腫瘍科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:167

ペムブロリズマブ、TMB-High固形がんに国内承認申請/MSD

 MSDは、2021年3月11日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ (商品名:キイトルーダ)について、がん化学療法後に増悪した進行・再発の腫瘍遺伝子変異量高スコア(TMB-High)を有する固形がんに対する製造販売承認事項一部変更承認申請を行った。がん種横断的に共通するバイオマーカーに基づいた承認申請としては、2018年に承認を取得した高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形がんに次いで、2件目の申請となる。  腫瘍遺伝子変異量(TMB)とは、腫瘍細胞に生じた遺伝子変異量で、ゲノムコーディング領域1メガ塩基 (megabase) 当たりの非同義体細胞遺伝子変異数として示され、10変異/megabase以上である状態をTMB-Highと定義している。TMB-Highの腫瘍では、ネオアンチゲンがより多く誘導され、免疫チェックポイント阻害薬に対して良好に反応する可能性があるとされ、悪性黒色腫、非小細胞肺がん、大腸がん、子宮内膜がんなどで比較的多く見られると報告されている。

進行腎がん1次治療、ニボルマブ+カボザンチニブで高い有効性(CheckMate-9ER)/NEJM

 未治療の進行腎細胞がん患者の治療において、ニボルマブとカボザンチニブの併用はスニチニブと比較して、無増悪生存(PFS)期間、全生存(OS)期間、客観的奏効率がいずれも有意に優れ、健康関連QOLも良好であることが、米国・ハーバード大学医学大学院のToni K. Choueiri氏らが実施した「CheckMate 9ER試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年3月4日号で報告された。腎細胞がんはVHL遺伝子の欠損を特徴とする腫瘍で、免疫療法薬や血管新生阻害薬、シグナル伝達遮断薬を組み合わせたレジメンの臨床的有益性が確認されており、個々の構成要素を洗練することで、さらに転帰が改善する可能性があると考えられている。カボザンチニブ(低分子チロシンキナーゼ阻害薬)とニボルマブ(プログラム細胞死1[PD-1]の免疫チェックポイント阻害薬)は、いずれも第III相試験において単剤で腎細胞がんのOS期間を改善したと報告されており、カボザンチニブは免疫チェックポイント阻害薬の免疫応答を増強する可能性が示唆されている。

DPP-4阻害薬は新たな免疫抑制薬となり得るか?(解説:住谷哲氏)-1362

筆者は内分泌代謝疾患を専門としているので、骨髄破壊的同種骨髄幹細胞移植(allo-HSCT)に伴う急性移植片体宿主病(GVHD)に関する知識は少ない。したがって本論文の結果の重要性を評価するのは適任ではないが、36例を対象とした第II相非ランダム化試験でNEJMに掲載されたことから、その結果が臨床的に大きなインパクトを有することは理解できる。シタグリプチンをはじめとしたDPP-4阻害薬の適応は全世界的に2型糖尿病のみである。したがって本試験はdrug repositioning(drug repurposingとも呼ばれる)の1つと考えられる。ペプチド分解酵素であるDPP-4はT細胞表面に発現するCD26と同一分子であり、インクレチンであるGLP-1は生体内に多数存在するDPP-4の基質の1つに過ぎない。CD26はT細胞活性化における共刺激分子costimulatory moleculeである。動物実験でCD26の発現低下によりGVHDの抑制が可能であることが知られており、それに基づいて著者らは今回の試験を計画した。免疫抑制薬であるタクロリムスとシロリムスの併用に加えて、移植前日から移植後14日にわたってシタグリプチン1,200mg/日を投与した。その結果は、主要評価項目である移植後100日までのGrade II~IVのGVHDの発生率は5%であり、これまで報告されている発生率26~47%と比較して大きく低下していた。しかし本試験はいわばproof of conceptの段階であり、その有効性は今後実施される第III相ランダム化比較試験の結果を待つ必要がある。

肝内胆管癌診療ガイドライン2021年版発刊

 日本肝癌研究会が肝内胆管癌診療ガイドライン2021年版を2020年12月に発刊した。これまで胆道癌診療ガイドラインが発刊されてきたが、肝外胆管癌、胆嚢癌、十二指腸乳頭部癌が対象とされ、肝内胆管癌に対するガイドラインは存在していなかった。  今回初版となる肝内胆管癌診療ガイドラインは、肝内胆管癌の分類、患者数や治療法などを踏まえ肝内胆管癌のうち腫瘤形成型およびその優越型を対象として作成されている。構成は総論・各論からはじまり、アルゴリズム、Background Statements/Clinical Topics、Clinical Questionsの枠組みで記載されている。

ブリナツモマブは、1~30歳の初回再発B-ALLの無病生存を改善するか/JAMA

 高または中リスクの初回再発B細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)の小児・青年・若年成人の再寛解導入療法後の治療において、ブリナツモマブ投与後の造血幹細胞移植(HSCT)と、化学療法施行後のHSCTでは、無病生存割合に関して統計学的に有意な差はないことが、米国・ジョンズ・ホプキンズ大学のPatrick A. Brown氏らChildren's Oncology Group(COG)が行った「AALL1331試験」で示された。試験の早期中止による検出力不足の可能性があるため、結果の解釈には限界があるという。研究の詳細は、JAMA誌2021年3月2日号で報告された。小児・青年・若年成人B-ALLの初回再発に対する標準的な化学療法は、とくに早期再発(高リスク)または再導入化学療法後の残存病変の晩期再発(中リスク)の患者において、重度の毒性、その後の再発、および死亡の発生率が高いとされる。ブリナツモマブは、CD3/CD19を標的とする二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体で、再発・難治性B-ALLに有効であり、良好な毒性プロファイルを有すると報告されている。

統合的ゲノムプロファイリング、すべての進行固形がんで有用/JAMA Oncol

 次世代シークエンス(NGS)はすべての進行固形がんにおいて有用であることを、米国・ミシガン大学のErin F. Cobain氏らがコホート研究の結果で示した。NGSは治療選択に有用な標的ゲノムを特定することから、進行固形がんの日常診療で用いられるようになっているが、この検査の臨床的有用性は不確かなままであった。JAMA Oncology誌オンライン版2021年2月25日号掲載の報告。  研究グループは、どのような患者がNGSプロファイリングから最大の臨床的有益性を得られるかを明らかにする目的で、コホート研究を行った。対象は、腫瘍および正常DNAのゲノムプロファイリング(1,700遺伝子の解析を伴う全エクソームキャプチャまたはターゲットキャプチャ)と腫瘍トランスクリプトーム(RNA)シークエンスのために、新鮮な腫瘍生検および血液採取を受けた患者。被験者に体細胞および生殖細胞系列のゲノム変化についてアノテーションを実施し、臨床的な治療選択の可能性の程度に従って分類した。結果は、治療を担う腫瘍専門医に報告された。

がん治療、臨床的に意味のあるQOL改善のエビデンスはほとんど提示なし/JAMA Netw Open

 カナダ・Sunnybrook Research InstituteのVanessa Arciero氏らがシステマティックレビューを行い、がん治療においてQOLの重要性が認識されているにもかかわらず、QOLの改善を示唆するエビデンスが公表されていないことを明らかにした。緩和治療を受けるがん患者にとって、QOLは生存と並び治療意思決定の重要な側面であるが、規制当局はQOL改善のエビデンスがなくても生存期間延長または抗腫瘍効果だけに基づいて承認することがある。著者は、「統計学的な改善に関するエビデンスがある適応症のうち、臨床的に意味のあるQOL改善を示したものはほとんどなかった」と述べている。JAMA Network Open誌2021年2月1日号掲載の報告。

T790M陽性肺がん、オシメルチニブ+ベバシズマブ有効性示せず(WJOG8715L)/JAMA Oncol

 EGFR変異非小細胞肺がんにおける第1世代EGFR-TKIとVEGF阻害薬の併用による有効性の向上が報告されている。そこで2次治療のT790 M変異陽性例に対するオシメルチニブ+ベバシズマブの有効性と安全性を評価する第I/II相WJOG8715L試験が行われた。この試験は6例の導入部分とそれに続く第II相部分で構成される。

原発不明がん、NGSから原発を推定した治療の成果は?(NGSCUP)/日本臨床腫瘍学会

 原発不明がん(CUP)は全悪性腫瘍の2〜5%を占める。生命予後は不良、治療法は未確立であり、経験的にプラチナ製剤とタキサンの併用が行われている。最近の腫瘍ゲノム解析の進歩によりCUP個別患者の腫瘍の遺伝子発現/異常パターンから原発腫瘍を推定し、特異的治療を行う試みがある。第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO Virtual2021)では、未治療のCUPに対し次世代シークエンサー(NGS)による遺伝子プロファイリングから推定された原発疾患に対する標準的治療を行う多施設共同第II相試験の結果を千葉大学の滝口 裕一氏が発表した。

肺がん1次治療におけるペムブロリズマブ単独治療、日本人の5年生存率(KEYNOTE-024)/日本臨床腫瘍学会

 PD-L1発現(TPS≧50%)の転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療におけるペンブロリズマブ単剤治療と標準化学療法を比較した第III相KEYNOTE-024試験。第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO Virtual2021)では、日本人サブセットの58.8ヵ月追跡結果を静岡県立静岡がんセンターの高橋 利明氏が発表した。 ・対象:転移を有する未治療のPD-L1高発現(TPS≧50%)NSCLC患者(305例) ・試験群:ペムブロリズマブ200mg 3週ごと(154例) ・対照群:治験担当医が選択したプラチナベース化学療法 4~6サイクル(151例) ・評価項目: [主要評価項目]無増悪生存期間(PFS) [副次評価項目]OSなど