救急科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:98

外傷性脳損傷後の早期プロゲステロン投与は有用か/NEJM

急性外傷性脳損傷のアウトカム改善に、プロゲステロン投与はプラセボと比較して、ベネフィットが認められないことが示された。米国・エモリー大学のDavid W. Wright氏らが、第III相の無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。これまでに、外傷性脳損傷へのプロゲステロン投与については、複数の実験モデル検討や2件の単施設臨床試験で、神経学的アウトカムを改善することが示されていた。本検討では、大規模な多施設での検討により、プロゲステロンの早期投与の有効性を、重度、中等度~重度、中等度の急性外傷性脳損傷について調べることが目的であった。NEJM誌オンライン版2014年12月10日号掲載の報告より。

重度外傷性脳損傷後のプロゲステロン、第III相では無効/NEJM

 重度外傷性脳損傷後のプロゲステロン投与は、アウトカム改善効果は認められないことが示された。米国・ホフストラ大学医学部のBrett E. Skolnick氏らが、約1,200例の患者について行った無作為化第III相試験の結果、報告した。これまで、外傷性脳損傷に対するプロゲステロン投与については、動物実験や2つの無作為化第II相試験で、一貫した良好な結果が得られていた。NEJM誌オンライン版2014年12月10日号掲載の報告より。

SYNAPSE試験:重症の外傷性脳損傷(TBI)に対してプロゲステロンは無効(解説:中川原 譲二 氏)-296

 プロゲステロンについては、これまでに外傷性脳損傷(Traumatic brain injury: TBI)の動物モデルにおける確かな効果と、2件の第II相無作為化比較試験(SYNAPSE TrialとPROTECT III Trial)における臨床的有効性が見いだされていた。SYNAPSE Trial の研究者たちは、大規模で前向きの第III相無作為化比較試験 を実施し、プロゲステロンの有効性と安全性を検討したが、残念ながらプロゲステロンが無効であったことをNEJM誌の12月10日号に報告した。

小児への維持輸液、等張液とすべき/Lancet

 入院中小児患者への維持輸液について、等張液(ナトリウム濃度140mmol/L)の使用が低張液(同77mmol/L)使用よりも、低ナトリウム血症の発生リスクを低下し有害事象を増大しないことが明らかにされた。オーストラリア・メルボルン大学のSarah McNab氏らが無作為化対照二重盲検試験の結果、報告した。小児への維持輸液をめぐっては、低張液使用が低ナトリウム血症と関連しており、神経学的疾患の発生や死亡に結び付いていることが指摘されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「小児への維持輸液は、等張液を使用しなければならない」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年11月28日号掲載の報告より。

院外心停止時の機械的心肺蘇生、生存率改善せず/Lancet

 院外心停止時の心臓マッサージについて、機械的心肺蘇生(CPR)vs.徒手的CPRのアウトカムを比較した結果、両群の30日生存率は同等であったことが、英国・ウォーリック大学のGavin D Perkins氏らによる検討の結果、示された。心マは質の高い胸骨圧迫を維持したCPRが求められることから、機器使用のほうが有効ではないかとして普及が進んでいる。しかし、有効性のエビデンスはほとんど示されておらず、先行研究でもアウトカムを改善しないと報告されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「先行研究の報告とも合わせて、機械的CPR法を普及させても、生存は改善しないことが示された」と述べ、「本研究により、機械的CPRが優位である点は認められないこと、および救急医療についての訓練および実践の難しさを強調するものとなった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年11月16日号掲載の報告より。

早期経鼻栄養、感染症・死亡リスク低下せず/NEJM

 急性膵炎で合併症リスクの高い患者に対し、早期に経鼻栄養チューブによる経腸栄養を始めても、救急受診から72時間後に経口摂取を始め必要に応じて経管栄養を行う場合と比べ、主要な感染症や死亡リスクの低下に結び付かないことが示された。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのO.J.Bakker氏らが、208例の患者について行った多施設共同無作為化試験の結果、報告した。重症急性膵炎の患者に対しては、腸管からの感染症予防を目的として、早期に経鼻腸管栄養を開始することが多い。しかし、この戦略を支持するエビデンスは限定的だった。NEJM誌2014年11月20日号掲載の報告より。

脳卒中急性期の高血圧管理は、効果がない? ~無数のCQに、臨床試験は応えられるのか -ENOS試験の教訓~(解説:石上 友章 氏)-279

 臨床試験は、臨床現場の葛藤に回答を与えてくれることが期待されている。結果の不確実な選択肢に対して、丁半博打のような行為を繰り返す愚を回避するための、有力で科学的な解決策である。しかし、臨床現場のクリニカル・クエスチョン(CQ)は、有限個であるとはいっても、無数に存在する。1つのCQに、1つの臨床試験が確度の高い回答を与えてくれるとは限らない。CQを解決するつもりで行った臨床試験が、未知のCQを発掘することもある。また、臨床試験にかかるコストは、費用だけではない。人的なコスト、時間的なコストも莫大にかかるので、こうしたコストに見合った結果が得られるのかは、重大な関心事であろう。

脳卒中患者への降圧治療、身体機能改善せず/Lancet

 高血圧を伴う脳卒中患者に対する降圧治療は、血圧の低下はもたらすものの、身体機能は改善しないことが、英国・ノッティンガム大学のPhilip M W Bath氏らが行ったENOS試験で示された。脳卒中発症後の高血圧は不良な予後と関連することが知られているが、発症後早期の降圧治療の必要性や、投与中の降圧薬継続の是非は明らかにされていないという。Lancet誌オンライン版2014年10月22日号掲載の報告。

ビタミンD欠乏患者への高用量VD3、効果みられず/JAMA

 ICU入室のビタミンD欠乏(20ng/mL以下)重病患者に対し、高用量ビタミンD3の投与はプラセボと比較して、入院期間、院内死亡率または6ヵ月死亡率を低減しなかったことが明らかにされた。オーストリア・グラーツ医科大学のKarin Amrein氏らが無作為化試験「VITdAL-ICU」の結果、報告した。12ng/mL以下の重度ビタミンD欠乏患者では、院内死亡率の低下がみられたが、この所見については、さらなる検討を要するものではないと著者は結論している。重病患者のビタミンD値低下は死亡率、罹患率増大に結び付くが、因果関係があるのかについては明らかにされていなかった。JAMA誌2014年10月15日号掲載の報告より。