外科/乳腺外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:53

高リスク早期乳がんへの術後アベマシクリブ、HR0.68でiDFS改善(monarchE Cohort 1)/ESMO BREAST 2022

 日本および欧州(EMA)での承認の対象である、腋窩リンパ節転移個数や腫瘍径といった臨床現場で判定しやすい特徴により定義された再発リスクの高いホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2−)早期乳がん患者に対して、術後薬物療法としてのCDK4/6阻害薬アベマシクリブと内分泌療法併用のベネフィットが示された。ドイツ・Evang. Kliniken Essen-MitteのMattea Reinisch氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022、2022年5月3~5日)でmonarchE試験Cohort 1の有効性データを報告した。 [monarchE試験 Cohort 1] ・対象:HR+/HER2−の初発乳がん、遠隔転移なし・腋窩リンパ節転移陽性の症例(閉経状況問わず)、術前/術後の化学療法は許容 ・Cohort 1(全体の91%):腋窩リンパ節転移(pALN)陽性が4個以上またはpALN1~3個かつGrade3の病変または腫瘍径≧5cm ・試験群:アベマシクリブ150mg×2/日+標準的術後内分泌療法。アベマシクリブは最長2年間投与(アベマシクリブ+ET群:2,555例) ・対照群:標準的術後内分泌療法(タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬、LH-RHアゴニストなど。薬剤は主治医選択)(ET群:2,565例)

HER2+乳がん脳転移例、T-DXdで高い頭蓋内奏効率(TUXEDO-1)/ESMO BREAST 2022

 活動性脳転移を有するHER2陽性乳がん患者において、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)で73.3%と高い頭蓋内奏効率が得られたことが、前向き単群第II相試験(TUXEDO-1試験)で示された。オーストリア・ウイーン医科大学のRupert Bartsch氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022、2022年5月3~5日)で報告した。  HER2CLIMB試験では、活動性の脳転移を有するHER2陽性乳がんへのトラスツズマブ+カペシタビン+tucatinibの投与で、頭蓋内奏効率が47.3%、無増悪生存期間(PFS)中央値が9.5ヵ月だったことが報告されている。  今回のTUXEDO-1試験の対象は、トラスツズマブまたはペルツズマブの投与歴があり、即時の局所治療の適応がないHER2陽性乳がん患者で、新たに診断された脳転移(未治療)または局所治療後に進行した脳転移を有する15例。T-DXd 5.4mg/kgを3週ごとに投与した。主要評価項目はResponse Assessment in Neuro-Oncology(RANO)-BM基準で中央判定された頭蓋内奏効率、副次評価項目は頭蓋外奏効率、PFS、全生存期間、安全性、QOLなどであった。Simonの2段階デザインに基づき15例が登録され(第1段階:6例、第2段階:9例)、15例全例でT-DXdが1回以上投与された。

BRCA1/2遺伝子の病的バリアント、新たに3がん種との関連が明らかに/JAMA Oncol

 BRCA1/2遺伝子の病的バリアントは、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、膵がんの発症リスク上昇に関与することが知られている。今回、日本人集団における世界最大規模のがん種横断的ゲノム解析が実施され、BRCA1/2遺伝子の病的バリアントは上記4がん種のほかに胃がん、食道がん、胆道がんの発症リスクも上昇させることが示唆された。理化学研究所生命医科学研究センターの桃沢 幸秀氏らによるJAMA Oncology誌オンライン版2022年4月14日号への報告。  研究グループは、2003年4月~2018年3月にバイオバンク・ジャパンに登録されたデータを用いて、胆道がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、子宮体がん、食道がん、胃がん、肝がん、肺がん、リンパ腫、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、腎がんの14がん種における計10万3,261人(患者群6万5,108人、対照群3万8,153人)について、BRCA1/2遺伝子のゲノム解析を実施。データの解析は、2019年8月~2021年10月に行われた。

HER2+進行乳がん2次治療におけるトラスツズマブ・デルクステカン(解説:下村昭彦氏)

 HER2+進行乳がんの標準治療が変わる。  3月24日のNEJM誌にDESTINY-Breast03試験の中間解析結果が掲載された。DESTINY-Breast03試験は、HER2+乳がん2次治療におけるトラスツズマブ・デルクステカン(T-DXd)とトラスツズマブ・エムタンシン(T-DM1)を直接比較した第III相試験である。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は未到達 vs.6.8ヵ月(ハザード比[HR]:0.28、95%信頼区間[CI]:0.22~0.37、p<0.001)と、驚異的なハザード比でT-DXd群で有意に良好であった。また、副次評価項目の全生存期間(OS)はいずれの群も未到達であったが、12ヵ月時点の点推定値は94.1% vs.85.9%(HR:0.55、95%CI:0.36~0.86、p=0.007)であり、中間解析の有意水準である0.000265を上回っていたため統計学的有意差は付かなかったが、イベントが十分に起きた際には有意差が期待されるような結果であった(もちろん、主解析の結果を待って判断するべきである)。奏効率(ORR)も79.7% vs.34.2%であり、T-DXdで圧倒的に良かった。サブグループ解析も近年見ないような結果であり、全てのサブグループにおいてT-DXd群で良好であり、また信頼区間の幅も狭く1をまたいでいない。サブグループ解析の結果からは、T-DM1の方が良いかもしれない、という患者群の想定は難しい。

乳がん術後化学療法後、長期QOLが悪化しやすい患者の特徴/JCO

 乳がん術後補助化学療法後のQOLの長期的経過は個人差が大きい。今回、フランス・Gustave RoussyのAntonio Di Meglio氏らが術後補助化学療法を受けた乳がん患者のQOLの長期的経過の特徴を調査し、関連する健康行動パターンを特定した結果、ほとんどの患者は経過が良好だったが、QOLが著しく悪化し、診断後4年間は治療前の値に回復しなかった集団が特定された。このグループでは、過体重、身体的不活動、喫煙がとくに多く、その他のリスク因子として、若年、併存疾患あり、低所得、内分泌療法ありが示唆された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2022年4月21日に掲載。

日本人乳がん経験者、皮膚関連副作用で困っていること

 がん治療後の皮膚関連症状の多くは生命予後にあまり影響しないことから軽視されがちであり、患者自身も治療から長期間経った場合に医療関係者に相談してよいものか悩んでいるケースがある。しかしその実態は十分に調査されていない。身原皮ふ科・形成外科クリニックの身原 京美氏らは国内の乳がん経験者約370人に対してアンケート調査を実施。その結果をProgress in Medicine誌2022年3月号に報告した。  本研究では、日本国内の9つの乳がん患者会を通じて20歳以上の女性の乳がん生存者を対象にアンケート調査を実施した。調査票は、1)回答時点における主要な皮膚関連症状の有無と、Numerical Rating Scale(NRS)を用いた0~10の11段階で困っている程度を評価、2)症状の低減が期待できる治療(一般薬、医薬部外品などを含む)に対する1ヵ月当たりの自己負担での支出意欲の確認、3)皮膚関連の国際的なQOL評価尺度であるSkindex-29を用い、回答時点の直近1週間における皮膚関連症状に起因する現状のQOLの評価から構成された。

世界血栓デーWEB講演会の開催について【ご案内】

 世界血栓症デーとは、国際血栓止血学会(ISTH)が「血栓症に関する正しい知識を広め、血栓症に起因する障害や死亡を減らす」ことを目的に制定したものである。一般社団法人日本血栓止血学会では日本における血栓症の啓発活動の一環として取り組んでおり、2022年度最初の世界血栓症デーWEB講演会として2022年5月17日(火)に『がん関連血栓症:がんと血栓の新たな関係』をテーマとしてWEB開催する。今回の講演内容は医療関係者を対象としているが、誰でも無料で視聴可能である。

閉経後HR+HER2-進行乳がんの1次治療におけるCDK4/6阻害剤のOSに対する意義(解説:下村昭彦氏)

3月10日のNew England Journal of Medicine誌に、閉経後ホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性進行乳がんに対するレトロゾールへのribociclibの上乗せを検証したMONALEESA-2試験の全生存期間(OS)の結果が公表された。OSは63.9ヵ月vs.51.4ヵ月(ハザード比:0.76、95%CI:0.63~0.93、two sided p=0.008)と、ribociclib群で有意に良好という結果であった。ribociclibの1次治療への上乗せでは、MONALEESA-7試験(閉経前HR+HER2-乳がん1次ホルモン療法[TAM/AI + LHRHa +/- ribociclib])に次いで2つ目の試験である。

浸潤性乳がんの検出率、乳房トモシンセシス+合成マンモグラフィvs.デジタルマンモグラフィ/Lancet Oncol

 乳がん検診における浸潤性乳がんの検出率について、デジタル乳房トモシンセシス+合成2Dマンモグラフィと2Dフルフィールドデジタルマンモグラフィ単独で比較したところ、デジタル乳房トモシンセシス+合成2Dマンモグラフィで有意に高かったことが、ドイツで実施された非盲検無作為化優越性試験(TOSYMA)で示された。University Hospital MunsterのWalter Heindel氏らがLancet Oncology誌オンライン版2022年4月12日号に報告。本試験は、ドイツの2つの連邦州における17の検診施設で実施された。対象は品質管理されたマンモグラフィ集団検診プログラムに参加した50〜69歳の女性。地域ごとに層別化したブロック無作為化を用いて、デジタル乳房トモシンセシス+合成2Dマンモグラフィ、または2Dフルフィールドデジタルマンモグラフィに1対1に無作為に割り付けた。主要評価項目は、ITT集団での浸潤性乳がんの検出率と24ヵ月の浸潤性中間期がん率で、安全性はas-treated集団で評価した。

LINEを用いた乳がんのePRO、副作用の効率的な収集に成功/慶應義塾大学

 慶應義塾大学医学部は、2022年4月12日、同外科学教室の林田 哲氏、北川 雄光氏、同医療政策・管理学教室の宮田 裕章氏、帝京大学医学部外科学教室の神野 浩光氏らの研究グループが開発した、LINEを利用して乳がん患者の健康状態や薬物の副作用情報を収集するePRO(electronic Patient Reported Outcome:電子的な患者報告アウトカム)取得システムが、効率的な情報収集をしたことを明らかにした。  このePROの取得システムでは、患者のLINEアプリケーションへメッセージが定期的に送信される。患者が簡単なタップ操作でメッセージに返答すると、管理者は、がん治療薬の副作用重症度を国際的指標(PRO-CTCAE)形式で把握することができる。