腫瘍科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:62

早期に禁煙していた人は肺がんになっても死亡リスクが低い

 肺がんになる前に禁煙していた人は、肺がんが見つかった時にも喫煙していた人よりも、発がん後の死亡リスクが低いことを示すデータが報告された。米ハーバードT. H.チャン公衆衛生大学院のDavid Christiani氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に5月5日掲載された。  喫煙者の肺がんリスクが高いことは広く知られているが、喫煙者が禁煙した後に肺がんに罹患した場合の予後への影響はよく分かっていなかった。今回の研究によって、肺がんと診断された時点で喫煙習慣のあった人は、喫煙歴のない肺がん患者に比べて死亡リスクが68%高いのに対して、診断前に禁煙していた人のリスク上昇幅は26%であることが示された。また、禁煙期間が長ければ長いほど、肺がん診断後の死亡リスクが低いという関連があることも明らかになった。Christiani氏は、「この結果により、禁煙すれば、たとえ肺がんになってもメリットを得られると、力強く言えるようになった」と語っている。

大腸がんを予防するコーヒーの摂取量は?~アンブレラレビュー

 1日5杯以上のコーヒー摂取により、大腸がんのリスクが有意に低減することが、米国・Cleveland Clinic FloridaのSameh Hany Emile氏らのアンブレラレビューによって明らかになった。Techniques in Coloproctology誌オンライン版2023年5月2日掲載の報告。  コーヒーの摂取によって、全死亡リスクおよび心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患による死亡リスクの低減が報告されている。また、大腸がんや一部のがん種を予防する可能性も示唆されている。しかし、コーヒー摂取が大腸がんのリスク低減と関連するエビデンスは十分ではない。

手術不能の胃がん・食道胃接合部がんに対する第1次選択療法の変革(解説:上村直実氏)

従来の標準化学療法+免疫チェックポイント阻害薬(PD-L1阻害薬)ニポルマブの併用療法がHER2陰性の進行胃がんと食道胃接合部がんに対する1次治療の有用性が2021年にLancet誌にて報告され、現在では保険収載されて医療現場で実際に使用されている。さらに、FOLFOX療法など従来の化学療法にPD-L1阻害薬のみでなく、さまざまな分子標的薬の上乗せ効果が注目されている。今回、HER2陰性かつタイトジャンクション分子の一部で胃粘膜上皮層のバリア機能や極性の調整に関与しているCLDN18.2陽性の切除不能な進行胃がんと食道胃接合部がんに対してCLDN18.2を標的としたモノクローナル抗体であるzolbetuximabをmFOLFOX6に追加した際の上乗せ効果を示した研究結果が2023年4月のLancet誌に報告された。この研究は日本を含む20ヵ国215施設が参画した国際共同RCTであり、論文の筆頭著者は日本の研究者である。

抗菌薬の長期使用で肺がんリスクが増加

 近年の研究で、抗菌薬によるマイクロバイオーム異常および腸と肺の相互作用が肺がん発症の引き金になる可能性が指摘されている。今回、韓国・ソウル国立大学のMinseo Kim氏らが抗菌薬の長期使用と肺がんリスクの関連を調べたところ、抗菌薬の累積使用日数および種類の数が肺がんリスク増加と関連することが示された。Journal of Infection and Public Health誌2023年7月号に掲載。

TTF-1は肺腺がんにおけるICI+化学療法の効果予測因子となるか/日本呼吸器学会

 肺腺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)+化学療法の効果予測因子として、TTF‐1(Thyroid transcription factor-1)の可能性が研究されている。  TTF-1は甲状腺・肺・脳で認められる遺伝子調節蛋白である。肺腺がんにおいても、TTF−1との研究が報告されている。  肺腺がんではTTF-1陽性が多く60〜80%を占め、陰性は20〜40%である。TTF-1陽性例に比べ、陰性例は予後不良であるとされる。また、TTF-1の発現の有無は、化学療法薬ペメトレキセドの効果に影響を及ぼすとの報告がある。しかし、肺腺がんにおける、ICIとペメトレキセドを含む化学療法との併用療法とTTF-1発現の関係については十分に研究されていない。第63回日本呼吸器学会学術講演会でも、肺腺がんとTTF-1の関係を検討した研究がいくつか報告された。

乳房切除術中のリンパ節生検は過剰治療につながる可能性も

 早期の乳がんと診断され乳房切除術を受ける女性に対し、術中にリンパ節(腋窩リンパ節)への転移の有無を調べる、腋窩センチネルリンパ節生検(以下、センチネルリンパ節生検)が行われた場合、術後にその後の治療方針が検討された場合と比べて、過剰治療につながりやすくなる可能性のあることが、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院および米ダナ・ファーバーがん研究所の乳房腫瘍外科医Olga Kantor氏らが実施した研究で示された。この研究結果は米国乳腺外科学会(ASBrS 2023、4月26~30日、米ボストン)で発表された。

がん死亡率、ファストフード店の多さと関連

 住居地を選ぶ際にスーパーや飲食店へのアクセスの良さを考慮する人は少なくない。今回、米国・オーガスタ大学のMalcolm Seth Bevel氏らは米国における飲食店へのアクセス条件が肥満関連のがん死亡率と関係するのかどうかを調査した。近年、野菜などの生鮮食料品が入手困難な地域はFood Desert(食の砂漠)と呼ばれ、一方でファストフード店が多く集中し生鮮食品を取り扱う店が少ない地域はFood Swamp(食品沼)と呼ばれている。  今回の横断研究では、2012年、2014~15年、2017年、2020年の米国農務省(USDA)のFood Environment Atlasと、2010~20年の米国疾病予防管理センター(CDC)の18歳以上の成人の死亡率データを使用し、Food DesertとFood Swampの両スコアと肥満関連のがん死亡率との関連について調査した。

進行腎細胞がん1次治療、カボザンチニブ+NIVO+IPIがPFS改善(COSMIC-313)/NEJM

 予後予測分類が中リスクまたは高リスクで未治療の進行腎細胞がん患者において、チロシンキナーゼ阻害薬カボザンチニブとニボルマブ+イピリムマブの併用療法はニボルマブ+イピリムマブと比較して、1年時の無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したが、Grade 3/4の有害事象の頻度は高かったことが、米国・ハーバード大学医学大学院のToni K. Choueiri氏らが実施した「COSMIC-313試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2023年5月11日号で報告された。  COSMIC-313試験は、北米、欧州、南米、アジアなどの諸国の施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年6月~2021年3月の期間に患者の無作為割り付けが行われた(米国・Exelixisの助成を受けた)。

進行乳がんへのHER3-DXd、効果予測因子は?(ICARUS-BREAST01)/ESMO BREAST 2023

 HR+/HER2-の進行乳がん患者に対し、HER3を標的としたpatritumab deruxtecan(HER3-DXd)を投与した第II相ICARUS-BREAST01試験において、ベースライン時のHER3+の血中循環腫瘍細胞(CTC)数が多い患者、または1サイクル後にHER3+のCTC数が大きく減少した患者では、治療反応が早期に得られやすい傾向にあったことを、フランス・Gustave RoussyのBarbara Pistilli氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2023、5月11~13日)で報告した。  これまで、HER3+の再発/転移乳がん患者(HR+/HER2-、HER2+、トリプルネガティブ)に対する第I/II相U31402-A-J101試験において、HER3-DXdの有効性と安全性が示されている。この有用性はすべてのサブタイプで同様であり、HER3-DXdはHER3の発現量にあまり依存しない可能性が示唆されており、HER3-DXdに対する反応性/抵抗性のバイオマーカーは不明である。

膵頭十二指腸切除後の手術部位感染予防、TAZ/PIPCが有用/JAMA

 適応症を問わず、開腹による膵頭十二指腸切除術後の手術部位感染(SSI)の予防において、セフォキシチン(国内販売中止)と比較して、広域スペクトラム抗菌薬ピペラシリン・タゾバクタムは、術後30日の時点でのSSIの発生率を有意に抑制し、術後の敗血症や膵液瘻の発生頻度も低いことが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのMichael I. D'Angelica氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年5月9日号に掲載された。  本研究は、レジストリ連携の実践的な非盲検多施設無作為化第III相試験であり、2017年11月~2021年8月の期間に、米国とカナダの26施設(外科医86人)で患者の登録が行われた(米国NIH/NCIがんセンター研究支援助成などの助成を受けた)。