ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:281

CABG合併症としての脳卒中発症、30年間で年率約4.7%の減少傾向に

米国クリーブランド・クリニックにおける、冠状動脈バイパス術(CABG)の合併症としての脳卒中発症率は、過去30年間で、年率約4.7%の減少傾向にあることが報告された。また患者のリスクプロフィールが厳しくなっているにもかかわらず、そうした脳卒中の発症は術中よりも術後の方が半数以上を占め(58%がCABG後)ていたことも明らかにされた。同クリニックのKhaldoun G. Tarakji氏らが、過去30年間に同クリニックでCABGを受けた4万5,000人超について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月26日号で発表した。

急性虚血性脳卒中の死亡率、脳卒中治療センターの方が一般病院より低率

急性虚血性脳卒中患者の死亡率は、脳卒中治療センターの指定を受けた病院の方が、一般病院よりわずかではあるが低率であること、また、センターの方が血栓溶解療法の施行頻度が高いことが米国で行われた調査の結果、明らかになった。米国Duke Clinical Research InstituteのYing Xian氏らが、ニューヨーク州で急性虚血性脳卒中の治療を受けた3万人超について調べ、明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月26日号で発表した。米国では、2000年にBrain Attack Coalition(BAC)が脳卒中治療センターの設置を勧告し、現在ではその数は全米約5,000ヵ所の急性期病院のうち約700ヵ所に上るという。しかし、これまでに脳卒中治療センターの脳卒中患者のアウトカムへの影響についてはほとんど調査がされていなかった。

胎児トリソミー21の出生前診断に有用な非侵襲的診断検査法

胎児トリソミー21(21番染色体トリソミー症、ダウン症候群)の非侵襲的な出生前診断法として2-plexプロトコールによる超並列DNA塩基配列決定法が有用なことが、香港中文大学循環胎児核酸研究センターのRossa W K Chiu氏らによる大規模な臨床研究で明らかとなった。すでに、胎児トリソミー21は母体血漿DNAを超並列DNA塩基配列決定法で解析することで出生前に非侵襲的に検出可能なことが示されているが、その臨床における診断能や実行性を検証した大規模試験はないという。BMJ誌2011年1月22日号(オンライン版2011年1月11日号)掲載の報告。

頭痛は、脳病変や認知機能障害と関連するか?

重度頭痛と大脳白質病変の大きさには関連があるが、脳梗塞との相関は前兆を伴う片頭痛に限られることが、フランス国立衛生医学研究所(INSERM)神経疫学のTobias Kurth氏らの検討で明らかとなった。これまでに、片頭痛は大脳白質病変の総容積と関連することが症例対照研究や地域住民ベースの調査で示されている。さらに、前兆を伴う片頭痛は臨床的または潜在的な脳梗塞と相関するとの知見もあるという。BMJ誌2011年1月22日号(オンライン版2011年1月18日号)掲載の報告。

早期乳がんに対する術後エキセメスタン、継続投与と逐次投与のいずれが有効か?

第3世代アロマターゼ阻害薬(AI)エキセメスタン(商品名:アロマシン)の5年継続投与と、タモキシフェン(商品名:ノルバデックスなど)→エキセメスタン逐次投与は、いずれも早期乳がんの術後補助療法として有用な治療選択肢となる可能性があることが、オランダLeiden大学医療センターのCornelis J H van de Velde氏らが行ったTEAM(Tamoxifen Exemestane Adjuvant Multinational)試験で示唆された。同じく第3世代のAIであるアナストロゾール(同:アリミデックス)およびレトロゾール(同:フェマーラ)は、継続投与、逐次投与ともにタモキシフェン継続投与に比べ無病生存率(DFS)を上昇させるが、全生存率(OS)は改善しないことが示されている。TEAM試験は当初、エキセメスタンとタモキシフェンの単剤の比較試験として開始されたが、もう一つのランドマーク試験であるIES試験の結果(逐次投与群のエストロゲン受容体陽性/不明例でDFS、OSが有意に改善)を受けてプロトコールが変更されたという。Lancet誌2011年1月22日号(オンライン版2011年1月18日号)掲載の報告。

院外心停止に対するACD-CPR、標準的CPRよりも有効

院外心停止例に対する能動的圧迫-減圧心肺蘇生法(ACD-CPR)は、標準的CPRよりも神経機能温存退院率および1年生存率が優れることが、アメリカ・ウィスコンシン医科大学救急医療部のTom P Aufderheide氏らが行った無作為化試験で示された。ACD-CPRは、1)胸部に吸着させる吸引カップ、2)胸部の押し下げ/引き上げ用のハンドル、3)80拍/分にセットされた可聴式メトロノーム、4)操作中に圧迫、減圧の程度を表示するゲージからなる携帯式医療機器で、インピーダンス閾値弁装置(より効果的に心臓に陰圧をかけるための装置)を併用するとより高い効果が得られるとされる。胸骨圧迫が解除された拡張期圧に胸腔内圧の陰圧が増強された状態でACD-CPRを施行すると、標準的なCPRに比べ良好な血行動態が得られる可能性があるという。Lancet誌2011年1月22日号(オンライン版2011年1月19日号)掲載の報告。

心血管イベント再発と責任・非責任病変関連のリスク因子

 急性冠症候群の原因となるアテローム硬化性プラークは、血管造影では軽度な冠動脈の狭窄部位で起こることが多いが、そのようなイベントの病変関連のリスク因子については十分に解明されていない。そうした中で米国コロンビア大学医療センターのGregg W. Stone氏らが、冠動脈アテローム性硬化の自然経過に関する前向き研究(PROSPECT研究)を行い見出した特徴などを報告した。NEJM誌2011年1月20日号掲載より。

転移性トリプルネガティブ乳がんに対する化学療法とiniparibの併用の有効性と安全性

DNA修復機能に固有の障害を有する転移性トリプルネガティブ乳がん治療で、カルボプラチン(商品名:パラプラチンなど)+ゲムシタビン(同:ジェムザールなど)化学療法へのiniparibの追加併用は、臨床的ベネフィットおよび生存期間を改善することがオープンラベル第2相試験により示された。iniparibはポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害活性を持つ抗がん薬として開発された。in vitroおよび臨床試験で、カルボプラチン+ゲムシタビンの抗腫瘍・細胞毒性作用を増強することが証明されたのを受け、米国Baylor Charles A. SammonsがんセンターのJoyce O’Shaughnessy氏らにより有効性と安全性を検討する第2相試験が行われた。NEJM誌2011年1月20日号(オンライン版2011年1月5日号)掲載より。

SSRIのescitalopram、閉経期のほてりの頻度や程度を軽減

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)のescitalopramは、閉経期のほてりの頻度や程度を軽減することが示された。服用後8週間で、ほてりの頻度が半分以下に減少したと報告した人は、escitalopram群の50%に上った。米国ペンシルベニア大学産科婦人科のEllen W. Freeman氏らが、200人超の女性を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月19日号で発表した。閉経後のエストロゲンとプロゲスチン投与に関して、効用よりもリスクが上回るとする試験結果が発表されて以来、閉経期のほてりに対する効果的治療薬は他にないのが現状という。

βアミロイド42/40濃度が低いと、認知機能低下が促進

血漿中のβアミロイド42/40濃度が低い人は、高い人に比べ、認知機能の低下が促進することが明らかにされた。その傾向は、認知的予備力の低い人ほど強いことも示された。米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校精神科部門のKristine Yaffe氏らが、地域在住の高齢者997人について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月19日号で発表した。βアミロイド42/40濃度と認知症発症との関連は知られているが、否定的な報告もあり、また認知症ではない高齢者における検討はほとんどされていなかった。

あらゆるNSAID処方時に心血管リスクへの考慮が必要

非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の心血管系に対する安全性について、可能な限りのデータを集めて行われたネットワーク・メタ解析の結果、エビデンスを示すデータはほとんどなかったとの報告が、スウェーデン・ベルン大学社会・予防医学研究所のSven Trelle氏らにより示された。2004年にrofecoxibが心血管イベントリスク増大から販売中止となって以後、選択的COX-2阻害薬そしてNSAID全体へと心血管リスクについての懸念が広がったこと、最近ではリスク・ベネフィットが不十分として米国FDAがetoricoxibを承認しなかったなどの動きを受けて本解析を行ったというTrelle氏は、「どんなNSAIDの処方を書く時も心血管リスクを考慮する必要がある」とまとめている。BMJ誌2011年1月15日号(オンライン版2011年1月11日号)掲載の報告より。

肺結核症にビタミンD補助薬は有効か?

肺結核症の集中治療期に標準的な抗生物質治療を受けている患者に、高用量のビタミンD補助薬を投与すると、ビタミンD受容体TaqI tt遺伝子型の患者で喀痰培養陰転時間の短縮効果を認めることが、イギリス・ロンドン大学クイーン・メアリーのAdrian R Martineau氏らの検討で明らかとなった。抗生物質が普及する以前は、ビタミンDが結核症の治療に用いられており、その代謝産物はin vitroで抗マイコバクテリア免疫を誘導することが知られている。これまでに、ビタミンDが喀痰培養菌に及ぼす影響を評価した臨床試験はないという。Lancet誌2011年1月15日号(オンライン版2011年1月6日号)掲載の報告。

妊娠高血圧腎症の予後予測に有用なモデルを開発

妊娠高血圧腎症(子癇前症)で入院した女性のうち有害なアウトカムのリスクが高い患者の同定に有用な、fullPIERS(Pre-eclampsia Integrated Estimate of RiSk)と呼ばれるモデルが、カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学産婦人科のPeter von Dadelszen氏らによって開発された。妊娠高血圧腎症は単なる蛋白尿を伴う妊娠高血圧を超える病態とされ、全身性の過剰な炎症状態と考えられており、世界的に妊産婦の死亡および罹病の直接的な主原因となっている。妊娠高血圧腎症関連の疾病負担の低減は、ミレニアム開発目標5の趣旨にも関わる重要な課題だという。Lancet誌2011年1月15日号(オンライン版2010年12月24日号)掲載の報告。

急性中耳炎児へのアモキシシリン-クラブラン酸治療は有効か―その2

急性中耳炎児への抗菌薬治療の有効性については、なお議論が続いている。フィンランド・トゥルク大学病院小児科部門のPaula A. Tahtinen氏らは、二重盲検無作為化試験の結果、3歳未満の急性中耳炎に対する抗菌薬アモキシシリン-クラブラン酸(商品名:オーグメンチン)投与は、プラセボと比べて有害事象は多いがベネフィットがあると報告した。NEJM誌2011年1月13日号掲載より。

急性中耳炎児へのアモキシシリン-クラブラン酸治療は有効か―その1

2歳未満の急性中耳炎について、即時に抗菌薬治療を行うべきか、それとも経過観察をすべきか、国によって勧告は異なっている。米国ピッツバーク大学小児科部門のAlejandro Hoberman氏らは、無作為化プラセボ対照試験の結果、生後6~23ヵ月の2歳未満の急性中耳炎に対する抗菌薬アモキシシリン-クラブラン酸(商品名:オーグメンチン)の10日間投与は、症状消失期間の短縮など短期的ベネフィットをもたらすと報告した。NEJM誌2011年1月13日号掲載より。

カンデサルタン vs. ロサルタンの心不全患者死亡リスク

心不全患者に対する、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)のカンデサルタン(商品名:ブロプレス)投与は、同じくARBのロサルタン(商品名:ニューロタン)投与と比べ、死亡リスクが0.7倍と低いことが示された。これまでの研究結果から左室駆出率が低下した心不全患者へのARB投与は、死亡・入院リスクを低減することは知られているものの、ARB同士で、その効果を直接比較した試験はこれが初めてという。スウェーデン、ストックホルムSouth Hospital循環器部門のMaria Eklind-Cervenka氏らが、5,000人超の心不全患者について追跡し明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月12日号で発表した。

60歳以上帯状疱疹、ワクチン接種で発症リスクは55%低減

60歳以上の高齢者への帯状疱疹ワクチンの接種で、同発症リスクは55%低減することが明らかになった。米国医療保険医学グループSouthern California Kaiser PermanenteのHung Fu Tseng氏らが、7万5,000人超の帯状疱疹ワクチン接種集団と、22万人超の非接種集団について行った後ろ向きコホート試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月12日号で発表した。帯状疱疹ワクチンの有効性について、日常診療現場レベルでの追跡試験はこれまでほとんど行われていないという。

ビタミンB類、ω-3脂肪酸は、心血管疾患を予防しない:SU. FOL. OM3試験

 虚血性心疾患や虚血性脳卒中の既往歴を有する患者における心血管疾患の予防では、ビタミンB類やオメガ(ω)-3脂肪酸を含むサプリメントのルーチンな使用は推奨されないことが、フランス・パリ第13大学衛生医学研究所(INSERM)のPilar Galan氏らが実施した「SU. FOL. OM3」試験で示された。心血管疾患の発症は、ビタミンB類(葉酸、ビタミンB6)やω-3多価不飽和脂肪酸の摂取あるいはその血漿濃度と逆相関を示すことが観察試験で報告されている。しかし、無作為化試験ではビタミンB類の血管疾患に対する有意な作用は確認できず、ω-3多価不飽和脂肪酸の臨床試験では相反する結果が得られているという。BMJ誌2011年1月1日号(オンライン版2010年11月29日号)掲載の報告。

心血管疾患の生涯リスクを予測する新たなQRISKモデル

新たに開発されたQRISKの心血管疾患に関する生涯リスクスコア(http://www.qrisk.org/lifetime/)は、従来のQRISKモデルの10年リスクスコアでは確認し得ない、より若い年齢層における高リスク例の同定を可能にすることが、イギリス・Nottingham大学プライマリ・ケア科のJulia Hippisley-Cox氏らの検討で示された。QRISK2などのリスク予測アルゴリズムは、通常、心血管疾患の10年絶対リスク≧20%の場合に高リスク例と判定しているが、この20%という閾値では、若年者のうち10年絶対リスクは低いものの相対的に高リスクな例を見逃す懸念がある。生涯リスクによる予測は、特に若年例についてより多くの情報をもたらし、マネジメントの決定やライフスタイルの改善に役立つ可能性があるという。BMJ誌2011年1月8日号(オンライン版2010年12月9日号)掲載の報告。