精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:82

日本人片頭痛患者に対するフレマネズマブ オートインジェクターの第III相臨床試験

 ヒト化抗CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)モノクローナル抗体であるフレマネズマブは、片頭痛発作の発症抑制を適応とする皮下注射製剤である。2022年、フレマネズマブに、自宅での自己注射が可能となるオートインジェクター(AI)製剤が新たな選択肢として加わった。獨協医科大学の平田 幸一氏らは、フレマネズマブのAI製剤の安全性を調査するために実施された第III相臨床試験の結果を報告した。その結果、自宅でのフレマネズマブのAI製剤自己注射は、一般的な安全性および良好な忍容性が認められた。著者らは、有用性およびアドヒアランス改善の観点から、フレマネズマブのAI製剤による投与戦略は臨床的に意義があると考えられると報告している。Expert Opinion on Drug Safety誌オンライン版2022年12月28日号の報告。

統合失調症発症と昼寝の頻度との関係

 統合失調症と昼寝の頻度との関連について、中国・温州医科大学のJun Ma氏らが調査を行った。その結果、昼寝の頻度の増加と統合失調症発症との間に双方向の関連が認められ、統合失調症の進行や治療に対する潜在的な介入として昼寝の頻度をコントロールする意義が示唆された。BMC Psychiatry誌2022年12月13日号の報告。  昼寝の頻度と統合失調症に関連する上位の遺伝的バリアントのゲノムワイド関連解析(GWAS)によって得られる要約統計量(summary statistics)を用いて、双方向2サンプルメンデルランダム化解析を実施した。昼寝に関するGWASの一塩基多型(SNP)のデータは、英国バイオバンク(45万2,633例)および23andMeコホート研究(54万1,333例)より抽出し、統合失調症に関連するGWASは、Psychiatric Genomics Consortium(PGC:3万6,989件、症例:11万3,075例)より抽出した。逆分散加重(IVW)分析を主要な方法として用い、加重中央値、MR-Robust、Adjusted Profile Score(RAPS)、Radial MR、MR-Pleiotropy Residual Sum Outlier(PRESSO)を感度分析として用いた。

コミュニティガーデンは健康増進に役立つ

 ガーデニングの経験者なら、土を掘って種をまく喜びや、最初の収穫時の誇らしい気持ちを理解できるはずだ。それに加えて、ガーデニングは健康にも良い影響を与えるようだ。新たな研究で、都市部のコミュニティガーデン(地域住民が運営や管理を担う庭)の存在は、住民の新鮮な食品の摂取量や運動量の増加をもたらす一方で、ストレスや不安を軽減する可能性のあることが示されたのだ。米コロラド大学ボルダー校環境学部教授のJill Litt氏らが実施したこの研究結果は、「The Lancet Planetary Health」1月4日号に掲載された。

高齢者の歩行速度と認知症リスク~久山町研究

 九州大学の多治見 昂洋氏らは、高齢者の歩行速度と脳体積および認知症発症リスクとの関連を調査した。その結果、最高歩行速度が低下すると認知症リスクが上昇しており、この関連には海馬、島皮質の灰白質体積(GMV)減少および白質病変体積(WMHV)増加が関連している可能性が示唆された。Archives of Gerontology and Geriatrics誌2023年3月号の報告。  MRIを実施した65歳以上の認知症でない日本人高齢者1,112人を対象に、5.0年間(中央値)フォローアップを行った。対象者を、年齢および性別ごとに最高歩行速度の四分位により分類した。GMVおよびWMHVの測定には、voxel-based morphometry(VBM)法を用いた。最高歩行速度とGMVとの横断的な関連を評価するため、共分散分析を用いた。最高歩行速度と認知症発症リスクとの関連を推定するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。最高歩行速度と認知症との関連に対する脳体積の影響を検討するため、媒介分析を行った。

統合失調症治療における抗精神病薬処方の臨床的決定因子~コホート研究

 統合失調症の治療では主に抗精神病薬が用いられるが、近年、長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬の使用頻度が高まっている。米国・ニューヨーク医科大学のEmily Groenendaal氏らは、抗精神病薬の使用(LAI vs.経口)、薬剤クラス(第1世代抗精神病薬[FGA]vs.第2世代抗精神病薬[SGA])、臨床アウトカムの観点から、抗精神病薬選択の予測因子を特定しようと試みた。その結果、LAIか経口、FGAかSGAといった抗精神病薬の選択には、疾患重症度と罹病期間が影響を及ぼす可能性が示唆された。LAI抗精神病薬は、より重症な患者に使用される場合が多かったが、再入院率は経口抗精神病薬と同様であり、重症患者に対するLAI抗精神病薬使用が支持される結果となった。また、若年患者にはLAI抗精神病薬、高齢患者にはFGAが使用されていることが明らかとなった。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2022年12月28日号の報告。

日本人long COVIDの特徴は?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症、いわゆる「long COVID」の日本人での実態が報告された。症状としては倦怠感や抑うつなどが多く、女性や就労が制限されている人および非就労者でパフォーマンスの低下が顕著だという。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Clinical Medicine」に10月31日掲載された。  COVID-19罹患者のlong COVID発症率は25~60%とされており、研究対象によって大きな差がある。また、性別や年齢、就労状況、教育歴などの属性との関連も検討されていて、それらが関連ありとする研究と関連なしとする研究が混在している。加えてこれまでに報告されている研究は主として海外で行われたものであり、国内発のデータは少ない。日本は他国よりもCOVID-19の有病率と死亡率が低く、long COVIDの実態も海外とは異なる可能性が考えられる。これらを背景として藤原氏らは、日本人のlong COVIDの特徴の把握を試みた。

高齢ドライバーの運転事故は減少しているか/筑波大

 高齢者の自動車運転に起因する事故が後を絶たない。交通安全推進のため、75歳以上のドライバーを対象に、2009年から運転免許更新時の認知機能検査が義務化され、2017年からその検査結果の運用方法が変更された。これら運用変更後に、高齢ドライバーの事故は減少したのだろうか。  市川 政雄氏(筑波大学医学医療系教授)らの研究グループは、2012~19年までに全国で発生した高齢ドライバーによる交通事故のデータを用い、2017年の運用変更後に、75歳以上のドライバーの事故数が、認知機能検査の対象外である70~74歳と比べ、どの程度変化したのか分析した。また、75歳以上の高齢者が自転車や徒歩で移動中に負った交通外傷の数にも変化があったのか、同様に分析した。

アルツハイマー病治療薬lecanemab、厚労省の優先審査品目に指定/エーザイ・バイオジェン

 エーザイとバイオジェン・インクは1月30日、アルツハイマー病(AD)治療薬の抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体lecanemabの日本における製造販売承認申請について、厚生労働省より優先審査品目に指定されたことを発表した。優先審査は、重篤な疾病で医療上の有用性が高いと認められた新薬などに与えられ、総審査期間の目標が短縮される。医薬品医療機器総合機構(PMDA)によると、申請から承認までの総審査期間は、通常品目は80パーセンタイル値で12ヵ月のところ、優先品目は9ヵ月となっている。

治療抵抗性双極性障害治療の現在と今後の方向性

 双極性障害は世界人口の1~2%に影響を及ぼすとされる慢性的な精神疾患であり、うつ病エピソードが頻繁に認められ、約3分の1の患者では適切な用量による薬物治療に反応が得られないといわれている。治療抵抗性双極性障害(TRBD)の明確な基準は存在しないが、2つの治療薬による適切な治療を行ったにもかかわらず効果不十分である場合の対処は、TRBD治療の重要な課題である。米国・ルイビル大学のOmar H. Elsayed氏らは、TRBDに対する治療介入、課題、潜在的な今後の方向性について、エビデンスベースでの確認を行った。その結果、TRBDの現在の治療法に関するエビデンスは限られており、その有効性は低かった。TRBDの効果的な治療法や革新的なアプローチは研究中であり、今後の研究結果が待ち望まれる。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2022年12月16日号の報告。

Long COVID、軽症であれば1年以内にほぼ解消/BMJ

 軽症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者では、いくつかのlong COVID(COVID-19の罹患後症状、いわゆる後遺症)のリスクが高いが、その多くは診断から1年以内に解消されており、小児は成人に比べ症状が少なく、性別は後遺症のリスクにほとんど影響していないことが、イスラエル・KI Research InstituteのBarak Mizrahi氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年1月11日号で報告された。  研究グループは、軽症SARS-CoV-2感染者における感染から1年間のlong COVIDによる臨床的な罹患後症状(後遺症)の発現状況を明らかにし、年齢や性別、変異株、ワクチン接種状況との関連を評価する目的で、後ろ向きコホート研究を行った(特定の研究助成は受けていない)。