ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:344

研修医の勤務時間改善で患者死亡率は改善されたか:民間病院での検証結果

米国では卒後医学教育認定委員会(ACGME:Accreditation Council for Graduate Medical Education)によって2003年7月1日より、研修医の勤務時間規則が施行されたが、これによる勤務時間改善と患者死亡率との関連、教育強度の異なる研修病院間での相関については、これまで検証されていなかった。フィラデルフィア退役軍人医療センターのKevin G. Volpp氏らは、その関連性を評価。JAMA誌9月5日号に掲載された本報告は、民間病院のメディケア対象の短期・急性期入院患者を対象とした検証結果である。

抗生物質の処方が地域に耐性菌を蔓延

一般医の抗生物質の処方が地域に耐性菌を蔓延させている、との興味深い論文が、BMJ誌オンライン版7月26日号、本誌9月1日号に掲載された。 英国一般診療で抗生物質の処方が最も多いのは、小児の急性呼吸器感染症に対してだが、コミュニティ・スタディなどがほとんど行われてこなかった。英国オックスフォード大学のAngela Chung氏らがあらためて観察研究を行った結果の報告。

「正常高値」血圧は中年女性でもリスク:WHSサブ解析

「正常高値」血圧の中年女性は、「正常血圧」の同年代女性に比べ、10年間の心血管系イベントリスクが2倍近く有意に増加することが、米国における約4万人の女性を追跡した結果、明らかになった。Harvard Medical School(米国)のDavid Conen氏らによるWomen’s Health Studyのサブ解析。BMJ誌オンライン版8月19日付で早期公開された。本誌では9月1日号で掲載。

受動喫煙は、喫煙未経験者におけるCOPD発症のリスク因子

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、2020年には世界的な死亡原因の第3位になると予想されている。喫煙がCOPDの主要なリスク因子であることはすでに明らかだが、受動喫煙の影響については情報がほとんどない。 イギリス・バーミンガム大学公衆衛生学・疫学科のP. Yin氏らは、中国の中高年者において受動喫煙がCOPDおよび呼吸器症状に及ぼす影響を調査、その関連性が明らかになるとともに深刻な事態が浮き彫りにされた。9月1日付Lancet誌掲載の報告。

COPDのリスク因子、加齢・喫煙の寄与は明らか、他の因子も

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は罹患率、死亡率とも世界規模で上昇している。COPDによる将来的な負担を予測し、主要なリスク因子を見定め、関連健康サービスの供給計画を立案するには、その発症状況を正確に把握する必要がある。 アメリカ・オレゴン健康科学大学のA. Sonia Buist氏らは、BOLD(The Burden Of Obstructive Lung Disease)試験においてCOPDの有病率とそのリスク因子を評価し、国ごとの発症状況の変動を調査した。9月1日付Lancet誌の報告から。

連続流タイプの補助人工心臓の有用性について治験グループが報告

難治性心不全患者に対する治療法として認められている左心補助人工心臓だが、拍動流タイプの装置は、サイズが大きい、耐久性に限界があるなどの問題から実用性に限界があった。一方、近年開発された連続流タイプの補助人工心臓(Thoratec社製Heartmate II LAVD)は、小型化され、耐久性、静音性などにも優れる。ミネソタ大学のLeslie W. Miller氏ら同製品治験グループが、Heartmate II LAVD利用者の多施設共同観察研究の結果を報告した。NEJM誌8月30日号掲載より。

外傷性脳損傷患者のアルブミン輸液蘇生は死亡率が高い

古くから論争になっているテーマだが、生理食塩水vsアルブミン輸液評価研究グループ(SAFE:Saline versus Albumin Fluid Evaluation)は、SAFEスタディに登録された外傷性脳損傷患者の事後を追跡調査し、その死亡率が、アルブミン輸液で蘇生された患者のほうが生理食塩水で蘇生された患者より高いことが示唆されたと報告した。NEJM誌8月30日号掲載より。

民間保険加入小児に生じているワクチン投与格差

米国では最近5年間で小児および思春期の若者へのワクチンが倍増した。髄膜炎、3種混合(破傷風-ジフテリア-百日咳)、A型肝炎、インフルエンザ、ロタウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)など新たにもしくは拡大推奨されたワクチンを、小児全員に投与するための公的セクターのコストは7.5倍(1995年155ドル→2007年1,170ドル)に膨らんだという。 ワクチン投与は罹患率の低下など効果をもたらす一方、州の政策立案者や臨床家から、ワクチン接種をカバーしないタイプの民間保険に加入する小児(2000年時点で約14%)の問題が指摘されるようになった。彼らのワクチンコストは州がカバーすることになっているが、その適用に格差が生じているというのである。 ハーバード大学メディカルスクール&ハーバード・ピルグリム・ヘルスケアのGrace M. Lee氏らは、格差の実態と原因を調査。JAMA誌8月8日号に詳細が報告された。

高齢者の心房細動(AF)スクリーニングは日和見的手法で

積極的なスクリーニングによって心房細動(AF)の検出率は向上するのか。また系統的なスクリーニングと日和見的なスクリーニングではどちらが優位なのか。英国における無作為化試験SAFE(Screening for atrial fibrillation in the elderly)の一部として、University of Birmingham(英国)プライマリ・ケア&一般診療部門のDavid A Fitzmaurice氏らが比較対照試験を行った。BMJ誌オンライン版8月2日号、本誌8月25日号掲載の報告より。

一般医は心房細動(AF)の判読が苦手

英国の一般医(GP)による心電図を用いた心房細動(AF)診断の正確性は十分とは言えず、自動診断ソフトも信頼性に欠けることが、英国における無作為化試験SAFE(Screening for atrial fibrillation in the elderly)のサブ試験の結果、明らかになった。BMJ誌HP上早期公開論文(6月29日付)としてUniversity of Birmingham(英国)のJonathan Mant氏らが報告した(本誌では8月25日号に掲載)。GPの紹介がないと病院を受診できない英国においては、大きな問題である。

敗血症性ショックの昇圧治療、ノルアドレナリン+ドブタミンとアドレナリンの有用性は同等

敗血症性ショックは敗血症の最も重篤な病態であり、フランスではICU治療の約9%を占め、短期的な死亡率は40~60%に達する。本症では、敗血症に起因する低血圧を正常化するために昇圧治療を要する。最近の国際的ガイドラインでは、ドパミンあるいはノルアドレナリンを第一選択薬とし、奏効が得られない場合はアドレナリンが推奨されているが、これらの薬剤の大規模な比較試験は実施されていない。 フランス研究・高等教育拠点パリ南大学 UVSQレイモン・ポアンカレ病院のDjillali Annane氏らは、敗血症性ショックにおいてノルアドレナリンと必要に応じてドブタミンを併用する治療法とアドレナリン単独の有効性と安全性を比較する試験を実施、その結果を8月25日付Lancet誌上で報告した。

カルシウム補助剤は中高年者の骨折、骨塩量減少を予防する

骨粗鬆症が原因の骨折による社会的、経済的な負担は加齢とともに世界規模で増大しており、その予防は公衆衛生学上の最優先事項とされるが、骨折予防薬は治療と同等のコストがかかる。カルシウムあるいはカルシウム+ビタミンDの補助剤は安価で効果的な骨折予防法との報告があるが、これらの知見は確立されていない。 オーストラリア・ウェスタンシドニー大学補完医学研究センターのBenjamin M. P. Tang氏らは、カルシウムあるいはカルシウム+ビタミンD補助剤が中高年者の骨粗鬆症による骨折や骨塩量に及ぼす影響を検討した無作為化試験に関するメタ解析を行った。8月25日付Lancet誌掲載の報告から。

特発性ALSの疾患感受性遺伝子を発見

筋萎縮側索硬化症(ALS)の約90%を占める特発性ALSについては、複数の環境要因と未解明の遺伝子との相互作用に起因するのではないかといわれているが、発症の一因となる遺伝子についてはほとんどわかっていない。そこで米国アリゾナ州にある遺伝子研究センターTGen(Translational Genomics Research Inst)のTravis Dunckley氏らが、ゲノム解析を行った。NEJM誌8月1日号オンライン版、8月23日号本誌掲載の報告から。

米国高齢者の性

人口の高齢化にもかかわらず、高齢者の性行動と性機能についてはあまり知られていない。シカゴ大学プリッツカー医科大学院で医療倫理学を扱うStacy Tessler Lindau氏らは、米国内で57~85歳の3,005人(女性1,550人と男性1,455人)をランダムに抽出。性行動、活動性、問題点の出現率について報告するとともに、これらの変数が年齢や健康状態とどのように関連するのかについて報告した。NEJM誌8月23日号より。

重症腹膜炎患者にはon-demandな外科的治療を優先すべき

二次性腹膜炎患者について検討される再開腹術には、on-demand治療戦略とplanned治療戦略がある。それぞれ一長一短が言われており検証されていないのだが、死亡率、腹膜炎に関連した罹病率の低下、医療資源の消費およびコストを抑えられる可能性があることからon-demand治療を支持する声が高まっている。 そこでOddeke van Ruler氏らオランダ腹膜炎研究グループは無作為化試験を行い、どちらがふさわしいか検討した。JAMA誌8月22日号掲載の報告から。

特定のプロバイオティクスが小児の急性下痢の期間と排便回数を改善

急性下痢は、グルコース電解質を含む水分補給用飲料の経口投与により失われた水分を補うことで管理されるが、この方法では下痢の重症度や持続期間は改善されない。プロバイオティクス(ヒトの健康に良好な作用を及ぼす細菌)はヨーロッパの多くの国で小児の急性下痢の補助的治療法として用いられており、いくつかの製品は重症度や持続期間の改善効果が認められている。 イタリア・ナポリ大学Federico II小児科のRoberto Berni Canani氏らは、5つのプロバイオティクス製品の急性下痢の改善効果を比較する無作為化対照比較試験を実施した。BMJ誌8月9日付オンライン版、8 月18日付本誌に掲載された報告から。

重篤な精神疾患に対する集中型ケース管理は入院治療を低減させるか

現代の精神健康サービスでは重篤な精神疾患患者の入院期間は最小限にすべきとされており、集中型ケース管理(intensive case management)は重症精神疾患患者の不必要な入院の低減を目的とした患者管理法である。これまでに実施された集中型ケース管理の無作為化対照試験の結果は相反するものであり、入院治療を減少させたとする報告がある一方で無効とする研究もある。 このような矛盾した結果が生じる原因については、試験の実施状況や集中型ケース管理モデルの違いなど諸説がある。イギリス・オックスフォード大学Warneford病院社会精神医学のTom Burns氏らは、これらの仮説の検証を目的に体系的なレビューを行った。BMJ誌7月13日付オンライン版、8月18日付本誌に掲載された報告。

新たなアジュバントによる抗原節減法が鳥インフルエンザワクチンの免疫原性を増強

次なるヒトインフルエンザの汎流行(爆発的大流行、パンデミック)の原因となる可能性が高いウイルスとしてH5N1型鳥インフルエンザが考えられているが、その対策としてのインフルエンザワクチンの生産能には世界的に限界がある。抗原節減法は1接種に要する抗原量を少なくできるため、パンデミックワクチンの開発において重要なアプローチと考えられており、アジュバント(免疫増強法)は抗原節減の重要な戦略である。 ベルギー・ヘント大学病院ワクチンセンターのIsabel Leroux-Roels氏らは、独自に開発した新たなアジュバント法で調整した遺伝子組み換えH5N1スプリットウイルス粒子ワクチンの安全性および免疫原性を評価し、交差反応性免疫の誘導能について検証を行った。8月18日付Lancet誌掲載の報告から。