精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:85

日本人統合失調症入院患者における残存歯数とBMIとの関係

 統合失調症入院患者において、BMIに対する歯の状態の影響に関するエビデンスはほとんどない。新潟大学の大竹 将貴氏らは、日本人統合失調症入院患者の残存歯数とBMIとの関連を調査するため、横断的研究を実施した。その結果、歯の喪失や抗精神病薬の多剤併用が統合失調症入院患者のBMIに影響を及ぼすこと、また、統合失調症入院患者は一般集団よりも歯の喪失が多いことが示唆された。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2022年11月7日号の報告。  統合失調症入院患者212例を対象に、BMIに対する潜在的な予想因子(年齢、性別、残存歯数、抗精神病薬処方数、クロルプロマジン換算量、抗精神病薬の種類)の影響を評価するため、重回帰分析を行った。次に、統合失調症入院患者と日本人一般集団3,283例(平成28年歯科疾患実態調査[2016年])の残存歯数を比較するため、年齢および性別を共変量として共分散分析を行った。

うつ病治療ガイドラインの実践状況を把握する客観的指標IFS

 日本うつ病学会の治療ガイドラインでは、うつ病の重症度別に推奨される治療法が定められている。治療ガイドラインは、実臨床で治療決定を促すためのツールとして用いられ、患者や医療従事者を支援するよう設計されている。精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)のメンバーである岩手医科大学の福本 健太郎氏らは、各患者がうつ病ガイドラインの推奨に従って治療を実践しているかを評価するための客観的指標として、個別フィットネススコア(IFS)を開発した。IFSは、個々の患者におけるガイドラインに基づく治療の実践状況を客観的に評価できることから、ガイドラインに準じた治療行動に影響を及ぼし、薬物療法を含めた日本におけるうつ病治療の標準化につながる可能性が期待できるとしている。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2022年11月16日号の報告。

lecanemab、FDAがアルツハイマー病治療薬として迅速承認/エーザイ・バイオジェン

 エーザイとバイオジェン・インクは2023年1月7日付のプレスリリースで、可溶性(プロトフィブリル)および不溶性アミロイドβ(Aβ)凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体lecanemabについて、米国食品医薬品局(FDA)がアルツハイマー病の治療薬として、迅速承認したことを発表した。  本承認は、lecanemabがADの特徴である脳内に蓄積したAβプラークの減少効果を示した臨床第II相試験(201試験)の結果に基づくもので、エーザイでは最近発表した大規模なグローバル臨床第III相検証試験であるClarity AD試験のデータを用い、フル承認に向けた生物製剤承認一部変更申請(sBLA)をFDAに対して速やかに行うとしている。

交代勤務や夜勤と将来の認知症リスク~メタ解析

 交代勤務や夜勤が認知症リスクと関連しているかについては、相反するエビデンスが報告されている。中国・First Clinical Medical College of Shaanxi University of Traditional Chinese MedicineのZhen-Zhi Wang氏らは、交代勤務や夜勤と認知症との潜在的な関連性を明らかにするため、関連文献をシステマティックに検索し、メタ解析を実施した。その結果、夜勤は認知症のリスク因子である可能性が示唆された。Frontiers in Neurology誌2022年11月7日号の報告。  交代勤務や夜勤と認知症との関連を調査するため、2022年1月1日までに公表された文献をPubMed、Embase、Web of Scienceよりシステマティックに検索した。独立した2人の研究者により、検索した文献、抽出データの適格性がレビューされた。PRISMAガイドラインに従ってシステマティック評価およびメタ解析を実施した。メタ解析には、Stata 16.0を用いた。

抗精神病薬治療の有効性を予測可能なタイミング

 抗精神病薬の初期の臨床効果が、その後の治療アウトカムにどの程度影響を及ぼすかは、明らかになっていない。中国・West China Hospital of Sichuan UniversityのYiguo Tang氏らは、2週時点での抗精神病薬の有効性が、6週時点の治療反応を予測できるかを評価した。また、治療反応の予測が、抗精神病薬や精神症状の違いにより異なるかも検討した。その結果、抗精神病薬治療2週時点でのPANSS合計スコアの減少率や精神症状の改善は、6週時点の臨床的な治療反応を予測することが示された。Current Neuropharmacology誌オンライン版2022年11月18日号の報告。

パニック症やPTSDに対するデジタル治療の有効性

 これまでの研究で、パニック症や心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対するデジタル治療であるCapnometry Guided Respiratory Intervention(CGRI)の臨床的ベネフィットが報告されている。米国・FreespiraのRobert N. Cuyler氏らは、実臨床におけるCGRIの治療アウトカムの報告を行った。その結果、これまでの研究結果と同様に、CGRIは、有意な症状改善効果と良好なアドヒアランスが期待できる治療介入であることが確認された。結果を踏まえ著者らは、パニック症患者およびPTSD患者に対するCGRIは、短い治療期間で良好なアドヒアランスを示し、臨床的ベネフィットに優れることから、有望な治療オプションとなりうるとしている。Frontiers in Digital Health誌2022年11月17日号の報告。

ビタミンDが脳を老化から守る可能性

 脳内に存在するビタミンDの量が多い高齢者では、明晰な頭脳が維持されやすい可能性が、米タフツ大学ジーン・メイヤーUSDA加齢人間栄養研究センターのSarah Booth氏らの研究で示唆された。この研究では、脳組織中のビタミンD濃度が高い高齢者では記憶力や思考力の標準的な検査の成績が良い傾向があり、認知症や軽度認知障害(MCI)になる可能性の低いことが示された。この研究の詳細は、「Alzheimer's & Dementia」に12月7日掲載された。  ビタミンDと脳の老化については、これまでにも複数の研究が行われている。しかし、高齢者においてビタミンDの血中濃度の低さが認知症リスクの上昇と関連するという報告がある一方で、そのような関連は認められないとする報告もあり、意見の一致は得られていない。さらに、高齢者の記憶力や思考力に対するビタミンDサプリメントの効果を検証したいくつかの臨床試験でも、有益性に関する明確な証拠は得られていない。

片頭痛と認知症との関連~コホート研究

 片頭痛と認知症は、いずれも公衆衛生上の主要な問題と関連しているが、両疾患の関係を理解するためには、多くの知見が必要とされる。デンマーク・コペンハーゲン大学のS. Islamoska氏らは、片頭痛と認知症との関連を明らかにするためコホート研究を実施し、さまざまな視点より評価を行った。その結果、認知症発症リスクの上昇は、片頭痛の診断と関連しているが、片頭痛の治療薬使用とは関連していないことが示された。

M4受容体選択的PAMのemraclidine、統合失調症に有望/Lancet

 新規開発中のemraclidineは、統合失調症に対し漸増レジメンなしで1日1回経口投与が可能な治療薬として有効であり、安全性および副作用プロファイルも良好であることが示された。米国・イェール大学のJohn H. Krystal氏らが、第Ib相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。emraclidineは、統合失調症治療薬として新規開発中の脳浸透性ムスカリンM4受容体選択的ポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)である。今回の結果を踏まえて著者は、「統合失調症に対するemraclidineの有効性、安全性および忍容性を確認するため、さらなる研究が必要である」とまとめている。Lancet誌2022年12月17日号掲載の報告。

治療抵抗性統合失調症に対する新規抗精神病薬および薬理学的戦略の最新情報

 適切な用量および投与期間による2種類以上の抗精神病薬治療で反応が得られない治療抵抗性統合失調症は、精神医学の中で最も治療困難な病状の1つであるといえる。疫学的には、治療抵抗性統合失調症は統合失調症患者の3分の1に影響するとされ、全体的な機能の観点からも患者に深刻な結果をもたらす。しかし、50年間で治療抵抗性統合失調症の適応で承認された治療薬はクロザピンのみであり、クロザピンでも反応の得られない耐性患者も少なくない。イタリア・ナポリ大学のAndrea de Bartolomeis氏らは、現在報告されている文献を批判的に評価し、治療抵抗性統合失調症の治療における新旧薬剤の役割についてレビューを行った。Expert Opinion on Pharmacotherapy誌2022年12月号の報告。