ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:148

地域の高齢者の健康寿命は果たして伸びているのか/Lancet

 英国65歳高齢者の平均余命は、男女ともに4年以上延長したものの、そのうち自立した状態で生活できる期間は、男性で36.3%、女性ではわずか4.8%にすぎないことが明らかにされた。平均して男性は2.4年間、女性は3.0年間、かなりの介護を必要とし、その大半は地域で暮らしているという。英国・ニューカッスル大学のAndrew Kingston氏らが、英国3地域の高齢者データベースに基づく、調査期間の異なる2つの試験CFAS(Cognitive Function and Ageing Studies)IとIIを比較して明らかにし、Lancet誌オンライン版2017年8月15日号で発表した。同国の高齢者世代の自立度が変わっているのかは、ほとんど明らかになっていなかったという。

ニーマンピック病C1型へのHPβCDの可能性/Lancet

 ニーマンピック病C1型の患者に対し、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)を髄腔内投与は、病状進行を遅らせる可能性があるようだ。またその安全性については、中間~高周波の聴力損失が認められたほかは、重篤な有害事象は認められなかった。米国・ワシントン大学のDaniel S. Ory氏らが行った、第I-IIa相の非盲検用量漸増試験の結果で、Lancet誌オンライン版2017年8月10日号で発表した。ニーマンピック病C1型は進行性の神経変性によって特徴づけられるライソゾーム病に含まれる先天性代謝異常症の一種。HPβCDはマウスとネコモデルを用いた前臨床試験で、小脳のプルキンエ細胞消失を顕著に遅らせ、神経症状の進行を遅らせて寿命を延伸させたことが示されていた。

悪性脳腫瘍に対するテモゾロミド療法の役割は?/Lancet

 新たに診断された1p/19q非欠失の退形成星細胞腫患者において、テモゾロミドアジュバント療法により、顕著な生存ベネフィットを得られることが、第III相無作為化非盲検試験「CATNON(EORTC study 26053-22054)」の中間解析として報告された。オランダ・エラスムスMCがん研究所のMartin J van den Bent氏らが、Lancet誌オンライン版2017年8月8日号で発表した。同患者に対するテモゾロミドによる化学療法は、1p/19q欠失の退形成星細胞腫よりも有効性は低く予後は不良とされているが、その役割は明確にはなっていなかった。

自閉症スペクトラム障害児に即興音楽療法は有用か/JAMA

 自閉症スペクトラム障害(ASD)の小児の治療では、強化標準治療に即興音楽療法を追加しても症状の重症度は改善しないことが、ノルウェー・Uni ResearchのLucja Bieleninik氏らが行ったTIME-A試験で明らかとなった。研究の成果はJAMA誌2017年8月8日号に掲載された。音楽療法は、ASD患者の社会的相互作用(social interaction)、共同注意(joint attention)、親子関係を改善することが無作為化試験で示されている。即興音楽療法は、患児と訓練を受けた音楽療法士が自発的に歌ったり、演奏したり、体を動かすことで音楽を創造する患児中心のアプローチで、音楽療法士は患児の関心や行動、好奇心に着目してこれに従うことで社会コミュニケーション技法の発達を促す。

同種HSCT後の気流低下、アジスロマイシンで抑制できるか/JAMA

 造血器腫瘍のため同種造血幹細胞移植(HSCT)を受けた患者において、アジスロマイシンの早期投与はプラセボ投与と比較して、気流低下(airflow decline)のない生存の達成は不良であったことが、多施設共同無作為化試験「ALLOZITHRO」の結果、示された。フランス・サン・ルイ病院のAnne Bergeron氏らがJAMA誌2017年8月8日号で報告した。同種HSCT後の閉塞性細気管支炎症候群は、罹患率および死亡率の増大と関連している。先行研究で、アジスロマイシンが、肺移植後の閉塞性細気管支炎症候群を減少する可能性が示唆されていた。

米、インフルエンザ弱毒生ワクチン非推奨の理由/NEJM

 2016-17年の米国インフルエンザシーズンでは、予防接種に弱毒生インフルエンザワクチンを使用しないよう米国予防接種諮問委員会(ACIP)が中間勧告を出したが、そこに至る経緯を報告したGroup Health Research Institute(現カイザーパーマネンテ・ワシントン・ヘルスリサーチ研究所)のMichael L. Jackson氏らによる論文が、NEJM誌2017年8月10日号で発表された。これは、Jackson氏らInfluenza Vaccine Effectiveness Network(Flu VE Network)が、2013-14年流行期に、4価弱毒化ワクチンが小児におけるA(H1N1)pdm09ウイルスに対して効果不十分であったと明らかにしたことに端を発する。

46ヵ国の喘息死亡動向、2006年以降変化なし/Lancet

 WHO死亡データベースから、46ヵ国における1993~2012年の喘息死亡の動向について、ニュージーランド・Medical Research InstituteのStefan Ebmeier氏らが分析し、結果を発表した。同死亡率は1980年代後半から減少傾向がみられるが、2006年以降5~34歳の同死亡率の明らかな変化はみられないという。結果を踏まえて著者は、「推奨ガイドライン適用で喘息死亡の約半数は回避可能だが、それには確立されたマネジメント戦略のより良好な実施が必要である。一方で、喘息死亡のさらなる実質的な減少には、新たな戦略も必要かもしれない」と述べている。Lancet誌オンライン版2017年8月7日号掲載の報告。

乳房温存術後の放射線照射、全乳房vs.部分vs.減量/Lancet

 早期乳がんに対する乳房温存術後の放射線療法において、乳房部分照射単独あるいは減量全乳房照射+乳房部分照射は、標準的な全乳房照射に対し5年同側乳房再発率に関して非劣性であることが検証され、有害事象も同等または少ないことが確認された。英国・ケンブリッジ大学のCharlotte E. Coles氏らが、同国放射線治療センター30施設で実施した第III相多施設共同無作為化試験「IMPORT LOW」の5年追跡結果を報告した。著者は、「この方法は難しくなく、世界中の放射線治療センターで実施可能である」とまとめている。Lancet誌オンライン版2017年8月2日号掲載の報告。

SAVR後の脳卒中予防、脳塞栓保護デバイスは有用か/JAMA

 外科的大動脈弁置換術(SAVR)における虚血性中枢神経系損傷の減少に対する、脳塞栓保護デバイスの有効性と安全性を検証した無作為化臨床試験の結果を、米国・Baylor Scott & White HealthのMichael J. Mack氏らが報告した。SAVR施行患者において、脳塞栓保護デバイスは標準的な大動脈カニューレと比較し、7日後の脳梗塞リスクを有意に減少するには至らなかったものの、著者は、「せん妄の減少、認知機能、症候性脳卒中に有用である可能性が示唆され、大規模臨床試験で長期追跡調査を実施するに値する」とまとめている。脳卒中はSAVRの重大な合併症で、脳塞栓保護デバイスの意義について、より厳密なデータが求められている。JAMA誌2017年8月8日号掲載の報告。

レボシメンダン、冠動脈バイパス術前投与に効果なし/JAMA

 人工心肺装置を用いた冠動脈バイパス術(CABG)実施予定で、左室駆出分画率が40%以下の患者に対し、levosimendanを術前投与しても、術後アウトカムは改善しないことが示された。フランス・ジョルジュ・ポンピドゥー欧州病院のBernard Cholley氏らが、336例を対象に行ったプラセボ対照無作為化二重盲検試験「LICORN」の結果を報告したもので、JAMA誌2017年8月8日号で発表した。心臓手術後の低心拍出量症候群は、左室機能障害を有する患者で高い死亡率と関連している。

血管拡張性ショックにアンジオテンシンIIは有用か/NEJM

 高用量の従来の昇圧薬に反応しない血管拡張性ショック患者に対し、合成ヒトアンジオテンシンII薬(LJPC-501)が血圧を効果的に上昇したことが、米国・クリーブランドクリニックのAshish Khanna氏らによる無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ATHOS-3」の結果で示された。高用量の昇圧薬に反応しない血管拡張性ショックは、高い死亡率と関連しており、本検討の背景について著者は次のことを挙げている。現在利用可能な昇圧薬はカテコールアミン(交感神経刺激薬)とバソプレシンの2種のみで、いずれも高用量では毒性作用が強く治療領域が限られている。また、アンジオテンシンII薬は、低血圧発症時のホルモンのはたらきをヒントに開発が進められ、カテコールアミンとバソプレシンへの追加投与で有用性を検討したパイロット試験で、カテコールアミンの用量減少が可能なことが示唆されていた。NEJM誌2017年8月3日号(オンライン版2017年5月21日号)掲載の報告。

IgA腎症への経口ステロイドで感染症リスク増/JAMA

 IgA腎症で蛋白尿1g/日以上の患者において、経口メチルプレドニゾロンの服用は重篤有害事象のリスクを、とくに感染症のリスクを増大することが、国際多施設共同無作為化試験「TESTING」の結果、示された。筆頭著者の中国・北京大学第一病院のJicheng Lv氏らは、「結果は潜在的な腎ベネフィットと合致しているが、試験が早期終了となったため、治療ベネフィットについて最終的な結論を示すことはできない」としている。ガイドラインでは、IgA腎症および持続性蛋白尿を認める患者に対しコルチコステロイドの使用を推奨しているが、その影響は明らかになっていなかった。JAMA誌2017年8月1日号掲載の報告。

急性期脳梗塞の血栓回収療法、吸引型 vs.ステント型/JAMA

 前方循環脳梗塞患者における吸引型デバイスを用いた血栓回収は、ステントリトリーバーを用いた場合に比べて、再開通率の向上をもたらさなかったことが、ASTER試験(The Contact Aspiration vs Stent Retriever for Successful Revascularization study)の結果、明らかとなった。フランス・ベルサイユ大学のBertrand Lapergue氏らが報告した。これまで、急性期脳梗塞患者において、吸引型デバイスによる血栓回収(a direct aspiration first pass technique[ADAPT]またはcontact aspiration)とステントリトリーバーによる血栓回収の有用性を比較した無作為化試験からは、十分なエビデンスを得られていなかった。JAMA誌オンライン版2017年8月1日号掲載の報告。

進行子宮頸がんのベバシズマブ併用、第III相試験の最終解析/Lancet

 米国・カリフォルニア大学のKrishnansu S. Tewari氏らが、進行子宮頸がん患者を対象に血管新生阻害薬ベバシズマブ併用の有効性と安全性を評価した「米国婦人科腫瘍グループ(GOG)240試験」の、全生存期間(OS)と有害事象に関する最終解析結果を報告した。2012年の第2回中間解析でOSの改善が認められ、その結果に基づき2014年8月14日、米国で進行子宮頸がんに対するベバシズマブの使用が承認されたが、今回の最終解析においても、ベバシズマブ併用の有用性が全生存曲線により示され、追跡期間が延長しても持続していることが確認された。また、ベバシズマブ投与中に増悪しベバシズマブの投与を中止しても、その後の生存期間が化学療法単独療法中止後より短縮するという負のリバウンド作用は認められなかった。Lancet誌オンライン版2017年7月27日号掲載の報告。

新生児薬物離脱症、オピオイド+向精神薬でリスク増/BMJ

 新生児の薬物離脱症について、オピオイドのみの子宮内曝露を受けた児に比べて、ベンゾジアゼピン系薬などの向精神薬の曝露も同時に受けた児では、リスクや重症度が増大する可能性が示唆された。なかでも、オピオイド+ガバペンチンの子宮内曝露群では、オピオイド単独曝露群に比べ、同発症リスクが約1.6倍増加した。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のKrista F. Huybrechts氏らが、2000~10年のメディケイドデータを用いた分析抽出(Medicaid Analytic eXtract:MAX)コホート内コホート試験を行った結果で、BMJ誌2017年8月2日号で発表した。妊娠中のオピオイド処方と合わせた向精神薬の使用は一般的にみられるが、安全性に関するデータは不足している。

非ST上昇型ACSの侵襲治療、適切なタイミングは?/Lancet

 非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)の患者に対し、早期侵襲治療は待機的侵襲治療と比べて全死因死亡リスクを有意に低下しなかった。ただし、糖尿病患者や75歳以上の患者などハイリスク患者については、早期侵襲治療が待機的侵襲治療に比べ有益である可能性が示された。ドイツ・リューベック大学心臓センターのAlexander Jobs氏らが、8件の無作為化試験をメタ解析した結果で、Lancet誌オンライン版2017年8月1日号で発表された。NSTE-ACSの患者に対しては、臨床ガイドラインでルーチンの侵襲治療を推奨しているものの、その最適なタイミングについては明確に定義されていない。これまでに行われた臨床試験では、治療のタイミングが及ぼす死亡への影響を検出する力が不足しており、研究グループはメタ解析にて評価を行った。

院外心停止後の低体温療法、24時間 vs.48時間/JAMA

 院外心停止患者に対する低体温療法の、至適施行時間を検討する国際多施設共同無作為化試験が、デンマーク・オーフス大学病院のHans Kirkegaard氏らにより行われた。国際的な蘇生ガイドラインで推奨される標準の24時間と、より長時間の48時間施行を比較した結果、長時間の施行としても6ヵ月後の神経学的アウトカムは、改善を示したが有意差は認められなかった。しかしながら結果について著者は、「本試験は、臨床的に意味のある差の検出能に限界があり、さらなる検討を行うことが是認される結果であったと思われる」と述べている。JAMA誌2017年7月25日号掲載の報告。

骨粗鬆症のBP治療後、新規抗体製剤vs.テリパラチド/Lancet

 経口ビスホスホネート系薬で治療を受ける、閉経後の骨粗鬆症女性の治療薬移行について、開発中のヒト抗スクレロスチンモノクローナル抗体製剤romosozumab(AMG 785、承認申請中)が既存薬のテリパラチド(フォルテオ)との比較において、股関節部の骨密度(BMD)を上昇させたことが報告された。デンマーク・オーフス大学病院のBente L. Langdahl氏らによる第III相の非盲検無作為化実薬対照試験の結果で、Lancet誌オンライン版2017年7月26日号で発表された。ビスホスホネート系薬の既治療は、テリパラチドの骨形成作用を減弱することが確認されている。著者は、「今回示されたデータを、骨折リスクの高い患者の臨床的意思決定のために周知すべきである」と述べている。

遺伝性血管性浮腫の発作予防、遺伝子組換え製剤は有用か/Lancet

 全身に浮腫を繰り返す遺伝性血管性浮腫の発作予防に対する遺伝子組換えヒトC1エステラーゼ阻害薬(Ruconest)の有効性と安全性を評価した、第II相の多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験の結果が発表された。米国・カリフォルニア大学のMarc A. Riedl氏らによる検討で、週2回(至適)または週1回の静脈内投与で臨床的に意味のある有意な発作頻度の減少が認められ、忍容性は良好であった。遺伝性血管性浮腫の発作は、C1インヒビター機能の低下によって生じる。血漿由来C1エステラーゼ阻害薬(Cinryze)の点滴静注は、遺伝性血管性浮腫の発作を抑止することが確認されているが、遺伝子組換えヒトC1エステラーゼ阻害薬の発作予防効果については、これまで厳密に検討されていなかった。Lancet誌オンライン版2017年7月25日号掲載の報告。