精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:74

下剤を常用すると認知症リスクが増大する?

 便秘を緩和するために下剤を日常的に使用していると、後年の認知症発症リスクが高まる可能性があるとする研究結果が、「Neurology」に2月22日掲載された。複数のタイプの下剤を併用する人や、浸透圧性下剤(浸透圧を利用して大腸内の水分を増やし、便を柔らかくして排便を促す)を使用している人は、特にリスクが高いという。これまでの研究では、睡眠補助薬やアレルギー薬などのOTC医薬品と認知症との関連が報告されているが、下剤との関連が指摘されたのは今回が初めて。  研究論文の著者の一人で、中国科学院深圳先進技術研究院(中国)准教授のFeng Sha氏は、「しかし、現時点で慌てることはない。この結果を基に何らかの行動を起こす前に、さらに研究を重ねて、結果を確かめる必要がある」と述べている。同氏はさらに、絶対リスクが小さいことや、この研究自体が下剤の使用により認知症リスクが上昇する機序を明らかにするものではないとも述べている。ただし研究グループは、機序に関しての仮説を立てている。それは、下剤の常用により腸内細菌叢が変化することで、腸から脳への神経伝達が影響を受けたり、あるいは脳に影響を及ぼす可能性のある腸内毒素の産生が増えたりするのではないかというものだ。さらに、便秘薬は脳腸相関を妨害し、一部の微生物を脳に到達させてしまう可能性もあるという。

オールシングスマストパス~高齢者の抗うつ薬の選択についての研究の難しさ(解説:岡村毅氏)

従来のRCTの論文とはずいぶん違う印象だ。無常(All Things Must Pass)を感じたのは私だけだろうか。この論文、老年医学を専門とする研究者には、突っ込みどころ満載のように思える。とはいえ現実世界で大規模研究をすることは大変であることもわかっている。順に説明していこう。2種類の抗うつ薬に反応しないものを治療抵抗性うつ病という。こういう場合、臨床的には「他の薬を追加する増強療法」(augmentation)か「他の種類の薬剤への変更」(switch)のどちらを選択するべきかというのは臨床的難問だ。これに対して、うつ病一般においてはSTAR*Dなどの大規模な研究が行われてきた。本研究はOPTIMUM研究と名付けられ、やはりNIH主導で大規模に行われた。

日本人の認知症タイプ別死亡リスクと死因

 近年の認知症に対する医療および長期ケアの環境変化は、疾患の予後を改善している可能性がある。そのため、認知症の予後に関する情報は、更新する必要があると考えられる。そこで、医薬基盤・健康・栄養研究所の小野 玲氏らは、日本における認知症のサブタイプ別の死亡率、死因、予後関連因子を調査するため、クリニックベースのコホート研究を実施した。その結果、日本における認知症サブタイプ別の死亡リスクや死因の重要な違いが明らかとなった。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2023年2月6日号の報告。

PTSDやうつ病に対するドパミンD2受容体遺伝子変異の影響~メタ解析

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)およびうつ病のリスク因子として、ドパミンD2受容体遺伝子の変異が多くの研究で評価されているが、その結果は一貫していない。中国・北京林業大学のXueying Zhang氏らは、ドパミンD2受容体遺伝子変異とPTSDおよびうつ病リスクとの関連を明らかにするため、メタ解析を実施した。その結果、ドパミンD2受容体遺伝子の変異は、PTSDおよびうつ病の遺伝的な感受性に潜在的な影響を及ぼしている可能性が示唆された。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2023年2月4日号の報告。

ベンゾジアゼピンの使用および中止に伴う離脱症状とその期間は

 ベンゾジアゼピンの漸減や中止を行うと、さまざまな症状が一定期間発現することがある。このように数ヵ月~数年間続くこともある症状のメカニズムは、数十年前から報告されているものの、いまだ解明されていない。米国・Benzodiazepine Information CoalitionのChristy Huff氏らは、ベンゾジアゼピンの使用および中止に関連する急性および慢性的な離脱症状を明らかにするため、インターネット調査結果の2次解析を行った。その結果、ベンゾジアゼピンの漸減および中止でみられる急性で一過性の症状は、多くのベンゾジアゼピン使用患者が経験する持続的な症状とは性質や期間が異なる可能性が、改めて示唆された。Therapeutic Advances in Psychopharmacology誌2023年2月6日号の報告。

治療抵抗性うつ病の高齢者、抗うつ薬増強で改善/NEJM

 治療抵抗性うつ病の高齢者において、既存の抗うつ薬にアリピプラゾールを併用する10週間の増強療法は、bupropionへの切り替えと比較し、ウェルビーイングを有意に改善し寛解率も高かった。また、増強療法あるいはbupropionへの切り替えが失敗した患者において、リチウム増強療法またはノルトリプチリンへの切り替えは、ウェルビーイングの変化量や寛解率が類似していた。米国・ワシントン大学のEric J. Lenze氏らが、医師主導によるプラグマティックな2ステップの非盲検試験「Optimizing Outcomes of Treatment-Resistant Depression in Older Adults:OPTIMUM試験」の結果を報告した。高齢者の治療抵抗性うつ病に対する抗うつ薬の増強療法または切り替えのベネフィットとリスクは、広く研究されていなかった。NEJM誌オンライン版2023年3月3日号掲載の報告。

治療抵抗性うつ病に対するガイドラインの推奨事項

 うつ病は、重篤かつ広範に及ぶメンタルヘルス関連疾患である。うつ病は、2つ以上の抗うつ薬による治療でも寛解が得られず、治療抵抗性うつ病に至ることも少なくない。ブラジル・サンパウロ大学のFranciele Cordeiro Gabriel氏らは、診断および治療の改善を目的に作成された臨床診療ガイドライン(CPG)における治療抵抗性うつ病に対する推奨事項について、それらの品質および比較をシステマティックに評価した。その結果、うつ病治療のための高品質なCPGにおいて、治療抵抗性うつ病の定義および使用が統一されておらず、治療抵抗性うつ病に対する共通したアプローチも見当たらなかった。PLOS ONE誌2023年2月6日号の報告。

抗精神病薬とプロラクチンレベル上昇が骨折リスクに及ぼす影響

 抗精神病薬による治療が必要な患者は、骨粗鬆症関連の脆弱性骨折を含む骨折リスクが高いといわれている。これには、人口統計学的、疾患関連、治療関連の因子が関連していると考えられる。インド・National Institute of Mental Health and NeurosciencesのChittaranjan Andrade氏は、抗精神病薬治療と骨折リスクとの関連を調査し、プロラクチンレベルが骨折リスクに及ぼす影響について、検討を行った。The Journal of Clinical Psychiatry誌2023年1月30日号掲載の報告。

「マザリーズ」への関心の程度で自閉症の診断が可能に?

 母親などが、高いトーンで、ゆっくりと、抑揚をつけて乳幼児に話しかける話し方を「マザリーズ」という。このようなマザリーズへの関心の程度が、自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断や予後の指標となり得ることが、乳幼児を対象にした研究で示された。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)神経科学分野のKaren Pierce氏らが実施したこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に2月8日掲載された。  この研究では、生後12〜48カ月の乳幼児653人(平均月齢26.45カ月、男児73.51%)を対象に、乳幼児がマザリーズへ注意を向ける程度をASD診断の指標にできるのかどうか、また、それが社会的スキルや言語能力と関連しているのかどうかを調べた。マザリーズに注意を向ける程度は、Pierce氏らが開発したアイトラッキングテストにより測定した。これは、対象者に2本の動画を一つの画面に提示し、どちらをどれだけ見るのかを視線でコントロールさせることで、動画に対する対象者の関心を定量化するものである。提示される2本の動画のうちの1本は常にマザリーズを話す女優の動画(以下、「マザリーズ」)とし、もう1本は、1)高速道路を走る車とその騒音(以下、「高速道路」)、2)音楽とともに動く抽象的な形や数字(以下、「図形や数字」)、3)「マザリーズ」と同じ女優が同じセリフを抑揚のない口調で話すもの(以下、「抑揚のない口調」)のいずれかとした。

せん妄予防に対するラメルテオン~メタ解析

 せん妄予防に対する新たな治療オプションとして期待されているラメルテオンだが、その有効性を評価したエビデンスは、まだ限られている。台湾・長庚記念病院国際医療センターのChia-Ling Yu氏らは、アップデートメタ解析を実施し、入院患者のせん妄予防に対するラメルテオンの効果に関するこれまでのエビデンスの信頼性を調査した。その結果、ラメルテオンは、プラセボと比較し、入院患者のせん妄リスクを低減させることが最新のメタ解析で明らかとなった。Journal of Pineal Research誌オンライン版2023年2月1日号掲載の報告。