最もよくみられる合併症の1つで、出産前後の女性の罹患率は最大で20%と報告されている。産後精神障害(精神病性障害、感情障害、不安障害など)を有する女性は、それらの影響を受けなかった女性や一般の女性集団と比べて死亡リスクが高いことが報告されているが、産前を含む周産期うつ病との関連についてエビデンスは限定的であった。また、家族内で共有する要因が周産期うつ病や自殺による死亡リスクの増加に寄与する可能性も指摘されているが、検討された試験データはなかった。著者は今回の結果を踏まえて、「周産期うつの影響を受けた女性、その家族、医療従事者は、これら周産期うつ病後の重大な健康リスクを認識する必要がある」と提言している。BMJ誌2024年1月10日号掲載の報告。

妊娠高血圧腎症予防のCa補充、低用量vs.高用量/NEJM

 妊娠中のカルシウム補充について、低用量(500mg/日)は高用量(1,500mg/日)に対し、妊娠高血圧腎症のリスクに関して非劣性を示したことが、インドとタンザニアでそれぞれ行われた無作為化試験の結果で示された。また、早産のリスクに関して、インドの試験では非劣性であったが、タンザニアの試験では同様の所見は示されなかったという。インド・St. John's Research InstituteのPratibha Dwarkanath氏らが報告した。世界保健機関(WHO)は、妊娠高血圧腎症のリスク軽減のため、食事からのカルシウム摂取量が少ない住民集団の妊婦に対して、1日1,500~2,000mgのカルシウムを3回に分けて補充するよう推奨している。しかし、服薬アドヒアランスへの懸念と複雑な投与計画に伴う高コストのプログラムのために、現状では高用量カルシウム補充を実施している国は数ヵ国にとどまるという。NEJM誌2024年1月11日号掲載の報告。

公平な再入院を達成している病院の特徴は?/JAMA

 公平性は医療の質の本質的な領域である。米国・コロンビア大学のKatherine A. Nash氏らは、米国のメディケア・メディケイドの運営主体Centers for Medicare & Medicaid Services(CMS)が開発した臨床アウトカムの公平性を評価する2つのDisparity Methodsを用いた研究を行い、公平な再入院を達成している病院は少数派であり、公平な再入院が行われていない病院とは明らかに異なる特徴が認められることを明らかにした。具体的には、公平な再入院が行われている病院では黒人患者の数が少なかったという。著者は、「従来型のアウトカム評価では、黒人患者の受け入れが少ない病院に報酬を与える可能性があり、病院レベルでの不公平さが構造的人種差別の役割を強化する可能性がある」とし、「公平な再入院を実現するには、リスクのある患者の病院間の分布に、ばらつきがあることを考慮しなければならない」と述べ、不公平を助長しない慎重な政策設計の必要性を提言している。JAMA誌2024年1月9日号掲載の報告。

ATTR心アミロイドーシス、acoramidisが予後を改善/NEJM

 トランスサイレチン型(ATTR)心アミロイドーシス患者において、acoramidisの投与により、全死因死亡、心血管関連入院および心機能と身体機能の要素を含む4段階の階層的主要アウトカムがプラセボより有意に改善し、有害事象は両群で類似していた。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのJulian D. Gillmore氏らが、第III相無作為化二重盲検比較試験「Efficacy and Safety of AG10 in Subjects with Transthyretin Amyloid Cardiomyopathy:ATTRibute-CM試験」の結果を報告した。ATTR心アミロイドーシスは、単量体がミスフォールドされたトランスサイレチン(TTR)の心臓への蓄積が特徴である。acoramidisは四量体TTRの解離を阻害する高親和性TTR安定化薬で、ex vivoでは異なる投与間隔の全体で90%以上の安定化をもたらし、第II相試験で有効性が確認されていた。NEJM誌2024年1月11日号掲載の報告。

ROS1融合遺伝子陽性NSCLC、repotrectinibが有望/NEJM

 ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、repotrectinibはROS1チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の治療歴を問わず、持続的な臨床活性を示したことが、米国・スローンケターリング記念がんセンターのAlexander Drilon氏らが行った第I/II相試験(「TRIDENT-1試験」)で示された。有害事象は主にグレードが低く、長期の投与に適するものであった。ROS1融合遺伝子陽性NSCLCの治療に承認されている初期世代のROS1 TKIは、抗腫瘍活性を有するが、耐性が生じ、頭蓋内活性が最適とはいえない。repotrectinibは、前臨床試験においてROS1 G2032Rなどの耐性変異を含むROS1融合遺伝子陽性がんに対する活性が示された次世代のROS1 TKIであり、研究グループは承認申請のため本検討を行った。NEJM誌2024年1月11日号掲載の報告。

米国透析施設の新たな支払いモデル、人種・経済格差の影響は?/JAMA

 米国のメディケア・メディケイドの運営主体Centers for Medicare & Medicaid Services (CMS)は2021年1月1日、米国内の透析施設の30%をランダムに選択し、在宅透析の利用、腎移植待機リストへの登録や移植の受領に基づき経済的インセンティブ(賞与もしくは罰金)を与える支払い方法「末期腎不全治療選択(ETC)モデル」を導入した。背景には、人種や社会経済的状況により、在宅透析導入や移植受領などに格差がみられたことがある。先行研究で、同モデル導入による在宅透析利用の増加の報告(全成人透析導入患者において)や変化なしという報告(66歳以上の従来メディケア受給者において)があるが、腎不全治療の公平性に対する影響については検討されていなかった。今回、米国・ブラウン大学のKalli G. Koukounas氏らは、透析施設を透析導入患者の社会的リスクで層別化し、ETCモデル導入初年度のパフォーマンススコアと罰金を評価した。JAMA誌2024年1月9日号掲載の報告。

無羊水症への羊水注入、新生児の予後を改善するか/JAMA

 胎児の両側性腎無形成に起因する妊娠初期の無羊水症は、新生児に致死的な肺低形成を引き起こすが、連続的な羊水注入により羊水を回復させることで、胎児の肺の発達を促し、生存が可能になると示唆されている。米国・ジョンズ・ホプキンス大学のJena L. Miller氏らは、連続的な羊水注入は新生児の致死的肺低形成を軽減するが、早産の増加と関連し、退院までの生存率は低いことを示した。研究の詳細は、JAMA誌2023年12月5日号で報告された。  本研究は、米国の9施設が参加した非盲検前向き非無作為化臨床試験であり、2018年12月~2022年7月に行われた(米国・ユーニス・ケネディ・シュライバー国立小児保健・人間発達研究所[NICHD]の助成を受けた)。

睡眠呼吸障害の小児、扁桃摘出術は有効か/JAMA

 いびきと軽度の睡眠時無呼吸を有する睡眠呼吸障害(SDB)の小児の治療において、アデノイド切除・口蓋扁桃摘出術は監視的待機(watchful waiting)と比較して、12ヵ月の時点での実行機能(executive function)および注意力(attention)を改善しないが、行動、症状、生活の質(QOL)、血圧などを有意に改善することが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のSusan Redline氏らが実施した「PATS試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2023年12月5日号に掲載された。  PATS試験は、米国の7つの睡眠センターで実施された単盲検無作為化臨床試験であり、2016年6月~2021年2月に参加者を登録した(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]協力協定の助成を受けた)。

クリスマスケーキが健康増進に寄与?/BMJ

 デザートは、何世紀にもわたってクリスマスのお祝いで重要な役割を担っているが、中世イングランドのプディングがかなり健康的なものだったのに比べ、最近は不健康な食材を含むレシピが多くなり、死亡や疾病のリスクに関して懸念が示されている。米国・エモリー大学のJoshua D. Wallach氏らは、英国のテレビ料理番組「ブリティッシュ・ベイクオフ(The Great British Bake Off)」の、クリスマスデザートのレシピに使用されている食材の健康への影響を調査した。その結果、死亡や疾病のリスク増加と関連する食材よりも、むしろリスク減少と関連のある食材のほうが多いことが明らかになったという。BMJ誌2023年12月20日号クリスマス特集号「CHAMPAGNE PROBLEMS」掲載の報告。

妊娠中の大麻使用、有害な妊娠アウトカムが増加/JAMA

 妊娠期間中の継続的な大麻使用により、胎盤機能不全に関連する有害な妊娠アウトカムが増加し、とくに在胎不当過小児が多くなることが、米国・University of Utah HealthのTorri D. Metz氏らが実施した「NuMoM2b試験」の補助的解析で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年12月12日号に掲載された。  NuMoM2b試験は、米国の8つの医療センターで実施したコホート研究であり、2010~13年に参加者を募集し、今回の補助的解析は2020年6月~2023年4月に行った(米国国立薬物乱用研究所[NIDA]の助成を受けた)。

コロナ外来患者への高用量フルボキサミン、症状期間を短縮せず/JAMA

 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)外来患者において、高用量フルボキサミン(100mgを1日2回投与)を12日間投与しても、プラセボと比較してCOVID-19症状期間を短縮しなかった。米国・バージニア大学のThomas G. Stewart氏らが、無作為化二重盲検プラセボ対照プラットフォーム試験「ACTIV(Accelerating COVID-19 Therapeutic Interventions and Vaccines)-6試験」の結果を報告した。JAMA誌2023年12月26日号掲載の報告。  ACTIV-6試験は、軽症~中等症のCOVID-19外来患者における既存治療転用を評価するようデザインされた分散型臨床試験である。

既往帝王切開、多面的介入で周産期合併症が減少/Lancet

 帝王切開分娩歴が1回の女性において、分娩方法の選択を支援しベストプラクティスを促進する多面的な介入により、帝王切開分娩や子宮破裂の発生率が増加することなく、主要な周産期合併症および妊産婦合併症の罹患率が有意に減少した。カナダ・ラヴァル大学のNils Chaillet氏らが、多施設共同クラスター無作為化非盲検比較試験「PRISMA試験」の結果を報告した。帝王切開分娩歴のある女性は、次の妊娠で難しい選択に直面し、再度帝王切開分娩を行うにしても経膣分娩を試みるにしても、いずれも母体および周産期合併症のリスクがあった。Lancet誌2024年1月6日号掲載の報告。

緊急避妊薬、新年直後に販売数が増加/BMJ

 米国のドラッグストアや量販店で、レボノルゲストレル緊急避妊薬の販売数について調べたところ、新年の祝日後に顕著に増加することが、米国・テキサス工科大学のBrandon Wagner氏らが行った時系列分析で示された。そのほか、バレンタインデー、セントパトリックスデー、米国の独立記念日の後にも、新年の祝日後ほどではないが増加が認められたという。結果を踏まえて著者は、「新年の祝日後の緊急避妊薬の売上増加は、この時期が他の休日と比べて、無防備な膣性交のリスクが高いことを示唆している」と述べ、「行動リスクをターゲットとした性暴力を軽減するための予防戦略と、休日前後の避妊薬へのアクセスを改善することで、無防備な膣性交のリスクを制限できる可能性がある」とまとめている。BMJ誌2023年12月20日号クリスマス特集号「ANNUAL LEAVE」掲載の報告。

重症小児の全身酸素化、SpO2目標低めがアウトカム良好/Lancet

 小児集中治療室(PICU)に緊急入室し侵襲的換気療法を受ける小児において、制限的目標酸素投与(conservative oxygenation target)は、非制限的目標酸素投与(liberal oxygenation target)と比較して、30日時点の臓器支持期間または死亡について、良好なアウトカムを得られる可能性が、わずかではあるが有意に高いことが示された。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのMark J. Peters氏らが、2,040例の小児を対象に行った多施設共同非盲検並行群間比較無作為化試験「Oxy-PICU試験」の結果を報告した。重症小児患者における最適な目標酸素投与量は明らかになっていない。非制限的酸素投与は広く行われているが、小児患者では害を与えるとされていた。結果を踏まえて著者は、「制限的な酸素飽和度目標値(SpO2:88~92%)を広く取り入れることは、PICUに入室する重症小児患者のアウトカム改善およびコスト削減に役立つだろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年12月1日号掲載の報告。