ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:104

NAFLD/NASH患者、リスク因子補正後のAMIや脳卒中リスクとの関連は?/BMJ

 欧州の大規模な4つのデータベースを用いた検討で、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と診断された成人は、年齢、性別、診療情報を適合したNAFLDを有さない成人と比較して、既知の心血管リスク因子補正後、急性心筋梗塞(AMI)や脳卒中の発生リスクに、わずかな増大は認められるが有意差はないことが明らかにされた。英国・GlaxoSmithKlineのMyriam Alexander氏らが計1,770万例を対象とした適合コホート試験の結果で、著者は「NAFLD診断成人の心血管リスク評価は重要だが、一般集団のそれと同様とすべきであろう」と述べている。NAFLDは、メタボリックシンドロームやその他のAMIや脳卒中のリスク因子との関連が認められている。AMIおよび脳卒中リスク増大との関連、および心血管疾患の代用マーカー(surrogate marker)との関連が示されているが、既知のリスク因子補正後の関連性について完全には確立されていなかった。BMJ誌2019年10月8日号掲載の報告。

低リスク妊娠、第3期のルーチン超音波は有益か?/BMJ

 低リスク単胎妊娠において、妊娠第3期に超音波検査をルーチンに行うことは通常ケアと比較して、出産前の在胎不当過小(SGA)胎児の検出率を高めるが、重度有害周産期アウトカムの発生減少には結びつかないことが明らかにされた。オランダ・アムステルダム大学医療センターのJens Henrichs氏らが、1万3,046例の妊婦を対象に行った無作為化比較試験の結果で、著者は「妊娠第3期に超音波検査をルーチンに行うことを支持しない結果であった」とまとめている。BMJ誌2019年10月15日号掲載の報告。

変形性膝関節症、spriferminが膝関節軟骨の厚みを増加/JAMA

 症候性変形性膝関節症患者では、6もしくは12ヵ月ごとのsprifermin100μgの関節内注射により、2年後の大腿脛骨関節軟骨の厚みがプラセボに比べ統計学的に有意に増加することが、米国・メリーランド大学のMarc C. Hochberg氏らが行ったFORWARD試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2019年10月8日号に掲載された。spriferminは、組み換え型ヒト線維芽細胞成長因子18であり、関節内に注射する変形性関節症の疾患修飾薬として研究が進められている。変形性膝関節症ラットモデルでは、硝子軟骨を産生する関節軟骨細胞の増殖を誘導し、in vitroおよびex vivoで硝子細胞外基質の合成を促進することが示され、膝関節軟骨の厚さを増加させると報告されている。

小脳脳内出血、血腫除去vs.保存的治療/JAMA

 小脳の脳内出血(ICH)を呈した患者において、外科的治療としての血腫除去は保存的治療と比べて、機能的アウトカムを改善しないことが、ドイツ・エアランゲン・ニュルンベルク大学のJoji B. Kuramatsu氏らによるメタ解析の結果、明らかにされた。主要アウトカムとした3ヵ月時点の機能的アウトカムについて、有意差は示されなかった。結果を受けて著者は、「血腫容量で機能的アウトカムとの関連に違いがないかを明らかにする必要はある」と述べている。JAMA誌2019年10月8日号掲載の報告。

咽頭・扁桃炎へのペニシリンV、1日4回×5日間の効果/BMJ

 A群レンサ球菌に起因する咽頭・扁桃炎のペニシリンVによる治療について、現在推奨されている1日3回×10日間療法に対して、1日4回×5日間療法が臨床的アウトカムに関して非劣性であることが示された。再発と合併症の発生数は、両群間で差はみられなかったという。スウェーデン公衆衛生局のGunilla Skoog Stahlgren氏らが行った無作為化非盲検非劣性試験の結果で、著者は「ペニシリンVの1日4回×5日間療法は、現在の推奨療法に代わりうるものとなるかもしれない」とまとめている。抗菌薬への耐性増加と新しい抗菌薬の不足もあり、既存の抗菌薬の使用を最適化することの重要性が強調されている。

COPD入院患者へ3ヵ月間の支援介入、QOLを改善せず/JAMA

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)で入院した患者に対し、入院中から開始する在宅移行支援と長期自己管理支援を組み合わせた、COPD看護師による3ヵ月間の介入プログラムは、通常ケアと比較してCOPD関連の入院や緊急部門(ER)受診を有意に増大し、QOLの改善は認められなかったことが報告された。米国・ジョンズ・ホプキンズ大学のHanan Aboumatar氏らが、同大で開発した「BREATHE Program」を検証した単施設無作為化試験の結果で、「今回示された予想外の結果の理由を明らかにするために、さらなる試験を行う必要がある」と述べている。COPDの増悪による入院患者は、再入院率が高く、QOLの低下が認められる。これまでに、退院時介入(退院支援)が再入院を低減することは報告されているが、死亡やQOLへの影響は示されていない。在宅移行支援に関しては研究例が少なく、焦点も回復期ケアや退院後30日間に限られ、長期の慢性疾患自己管理のスキルに着目した研究例はなかった。そうした中で、これらの支援介入は、患者のアウトカム改善や急性期ケアの利用低減に不十分ではないかとする見方もあった。JAMA誌2019年10月8日号掲載の報告。

NIRS-IVUS、不安定プラークと患者のイベントリスクを特定/Lancet

 心臓カテーテル検査を行い即時の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受ける患者に対する血管内超音波(IVUS)イメージングについて、近赤外線分光法(NIRS)によるイメージングの非閉塞領域に対する安全性が確認され、また、その後の非責任病変部の主要有害心血管イベント(NC-MACE)のリスクが高い患者、および発生の可能性がある部位の特定に役立つことが示された。米国・MedStar Washington Hospital CenterのRon Waksman氏らが、前向きコホート試験「Lipid-Rich Plaque:LRP試験」の結果を報告した。NIRS-IVUSイメージングは、急性冠症候群または心筋梗塞に関連し血行再建あるいは心臓死につながる脂質に富むプラーク(lipid-rich plaque:LRP)を検出できるが、将来的にイベントを呈する可能性がある冠動脈や患者を予測する検討は小規模で、プラークに立脚した仮説は検証されていなかった。著者は今回の結果を踏まえて、「NIRS-IVUSは、臨床診療で不安定プラークを有する患者およびそのプラークを検出できる初回イメージングツールとして、考慮すべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2019年9月27日号掲載の報告。

進行NSCLCの初回治療、ニボルマブ+イピリムマブが有効/NEJM

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法による初回治療はPD-L1発現レベルを問わず、化学療法と比較して全生存(OS)期間を延長することが認められた。また、長期追跡において新たな安全性の懸念は生じなかった。米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのMatthew D. Hellmann氏らが、第III相の無作為化非盲検試験「CheckMate-227試験」の結果を報告した。進行NSCLC患者を対象とした第I相試験において、とくにPD-L1陽性患者で、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法がニボルマブ単剤療法よりも奏効率が良好であることが示され、NSCLC患者におけるニボルマブ+イピリムマブの長期的な有効性を評価するデータが必要とされていた。NEJM誌オンライン版2019年9月28日号掲載の報告。

人工股関節全置換 vs.半関節形成、2年後の有意差なし/NEJM

 50歳以上の転位型大腿骨頸部骨折において、人工股関節全置換術を受けた患者と半関節形成術を受けた患者とで、24ヵ月間の二次的な股関節手術の発生率に有意差はなく、人工股関節全置換術が半関節形成術と比べて、機能やQOLに関して臨床的に重要な改善を示さなかったことが報告された。カナダ・マックマスター大学のMohit Bhandari氏らの研究グループ「The HEALTH Investigators」が、約1,500例を対象に行った無作為化試験で明らかにした。世界的に、大腿骨近位部骨折は、成人の障害要因のトップ10位内に含まれる。これまで転位型大腿骨頸部骨折について、股関節全置換術を半関節形成術と比べた効果については不確定なままであった。NEJM誌オンライン版2019年9月26日号掲載の報告。

カバジタキセル、転移のあるmCRPCのPFSを延長/NEJM

 転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)で、ドセタキセルおよび抗アンドロゲン薬(アビラテロン、エンザルタミド)既治療の患者に対し、カバジタキセルは抗アンドロゲン薬に比べ、画像評価による無増悪生存(PFS)期間を有意に延長することが示された。オランダ・エラスムス医療センターのRonald de Wit氏らが、255例を対象に行った無作為化比較試験の結果で、NEJM誌オンライン版2019年9月30日号で発表した。ドセタキセル治療と抗アンドロゲン薬治療を受けるも12ヵ月以内に病勢進行が認められたmCRPC患者について、抗アンドロゲン薬と比較したカバジタキセルの有効性および安全性は不明であった。

BRAF V600E遺伝子変異大腸がん、MAPK経路標的の3剤併用は?/NEJM

 BRAF V600E遺伝子変異陽性の転移を有する既治療大腸がん患者の治療では、エンコラフェニブ(BRAF阻害薬)+セツキシマブ(抗EGFRモノクローナル抗体)+ビニメチニブ(MEK阻害薬)併用療法およびエンコラフェニブ+セツキシマブ併用療法は標準治療と比較して、いずれも全生存(OS)期間を有意に延長し、奏効率も有意に高いことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのScott Kopetz氏らが行ったBEACON CRC試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年9月30日号に掲載された。BRAF V600E遺伝子変異陽性の転移を有する大腸がんの予後は不良であり、初回治療不成功後のOS期間中央値は4~6ヵ月とされる。また、BRAFだけを阻害しても、上皮成長因子受容体(EGFR)シグナル伝達を介して伝達路が再活性化されるため、腫瘍縮小効果は限定的だという。この3剤併用レジメンは、MAPKシグナル伝達経路を最も効果的に阻害する併用療法としてデザインされた。

niraparibで化療に奏効した新規進行卵巣がんのPFS改善/NEJM

 プラチナ製剤ベースの化学療法が奏効した新規診断進行卵巣がん患者では、PARP阻害薬niraparibはプラセボと比較して、相同組み換え欠損(homologous-recombination deficiency:HRD)の有無にかかわらず、無増悪生存(PFS)期間を有意に延長させることが、スペイン・Clinica Universidad de NavarraのAntonio Gonzalez-Martin氏らが行ったPRIMA/ENGOT-OV26/GOG-3012試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年9月28日号に掲載された。niraparibは、BRCA遺伝子変異の有無にかかわらず、プラチナ製剤ベースの化学療法施行後の再発卵巣がん患者のPFS期間を延長すると報告されている。一方、プラチナ製剤ベースの化学療法が奏効した新規診断進行卵巣がん患者におけるniraparibの有効性は知られていない。また、BRCA遺伝子変異は、腫瘍が何らかのHRDを有することを示しているが、BRCA遺伝子変異が陰性の場合は腫瘍のゲノム不安定性のパターンが、そのような表現型を付与する可能性があるという。

高リスク大動脈弁狭窄症、自己拡張型TAVR vs.バルーン拡張型/Lancet

 高齢の症候性重症大動脈弁狭窄症患者への経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)では、早期の安全性および有効性に関して、自己拡張型TAVR(ACURATE neo)はバルーン拡張型TAVR(SAPIEN 3)に対する非劣性基準を満たさないことが、スイス・ベルン大学病院のJonas Lanz氏らが行ったSCOPE I試験で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年9月27日号に掲載された。症候性重症大動脈弁狭窄症の高齢患者にはTAVRが推奨されており、TAVRの特性の違いは臨床転帰に影響を及ぼすが、自己拡張型とバルーン拡張型のTAVRの比較はこれまで行われていなかったという。

ニンテダニブ、進行性線維化を伴う間質性肺疾患に有効/NEJM

 進行性線維化を伴う間質性肺疾患の治療において、ニンテダニブはプラセボと比較して、努力性肺活量(FVC)の年間低下率が小さく、この効果は高分解能CT画像上の線維化のパターンとは独立に認められることが、米国・ミシガン大学のKevin R. Flaherty氏らが行ったINBUILD試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年9月29日号に掲載された。ニンテダニブは、細胞内チロシンキナーゼ阻害薬であり、前臨床データでは肺線維症の進行に関与するプロセスを阻害することが示唆されている。特発性肺線維症(IPF)および全身性強皮症を伴う間質性肺疾患患者では、ニンテダニブ150mgの1日2回投与により、FVCの低下が抑制されたと報告されている。

コントロール不良の喘息、トリプル吸入療法が有効/Lancet

 コントロール不良の喘息患者において、吸入ステロイド(ICS)+長時間作用性β2刺激薬(LABA)への長時間作用性抗コリン薬(LAMA)追加併用療法は、肺機能を改善し喘息増悪の発生を減少することが示された。ドイツ・ロストック大学のJohann Christian Virchow氏らが、ICS(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル:BDP)、LABA(ホルモテロールフマル酸塩水和物:FF)、LAMA(グリコピロニウム:G)の3成分の極細粒子を、1つの吸入デバイスに配合した吸入剤の有効性および安全性を検証した2件の第III相無作為化二重盲検実薬対照比較試験、「TRIMARAN試験」および「TRIGGER試験」の結果を報告した。これまで、喘息に対する単一吸入器によるトリプル吸入療法の有効性は明らかになっていなかった。Lancet誌オンライン版2019年9月30日号掲載の報告。

HIV感染妊婦、結核のイソニアジド予防療法開始は出産後に/NEJM

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染し抗レトロウイルス療法を受けている妊婦において、結核予防のためのイソニアジド療法の開始時期は、出産後に比べて妊娠中のほうが、リスクが大きいと思われることが示された。米国・ジョンズ・ホプキンズ大学のAmita Gupta氏らが、イソニアジド予防療法の開始時期を検証した多施設共同二重盲検プラセボ対照非劣性試験「IMPAACT P1078 TB APPRISE試験」の結果を報告した。抗レトロウイルス療法を受けているHIV感染妊婦の結核予防を目的とした、イソニアジド療法の安全性、有効性および適切なタイミングに関しては明らかになっていなかった。NEJM誌2019年10月3日号掲載の報告。

卵巣がん、導入・維持療法でのveliparib投与でPFS延長/NEJM

 StageIIIまたはIVの高悪性度漿液性卵巣がんに対し、導入化学療法としてカルボプラチン+パクリタキセル+veliparibを行い、その後に維持療法としてveliparib単独療法を行うレジメンが、カルボプラチン+パクリタキセルの導入化学療法のみの場合と比べて、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが示された。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのRobert L. Coleman氏らが、北米・日本などの患者1,140例を対象に行った第III相の国際共同プラセボ対照無作為化比較試験の結果を、NEJM誌オンライン版2019年9月28日号に発表した。高悪性度漿液性卵巣がん患者の初回治療として、veliparibのようなADPリボースポリメラーゼ阻害薬を化学療法への上乗せや維持療法として使用することに関して、データは限定的であった。

高リスクPCI施行患者の出血、チカグレロル単独vs.DAPT/NEJM

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた出血・虚血イベントリスクの高い患者において、術後3ヵ月間チカグレロル+アスピリンの併用投与後、チカグレロル単剤投与への変更は併用投与継続の場合と比べて、死亡・心筋梗塞・脳卒中のリスクを上昇することなく臨床的に重大な出血リスクを有意に低下することが示された。米国・マウントサイナイ医科大学のRoxana Mehran氏らが行ったプラセボ対照二重盲検無作為化試験の結果で、NEJM誌オンライン版2019年9月26日号で発表された。これまでP2Y12阻害薬を早期に中断して抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の期間を最短とするアプローチについて、いくつかの試験が行われていたが、概して低リスクの患者が対象で虚血イベントに関する検出力が不足していた。研究グループは、アスピリン投与期間を短縮することで、とくに消化器毒性についてのアスピリンに関連した出血リスクを回避でき、P2Y12阻害薬の効力を長期に受けられる可能性があるとの仮説を立て検討を行った。

腎機能低下糖尿病患者にメトホルミンは使用可能か/JAMA

 腎機能が低下した2型糖尿病患者の薬物療法では、メトホルミンはSU薬に比べ、主要有害心血管イベント(MACE)のリスクが低いことが、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのChristianne L. Roumie氏らの検討で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年9月24日号に掲載された。従来、安全性に関する懸念から、腎臓病を有する糖尿病患者ではメトホルミンの使用が制限されていたが、2016年4月、米国食品医薬品局(FDA)は軽症~中等症の腎臓病患者におけるメトホルミンの安全性のエビデンスに基づいてガイダンスを変更し、軽度腎機能障害(eGFR:45~60mL/分/1.73m2)および中等度腎機能障害の一部(30~45mL/分/1.73m2)では安全に使用可能としている。一方、腎機能が低下した糖尿病患者の臨床転帰に及ぼすメトホルミンの効果は明らかにされていないという。

高リスク2型糖尿病の心血管リスク、リナグリプチンvs.グリメピリド/JAMA

 心血管リスクが高い比較的早期の2型糖尿病患者の治療において、DPP-4阻害薬リナグリプチンはSU薬グリメピリドに対し、心血管死、非致死的な心筋梗塞・脳卒中の複合のリスクが非劣性であることが、米国・Dallas Diabetes Research Center at Medical CityのJulio Rosenstock氏らが行ったCAROLINA試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2019年9月24日号に掲載された。2型糖尿病は心血管リスクを増加させる。リナグリプチンの心血管安全性を評価したプラセボ対照比較試験では非劣性が示されているが、実対照薬との比較試験は実施されていなかった。