ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:297

中国で子どもの死亡率が大幅低減、MDG4の達成が明らかに

中国では近年、子どもの死亡率が大幅に低減し、主な死因は肺炎や早産合併症などであり、長期的には先天性異常や偶発事故、乳幼児突然死症候群(SIDS)の重要性が増大すると予測されることが、イギリスEdinburgh大学医学部公衆衛生学センターのIgor Rudan氏らWHO/UNICEFのChild Health Epidemiology Reference Group (CHERG)が実施した調査で明らかとなった。中国政府および国連の公式データによれば、中国では子どもの死亡数の低下が進み、ミレニアム開発目標4(MDG4、乳幼児死亡率の削減)を達成したとされる。しかし、以前に行われた子どもの世界疾病負担に関する調査では中国の情報が十分ではなかったためデータに大きな乖離があるという。Lancet誌2010年3月27日号掲載の報告。

中国の糖尿病有病率9.7%・9,240万人

急速にライフスタイルが変化した中国では、糖尿病の蔓延が懸念されている。中国・北京にある中日友好病院のWenying Yang氏らは、糖尿病有病率を推定するため、2007年6月~2008年5月に、全国調査を行った。結果、糖尿病有病率は9.7%・9,240万人、糖尿病前症有病率は15.5%・1億4820万人に上ることが明らかになった。NEJM誌2010年3月25日号掲載より。

抗菌薬rifaximin、肝性脳症の治療効果だけでなく予防効果も

肝硬変の合併症である肝性脳症は重篤な意識障害により、患者・家族およびヘルスケアシステムに多大な負担を課すが、吸収率が最小の抗菌薬rifaximinには、肝性脳症の予防効果もあるようだ。米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校のNathan M. Bass氏らが行った無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果による。同薬についてはこれまで、急性肝性脳症に対する治療効果は、十分実証されていた。NEJM誌2010年3月25日号掲載より。

急性胸痛でICU治療、入室時の仰臥位収縮期血圧が高いほど1年死亡リスクは低い

急性胸痛により集中治療室(ICU)で治療を受けた患者のうち、入室時の仰臥位収縮期血圧が高い人ほど、1年後の死亡リスクは低下するようだ。スウェーデンLinkoping大学医学健康科学部門のUlf Stenestrand氏らが、約12万人の患者について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年3月24/31日合併号で発表した。

社会経済状況が低階層は高階層に比べ総死亡リスクが1.6倍

社会経済状況が低階層の人は、高階層に比べ、総死亡リスクが1.6倍に増大することが、英国公務員を対象とした「Whitehall II」調査の分析で明らかになった。特に、食事内容や運動など、健康に関する行動様式の違いが主な原因だという。フランス国立衛生医学研究所(INSERM)疫学・国民健康研究センターのSilvia Stringhini氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2010年3月24/31日合併号で発表された。

注射薬物使用者におけるHIV対策の普及率は世界的に極めて低い

注射薬物使用者におけるHIVの予防、治療、ケアサービスの世界的な普及率は極めて低いことが、オーストラリアNew South Wales大学薬物・アルコール研究センターのBradley M Mathers氏らによる系統的なレビューで明らかとなった。2007年現在の全世界の注射薬物使用者数は1,100~2,120万人にのぼり、そのうち80~660万人がHIVに感染したと推定される。これまで、注射薬物使用者におけるHIV対策の実態調査は行われていたが、普及状況の量的な検討はなされていなかったという。Lancet誌2010年3月20日号(オンライン版2010年3月1日号)掲載の報告。

症候性頸動脈狭窄、ステント留置術は時期尚早?:ICSS試験

手術適応の症候性の頸動脈狭窄に対する第一選択治療は、現時点では頸動脈内膜切除術(CEA)とすべきことが、英国University College London神経学研究所のMartin M Brown氏らが進めている無作為化試験(ICSS試験、http://www.cavatas.com/)の中間解析で示された。CAVATAS試験では血管内治療(ステント使用/非使用の血管形成術)が有用な可能性が示唆されたが、CEAの主要な合併症(脳神経傷害、重度血腫)は回避しうるものの術後30日以内の脳卒中/死亡の発生率はいずれの治療でも高かった。また、SPACE試験ではCEAに対する頸動脈ステント留置術(CAS)の非劣性が示せず、EVA-3S試験では周術期の脳卒中/死亡の発生率がCASよりもCEAで有意に低かったため、いずれの試験も早期中止となっている。Lancet誌2010年3月20日号(オンライン版2010年2月26日号)掲載の報告。

街中へのAED普及、救命率を向上:日本

日本全国に普及したAED、その効果は? 京都大学保健管理センターの北村哲久氏らは、消防庁のデータを基にした前向き観察研究の結果、素人の手を借りるという公共の場(街中)へのAED普及施策の導入後、院外心停止患者への早期の電気ショック実施が増え、神経障害が最小の1ヵ月生存者の増大に結びついていることが明らかになったと報告した。AED普及効果の検証が行われたのは世界初。NEJM誌2010年3月18日号掲載より。

小児喘息、低用量吸入ステロイド療法でコントロール不良の場合の次なる選択肢は?

低用量吸入ステロイド療法(ICS)を受けていても、多くの子どもでコントロール不良の喘息が起きる。米国ウィスコンシン大学医学公衆衛生校Robert F. Lemanske氏らは、コントロール不良が起きた場合の次なる治療法に関して模索する試験「BADGER(Best Add-on Therapy Giving Effective Responses)」を実施した。これまでステップアップ療法に関するエビデンスはない。検討されたのは、「ICS増量」「LABA追加」「LTRA追加」の3つのステップアップ療法で、基線特性によって次なる選択肢としてどれが最適かが評価された。NEJM誌2010年3月18日号(オンライン版2010年3月3日号)掲載より。

米国がんセンターの約8割以上で緩和ケアプログラムを提供

米国のがんセンターの約8割以上で、緩和ケアプログラムを設置・提供していることが、米国テキサス大学緩和ケア・リハビリ部門のDavid Hui氏らが行った、全米約140ヵ所のがんセンターに対する調査で明らかになった。なかでも、米国国立がんセンター(National Cancer Institute:NCI)認定のがんセンターでは、緩和ケアプログラムの設置率は98%に上っているという。JAMA誌2010年3月17日号掲載より。

ステージⅢ大腸がん、75歳以上高齢者への術後補助化学療法実施率は5割程度

外科的切除術を受けたステージⅢ大腸がん患者で、75歳以上の高齢者のうち、術後補助化学療法を受けている割合は5割と、75歳未満の約9割に比べ、有意に低率であることが明らかになった。75歳以上患者への術後補助化学療法のレジメンは、毒性の弱いものが使用される傾向が強く、有害事象の発生率も低かった。米国RAND CorporationのKatherine L. Kahn氏らが、約700人の外科的切除術を受けたステージⅢ大腸がん患者について行った観察研究の結果、報告したもので、JAMA誌2010年3月17日号で発表した。

高齢施設入所者への肺炎球菌ワクチン接種を国策とすべき:三重大/BMJ

三重大学大学院・呼吸器内科の丸山貴也氏ら同大研究グループは、これまで明らかにされていなかった、施設入所者に対する肺炎球菌ワクチン(23価肺炎球菌多糖体ワクチン)の有効性について、前向き無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果、ワクチン接種が入所者の肺炎発症および死亡率の低下をもたらし有効性が確認されたことを報告した。BMJ誌2010年3月13日号(オンライン版2010年3月8日号)掲載より。

学歴差による死亡格差が年々広がっている、原因は?

平等・非平等主義社会を問わず欧米各国で、受けた教育レベルの違いによる死亡率の差が拡大しているとの報告がされている。平等主義を掲げる福祉国家モデルとされるノルウェーではどうなのか。格差の現状と、これまでの調査ではほとんど行われていない長期動向調査が、ノルウェー国立衛生研究所疫学部門のBjorn Heine Strand氏らにより行われた。1960~2000年にかけての同国中高年を対象とした原因別死亡率を追跡する前向き研究で、学歴差による死亡率の差、またその差をもたらしている主な原因について調査が行われた。BMJ誌2010年3月13日号(オンライン版2010年2月23日号)掲載より。

集団認知行動療法が腰痛の治療に有用

集団認知行動療法が、プライマリ・ケアにおける腰痛治療として有用なことが、イギリスWarwick大学医学部のSarah E Lamb氏らによる無作為化試験で示された。国際的なガイドラインでは、非特異的な腰痛が持続する場合は積極的に身体を動かすことが推奨されている。プライマリ・ケアでは、通常の治療よりも看護師による積極的な運動の指導の方が効果は高いが長期には持続せず、理学療法(体系的運動療法、鍼灸、マニピュレーション、姿勢指導)の長期効果もわずかなことが示されている。認知行動療法の長期効果については相反する結果が混在しているが、集団で行う場合は同じ問題を持つ患者同士の相互作用による改善効果やコストの軽減が期待できるという。Lancet誌2010年3月13日号(オンライン版2010年2月26日号)掲載の報告。

受診ごとのSBP変動の増大、最大SBP高値が脳卒中の強い予測因子に

収縮期血圧(SBP)の受診ごとの変動および最大SBPは、平均SBPとは独立に、脳卒中の強力な予後予測因子であることが、イギリスOxford大学John Radcliffe病院臨床神経内科のPeter M Rothwell氏らによる検討で明らかとなった。血管イベントの原因として一定期間の血圧の平均値が重視され、広く高血圧の診断や治療の指針となっているが、血圧の上昇が脳卒中などの血管疾患を引き起こすメカニズムは完全には解明されていないという。平均血圧が重要なことは明確だが、受診ごとの血圧変動や最大血圧が血管イベントの発症に部分的に関与している可能性があり(特に高齢者)、著者らはすでに脳卒中の高リスク集団では受診ごとの血圧変動幅が大きいことを示している。Lancet誌2010年3月13日号掲載の報告。

スタチン治療中の脂質異常症、甲状腺ホルモン製剤eprotirome投与でLDL低下

脂質異常症はアテローム性動脈硬化性の心血管疾患のリスクを増大し、なおかつ大半はスタチン療法のみでは寛解が望めない。甲状腺ホルモン製剤は、血清低比重リポ蛋白(LDL)コレステロールレベルを低下させると同時に、リポ蛋白代謝に有益な作用をもたらす可能性が期待され、脂質低下薬としての可能性が期待されている。そこで米国ジョンズ・ホプキンス大学内分泌・代謝学部門のPaul W. Ladenson氏らのグループは、甲状腺ホルモン製剤eprotirome(KB2115)の有効性をプラセボ対照で検討した。NEJM誌2010年3月11日号より。

待機的冠動脈造影には、よりすぐれたリスク選別の方法が必要

心臓カテーテル検査適応患者の選別に関して、ガイドラインではリスクアセスメントと非侵襲検査を推奨している。米国デューク大学臨床研究所のManesh R. Patel氏らの研究グループは、実施されている非侵襲検査の種類と、冠動脈疾患が疑われる患者に施行するカテーテル検査の診断精度について、米国の最新サンプルデータを用いて検討を行った。NEJM誌2010年3月11日号掲載より。

主要医学雑誌発表の薬剤試験論文、有効性検証比較(CE)試験は約3分の1

代表的な医学雑誌で発表された薬剤に関する試験論文のうち、「有効性を検証するための比較(comparative effectiveness:CE)試験」が占める割合は、約3分の1であることが報告された。CE試験とは、異なる治療法について、効果や安全性、コストなどの比較を行う試験のこと。米国・南カリフォルニア大学のMichael Hochman氏らが、代表的な医学雑誌6誌に発表された無作為化試験などについて調べ、JAMA誌2010年3月10日号で発表した。