ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:164

左冠動脈主幹部病変、PCIよりCABGが予後良好/Lancet

 左冠動脈主幹部病変の治療では、冠動脈バイパス術(CABG)が経皮的冠動脈インターベンション(PCI)よりも良好な予後をもたらす可能性があることが、フィンランド・オウル大学病院のTimo Makikallio氏らが行ったNOBLE試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年10月31日号に掲載された。欧州では、従来、非保護左主幹部病変の標準的な血行再建術はCABGであるが、最近はPCIの使用が急増している。欧州心臓病学会(ESC)の現行ガイドラインでは、左主幹部病変や非複雑病変、非びまん性病変にはPCIが推奨されているが、その論拠とされる試験は症例数が少なく、最良の治療を決めるには検出力が十分でないという。

生体吸収性スキャフォールド、3年で血管運動は回復したのか/Lancet

 冠動脈狭窄患者の治療において、エベロリムス溶出生体吸収性スキャフォールド(Absorb)はエベロリムス溶出金属ステント(Xience)と比較して、力学特性の指標である、血管運動の回復の結果としての内腔径の増加に寄与しないことが、英国インペリアル・カレッジ・ロンドンのPatrick W Serruys氏らが進めるABSORB II試験の中期的な検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年10月30日号に掲載された。循環器インターベンション医にとって、務めを終えたら消え去る一過性のスキャフォールドは、長い間の夢だという。生理学的には、固い金属製のケージがなければ、血管運動の堅調さや適応性のあるずり応力、遠隔期の内腔拡張などの回復が促進される可能性がある。

無作為化試験で示される「非常に大きな効果」の信頼性/BMJ

 無作為化試験で効果が非常に大きい(VLE:相対リスクが0.2以下または5以上)結果が示された場合は、その後の試験は行わなくてもよいのではないか。この疑問について、英国インペリアル・カレッジ・ロンドンのMyura Nagendran氏らが、公表されている無作為化試験データをメタ疫学的評価で調べる検討を行った。その結果、大規模試験でVLEが示される頻度は、ほぼゼロに近く、そのことからVLEは信頼性のあるマーカーとはなりえず、実質的なものでも有用なものでもないと報告している。さらに著者は、「小規模試験のVLEを解釈する場合は注意をしなければならない」と指摘している。BMJ誌2016年10月27日号掲載の報告。

左冠動脈主幹部病変、エベロリムス溶出ステント vs.CABG/NEJM

 左冠動脈主幹部病変の治療について、SYNTAXスコアが低~中スコアの患者ではエベロリムス溶出ステント留置を伴う冠動脈インターベンション(PCI)が、冠動脈バイパス術(CABG)に対し非劣性であることが、米国・コロンビア大学のGregg W Stone氏らが行った大規模無作為化試験「EXCEL」の3年追跡評価の結果、示された。閉塞性の左冠動脈主幹部病変に対しては通常、CABGが行われるが、先行の無作為化試験で、選択的な患者でPCI/薬剤溶出ステント留置が、CABGに代わりうる可能性が示唆されていた。NEJM誌オンライン版2016年10月31日号掲載の報告より。

脳梗塞の血栓除去術、全身麻酔 vs.意識下鎮静法/JAMA

 前方循環系の急性虚血性脳卒中患者に対する血栓除去術において、意識下鎮静法は全身麻酔と比較し24時間後の神経学的状態を改善しない。ドイツ・ハイデルベルク大学病院のSilvia Schonenberger氏らが単施設で行った、無作為化非盲検比較試験SIESTA(Sedation vs Intubation for Endovascular Stroke Treatment)試験で示された。急性虚血性脳卒中に対する血栓除去術中の適切な鎮静と気道の管理については、無作為化試験のエビデンスが少なく、議論の的となっていた。著者は、「今回の結果は、意識下鎮静法の使用を支持しないものであった」と結論している。JAMA誌オンライン版2016年10月26日号掲載の報告。

クランベリーカプセルは尿路感染症予防に有効か/JAMA

 介護施設に入所している高齢女性において、1年間にわたりクランベリーカプセルを投与したが、プラセボと比較して細菌尿+膿尿の件数に有意差は認められなかった。米国・エール大学医学大学院のManisha Juthani-Mehta氏らが、クランベリーカプセル内服の細菌尿+膿尿に対する有効性を評価する目的で行った無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験の結果、報告した。細菌尿+膿尿は介護施設の高齢女性に多く、クランベリーカプセルはこうした尿路感染症(UTI)に対する非抗菌的な予防法として知られているが、その根拠には議論の余地があった。JAMA誌2016年11月8日号掲載の報告。

生分解性ポリマーDES vs.耐久性ポリマーDES、1年後の結果/Lancet

 薬剤溶出ステント留置術を要す冠動脈疾患に対する、極薄型ストラット生分解性ポリマー・エベロリムス溶出ステントまたはシロリムス溶出ステントは、耐久性ポリマー・ゾタロリムス溶出ステントと比較し、術後1年後のアウトカムについて、非劣性であることが示された。オランダ・Thoraxcentrum TwenteのClemens von Birgelen氏らが行った、大規模無作為化比較試験「BIO-RESORT」の結果、明らかにした。Lancet誌オンライン版2016年10月30日号掲載の報告。

光干渉断層撮影ガイド下のPCIは有用か/Lancet

 光干渉断層撮影(Optical Coherence Tomography:OCT)ガイド下の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は、血管内超音波(Intravascular ultrasound:IVUS)ガイド下に対し、臨床的アウトカムは非劣性であることが示された。一方でOCTガイド下PCIは、IVUSガイド下や血管造影ガイド下に対し、いずれも優越性は認められなかった。米国・コロンビア大学のZiad A Ali氏らが、450例を対象に行った無作為化試験「ILUMIEN III: OPTIMIZE PCI」の結果、明らかにした。PCIは、血管造影単独ガイド下での実施が最も多い。IVUSは、PCI後の主要有害心血管イベント(MACE)を抑制することが示されている。OCTは、IVUSよりも画像解像度が高いが、ステント留置後の血管内径を狭めてしまう可能性が複数の試験で示されていた。Lancet誌オンライン版2016年10月30日号で発表した。


家族性高コレステロール血症、親子への検診は有効か/NEJM

 プライマリケア診療での定期予防接種時に、親子に家族性高コレステロール血症(FH)のスクリーニングを実施することは可能であり、有効であることが、英国・ロンドン大学クィーンメアリー校のDavid S Wald氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2016年10月27日号に掲載された。遺伝性の若年性心血管疾患の高リスク者を同定するために、親子へのFHのスクリーニングが提唱されているが、有効性に関するデータは少ないという。

心臓CT検査は冠動脈造影に代わり得るか/BMJ

 冠動脈疾患が疑われる患者への心臓CT検査は、冠動脈造影の施行率を抑制して診断率を改善するとともに、入院期間を短縮し、放射線被曝量や長期的なイベントを増加させないため、冠動脈造影の安全なゲートキーパーとなる可能性があることが、ドイツ・シャリテベルリン医科大学のMarc Dewey氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2016年10月24日号に掲載された。従来、閉塞性冠動脈疾患の最終診断は冠動脈造影で行われる。同時にステント留置が可能、CABGの計画が立てられるといった利点があるが、診断率が低いとのエビデンスがあり、過剰施行の可能性が指摘されている。CTは、正確で非侵襲的な選択肢とされるが、非定型的な胸痛のため冠動脈疾患が疑われ、冠動脈造影の適応となる患者におけるリスクおよび利点は知られていないという。

GLP-1アナログ製剤で乳がんリスクは増大するか/BMJ

 英国のプライマリケアデータベースを用いたコホート研究の結果、GLP-1アナログ製剤の使用と乳がんリスク上昇との関連性は確認されなかった。カナダ・Jewish General HospitalのBlanaid M Hicks氏らが、2型糖尿病患者の乳がん発症リスクとDPP-4阻害薬あるいはGLP-1アナログ製剤の使用との関連を解析し、報告したもの。GLP-1アナログ製剤のリラグルチドでは、無作為化試験においてプラセボと比較し乳がん発症が多くみられたことが報告されていたが、この安全性について分析する観察研究は、これまでなかった。著者は、「検討では、使用期間2~3年ではリスク上昇が観察されたが、GLP-1アナログ製剤使用患者の乳がん検出率が一時的に増加したためと考えられる。ただし、発がんプロモーターの影響を排除することはできない」と述べている。BMJ誌2016年10月20日号掲載の報告。

off-pump CABG vs.on-pump CABG、5年後も有意差なし/NEJM

 off-pump冠動脈バイパス術(CABG)は、on-pump CABGと比較して5年後の死亡・脳卒中・心筋梗塞・腎不全・再血行再建術の複合アウトカムに差はなく、両手法の有効性や安全性が同等であることが示された。カナダ・マクマスター大学のAndre Lamy氏らが、CABG Off or On Pump Revascularization Study(CORONARY)試験の最終結果を報告した。CORONARY試験では、off-pump CABGとon-pump CABGとで、30日後および1年後のいずれも臨床アウトカム(死亡・脳卒中・心筋梗塞・腎不全)に有意差はないことが報告されていた。NEJM誌オンライン版2016年10月23日号掲載の報告。

冠動脈手術時のトラネキサム酸はアウトカムを改善するか/NEJM

 合併症リスクのある冠動脈手術患者に対し、トラネキサム酸を投与しても、死亡や血栓性合併症のアウトカムは改善しない。トラネキサム酸を投与した群では、プラセボ群に比べ、大出血や再手術を要する心タンポナーデのリスクは減少したものの、痙攣発生率は増大が示された。オーストラリア・モナシュ大学のPaul S. Myles氏らが行った、無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果、明らかにした。トラネキサム酸は、冠動脈手術の際に出血リスクを減少することは知られていたが、アウトカムを向上するかどうかは不明だった。また、トラネキサム酸の持つ血栓形成促進性や痙攣誘発性効果についての懸念も指摘されていた。NEJM誌オンライン版2016年10月23日号掲載の報告。

安定期COPDへの長期酸素療法の効果/NEJM

 安静時または運動時に中等度酸素飽和低下が認められる慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対し、長期酸素療法を行っても、初回入院または死亡までの期間延長にはつながらなかった。COPD増悪率やCOPD関連入院率についても、低減効果は示されなかった。米国・コロラド大学のRichard K. Albert氏らの「Long-Term Oxygen Treatment Trial Research Group」が、738例を対象に行った無作為化比較試験の結果、明らかにしたもので、NEJM誌2016年10月27日号で発表した。これまで同患者に対する長期酸素療法の効果は明らかになっていなかった。

腹壁瘢痕ヘルニア修復術の予後、メッシュ vs.非メッシュ/JAMA

 腹壁瘢痕ヘルニアの治療では、メッシュを使用した修復術はこれを使用しない修復術に比べ、5年時までの再手術のリスクが有意に低いが、このメッシュのベネフィットは、長期的には関連合併症によって部分的に相殺されることが、デンマーク・ジーランド大学病院のDunja Kokotovic氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2016年10月17日号に掲載された。メッシュは、ヘルニアの再発リスクを低減すると考えられ、修復術の補助として一般に用いられているが、メッシュ留置に伴う長期的な合併症の発生状況は知られていないという。

失神入院患者は肺塞栓症有病率が高い?/NEJM

 失神の初回エピソードで入院した患者は、約6例に1例の割合で肺塞栓症を有することが、イタリア・パドヴァ大学のPaolo Prandoni氏らが行ったPESIT試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2016年10月20日号に掲載された。失神は、急激に発症し短時間(<1分)で自然に解消する一過性の意識消失と定義され、一時的な脳の低灌流に起因すると考えられている。多くの教科書では、肺塞栓症は失神の鑑別診断に含まれるが、厳格な試験デザインで有病率を検証した研究はなく、欧州心臓病学会(ESC)や米国心臓協会(AHA)などの現行のガイドラインでは、これらの患者で肺塞栓症の診断を確定するための精査にはほとんど注意が払われていないという。

腹部大動脈瘤、ステントグラフトの長期有用性は?/Lancet

 腹部大動脈瘤の治療において、ステントグラフト内挿術(EVAR)は外科的人工血管置換術(open repair)に比べ、早期の生存ベネフィットをもたらすものの長期生存は劣ることが、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのRajesh Patel氏らが進めるEVAR trial 1で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年10月12日号に掲載された。すでに、合併症のない腹部大動脈瘤へのEVARはopen repairに比べ、短期的な生存ベネフィットが優れることが無作為化試験で確認されているが、この早期の生存ベネフィットは数年で失われることが知られている。

小児のワクチン接種、非特異的な免疫学的効果はあるか/BMJ

 小児へのワクチン予防接種の一部の試験では、非特異的な免疫学的効果を示唆する免疫反応の傾向やパターンが認められるものの、試験デザインの異質性のため臨床的に意味があるとは結論できないとの検討結果が、英国・オックスフォード大学のRama Kandasamy氏らによりBMJ誌2016年10月13日号で報告された。観察研究では、ワクチン予防接種による、全死因死亡への非特異的な効果の発現が示唆されているが、その免疫学的な因果関係の機序は明らかにされていない。

小児のワクチン接種と死亡率、BCG vs.DTP vs.MCV/BMJ

 BCGおよび麻疹含有ワクチン(MCV)接種は、疾患予防効果を介して予想される以上に全死因死亡率を低下させ、ジフテリア・百日咳・破傷風の3種混合ワクチン(DTP)接種は逆に全死因死亡率を上昇させる可能性があることが、英国・ブリストル大学のJulian P Higgins氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果、明らかとなった。これまでの研究で、麻疹やDTPなどのワクチン接種は、目的とする疾患の発症を顕著に減少させるにもかかわらず、目的の感染症以外に起因する死亡に影響を及ぼすことが示唆されていた。著者は、「今回の結果は、WHOで推奨されているワクチン接種の変更を支持するものではないが、ワクチン接種スケジュールにおけるDTPの順番の影響について無作為化試験で比較検討する必要がある」と述べるとともに、「すべての子供たちがBCG、DTP、MCVの予防接種を予定どおり確実に受けられるよう取り組むべきである」とまとめている。BMJ誌2016年10月6日号掲載の報告。

大不況中は下層階級の死亡率が改善/Lancet

 スペインでは、全死因死亡率は大不況以前と比較して大不況中に低下し、その傾向がとくに下位の社会経済的集団で確認されたという。スペインのマドリード・コンプルテンセ大学のEnrique Regidor氏らが、異なる社会経済的集団の死亡率に対するマクロ経済変動の影響を検討する目的で、“Great Recession(サブプライム・ローン問題に端を発した金融危機による大不況:2007年8月~2009年6月)”の前と最中とで死亡率の傾向を解析し、各社会経済的集団での変化を調査した結果を報告した。この死亡率低下について著者は、「おそらくリスク因子への曝露が減少したことによると考えられる」と述べている。Lancet誌オンライン版2016年10月13日号掲載の報告。