ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:91

転移のない去勢抵抗性前立腺がん、エンザルタミド追加でOS延長/NEJM

 転移のない去勢抵抗性前立腺がんで、前立腺特異抗原(PSA)値の急激な上昇がみられ、アンドロゲン除去療法を受けている患者において、エンザルタミドの追加はプラセボと比較して、全生存(OS)期間を10ヵ月以上延長し、死亡リスクを27%低下させることが、米国・Weill Cornell MedicineのCora N. Sternberg氏らの検討「PROSPER試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年6月4日号に掲載された。エンザルタミドは経口アンドロゲン受容体阻害薬であり、本試験の初期結果では、無転移生存期間を有意に延長したと報告されている。この時点では、OSのデータは十分でなく、2つの治療群ともOS期間の中央値には到達していなかった。今回は、OSの3回目の中間解析(最終解析)の結果が報告された。

COVID-19血漿療法試験、中国103例の報告/JAMA

 重症/重篤の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の治療において、標準治療に回復期血漿療法を併用するアプローチは標準治療単独と比較して、28日以内の臨床的改善(生存退院、重症度の低減)を増加させなかったとの研究結果が、中国医学科学院のLing Li氏らによって報告された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2020年6月3日号に掲載された。回復期の患者の血漿を使用する回復期血漿療法は、これまでにもさまざまな感染症の治療に用いられており、COVID-19の治療選択肢となる可能性があるが、その使用を支持するエビデンスは十分でない。また、ドナーの選択や血漿の質の管理、レシピエントの適応などは標準化されておらず、これらについてもエビデンスに基づく根拠はないという。

進行前立腺がんへのレルゴリクス、持続的アンドロゲン除去療法で好成績/NEJM

 進行前立腺がん患者の治療において、レルゴリクス(進行前立腺がん治療薬としての適応は未承認)はリュープロレリンに比べ、テストステロンをより迅速かつ持続的に抑制し、主要有害心血管イベント(MACE)のリスクをほぼ半減させることが、米国・Carolina Urologic Research CenterのNeal D. Shore氏らの検討「HERO研究」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年6月4日号に掲載された。リュープロレリンなどの黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)作動薬の注射剤は、投与初期においてテストステロン値が上昇し治療効果発現の遅延が認められるが、前立腺がんにおけるアンドロゲン除去療法の標準薬とされる。一方、レルゴリクスは、経口ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)受容体拮抗薬で、下垂体からの黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)の放出を迅速に阻害し、テストステロン値を低下させることが、複数の第I相および第II相試験で確認されている。

周術期のCOVID-19、術後肺合併症や死亡への影響は/Lancet

 手術を受けた重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染患者では、2割以上が30日以内に死亡し、約半数が術後肺合併症を発症しており、全死亡例の約8割に肺合併症が認められたとの調査結果が、英国・バーミンガム大学のDmitri Nepogodiev氏らCOVIDSurg Collaborativeによって報告された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年5月29日号に掲載された。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行以前には、質の高い国際的な観察研究により、術後の肺合併症(最大10%)および死亡(最大3%)の割合は確立されていた。研究グループは、COVID-19が世界的に流行している現在および収束後に、外科医と患者がエビデンスに基づく意思決定を行えるようにするには、術後の肺合併症と死亡に及ぼすSARS-CoV-2の影響を明らかにする必要があるとして本研究を行った。

グラム陰性菌血症への抗菌薬、個別vs.7日間vs.14日間/JAMA

 合併症のないグラム陰性菌血症の成人患者において、抗菌薬の投与期間をC反応性蛋白(CRP)に基づいて個別に設定した場合および7日間固定とした場合のいずれも、30日臨床的失敗率は14日間固定に対して非劣性であることが示された。スイス・ジュネーブ大学病院のElodie von Dach氏らが、スイスの3次医療機関3施設において実施した無作為化非劣性臨床試験の結果を報告した。抗菌薬の過度の使用は抗菌薬耐性を引き起こす。グラム陰性菌血症は一般的な感染症で、十分な抗菌薬使用を必要とするが、投与期間で有効性に差があるかは十分に解明されていなかった。JAMA誌2020年6月2日号掲載の報告。

COVID-19、抗がん剤治療は死亡率に影響せず/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患したがん患者の死亡率は、主に年齢、性別、基礎疾患により上昇することが示された。また、細胞障害性抗がん剤または他の抗がん剤治療中のがん患者が、こうした積極的治療を受けていない患者と比べて、COVID-19による死亡リスクが高いというエビデンスを確認できなかったという。英国・Institute of Cancer and Genomic SciencesのLennard Y. W. Lee氏らが、UK Coronavirus Cancer Monitoring Project(UKCCMP)による前向きコホート研究の結果を報告した。がん患者、とくに全身薬物療法を受けている患者は、COVID-19による死亡リスクが高いと考えられていたが、この推測を支持する大規模な多施設共同研究のデータは乏しかった。Lancet誌オンライン版2020年5月28日号掲載の報告。

距離1m以上で感染リスク8割以上減少、マスクでも/Lancet

 ウイルス伝播の予防に、人との物理的距離(physical distance、フィジカルディスタンス)1m以上の確保、フェイスマスクおよび保護眼鏡の着用が有効であることが、カナダ・マックマスター大学のDerek K. Chu氏らによるシステマティック・レビューとメタ解析の結果、示された。解析は、6大陸・16ヵ国で行われた172件の観察研究など患者総数2万5,697例を含むデータを包含して行われ、フィジカルディスタンスが1m以上の場合、感染リスクは約82%減少、フェイスマスクの着用は約85%減少することが示されたという。COVID-19を引き起こす新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、人から人への感染が濃厚接触により拡大している。研究グループは医療機関および非医療機関(コミュニティなど)におけるウイルス伝播について、フィジカルディスタンス、フェイスマスク、保護眼鏡の影響を明らかにするため本検討を行った。Lancet誌オンライン版2020年6月1日号掲載の報告。

急性脳梗塞へのt-PA治療、door-to-needle timeが短いほど転帰良好/JAMA

 65歳以上の急性虚血性脳卒中の患者に対するt-PA治療について、来院から治療開始までの時間「door-to-needle time」が短いほど、1年後の全死因死亡および全再入院の割合は低いことが明らかにされた。米国・クリーブランドクリニックのShumei Man氏らが、6万例超を対象とした後ろ向きコホート試験の結果を報告した。著者は、「今回の結果は、血栓溶解療法はできるだけ早く開始すべきことを支持するものであった」とまとめている。先行研究で急性虚血性脳卒中の患者に対するt-PA治療の早期開始は、退院までの死亡率を低下し、3ヵ月時点の機能的アウトカムが良好であることを示していたが、治療開始までの時間短縮がより良好な長期的アウトカムにつながるかについては明らかになっていなかった。JAMA誌2020年6月2日号掲載の報告。  研究グループは2006年1月1日~2016年12月31日にかけて、米国で行われている心疾患治療標準化のためのレジストリ「Get With The Guidelines-Stroke(GWTG-脳卒中)」プログラムに参加する病院で、急性虚血性脳卒中を発症しt-PA静脈投与を受けた65歳以上のメディケア受給者を対象に、後ろ向きコホート試験を行った。被験者は、体調が悪化してから4.5時間以内にt-PA静脈投与を受けた患者に限定した。

非浸潤性乳管がん、浸潤性病変・乳がん死に長期リスク/BMJ

 イングランドでは、乳がん検診で非浸潤性乳管がん(DCIS)が発見された女性は、診断されていない一般人口の女性に比べ、全死因死亡率が低いにもかかわらず、診断後20年以上にわたり浸潤性乳がん(IBC)および乳がん死の長期的なリスクが高いことが、英国・オックスフォード大学のGurdeep S. Mannu氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2020年5月27日号に掲載された。DCISの発生率は、近年、実質的に上昇しており、とくに乳がん検診プログラムの導入以降の増加が著しいという。その一方で、検診で発見されたDCISにおける手術後のIBCおよび乳がん死の長期的リスクは知られていない。

中国発・COVID-19ワクチン、接種28日後に免疫原性を確認/Lancet

 遺伝子組み換えアデノウイルス5型(Ad5)をベクターとして用いた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンは、健康成人に接種後28日の時点で免疫原性を示し、忍容性も良好であることが、中国・江蘇省疾病管理予防センターのFeng-Cai Zhu氏らがヒトで初めて行った臨床試験で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年5月22日号に掲載された。2020年5月20日現在、215の国と地域で470万人以上が重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染し、31万6,000人以上が死亡したとされる。有効な予防策がない中で、現在、集団発生を抑制する方法として、検疫、隔離、身体的距離の保持(physical distancing)などが行われているが、SARS-CoV-2感染に伴う死亡や合併症の膨大な負担を軽減するには、有効なワクチンの開発が急務とされる。

腎移植者への細胞治療、免疫抑制による感染症を抑制/Lancet

 生体腎移植患者の免疫抑制療法において、制御性細胞療法は施行可能かつ安全であり、標準的な免疫抑制薬による治療と比較して感染性合併症が少なく、1年目の拒絶反応の発生率はほぼ同等であることが、ドイツ・シャリテー-ベルリン医科大学のBirgit Sawitzki氏らの検討「The ONE Study」で示された。研究の成果は、Lancet誌2020年5月23日号に掲載された。免疫抑制薬は臓器移植の適応を拡大したが、副作用や慢性拒絶反応のため、この10年、生着期間は横ばいだという。長期の免疫抑制薬の使用は合併症や医療費の増加をもたらすため、拒絶反応の予防においては、免疫抑制薬への依存度を低減する新たな戦略が求められている。細胞由来医薬品(cell-based medicinal product:CBMP)は、臓器移植における免疫抑制薬の削減に寄与する最先端のアプローチとして期待を集めている。

COVID-19へのヒドロキシクロロキン、死亡・心室性不整脈が増加か/Lancet

※本論文は6月4日に撤回されました。  新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者へのヒドロキシクロロキンまたはクロロキン±第2世代マクロライド系抗菌薬による治療は、院内アウトカムに関して有益性をもたらさず、むしろ院内死亡や心室性不整脈のリスクを高める可能性があることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMandeep R. Mehra氏らの調査で示された。研究の成果は2020年5月22日、Lancet誌オンライン版に掲載された。抗マラリア薬クロロキンと、そのアナログで主に自己免疫疾患の治療薬として使用されるヒドロキシクロロキンは、多くの場合、第2世代マクロライド系抗菌薬との併用でCOVID-19治療に広く用いられているが、その有益性を示す確固たるエビデンスはない。また、これまでの研究で、このレジメンは心血管有害作用としてQT間隔延長をもたらし、QT間隔延長は心室性不整脈のリスクを高める可能性が指摘されている。

COVID-19重症患者、レムデシビル投与5日vs.10日/NEJM

 人工呼吸器を必要としていない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症患者において、レムデシビル投与期間は5日間と10日間とで有意差は認められなかった。米国・ワシントン大学のJason D. Goldman氏らが、COVID-19重症患者を対象とした国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験の結果を報告した。レムデシビルは、in vitroで強力な抗ウイルス活性を示し、COVID-19の動物モデルで有効性が示されたRNAポリメラーゼ阻害薬であるが、レムデシビルを用いた治療の効果のある最短投与期間を明らかにすることが、喫緊の医療ニーズであった。NEJM誌オンライン版2020年5月27日号掲載の報告。

ARNI・β遮断薬・MRA・SGLT2阻害薬併用で、HFrEF患者の生存延長/Lancet

 左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者において、疾患修飾薬による早期からの包括的な薬物療法で得られるであろう総合的な治療効果は非常に大きく、新たな標準治療として、アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬(ARNI)、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)および選択的ナトリウム・グルコース共役輸送体2(SGLT2)阻害薬の併用が支持されることが示された。米国・ハーバード大学のMuthiah Vaduganathan氏らが、慢性HFrEF患者を対象とした各クラスの薬剤の無作為化比較試験3件を比較した解析結果を報告した。3クラス(MRA、ARNI、SGLT2阻害薬)の薬剤は、ACE阻害薬またはARBとβ遮断薬を併用する従来療法よりも、HFrEF患者の死亡リスクを低下させることが知られている。これまでの研究では、それぞれのクラスは異なる基礎療法と併用して検証されており、組み合わせにより予測される治療効果は不明であった。Lancet誌オンライン版2020年5月21日号掲載の報告。

80歳以上の高齢の高血圧患者、降圧薬を1剤減らしても非劣性/JAMA

 2種類以上の降圧薬を服用し、収縮期血圧値が150mmHg未満の80歳以上の高齢患者について、医師が判断のうえで降圧薬を1種類減らしても通常どおりの治療を続けた患者と比べて、12週後の血圧コントロールに関して非劣性であることが示された。英国・オックスフォード大学のJames P. Sheppard氏らが、英国69ヵ所のプライマリケア診療所を通じ、569例を対象に行った試験で明らかにした。多剤併用および複数疾患が並存する高齢者に対して、治療継続のベネフィットが有害性に勝らない場合は、降圧薬の処方を見直すことが推奨されている。著者は、「今回の結果は、高血圧の高齢者患者集団において、降圧薬の減薬が血圧コントロールに実質的な影響はもたらさないことを示すものであった。なおさらなる研究を行い、長期的な臨床アウトカムを明らかにする必要はある」とまとめている。JAMA誌2020年5月26日号掲載の報告。

COVID-19、レムデシビル投与で入院患者の回復期間短縮/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院し下気道感染が認められた患者の回復までの期間中央値について、プラセボ投与群15日に対してレムデシビル静脈内投与群は11日と、有意に短縮したことが速報として発表された。また、推定14日死亡率も、プラセボ群11.9%に対し、レムデシビル群7.1%だった。米国国立衛生研究所(NIH)のJohn H. Beigel氏らが、COVID-19で入院した1,000例超を対象に行った、プラセボ対照二重盲検無作為化比較試験の中間結果で、レムデシビルの有効性が示唆されたこの中間結果を受けて、同試験は早期に盲検が中止された。NEJM誌オンライン版2020年5月22日号掲載の報告。

転移を有する尿路上皮がん1次治療、アテゾリズマブ併用でPFS延長(IMvigor130)/Lancet

 転移を有する尿路上皮がんの1次治療において、抗PD-L1ヒト化モノクローナル抗体製剤アテゾリズマブとプラチナ製剤ベースの化学療法の併用療法は、プラチナ製剤ベースの化学療法単独に比べ無増悪生存(PFS)期間を延長し、安全性プロファイルは化学療法単独とほぼ同様であることが、米国・マウント・シナイ・アイカーン医科大学のMatthew D. Galsky氏らの検討「IMvigor130試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2020年5月16日号に掲載された。プラチナ製剤ベースの化学療法は免疫調節作用を誘導するため、PD-L1およびPD-1の遮断を増強するなど、PD-L1/PD-1阻害薬との有益な併用効果がいくつか示されている。2018年7月、本試験の独立データ監視委員会(IDMC)による計画外の早期解析の結果に基づき、米国食品医薬品局(FDA)と欧州医薬品庁(EMA)は、転移を有する尿路上皮がん(PD-L1発現腫瘍)の1次治療におけるアテゾリズマブの処方を承認しており、今回は、PFSの最終解析と全生存(OS)の中間解析の結果が報告された。

ヒドロキシクロロキンで新型コロナ陰性化せず、有害事象は3割/BMJ

 主に軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者の治療において、標準治療にヒドロキシクロロキン(HCQ)を併用しても、標準治療単独に比べ重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の陰性化の割合に差はなく、ウイルス除去効果は改善されないことが、中国・上海交通大学医学院のWei Tang氏らの検討で示された。また、HCQ併用で有害事象の発生率も増加した。研究の成果は、BMJ誌2020年5月14日号に掲載された。HCQは、COVID-19の治療薬としてin vitro研究や臨床試験で有望なデータが得られているが、その効果は十分に明確化されていないにもかかわらず、中国のガイドラインでは適応外使用が推奨されているという。また、HCQは、世界的に注目を集めたこともあり、その負の側面が目立たなくなっているが、マラリアやリウマチ性疾患の治療では、網膜症や消化器・心臓への副作用が報告されている。

出生前母体ステロイド治療、子供の精神・行動障害が増加/JAMA

 出産前の母親への副腎皮質ステロイド治療によって、子供の精神障害および行動障害が増加することが、フィンランド・ヘルシンキ大学のKatri Raikkonen氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年5月19日号に掲載された。1週間以内に早産が予測される妊娠期間34週以内の妊婦に対しては、胎児の成熟の促進を目的とする出生前の副腎皮質ステロイド治療が標準治療とされる。近年、妊娠期間34週以降への適応拡大が議論されているが、長期アウトカムのデータは限られ、とくに治療を受けた母親の子供の神経発達に関するデータは少ないという。

COVID-19の入院リスク、RAAS阻害薬 vs.他の降圧薬/Lancet

 スペイン・University Hospital Principe de AsturiasのFrancisco J de Abajo氏らは、マドリード市内の7つの病院で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の調査「MED-ACE2-COVID19研究」を行い、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)阻害薬は他の降圧薬に比べ、致死的な患者や集中治療室(ICU)入室を含む入院を要する患者を増加させていないことを明らかにした。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年5月14日号に掲載された。RAAS阻害薬が、COVID-19を重症化する可能性が懸念されているが、疫学的なエビデンスは示されていなかった。重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、そのスパイクタンパク質の受容体としてアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を利用して細胞内に侵入し、複製する。RAAS阻害薬はACE2の発現を増加させるとする動物実験の報告があり、COVID-19の重症化を招く可能性が示唆されている。一方で、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)は、アンジオテンシンIIによる肺損傷を抑制する可能性があるため、予防手段または治療薬としての使用を提唱する研究者もいる。また、RAAS阻害薬は、高血圧や心不全、糖尿病の腎合併症などに広く使用されており、中止すると有害な影響をもたらす可能性があるため、学会や医薬品規制当局は、確実なエビデンスが得られるまでは中止しないよう勧告している。