精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:115

コロナ罹患後症状、中年者に多い/厚労省アドバイザリーボード

 厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードは、6月1日に第86回の会議を開催し、その中で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の遷延症状に関する研究2題が報告された。中等症以上の患者を対象とした研究では、退院後12ヵ月後でも13.6%の対象者に何らかの罹患後症状が存在していた。  また、もう一方の長期合併症の実態把握と病態生理解明の研究では、12ヵ月後でも疲労感、呼吸困難、筋力低下、集中力低下などの症状が続いていた。

統合失調症に対する抗精神病薬の治療継続の意義~メタ解析

 統合失調症治療では、主に抗精神病薬が用いられており、急性期症状の軽減に有効であるとされている。2012年に公表された現在のレビューのオリジナルバージョンでは、統合失調症または統合失調症様障害の患者に対する抗精神病薬の再発予防効果について、ランダム化試験のエビデンスに基づき検討が行われた。イタリア・ASST Spedali CiviliのAnna Ceraso氏らは、寛解とリカバリー率、社会的機能やQOLの変化に着目したいくつかの新たな調査結果に焦点を当て、レビューの更新を行った。その結果、統合失調症患者に対する抗精神病薬による維持療法は、再発および再入院を予防するだけでなく、患者のQOLや機能、持続的な寛解にもベネフィットをもたらすことが示唆された。著者らは、抗精神病薬によるこれらの肯定的な効果は、副作用を背景として比較検討する必要があると報告している。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2022年5月12日号の報告。

母親の育児ストレスと子供のADHDとの関連~日本の出生コホート研究

 注意欠如多動症(ADHD)は幼児期に発症し、その後、生涯にわたり影響を及ぼす疾患であるが、早期診断や介入により、臨床アウトカムの最適化を図ることができる。長期的または過度な育児ストレスは、ADHDなどの発達障害に先行してみられる乳児の行動の差異に影響している可能性があることから、幼少期の定期的評価には潜在的な価値があると考えられる。東京都医学総合研究所の遠藤 香織氏らは、母親の育児ストレスが子供のADHDリスクのマーカーとして利用可能かを明らかにするため、出産後1~36ヵ月間の母親の育児ストレスとその子供の青年期初期におけるADHDとの関連について、定期的に収集した自己報告を用いて調査を行った。その結果、出産後9~10ヵ月、18ヵ月、36ヵ月での育児ストレスと12歳時点での子供のADHD症状との関連が認められ、自己報告による育児ストレスのデータはADHDリスクの初期指標として有用である可能性が示唆された。このことから著者らは、ADHDの早期発見と介入を促進するためにも、幼少期の健康診断、育児ストレスの評価、家族のニーズに合わせた支援を行う必要があることを報告している。Frontiers in Psychiatry誌2022年4月28日号の報告。

ADHD児の不注意重症度と野菜や果物など食事の質との関係

 注意欠如多動症(ADHD)は、米国の小児においては有病率が8~10%といわれる神経発達障害である。ADHDの症状には不注意や多動性/衝動性が認められるが、反抗挑戦性障害および重篤気分調節症などの情動調節不全(ED)症状も頻発する。ADHDの病因は多因子的と考えられ、その症状の重症度は食事療法と関連しているといわれている。米国・オハイオ州立大学のLisa M. Robinette氏らは、小児コホート研究において、食事の質とADHDおよびED症状との関連を調査した。その結果、ADHDやEDを有する子供では、果物や野菜の摂取が少ないと、より深刻な不注意症状が出現する可能性が示唆された。Nutritional Neuroscience誌オンライン版2022年5月10日号の報告。

統合失調症患者のクロザピン中止後の臨床アウトカム~システマティックレビュー

 治療抵抗性統合失調症に対するクロザピン治療は、ゴールデンスタンダードである。しかし、クロザピン治療でも約60%の患者は治療反応が得られず、クロザピン治療中止後の臨床アウトカムについては明らかになっていない。東京・大泉病院の三浦 元太郎氏らは、クロザピン治療中止後のアウトカムを明らかにするため、システマティックレビューを実施した。その結果、クロザピン治療中止後に臨床アウトカムは悪化しており、その後の治療として、クロザピン再投与やオランザピン治療が検討されていることを報告した。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2022年5月5日号の報告。

米国における片頭痛治療開始患者に対するフレマネズマブの有効性

 成人の片頭痛予防に承認されている、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を選択的標的としたヒト化モノクローナル抗体(IgG2Δa)フレマネズマブの有効性および忍容性は、ランダム化二重盲検比較プラセボ対照試験で実証されている。リアルワールドでのデータはこれら臨床試験のデータを支持しており、フレマネズマブの臨床的ベネフィットは明らかになっている。オランダ・Teva PharmaceuticalsのMaurice T. Driessen氏らは、実臨床診療に従って治療された成人片頭痛患者の臨床アウトカム改善に対するフレマネズマブの有効性を評価するため、チャートレビューを実施した。その結果、実臨床において、投与レジメンや過去の片頭痛予防治療の失敗数にかかわらず、最大6ヵ月間のフレマネズマブ治療の有効性が確認されたことを報告した。The Journal of Headache and Pain誌2022年4月11日号の報告。

日本人統合失調症患者におけるQOLと臨床的要因の関係

 徳島・城南病院のYoshimune Ishii氏らは、統合失調症入院患者におけるQOLと臨床的要因の関係を明らかにするため検討を行った。その結果、抑うつ症状の治療が統合失調症入院患者の主観的QOLの改善に影響を及ぼす可能性が示唆された。The Journal of Medical Investigation誌2022年1.2号の報告。  対象は、統合失調症入院患者50例(平均年齢:56.48±11.93歳)。主観的QOLの評価には、統合失調症QOL尺度日本語版(JSQLS)および主観的ウェルビーイング評価尺度短縮版-日本語版(SWNS-J)を用い、認知機能の評価には、ミニメンタルステート検査(MMSE)-日本語版を用いた。うつ症状の重症度、精神症状、薬物誘発性錐体外路症状の評価には、それぞれ、カルガリー統合失調症用抑うつ症状評価尺度日本語版(JCDSS)、簡易精神症状評価尺度(BPRS)、薬原性錐体外路症状評価尺度(DIEPSS)を用いた。JSQLSおよびSWNS-Jに影響を及ぼす因子を特定するため、段階的回帰分析を実施した。

アルツハイマー病の脆弱性と出生した季節との関係

 愛知・国立長寿医療研究センターの安野 史彦氏らは、高齢のアルツハイマー病(AD)患者において、患者の出生した季節がADの病理学的脆弱性に及ぼす影響を評価するためPETを用いた検討を行った。その結果、秋冬に出生した人は、春夏に出生した人と比較し、タウ蓄積が少ないことが明らかとなった。これは、秋冬に出生した人のタウ病理に対する脆弱性を示唆しており、寒い季節関連のリスク因子による周産期または出生後の脳損傷が影響している可能性があるという。Psychogeriatrics誌オンライン版2022年4月26日号の報告。

機械学習でアルコール使用障害の再発リスクを予測

 機械学習により治療終了後に再発するリスクの高いアルコール使用障害(AUD)患者を特定できる可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。米イェール大学医学部精神医学分野のWalter Roberts氏らが実施したこの研究の詳細は、「Alcoholism: Clinical and Experimental Research」に4月14日掲載された。  AUDに対する治療は再発率が高く、多くの患者が治療中や治療後に大量のアルコール飲料を摂取してしまう。そのため、特に重度のAUD患者では、長期にわたる禁酒を成功させるまでに、繰り返し治療を受けることも珍しくない。AUDの再発は、医療費にかける負担が大きいだけでなく、患者の治療に対する意欲を損なう。過去の研究では、治療アウトカムと関連するAUD患者の特徴が特定されているが、これらを体系的に活用して臨床的アウトカムの予測を試みた研究は少ない。

双極I型障害における抗うつ薬治療と躁転リスク

 双極性障害の治療において、症状転換は臨床的な問題になることが多い。実臨床では、双極性うつ病の治療に抗うつ薬が用いられることがあるが、そのベネフィットについては議論の余地が残っている。これまで双極性うつ病の躁転に焦点を当てた遺伝子研究はほとんど行われておらず、ゲノムワイド関連解析(GWAS)はなかった。台湾・Chang Gung Memorial HospitalのChih-Ken Chen氏らは、双極I型障害の躁転リスクに対するゲノム研究と抗うつ薬の影響について調査を行った。その結果、抗うつ薬治療とrs10262219は、複合的に双極性うつ病後の躁転リスクを増加させることを報告した。Journal of Personalized Medicine誌2022年4月11日号の報告。