ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:87

オラパリブ、去勢抵抗性前立腺がんでOS延長(PROfound)/NEJM

 3つの遺伝子(BRCA1、BRCA2、ATM)のうち1つ以上に変異のある転移のある去勢抵抗性前立腺がん男性において、PARP阻害薬オラパリブは、エンザルタミドまたはアビラテロン+prednisoneに比べ全生存(OS)期間を有意に延長し、2回目の病勢進行(PD)までの期間も長いことが、米国・ノースウェスタン大学のMaha Hussain氏らが実施した「PROfound試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年9月20日号に掲載された。本試験の主解析では、オラパリブは主要評価項目である無増悪生存(PFS)期間を有意に延長し、進行および死亡のリスクを66%低減したと報告されている(ハザード比[HR]:0.34、95%信頼区間[CI]:0.25~0.47、p<0.001)。この時点では、主な副次評価項目の1つであるOSのデータは不十分であり、フォローアップが継続されていた。

臨床意思決定支援システムでケアは改善するか?/BMJ

 臨床意思決定支援システムを利用した介入の大半は、推奨されるケアプロセスを受ける患者の割合を小~中程度改善することが、それらを報告した研究で見いだされた臨床エンドポイントの小さな変化によって確認された。また、ごく一部の試験では、推奨されたケアの提供が大幅に増加していたが、改善に関して説得力のある予測因子は確定できなかった。カナダ・トロント大学のJanice L. Kwan氏らが、臨床意思決定支援システムによって得られた改善効果と、多様な臨床設定と介入ターゲットにわたるプール効果の不均一性を調べるために行ったシステマティックレビューとメタ解析の結果を報告した。電子健康記録に組み込まれている臨床意思決定支援システムは、推奨されるケアプロセスを提供するように臨床医を促すが、こうした臨床意思決定支援システムのケア改善の可能性に対する期待にもかかわらず、2010年に行われたシステマティックレビューでは、ケアが改善した患者の割合は5%未満とわずかであった。BMJ誌2020年9月17日号掲載の報告。

2型DMのCVリスク、SGLT2阻害薬 vs. DPP-4阻害薬/BMJ

 大規模なリアルワールド観察試験において、2型糖尿病患者への短期のSGLT2阻害薬投与はDPP-4阻害薬投与と比べて、重篤な心血管イベントリスクを低減することが示された。カナダ・Jewish General HospitalのKristian B. Filion氏らが複数のデータベースを基に行った後ろ向きコホート研究の結果で、著者は「多種のSGLT2阻害薬にわたる結果であり、SGLT2阻害薬のクラス効果としての心血管効果を示すものであった」と述べている。2型糖尿病へのSGLT2阻害薬投与は増えており、無作為化試験でプラセボ投与と比べて主要有害心血管イベント(MACE)や心不全のリスクを抑制することが示されていた。BMJ誌2020年9月23日号掲載の報告。

進行尿路上皮がんの維持療法にアベルマブが有効(JAVELIN Bladder 100)/NEJM

 局所進行または転移のある尿路上皮がんへの1次化学療法の維持療法において、アベルマブ+支持療法(BSC)はBSCのみの場合と比較し、全生存(OS)を有意に延長することが明らかにされた。英国・Queen Mary University of LondonのThomas Powles氏らが、進行尿路上皮がん患者を対象とした国際共同無作為化非盲検第III相試験「JAVELIN Bladder 100試験」の結果を報告した。プラチナ併用化学療法は進行尿路上皮がんに対する標準的な1次治療であるが、多くの場合、化学療法耐性のため無増悪生存(PFS)やOSは限られていた。NEJM誌2020年9月24日号掲載の報告。  研究グループは、2016年5月11日~2019年6月4日の期間に、29ヵ国197施設で被験者を募り試験を行った。

早期TN乳がんの術前療法、アテゾリズマブ+化療でpCR改善(IMpassion031)/Lancet

 早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する術前補助療法として、アテゾリズマブ+化学療法(nab-パクリタキセル/ドキソルビシン/シクロホスファミド)の併用は、プラセボ+化学療法と比較して病理学的完全奏効(pCR)率を有意に改善し、忍容性は良好であることが明らかとなった。米国・ダナ・ファーバー/ブリガム&ウィメンズがんセンターのElizabeth A. Mittendorf氏らが、13ヵ国75施設で実施された国際共同無作為化二重盲検第III相試験「IMpassion031試験」の結果を報告した。早期TNBCに対する術前補助療法では、アントラサイクリン/シクロホスファミドやタキサンベースの化学療法が推奨されている。一方、PD-L1陽性の転移があるTNBC患者では、アテゾリズマブ+nab-パクリタキセル併用が無増悪生存期間や全生存期間の改善に有効であることが、IMpassion130試験で示されていた。Lancet誌オンライン版2020年9月20日号掲載の報告。

SGLT2阻害薬ertugliflozinの心血管効果は?/NEJM

 2型糖尿病でアテローム動脈硬化性心血管疾患を有する患者において、標準治療に加えてのSGLT2阻害薬ertugliflozinの投与はプラセボ投与に対して、主要有害心血管イベント(心血管死・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中の複合)の発生は非劣性であった。また、副次評価項目の心血管死または心不全による入院の複合アウトカムについて、プラセボに対する優越性は示されなかった。米国・ハーバード大学医学大学院のChristopher P. Cannon氏らが、8,246例超を対象に行った多施設共同無作為化二重盲検試験で明らかにした。ertugliflozinは、2型糖尿病の血糖コントロールを改善するとして米国その他の国で承認されている。同薬の心血管効果については、明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2020年9月23日号掲載の報告。

夜間低酸素血症のCOPDへの長期夜間酸素療法は有効か/NEJM

 カナダ・ラヴァル大学のYves Lacasse氏らINOX試験の研究グループは、夜間に動脈血酸素飽和度低下を認めるものの長期酸素療法の適応ではない慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、長期夜間酸素療法の有用性を評価した。試験は、患者の登録が継続できず早期中止となったため検出力が不十分であり、長期夜間酸素療法の有効性に関して結論は得られなかった。COPDを有し、慢性的に日中に重度低酸素血症を呈する患者では、長期酸素療法により生存率が改善する。しかしながら、夜間のみの低酸素血症の管理における酸素療法の有効性は知られていない。研究の詳細は、NEJM誌2020年9月17日号に掲載された。

心停止状態での搬送、現場蘇生法継続に比べ生存退院率が低い/JAMA

 院外心停止(OHCA)患者の心停止状態での搬送は、現場での蘇生法継続に比べ退院時の生存割合が低く、神経学的アウトカムも不良であることが、カナダ・St. Paul's HospitalのBrian Grunau氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年9月15日号に掲載された。救急医療システム(EMS)におけるOHCA患者の蘇生処置中の病院搬送に関しては、さまざまな見解が存在する。蘇生法を施行中の心停止状態での搬送が、現場での継続的な蘇生法の実施と比較して有益性が高いか否かは明らかにされていないという。

青壮年の高血圧は後年の心血管イベントリスクに影響?/BMJ

 青壮年(18~45歳)の高血圧は、後年の心血管イベントリスクを、わずかだが増大する可能性があることが、中国・広東省人民医院のDongling Luo氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果、示された。高血圧と心血管リスクの関連性は長期にわたり認識されている。しかし研究グループは、大半のアウトカム研究対象集団に包含されているのは中年以上の世代であり、また青壮年における高血圧症の有病率が上昇しているとして本検討を行った。結果を踏まえて著者は、「降圧のエビデンスは限定的であることから、積極的介入には注意が必要であり、さらなる検討が必要だ」とまとめている。BMJ誌2020年9月9日号掲載の報告。

外傷性脳損傷への入院前トラネキサム酸投与開始は有益か/JAMA

 中等度~重度の外傷性脳損傷(TBI)患者において、受傷2時間以内の入院前トラネキサム酸投与は、プラセボ投与と比較して6ヵ月後の神経学的アウトカム(Glasgow Outcome Scale-Extendedで測定)を有意に改善しないことが示された。米国・オレゴン健康科学大学のSusan E. Rowell氏らが、米国とカナダの外傷センターおよび救急医療機関で行った多施設共同二重盲検無作為化試験の結果を報告した。TBIは、外傷性の死亡および障害をもたらすが、早期のトラネキサム酸投与がベネフィットをもたらす可能性が示唆されていた。JAMA誌2020年9月8日号掲載の報告。

米国成人、過去20年間の血圧コントロールの状況は?/JAMA

 米国成人集団を代表するよう補正された一連の横断的調査の結果、血圧コントロール良好者の割合は、1999/2000年~2007/08年にかけては増加していたが、2007/08年~2013/14年は有意な変化はみられず、2013/14年以降は減少傾向にあることが明らかにされた。血圧コントロールは心血管疾患を減少することから、米国・アラバマ大学のPaul Muntner氏らは、過去20年間(1999/2000年~2017/18年)の高血圧の米国成人におけるコントロール状況の変化を調べる検討を行った。JAMA誌オンライン版2020年9月9日号掲載の報告。

職場のセクハラは自殺行動と強く関連/BMJ

 職場におけるセクシュアルハラスメントは自殺行動と関連するとの仮説を裏付ける結果が、スウェーデン・ストックホルム大学のLinda L. Magnusson Hanson氏らによる、同国の生産年齢労働者8万5,000例規模の前向きコホート研究により示された。両者の関連性は指摘されてはいたが、これまで大規模な住民ベースのコホート研究は行われていなかったという。著者は、「本結果は、職場環境を考慮した自殺防止策が有用である可能性を示唆するものである。さらなる調査を行い、因果関係、職場におけるセクハラのリスク因子、および業務に関連するセクハラと自殺行動の関連を明らかにする必要がある」と述べている。BMJ誌2020年9月2日号掲載の報告。

重症血友病A、BIVV001融合蛋白による第VIII因子補充療法が有効/NEJM

 重症血友病Aの男性患者の治療において、新規融合タンパク質BIVV001(rFVIIIFc-VWF-XTEN)の単回静脈内注射により、第VIII因子活性が高値で維持され、半減期は遺伝子組み換え第VIII因子の最大4倍に達し、本薬は投与間隔1週間の新規クラスの第VIII因子機能代替製剤となる可能性があることが、米国・Bloodworks NorthwestのBarbara A. Konkle氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年9月10日号に掲載された。第VIII因子機能代替製剤は血友病A患者の治療を改善したが、これらの製剤は半減期が短く、患者QOLの改善は十分ではないという。また、遺伝子組み換え第VIII因子の半減期は、von Willebrand因子(VWF)のシャペロン作用のため15~19時間とされる。BIVV001は、この半減期の上限を克服し、第VIII因子活性を高値で維持するようデザインされた新規融合蛋白である。

ダロルタミド、転移のない去勢抵抗性前立腺がんの生存率改善/NEJM

 転移のない去勢抵抗性前立腺がん患者の治療において、ダロルタミドはプラセボに比べ、3年生存率が有意に高く、有害事象の発現はほぼ同程度であることが、フランス・Institut Gustave RoussyのKarim Fizazi氏らが行った「ARAMIS試験」の最終解析で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年9月10日号に掲載された。ダロルタミドは、独自の化学構造を持つアンドロゲン受容体阻害薬で、本試験の主解析の結果(無転移生存期間中央値:ダロルタミド群40.4ヵ月、プラセボ群18.4ヵ月、ハザード比[HR]:0.41、95%信頼区間[CI]:0.34~0.50、p<0.0001)に基づき、転移のない去勢抵抗性前立腺がんの治療薬として、すでに米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ている。主解析の時点では、全生存(OS)を解析するためのデータは不十分であり、試験期間を延長してフォローアップが継続されていた。

経口可逆的DPP-1阻害薬brensocatibが気管支拡張症の増悪を抑制/NEJM

 気管支拡張症患者において、brensocatib投与による好中球セリンプロテアーゼ活性の低下は気管支拡張症の臨床アウトカムを改善することが、英国・Ninewells Hospital and Medical SchoolのJames D. Chalmers氏らが行った、投与期間24週の第II相無作為化プラセボ対照用量範囲試験で示された。気管支拡張症患者は、好中球性炎症に関連すると考えられる増悪を頻繁に起こす。好中球エラスターゼなどの好中球セリンプロテアーゼの活性と数量は、ベースラインで気管支拡張症患者の喀痰中で増加し、さらに増悪によって増大することが知られる。brensocatib(INS1007)は、開発中の経口可逆的ジペプチジルペプチダーゼ1(DPP-1)阻害薬で、DPP-1は好中球セリンプロテアーゼの活性に関与する酵素である。NEJM誌オンライン版2020年9月7日号掲載の報告。

日本人超高齢の心房細動、エドキサバン15mgは有益/NEJM

 標準用量の経口抗凝固薬投与が適切ではない、非弁膜症性心房細動(AF)の日本人超高齢患者において、1日1回15mg量のエドキサバンは、脳卒中または全身性塞栓症の予防効果がプラセボより優れており、大出血の発生頻度はプラセボよりも高率ではあるが有意差はなかったことが示された。済生会熊本病院循環器内科最高技術顧問の奥村 謙氏らが、超高齢AF患者に対する低用量エドキサバンの投与について検討した第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照イベントドリブン試験の結果で、NEJM誌オンライン版2020年8月30日号で発表された。超高齢AF患者の脳卒中予防のための経口抗凝固薬投与は、出血への懸念から困難と判断されることが少なくない。

初期AFへの早期リズムコントロール、心血管リスクを低減/NEJM

 初期の心房細動(AF)で心血管症状を呈する患者において、早期リズムコントロール療法は、通常ケアよりも心血管アウトカムのリスクを低下させることが、ドイツ・University Heart and Vascular CenterのPaulus Kirchhof氏らによる検討で示された。AF治療は改善されてはいるが、心血管合併症のリスクは高いままである。一方で、早期リズムコントロール療法が同リスクを低減するかは不明であり、研究グループは、国際共同治験担当医主導の並行群間比較による非盲検割付のアウトカム盲検化評価試験で同療法の検討を行った。NEJM誌オンライン版2020年8月29日号掲載の報告。

HFrEFへのエンパグリフロジン、心血管・腎への効果は/NEJM

 2型糖尿病の有無を問わず慢性心不全の推奨治療を受けている患者において、エンパグリフロジンの投与はプラセボと比較して、心血管死または心不全増悪による入院のリスクを低下することが、米国・ベイラー大学医療センターのMilton Packer氏らによる3,730例を対象とした二重盲検無作為化試験の結果、示された。SGLT2阻害薬は、2型糖尿病の有無を問わず、心不全患者の入院リスクを抑制することが示されている。同薬について、駆出率が著しく低下した例を含む幅広い心不全患者への効果に関するエビデンスが希求されていたことから、本検討が行われた。NEJM誌オンライン版2020年8月29日号掲載の報告。

コルヒチンで慢性冠疾患の心血管リスクが低下/NEJM

 慢性冠疾患患者においてコルヒチン0.5mg 1日1回投与は、プラセボと比較し、心血管イベントのリスクを有意に低下させることが、オーストラリア・GenesisCare Western AustraliaのStefan M. Nidorf氏らが実施した無作為化二重盲検プラセボ対照試験「LoDoCo2試験」で明らかとなった。コルヒチンの抗炎症作用が心筋梗塞患者の心血管イベントリスクを低下させることが、最近の研究で示唆されていたが、慢性冠疾患患者におけるエビデンスは限られていた。NEJM誌オンライン版2020年8月31日号掲載の報告。

大手術時の術中換気、低容量vs.従来換気量/JAMA

 大手術を受ける成人患者において、術中の低容量換気(low-tidal-volume ventilation)は従来の1回換気量と比較し、同一の呼気終末陽圧(PEEP)下では、術後7日以内の肺合併症の有意な減少は認められなかった。オーストラリア・オースティン病院のDharshi Karalapillai氏らが、単施設での評価者盲検無作為化臨床試験の結果を報告した。手術中の人工換気は旧来、超生理学的1回換気量が適用されてきたが、低容量換気に比べ有害で術後合併症を引き起こす懸念が高まっている。しかし、手術中に人工呼吸器を使用する患者における理想的な1回換気量は不明であった。JAMA誌2020年9月1日号掲載の報告。